悪魔の力を持った男が冒険者してたのは間違っているだろうか   作:Rings

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第四話

『ああああああああああああああああああああああああああっっ!?』

 

 それは突然だった。

 

 体の奥底から吐き出されたような絶叫がダンジョン内に響き渡る。

 

 聞き覚えのあるその声音に、アイズ達は顔を見合わせ、そして一斉に駆け出した。

 

 「今の声っ!?」

 

 「ラウラっ!」

 

 悲鳴の大体の方角と勘を頼りに現れるモンスターを強引に振り払いながら走り続ける彼女たちの目にそれは飛び込んできた。

 

 それの姿にアイズは金の双眸を見張る。

 

 巨大なモンスターだ。

 

 全身は黄緑色で占められ、ブクブクと膨れ上がった柔らかそうな緑の表皮にはところどころ極彩色の模様が刻まれており毒々しい。

 

 無数の短い多脚からなる長い下半身はまるで芋虫のそれである。下半身に乗る格好の上半身は丘のように盛り上がっていて腕のような何かが左右から伸びており、先端は四つに分かれており指に見えなくもない。

 

 進行に合わせて体を上下させるモンスターの巨躯は、通路一杯を塞ぎながらこちらへ向かってくる。

 

 「団長っ!?」

 

 そして距離が余りない状態でモンスターに追走されるフィン達一行。第一級冒険者である彼らが戦闘を放棄し、モンスターに背を向け全力で逃げている。

 

 その状況を見て、いち早く動いたのはティオナだった。敵の進軍を食い止めようとこちらに向かってくるフィン達と入れ違い、そして斬りかかる。

 

 「止せっ!」

 

 フィンの制止を聞かず接敵。

 

 肉薄するティオナに対しモンスターは口と思われる器官を、がぱっ、と嫌な音を立て開け、そして勢いよく大量の液体を放出した。

 

 しかし黒のような紫のような色の液体をティオナは難なく回避、すかさず懐に入りがら空きの胴体に大双刃(ウルガ)を叩き込む。

 

モンスターの苦悶に帯びた叫びが轟く一方、ティオナの顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

 敵の傷口から先程の者と同じ色の液体が散乱する。

 

首をひねり間一髪避けるも、ただ一滴の液が髪にあたると___じゅっ、と音を立てそれを溶かす。

 

 ティオナはすぐさま後方へ飛びその場を離脱する。着地したティオナはその目を疑った。

 

 大双刃(ウルガ)の片側の剣身が消失しているのだ。

 

 「なんで教えてくれなかったのさー!あんなの聞いてないよ!」

 

 「フィンが止めただろっ!この馬鹿女!!」

 

 フィン達に倣い逃走に加わったティオナが泣き叫ぶ。すぐ隣で走るベートが罵倒とともに叫び散らす。

 

 「あれなんなのさっ、フィン!?もう~あたしの武器~!」

 

 「わからない、僕たちも急に襲われた」

 

 『カドモスの泉』に到着した彼等は、あのモンスターの群れに遭遇し一時交戦も、武器を失い逃走を選択した。

 

 そう簡潔に説明を受ける。

 

 「団長はお怪我はありませんか?」

 

 「僕は大丈夫だが、ラウルはあれを直接食らった」

 

 ガレスの肩に担がれている青年は、ぶらんと両手を垂れ下げ小さく掠れ声をあげる。軽装ごと皮膚は溶かされ、紫に変色している。

 

 アイズ達が過ぎ去った十字路で横道から現れたブラックライノスを例のモンスター達は出会い頭に攻撃し、液体で体を溶かしその大きな口を開き丸呑みにしている。

 

 「くそっ!前からも来やがったぞ!」

 

 ベートのため息交じりの報告に一同体が力む。

 

 横道はない一本道、そしてこの道は50階層に到達できる唯一の道。つまり、

 

 「キャンプ地が危ない、ここを一気に突破する! アイズっ、前線へ!」

 

 フィンの掛け声でアイズが一番前に出る。

 

 「一瞬でいい、通り抜けるための道を君のカで作ってくれ」

 

 「分かった」

 

 前から激しい地響きを伴いながら迫りくる芋虫型のモンスターを見つめ、一声。

 

 「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 超短文詠唱を引鉄に魔法を発動させる。

 

 「【エアリアル】」

 

 風が生まれる。

 

 アイズが使用できる唯一の魔法。武器や体に風を纏う『風』の付与魔法(エンチャント)

 

 「・・・行くよ、《リル・ラファーガ》」

 

 風を全身に纏い、アイズは剣を溜める。一点突破の神風だ。

 

 彼女の通った後には風が吹く以外何もなかった。

 

 一同がアイズの作った一筋の道を使い、モンスターの群れから脱出とすると眼前には休息場所であった50階層のキャンプ地が壊滅しかけていた。

 

 

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