忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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天の帝は空を夢見る
吠ゆる天帝 万物は大地に平伏すが如く


天帝こと【天空龍: グラン・アガレス】が現れた丁度数時間前にエリエンテ地方ではギルドの古龍観測所職員であるリッカートは特別に席を用意して貰ったこの地方の巫女との会談に臨んでいた。

 

 

 

「この度は、このような場をいただいてありがとうございます。」

 

深々と頭を下げて、感謝を述べたリッカートを巫女は静かに制した。

 

 

「頭を下げないでください。むしろ頭を下げるべきは私なのですから。」

 

 

「いえ、そのようなことをさせるわけには‥‥‥‥‥、いや話が続かなくなるので本題に入りましょう。」

 

 

 

「具体的には【三界】についてです。【天帝】とやらが目覚めたと聞きましたが。村人たちが大慌てになってましたよ。」

 

 

 

「そうですね、三界が目覚めたというのは事実です。」

 

これをご覧くださいと示された宝玉、数は三つ。トライアングルに配置されていた。

 

 

そのうちの一つ、若葉色に輝く宝玉が他の宝玉と比べてまるで生きているのかのように光り輝いていた。

 

 

 

「天帝は、いえ【天空龍: グラン・アガレス】は確かに目覚めています。これは本来ありえないのです。」

 

「ありえない?何故です?」

 

 

「天帝は竜大戦と呼ばれる大戦争よりも約二千年前に祖なる者、と戦い互いに痛み分けになり、」

 

言葉を区切り、更に続ける。

 

 

「傷ついたところを精霊が一柱、【幻天狐】により永久の眠りによる封印を受けたのです。ーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!!!!》

 

 

その雄叫びはまさしく天地を揺るがした。比喩ではない、文字通り天が、地が、星が ーーーーーーーー

 

 

砕けんとばかりに世界全てに轟いたのだ。

 

 

それはここから反対に位置するバルバレの遺跡平原に住むモンスター全て、皆即死するほどであった。

 

当然間近にいたハンター達は、その咆哮に命を落とした者も少なくない。

メゼポルタが誇る最前線のG級ハンター、彼らの多くは超高級耳栓、耐震+2、暴風圧無効を備えるスキル〈豪放〉を持つ。中には最近発見されたモンスターの特異中の特異個体〈辿異種〉が行う超咆哮を緩和する耳栓強化を入れた彼らはいかなるモンスターの妨害行為も意味をなさない、そのはずだった。

 

 

「ぐ、ぐあ、ああああぁぁぁっ!!?」

 

「い、痛い、痛い!頭がぁぁあ!!」

 

「みんな、こっちだ!範囲ガードを発動する!その中なら体制を整えるはずだ!」

 

 

耳栓強化がないハンター達は鼓膜をズタズタに裂かれ、脳を高速で揺すられてまともに動けなくなる。耳栓強化があったとしても耳栓がない状態で咆哮を食らうような、要はあってもなくても致命的な隙を晒してしまうということだ。

 

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ!!》

 

 

 

轟く雷鳴、それと同じく晴れた空に重い雲が現れて、大雨が降る。古龍のブレスさえ耐えうる飛行船は天空龍が呼び寄せた神の雷霆の如く叩きつけた雷になすすべもなく機関を破壊され、一つ、また一つと墜落する。

 

調査団長たるオルトが乗る飛行船は天空龍の雷撃を巧みな操作でかわしていく。

 

 

 

「く、くそぅ!離脱出来ない!」

 

ピシャーーン!!

 

雷撃が飛行船のすぐそばに落ち、冷や汗が降りてくる。

 

結果論からいえばまともに動けるのはオルトを含めて六人のハンターのみでそれ以外の乗員は先程の咆哮で行動不能に陥っていた。

 

 

「ダメだ!バリスタを当ててるが全部弾かれる!」

 

「貫通弾もダメ!榴弾も、酸弾も効かないわ!!」

 

「新搭載されてる螺旋バリスタの矢はどうだ?」

 

「くそ!近接武器だから、バリスタしか出来ないとはいえ‥‥‥‥まともなダメージ見込めない!」

 

「とにかく離脱に専念するしかない!団長を信じるしか‥‥‥‥!」

 

 

 

がむしゃらに逃げながら、天空龍にバリスタやボウガンの弾などといった遠距離武器で怯みを狙うが、全て弾かれてしまう。

 

いや弾かれているというよりは到達する前に勢いを完全に殺されている、というべきか。

 

 

風の鎧ではない。ではなんなのか‥‥‥。それはーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

「天空龍の古龍としての能力は、

 

『重力』です。無重力と過剰重力、二つを巧みに操るのです。副次的に天候操作、雷雨を呼び寄せることも出来るのです。」

 

 

「重力?つまり‥‥‥‥。」

 

 

「はい、いかなる攻撃も重力に晒されてはほぼ無意味になります。天帝以外の全ての生けとし、生ける者すべてかの者に平伏すことを強要するーーー星の影響を受ける私たちに彼に太刀打ちすることはほぼ不可能なのです。」

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

天空龍は目の前に無様に逃げ回る、己の雷撃を躱し続ける空飛ぶ一隻の飛行船に苛立ちを覚える。

 

彼がとった行動は単純でーーー

 

 

 

己の体で圧壊させる、それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モンスター、急速接近!」

 

 

「近寄らせるな!撃て、撃て、ウテェェェェ!!!」

 

 

 

「不味い!奴め、巻きつくつもりか!」

 

 

 

ドオオォン!!!

