海岸から執務室に戻ると、ちょうど電話が鳴り出した。
「ヘイヘーイ、こちら佐世保鎮守府になりますよっと。」
『む、その話し方は新しく西方司令部から着任した新任かな?』
「そうですよ。オタクはどちら様で?」
『む、言ってなかったかな? 私は、呉鎮守府の大倉政勝という。階級は元帥だ。』
へぇ〜、元帥かぁ。
………………へ?
元帥?
『ちなみに、九州、中国、中部の一部のまとめ役でもある。空軍、陸軍でいう総監というものだな。』
「あ、はい。」
ヤベェ、全然そんな話聞いてなかったからソラヒメ西方司令部にいる時のノリで話してしまった。
『はっはっはっ! そんなに恐れなくともいい。いきなり電話したのは私だ。無礼はこちらにもあるものよ。』
「はぁ、恐縮です。」
しばらく電話越しに笑っていたが、雰囲気が変わった。
『挨拶はこれぐらいにして、本題に入ろう。』
「要件は何でしょうか?」
『ふむ、昨日の一件はご苦労であった。だが、少々やり過ぎな気もしてはならんがな。』
「それは、仕方のないことです。ブラックを潰すには根元を潰し、見せしめることが大事ですので。」
『ふむ、そういう考えもあるものか。貴殿のおかげで、私の担当区域内でもあったブラックの所が自首してきたのだ。それを考えるといい結果だ。報酬で、資材と一人艦娘を派遣しよう。』
「ありがとうございます。ですが、俺は信用されていないのですが。」
『構わん。むしろ、そちらに行きたいと熱望してる奴が一人いてな。丁度良い機会でもあるからそちらに派遣しよう。』
「ありがとうございます。」
『だが、今回の件は海軍側で解決したかったものだがなぁ。空軍に恩を売ってしまった。』
「お構いなく。実質、総司令部長は何かある度に俺に相談に来るので、実際には俺が決裁してるものですよ。」
『はっはっはっ! そうであったか。では、次だ。』
この件より重大なことらしく、俺は少し緊張する。
『誠に言いにくいのだが、貴殿が解放したミッドウェー海域が深海棲艦に占領された。』
「は?」
え?
ミッドウェーが?
え?
どゆこと?
あそこには、第1部隊候補を4名置いてた筈だが?
『あそこの監督が入れ替わっての、その者が『空軍の力なぞ必要ない』と言って4名を帰還させたのだ。』
「……………マジすか。」
『すまぬが、力を貸してくれぬか?』
えぇ〜、そっちの都合で撤退させて、挙句に占領されて、力を貸せっておかしくない?
「指揮していた者は?」
『自分だけ逃げて帰ってきたのじゃよ。』
ミシッ!!
机と受話器に力が入り、音が出てしまった。
「分かりました。力を貸しましょう。その代わり高くつきますよ?」
『分かっておる。こちらの都合で失敗して、更には力を貸せと言っておるからの。』
「分かりました。1週間後に出撃します。」
『すまない。頼む。』
そう言って電話が切れた。
その瞬間に机の端と受話器が砕け散った。
それだけでは怒りが収まらず、机を蹴り飛ばした。
机は真っ直ぐに飛んで行き、壁に当たり、壁に穴が空いた。
「何事ですか!?」
ジャックが飛んできた。
だが、ジャックは俺の姿を見ると、顔を蒼白にした。
「あ、悪りぃな。ちょっと、いや、かなりムカつくことがあったから。」
「あ……あの……す、すみません。」
「何故謝る? ジャックは何一つ悪いことはしてない。」
「そ、そうですか。では、何故それほどに怒っているのですか?」
ジャックは恐る恐る聞いてきた。
「あぁ、指揮官としてのクズがミッドウェーを占領された挙句に逃げ帰ってきやがった。」
「え? そこは、1年半前に………。」
「ジャック、引っ越しに連絡しろ。」
「あ、ああ、あの発明好きの?」
「そして伝えておけ、3日以内に俺のバイク持って来いと。」
「了解!」
ジャックはすぐに端末で引っ越しに連絡した。
端末からは『引っ越しって言わないでくださいよ〜!』と聞こえたが知らん。
「さて、放送で一回集めるか。」
俺は音響機器の電源を入れる。
『あ〜、聞こえるな? つーか、聞こえてるだろ。全員食堂に集合せよ。1週間後のこの鎮守府のみでの大規模任務の説明を行う。』
俺は放送機器の電源を切る。
「忙しくなるぞ。ま、今回は俺も出撃するしな。」
絶対に、損傷、大破、轟沈はさせねぇ。