忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
トリトンの絶海、大長老が自ら名付けたその海域はまるで伝説で語られる魔の三角海域のようにおどろおどろしい様をなお露わにしていた。
そんな海域の最深部にて海王龍は何を思ったのか海上へ浮上する。
空を見上げれば曇天に大雨、雷鳴は轟き波は十数メートルにも達する。
所々に大渦が逆巻き、竜巻が海上を蹂躙する。
そんな景色を海王龍は何とも思わない。ただ、感覚として気にくわない。生命が生まれるのは喜ばしいことだ。しかし、増えすぎた。
生命の管理がこの海王龍の役割にして能力だった。封印されて幾星霜。
幾多の生命が、進化を退化を繰り返しながら今を生きてきた。
そんな今でも変わらず生き続ける超常の存在、古龍種。あるいは独自の、まるでそんな仕組みさえ分からなかった超進化もみた。
人が龍脈と呼ぶ星の血液ともいえる大気、大地、海、それぞれにまたがる神秘のエーテル。
海王龍はかつて大地をすべて水の底へ沈めたことがあった。
何もかもが水に沈み、干上がった大地もほんのわずか。なら今の大地は誰が起こしたのだろうか?
自然の成り行き?
煉黒龍のチカラ?
それとも母なる方の権能?
いいや、すべて正しく、すべて間違い。
人が生きたいがために残された地で血を繋げ続けたのだ。
幾星霜の時、やがて水が引き、踏み入る地が増える。
だがそれは自分が海底で封じられ続けたから。
目覚めたならばもう一度洗い流す。
タンジアと呼んだあの地に近い場所から。
身を震わせて海水が、増えた。
そして、彼を中心にして巨大な水の壁が生まれやがて牙となってある方向へ直進を始めた。
ーーー
自然豊かな渓流。
ジンオウガやナルガクルガ、果てはラギアクルスのようなモンスターも姿を見せるようになったが澄んだ水を讃えるこの場所は確かに命があった。
上流には湯の秘境、ユクモ村があり、海の向こうには孤島、ロックラックがある。
そんないつもの渓流の日、小動物が一斉に姿を消した。
ガーグァやケルビ、ルドロス、ジャギィ、ジャギノス、カンタロス、ブナハブラ‥‥‥‥‥
小型のモンスターも皆姿を消した。
困ったのはこれらを捕食していた大型のモンスター達。
アオアシラはいつも通り蜂蜜を舐めていたが。
そんなアオアシラも飢えた大型のモンスター達に襲われ為すすべもなく。
異常を感知したのかついには大型のモンスターもどこかへ消えて行った。そんなある日、渓流の下流から逆流する水の奔流が。
ある世界でアマゾン川で発生するポロロッカという現象がある。
海嘯の一種でこれを見て祭りを起こすところもあるとか。
そんな現象が渓流の下流から発生した。
濁流ともいえる水の奔流。瞬く間にエリアの殆どを飲みこみ、水底に沈んでいく。
〜ユクモ村〜
「た、大変だ!」
自称ユクモの門番の青年。ユクモの門の近く、薬草を取りに足を運んだのだが目にしたのは今にもユクモ村に届こうかという逆流するポロロッカ。
摘んでいた薬草を放り投げユクモ村の村長に報告に上がるのだった。
「なんということでしょう、ではユクモ村が孤立したということなのですか?」
悲しげにユクモの村長は長い耳をしおらせているように見える。
自称ユクモ村の門番の報告で調査に当たった滞在していたハンター達の協力で以下の通りに判明。
「境界門の近くまで水に浸かってる。渓流は完全に水の底だ。ここが標高が高くて助かったが‥‥‥‥これでは」
「ユクモの木を使い、船を作るしかない。だが、それまでに村が持つかどうか‥‥‥。ハンター殿の農園を分けてもらっても足りないぞ」
「村民を避難させねばここも危ない。霊峰の近くにまだ使える村跡がある。そこに一時避難させては?」
ご覧の通り、ユクモ村は浸水により、外界から断絶される事態に。
「村長、決断を」
「村人は避難させて、ハンター殿には悪いですけれど原因究明に尽力してもらいたいです。備蓄してあるユクモの木を使って頑丈な船を作ってください。数にあって越したことはないですができる範囲でお願いします」
この一言でユクモ村は大きく動き出した。
村人は荷物をまとめて霊峰近くの廃村に、選ばれた男手は船を製作し、ハンターは浸水したエリアの調査に当たった。
人々の顔は優れず、気力で支えているようなものだ。
当たり前だ、突然自分の村が周囲が水に埋まり、孤立した島のような状態になれば。
彼らは、ヴァルキュリア号に助けられるまでずっとこのままであった。
ヴァルキュリア号の船長トリヴィスによればロックラックも孤島も大砂漠の一部も突如発生した津波により水の底へと消えたとのこと。
ギルドマネージャーは事前に大老殿から送られてきたマル秘の資料を調べ今回の件が第二の龍帝、海王龍による影響であると断定、そして時を同じくして古代林の河口にて厄海の黒龍、グラン・ミラオスの無残な残骸が打ち上げられていたという。
黒龍の系譜を、ましてや不死の巨人と歌われしかの龍がこのような最後を遂げたとは誰が考えたのだろうか。
海王龍とは、三界とは。
ユクモ村は、まさしく恐怖に飲み込まれようとしていた。
「あ痛ぁ!ちょ、ちょっと硬すぎ!」
金と銀の、紫色がうっすらと輝く銀髪をゆらして手に持つ宝剣を海上に佇む海王龍に始源の力を渾身に込めて振り下ろした。
気配を完全に消した不意打ち。決まったはずだった、いや実際決まっていた。
しかし、感じるのは今にも宝剣を落としそうなほどに痺れる鈍痛。
蚊に刺されるより痛くない、しかし目障りに感じた海王龍は襲撃を仕掛けたそれに3つある首全てが向けられる。
口元には膨大な水属性の、否 深海の海流を体現する奔流。
「やばっ!逃げるが勝ち!!」
海上に3つの螺旋を描く濁流が天に届くほどの水柱を上げ余波で近くの沿岸にて二十メートルを超える津波が押し寄せた。
着弾地には先の下手人はおらず、逃げたと悟った海王龍はそのまま海底に身を沈めた。