忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
「おい、聞いたか。タンジアが突然水の底に沈んだとよ」
「ああ、聞いた聞いた。やべえらしいなあそこ。行商の奴ら道が水で埋まってて通れないって泣いてたぞ」
「タンジアチップスもう食えねえのかーー、美味いものを亡くしたなぁ。あーあ」
「言いようってもんあるだろうが。まあ、否定できねえが」
ここはとある街の酒場。狩猟を終えて帰ってきたハンター達を一時的に休ませる中間的な場所だ。
エールを飲み、ジャーキーを噛みちぎりながら今日の成果を語り出す。
女性の店員がたくさんのエールを乗せたお盆をひっくり返さないように運んでいるのを目の保養にしてエールの肴にするハンターもいる。
だが、ここ連日ハンター達は狩りに出ようとしない。
理由は、第1種禁忌指定と呼ばれる古龍種による災害の影響で周囲の生態系が壊滅状態になってしまったためだ。
ここでハンターが狩猟すると生態系のピラミッドが完全に崩落してしまい復活するのに何年もかかってしまう。
更に追い討ちをかけるように港として交易の主流となっていたタンジア周辺が海王龍により水没、地図から消滅するという事態になった。
ハンター達にとってこの事態に3つに分かれた。
1つは断固として三界滅すべし!と息荒高に叫ぶもの
1つは、倒すことは間違いないが時期を見てからと静観を決めるもの
1つは、逃げるものだ。
どちらも正しく、そして間違いである。
どう足掻こうが、神龍と呼ばれた怪物は目覚めることは避けられないからだ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
ーーー
パタパタパタパタ‥‥‥
港に船舶した大撃龍戦艦ヴァルキュリア号艦長室の窓から伝書鳩が入ってくる。
足には一封の文が。
「メゼポルタの返信が来たか。ラヴィエンテを撃退、討伐するハンター達の力が借りることが出来れば俺は、俺たちはあの海を取り戻せる!」
焦る気持ちで伝書鳩の手紙を取ると恐る恐る開封する。
中にはこう記されていた。以下を長くなるので要件をまとめると、
ーー拝啓 トラヴィス殿
この度の連絡及び要請についてレジェンドラスタやハンター達と協議した結果、残念ながらハンターの派遣はお断りさせていただく。
理由は、今回天空龍覚醒に関わった際、多くのG級ハンターがなくなってしまった。生き延びたものもあるが心に傷を負ってしまった者もいる。これでは我が最前線といえど派遣はできない。
加えて、天空龍と祖龍の衝突により、一部の地域が再興不可になりその影響でモンスターの大パニックが発生し、その対処で人数を割けることができないのです。
よって残念ながら今回のタンジア遠征に介入は出来ませんのでご了承ください。
ハンターズギルド開拓地区 メゼポルタギルドマスター印
「な、なんだと‥‥‥‥、メゼポルタも三界に関わっていただと!」
ぐしゃぁ!
手紙を握りつぶし、拳を机に叩きつけるトラヴィス。
相手はこと海中においてほぼ無敵である海王龍、それを打倒せんと立ち上がったトラヴィスについて来たハンター達や船乗り達。
しかしそれでも足りない、と船乗りの筆頭レガリアに忠告されあらかじめ密書を送ったのだが‥‥‥既に三界に関わってしまったために慎重になってしまったようだ。
「やるしかない!これは、この戦いは俺じゃない誰かの暮らしを守るための戦いなんだ!勝てるか、じゃない、勝つんだ!!」
窓から見える月を見上げて決意を固めるトラヴィス。
そんな彼の背後。
煌びやかな光を浴びて1人の少女が音もなく現れる。
微かな違和感を感じて振り返るとトラヴィスは息を呑んだ。
絹を思わせる紫色がうっすらと映える銀の髪、純白のフード付き外套を纏い、金色の装飾が更に白を引き立てる。
金と銀のオッドアイが人ではないナニカを思わせる。
そして鈴を転がしたような可憐な声でトラヴィスに語りかけて来る。
「こんばんは、おじさま。いい月だよね」
「っ!?誰だ!」
「私?んー、そうだねぇ。エルm、エルって呼んで」
「いつ入って来たか聞かんでやるが、こんな夜更けに出歩いちゃいけないぜお嬢ちゃん」
「‥‥‥‥‥?ああ、そういうこと。ありがと、おじさま。けどさっき意気込んで叫んでたの聞いちゃって。どんな人かなーって思ったのさ」
窓に腰掛ける謎の少女を見ながらタバコを咥えようとしたがやめて精油を使うことにしたトラヴィス。
「やれやれ、いま思えば恥ずかしいセリフを吐いちまったもんだ」
「そんなことはないよ、あと別にタバコを吸っていいのに。私は気にしないよ、そんなの効かないし」
ふぅーー、と息を吐きながらボリボリと頭をかくトラヴィスは嘆息する。
「そういうわけにはいくかよ、きたねえ煙を嬢ちゃんに吹かすわけにはいかねえさ」
「優しいんだね、まあいいか。おじさま、忠告、というかアドバイスだよ。海王龍を倒すなら遠回りするといい。海の精霊を呼ぶのさ『神魚』を、ね」
「貴方の旅路は無駄じゃない。力が足りなくても手を貸してくれる人が必ずいるから。人は、団結するほど強くなる。頑張ってねおじさま」
精油を変えながら窓にいる彼女の方へ振り向くが、誰もいない。狐に化かされたようなよくわからない事態に空笑いをするしかなかった。
「精霊ねぇ‥‥‥‥‥‥。そういや俺のじい様がよくきかせてくれたっけか。たしか呼び名は、『神魚』。海の殺し屋って言ってたな。まさかね‥‥‥‥‥」
机の上には金色に光るコンパスがいつの間にか置かれていたという‥‥‥。
ーー
ピクリとも動かなくなった鍊黒龍を自らの能力の1つである乱泥流に投げ込み遥か彼方の海流へ押し流していく。
海中の戦いは海王龍が制した。
海中において陸上や空中と違い浮力と水圧と呼ばれる現象のせいで派手な動きは出来ない。よくて高速で直進的に突っ込んでいくことくらいしかない。
故にかつて天空龍と祖龍がぶつかった古塔と違い鈍重な戦いに見えたことだろう。
二体は共に巨体。いや海王龍の方がふた回り大きいかーーー。
肉体が派手な動きができない代わりに環境が派手になる。
二体の戦いの折に水中では渦が逆巻き、乱泥流が流れ込み、岩盤崩壊が発生した。新たに生成された海底火山に乱泥流が流れ込み爆発が起き、溶岩が乱泥流を食い止める。
水中では温度が熱水に変わり、水中が赤く染まる。
そんな環境で戦いに勝った海王龍。しかし目覚めたばかりで翼も変形しておらず最大の能力、【大海嘯】も使えない。
今の現状では肉体の巨大さを生かした肉弾戦しか出来ないのだ。
《グルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ‥‥‥‥‥》
嵐が吹き荒れるトリトンの絶海の最深部にて海王龍は時期を見る。