 

 

ギュル、ギュル、グル‥グル‥‥!

 

「巻きつかれた!!」

 

 

「確実にこの船を落とすつもりか!総員、離脱用意!負傷者は戻り玉で拠点に戻せ!それ以外の奴は各自の判断で逃げろ!」

 

オルトは舵を取りながら、内通管で全部屋に通達する。

 

 

 

 

 

「戦闘できる奴は、巻きついている今がチャンスだ!攻撃して引っぺがせ!!」

 

 

 

 

 

 

巻きついたことで、近接武器のハンターは極の型全部器抜刀ダッシュ

を使い、攻撃を行う。

 

「喰らえ!」

 

 

「オラアァァァ!!」

 

 

「やアァァ!」

 

 

ハンマー、大剣、スラッシュアックスFであるが、大討伐と同じように直感であるが一番ダメージが当たりやすい箇所を攻撃する。

 

 

ガキン、

 

ガチン、

 

 

バッキィィーーン!!

 

 

が、すべて弾かれる。秘伝効果など意味は為さず、挙句武器の切れ味はほぼ一瞬で最低の赤になる。

 

 

「嘘だろ‥‥‥‥!」

 

 

 

 

 

絶望。

 

 

これ以外の言葉がなかった。

 

 

特にハンマー使いのハンターはG級進化武器のハンマーを使っていたが、不退込みでまるで意味が成さない事に言葉が、出なかった。

 

呆然とするハンター達を見下すように唸り声を上げる天空龍。

 

 

攻撃する不届きものに誅を下すべく、大きく鎌首を上げた。

 

そして、

 

 

すべて、すべて地に叩きつけられた。上から特大重量の岩を載せられるように飛行船を別としてハンターは皆甲板、床に縫い付けられた。それだけならまだ良かっただろう。

 

更にその上から更に押さえつけられて、内臓が悲鳴を上げ始める。

 

 

 

 

重力やられ

 

 

 

 

 

状態異常の一つ。

 

これを受けると身動きが取れなくなる。解除方法は時間経過のみでスキル、アイテムなどでは回復出来ない。

 

古の龍帝たる天空龍のみこれを操るとされていて、この力を持って全天と世界の全てを支配しようとしたという逸話がある。

 

 

 

「ぐあぁ‥‥‥‥!!ち、ちくしょ‥‥ぉ!」

 

「ごほ、ぐ、ゴボェ‥‥‥!」

 

「う、動け‥‥!俺の身体!く、クソおおおおお!!」

 

 

 

「いやあ‥‥‥死にたく、ない!」

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥つぅ‥っ!!」

 

 

 

 

 

舵をとるオルトは鉛のような重すぎる身体を気合いで舵をとる。、巻きついているからといえど脱出出来ない訳ではない。

 

これ以上は、全滅してしまう。

 

その危機感だけで身体を動かしている。

 

「人間、舐めんじゃねえ‥‥‥!!」

 

 

何度も、何度も、無駄とわかっていながら、操作するオルトを嘲笑うように飛行船は四方から、ゆっくりと潰れていく。

 

ミシ、ミシ、ギギギギギギ‥‥‥‥

 

 

「ちくしょお‥‥‥‥!ここまでか!!」

 

 

 

かつて、極征征伐戦にて使われた大型飛行船を改良した今回の調査用大型飛行船。

 

今、人々の目には人の技術の結晶とも言えるそれを巻きつきながらゆっくりと嬲るように圧壊されていく様は、人など無力であると見せつけているようで。

 

 

 

この日、天空龍と呼ばれるモンスターの襲撃により、第四回浮遊大陸調査は、調査員殆どが壊滅した。

 

 

ギルドはこのモンスターを新たに判明した地方、エリエンテの伝承に基づき

 

 

第一種禁忌指定として【天空龍: グラン・アガレス】と正式に認められ、全世界に震撼させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王よ、悪い知らせです。」

 

 

 

「時を同じくして、【海神】、【世界樹】の封印が解けかかっています。」

 

 

「【天帝】もここ塔を目指すでしょう。貴方との決着がまだなのですから。」

 

 

白い少女は目を閉じながら、赤い衣の男の言葉を聞き遥か先、地平線の彼方にいるであろう、眠りから目覚めた【天帝】を思う。

 

 

「あの日、天帝を堕とし、精霊に頼み封印したけど。結局、運命は変えられないんだね。」

 

「【神龍】が目覚めた時は、この身滅んでも必ず‥‥‥‥‥止める!今回は精霊には頼めない。人がいるこの時代に彼らはいてはいけないんだ。」

 

 

祖龍の化身である少女は赤い瞳に確かな決意を秘めて塔の奥へと消えた。

 

 

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