悪魔の力を持った男が冒険者してたのは間違っているだろうか   作:Rings

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第三話

 

 「なんかさぁ、今日あんまりモンスターと出くわさないよね」

 

 「避けられるに越したことはないでしょう」

 

 「そういうんじゃなくてさ……うーん」

 

 出発してから数度、アイズ達はモンスターと遭遇(エンカウント)し戦闘を消化していた。現在は順調すぎるペースで51階層を進んでいる。

 

 ティオナ、アイズ、レフィーヤ、ティオネの順で四人一列の隊列を組みながら、彼女達はダンジョン内の独特な緊張感に晒されていた。

 

 モンスターが姿を見せないダンジョンは、不気味な静けさを持っていた。

 

 不審な前兆(サイン)を見逃さないように意識の網を張り巡らしつつ一歩一歩進んでいた。

 

 「そろそろね……注意事項を確認するわよ。あくまで目的は泉水を確保すること。でも恐らく、強竜(カドモス)との戦闘は避けられないわ」

 

 「や、やり過ごすことは、できないんですか?」

 

 「無理ね。あの竜は泉を番人みたいに守ってる。泉水だけ回収しようと考えていると、死ぬわ」

 

 彼女の言葉にレフィーヤは血の気を奪われる。

 

 先程から一本道だった通路はもうすぐで終わりを迎え、開けた空間へと繋がっている。『ルーム』と呼ばれる広間だ。

 

 このルームに『カドモスの泉』が存在する。

 

 ティオネが目線でアイズ達に指示を配る。頷き合った彼女たちはティオネを先頭にして隊列を組み直す。

 

 誰もが息を凝らしパーティー全体にピリピリとした緊張感が生まれる。

 

 「・・・・?」

 

 異変、いや違和感に最初に気づいたのは、アイズだった。

 

 怪訝そうに眉を曲げ、無遠慮な動きでその場を立ち上がる。

 

 「・・・おかしい」

 

 「えっ?」

 

 「静かすぎる」

 

 レフィーヤの呟きに答えながらルームへと足を踏み入れる。

 

 途端、彼女は眼を見開いていた。

 

 慌ててアイズの後に続いたティオナ達も、呆然と動きを止めた。

 

 ルームには、疎らに木々が生え渡っていたが、その全てが無残にへし折られ、押しつぶされている。周囲の地面や壁も何かが暴れまわったかのような惨状で、多くの破片が散乱していた。

 

 何よりそれらの光景の随所には、溶かされた跡がある。

 

 困惑の表情を浮かべながらアイズ達はルームの奥に進む。今まで以上に神経を尖らせ警戒しながら、倒された木々の間を抜ける。

 

 至る所が惨状と化した光景の中、聖域のようにそこだけは守られていた。

 

 美しい蒼色の水面を揺らす清冽な泉。

 

 ルームの最奥に僅かな量の水が不定期に湧き出ている。そして、そんな美しい泉の前でうずたかく積もる、大量の灰。

 

 「これって・・・強竜(カドモス)の、()()?」

 

 ティオネのこぼした呟きが、やけに大きくルームに響き渡る。

 

 ルームの静けさとに状況と照らし合わせても、まず間違いなく、これが強竜(カドモス)であったものだ。

 

 「……私たち以外の【ファミリア】が倒したんじゃ?」

 

 おずおずと、レフィーヤが口を開く。

 

 「こんな深い階層に来られるパーティーが私達の遠征期間を被らせているなんて聞いてないわ・・・」

 

 「・・・それに」

 

 アイズが呟き、足元の灰へ膝を折る。伸された手が灰を払いのけ、埋もれていたものを露にさせた。

 

 「ドロップアイテムが回収されていない」

 

 その金色に輝く翼の被膜は『カドモスの皮膜』

 

 かの竜を撃破しても滅多に出ることのない希少価値の高いドロップアイテム。これを換金するだけでも大規模なパーティーの資金に十分すぎる資金を手に入れることができる。

 

 一度の迷宮探索で大量の金を飛ばす冒険者にとって、この飛び切りな戦利品は無視できるものではない。

 

 「ここに強竜(カドモス)を倒せる程の()()が、冒険者ではない()()がいたということ?」

 

 沈黙が落ち、嫌な空気が漂う。

 

 ファミリアに報告するために変色してしまった木の一部と、『カドモスの皮膜』、そして目的であったカドモスの泉水を回収し速やかにその場を立ち去る。

 

 (……異常事態(イレギュラー)

 

 アイズは己の主神がよく使う口癖を胸の中で呟く。

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