司令官がいなくなった食堂は重い空気に包まれていた。
バゴッ!!!
重い静寂を破るようにテーブルが破壊される音が響いた。
「貴様………余程死にたいみたいだな?」
ワンが殺意のこもった目で長門を見ている。
テーブルを破壊したのもワンだ。
「我らが何故、あやつを擁護し、尚且つ激怒する理由がわかるか?」
先ほどの司令官程ではないが、重い空気が生まれる。
「我らはあやつに命を救われた。そして、それと同時にあやつの大事な人を亡くした。」
第1部隊(スーヨ除く)全員が長門を見据える。
「あやつの初代秘書機、Me-262の『ミロク』をな。」
艦娘全員が息を呑む。
艦娘で言う轟沈をしたという事だ。
「それ以降司令官は、大規模作戦の時は必ず前戦に出てる。」
私は言う。
「貴方達は大事な人を失ったことがないからそんな事が言える。」
まだ、続けて言う。
「一回、無くしてみたほうがいい?」
機銃を構える。
今度はゴム弾ではなく実弾でね。
『ROCK! I LOVE THE WORLD! I LOVE THE WORLD!!』
場に相応しくない音楽が聞こえた。
「すみません。私です。」
ジャックだった。
ジャックってこんなアップテンポの曲聞くんだ。
「はい、私です。はい……はい……もうですか? 分かりました。通しますのでお願いします。」
「何の用事かしら?」
「司令官のアレが届きました。」
あ、ついに来たんだ。
でも、電話したのって少し前じゃなかったっけ?
「私はここで。司令官に伝えて来ます。」
ジャックは駆け足で出て行った。
なんか、やる気なくなったな。
「ふん、貴様らに言うことなどない。貴様らがどうなろうと我は知らぬ。」
ワンはそれだけ言い残し出て行った。
「ゼロ、私たちも行きましょう?」
フウが言う。
「うん、そうだね。顔も見たくない。」
私とフウも食堂を出た。
残っているのはラトとキャットだけだね。
どんな事を話すのかな?
「さあ、着いたわよ。」
「おう。」
スーヨに引き摺られて執務室に戻って来た。
俺は椅子に座る。
「………はぁ、大した事ない………か。」
許せないとかじゃない。
平然とそのような事が言える事に腹が立った。
未だに過去に囚われているからな。
「はい司令官! 簡単な食べ物とお酒よ。」
美味しそうな匂いが立ち込める。
「ん、ありがと。」
食べると自然と涙が出てきた。
スーヨは黙って見ている。
「あぁ、ミロクは俺を怨んでいるのか?」
「それはないわね。」
俺は顔を上げる。
「彼女は貴方を信頼していたし、信用もしていたわ。」
スーヨはポケットから封筒を取り出す。
「これは?」
「あの出撃の前日にミロクが書いたものよ。」
俺はそれを受け取る。
封を開け、中身を見ると手紙だった。
『む、手紙を書くなんてやった事ないから勝手がわからん。ま、これを読んでるということは私は死んだか、重症だろうな。とにかく、私は喋れない状態だということだ。貴様はどうせ自分のせいとかで自分を責めるだろ? その心配はいらん。なにせ、私が死んだとしたら私が弱かったというだけだ。原罪は強力だ。それに海には深海棲艦とかいうのも蔓延ってる。海と空においては自由になれん。まあ、簡単に纏めるとだな、私は貴様を恨まんぞ。貴様は有能だから割り切れとは言わん。ただ、私みたいのは出して欲しくないということだ。最後に…………ありがとう。1番信頼していた司令官』
読み終わると涙が止まらなかった。
「は、ははっ! 俺の思い過ごしすぎただけかよ。」
額に手を当て、うなだれる。
「最後の悩みが消えた。なら、やる事は決まった。」
「変な事はしないでよ?」
「分かってる。」
その瞬間に世界が監獄島に変わる。
「あ? どこだ?」
「クハハハハッ! 俺を呼んだな!」
「いや、呼んでねぇし。」
そこには全身黒で、黒のハットを被った男がいた。