忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
現れし第二の龍帝、海の王は何を想う
とても、とても古いお話をしましょう。
人は、豊かな大地に、実りと血と心を神に感謝して生きていました。
神様は、この星の一番深い場所で、人の育みを見てきたのです。
人は、何か不幸があると神に懺悔の祈りをしていました。
私たちが夢見ていた『平和』そのものでした。
ある日、見事な稲穂の輝きが、たちまち黒い影に食い尽くされてしまいました。
大地は干上がり、イチジクの木はなぎ倒され、水は黒いモノの死体で濁ってしまいました。
人は、私たちに縋りました。
私は、種を与えました。彼は、水と時を知る術を与えました。
人はそれを使い再び、大地を潤しました。けれど、黒いモノは舞い戻ってきたのです。
再び、なぎ倒され、折られ、食い荒らされました。
人は泣き明かしました。私も彼も、泣いていたのです。
それから何度も、術を変えて、大地を実らせました。
けれど、黒い群れはやってくるのです。
人は私たちに罵倒を浴びせました。
ーーー嘘つき
ーーー貴方様が、厄を与えた
ーーー子供が食い荒らされました。どうして
ーーーなんで
ーーー私たちが何をしたのか
助けてくれないの?
私は、止まらぬ涙に耐えきれず星の裏側へ消えたのです。
彼は、止まらぬ怒りの涙に耐えきれず星の底へ消えたのです。
二つの涙は混ざり合い、一つの命に形に変えました。
それは異形でした。
三つの首を持ち、赤い果実の瞳を持って群青色の冠を抱いていました。
異形の首を支える体は、大地を踏みしめるべく四肢は常に大地を掴んでいました。
異形は大きく吠えたのです。
するとどうでしょう、大地の四方から水の壁が押し寄せてきたのです。しけた海の波など児戯であると教えているように世界すべてを包み込む水の濁流に今、私たちが立ち会った大地は
水の底へ沈んでいったのです。
水が引いていきました。命は見た限り何も残っていませんでした。
私は、世界の裏側で生まれた異形に名を与え海の底へ沈めました。
砂と鉄と、積み重ねた土の蓋で回帰の深海と海を分けて封印したのです。守り目として大きな美しき年老いた大海龍を境目に住まわせました。
水は引いたとはいえ、それでもかつての大地は帰ってこなかったのです。黒い群れは消えました。人の嘆きの声は搔き消えました。空に生きるモンスター以外も、皆消えたのです。
私は、再び彼と出会い、命をやり直しました。
もう一度人が生まれました。けれど、今度は生まれるきっかけを与えただけでそれきり世界の裏側に消えました。
けれど、今は干渉する術をなくしながら見つめ続けます。人が、命を弄び、カラクリ仕掛けの竜を生みました。ある日生まれた天の皇帝が、真祖に挑み星の使者に滅ぼされました。
世界一の樹を背負いし龍が安寧を求めて世界を彷徨うのを見ました。
けれどそれはどうでも良かったのです。
深海に封じたアレが目覚めなければ。
そして彼の犠牲を持って、封じた異なる星の海からの使者が生まれなければ。
いつまでも見守りましょう。我が名は原始龍、母なる祖。
本来の、真なる生けとしものの母。
『■■■・■■■■』
ーーー
「タンジアの被害はどれ程だ?」
薄暗い部屋で大長老が見守る中、古龍観測隊とギルドナイトが互いの情報を開示し合っていた。
「観測出来ないほどに。完全に海中に没したと見ています。地震等観測出来なかったことから、古龍種の仕業に可能性があります。」
「アリストテレスめがいっていた海王龍の可能性が高いな」
「なにより、厄介なのがあの海域近くに厄海が含まれていることだ」
ざわ、
「やはり、禁忌の領域もか。聞くだけでは到底理解できんよ、三界の龍帝は」
提示される報告の数々。生存者はなし。いや、正確には生きているものもあるかもしれないが、可能性は低い。
天空龍に続いて、今度は海からの襲来。もう訳がわからない。
「三界の龍帝の実力は天空龍で既にわかっていたはずだ。こいつらは既存の古龍種ではない。それに精霊の事もある。我々には知らないことが多すぎる」
「大長老!我々は本格的に精霊種調査を展開すべきです。三界の龍帝は今の我々ではとても勝ち目がありません。張り合える存在がなくては!」
巨大な身体がブルリと震えたのが見えた気がした。
「気持ちはようわかるがの。今はタンジア周辺の状況整理が先じゃ。天空龍の事もある。焦る事もあるまいて」
「はっ」
「人は無力なのかの‥‥‥‥‥」
大長老のつぶやきは白熱する会議に掻き消えたという。
ーーー
元タンジアがあった場所で今は海になってしまったがそこには撃龍船、いや三つ周り巨大な一部鉄鋼化された船が浮かんでいた。船首の撃龍槍は三門あり、通常の撃龍槍よりやや大きい。
実はタンジアが海の底に沈む前から、航海にも迎撃にも耐えられる船を開発していたのだが、船乗りの執念というべきか最新のソレは見事完成した。
「野郎ども!!いくぞ!あのいかれたモンスターに俺たちの魂を見せつけてやろうじゃねえか!!」
自分の目の前で濁流に飲み込まれた家族を奪われた船長は有志を集め、あの憎いモンスターを殺してやると誓いつつ、この船を、船員に敬意を覚えた。
響く声は船長を支持、いや信じている声だ。
《《オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!!》》
「へっ、元気じゃねえか!!いくぞ俺たちの船乗りの結晶。
『大撃龍戦艦 ヴァルキュリア号』の出陣だぁ!!!錨を上げろぉ!!帆を張れぇ!!」
「取り舵いっぱい!!!」
嵐の航海が始まる。
人が、世界を壊す龍に挑む、否誇りを胸に気持ちをぶつけるのだ。
第2章 海王龍編 クエスト開始