サブタイトルの意味は・・・本編を読んでいただければわかるかと
本編の後半にはおまけを二本投稿
それでは本編へどうぞ
あれから数日が経ち今日から新学期
「・・・はぁ・・・」
木下優子は大きなため息を吐く
結局あれから海人達とは顔を会わせていない
遊びに行く誘いのメールは届いていたが風邪気味や用があるとごまかして全て断っていた
(・・・学校、行きたくないな・・・)
彼女にとって学校に行くのがこんなに憂鬱なのは初めてだった
同じ部活に所属している以上、学校に行けば嫌でも彼と顔を会わせなければならない
「いってきます」
とはいえ行かないわけにはいかない
家族の前では平常心を装い優子は家を出る
「あ、姉上!!スカートを履くのを忘れておるのじゃ!!」
前言撤回
全く装えていなかった
通学路を歩き彼女は教室に辿り着いた
少し早い時間に出たこともあり、知り合いとは誰とも顔を会わせることはなかった
「とはいえ、時間になれば代表や愛子とは顔を会わせるんだけどね」
自虐的に笑いながらそう呟く
このままじゃいけない
頭ではそうわかっていても心の整理がつかないでいた
※一方その頃※
「姉上はどうしてしまったのじゃ?最近様子がおかしいのじゃ」
優子より遅れて登校した木下秀吉は姉の異変を不審に思いながら廊下を歩く
『・・・Fクラスの島田・・・』
(む?)
職員室の中から友人の名前が聞こえたことによりそちらを覗きこむ
「さっき電話がありまして・・・」
「そうですか。ドイツに・・・寂しいでしょうけど仕方ありませんね」
中で話しているのは鉄人と勝亦先生だった
※秀吉の脳内※
Fクラスの島田+電話+ドイツ+寂しい=転校
(た、大変なのじゃ!!)
「ねぇ優子。本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。ありがとう」
・・・これで心配された人数13人目
よほど顔色が悪く見えるらしく『保健室に行った方がいいのでは』と何度も言われている
「姉上!!」
「秀吉?」
Aクラスの扉を勢いよく開けた秀吉は優子の名を叫ぶ
「弟君、どうしたの?」
「大変なのじゃ!!海人が・・・海人がドイツに行ってしまうのじゃ!!」
「・・・・・・・・・・え?」
優子は一瞬言葉を失った
ようやく好きだということに気付いたのにもう会えない
彼の顔を見ることができない
彼の声を聞くことができない
胸が張り裂けそうなくらい痛んだ
そして次の瞬間・・・
「あ、姉上!」
優子は教室を飛び出した
「ワシもこうしてはおれぬ!雄二達にも伝えねば・・・」
秀吉も再び走り出す
「?なぁ、木下が凄い勢いで走って行ったんだがどうかしたのか?」
入れ違いで入ってきた智也は近くにいた愛子に問いかけた
SIDE 優子
アタシは学園を飛び出して空港に向かって走っていた
「こんなお別れなんて・・・絶対に嫌よ!」
出発の時間は聞きそびれたが、この近くに空港は一つしかない
距離も幸い学園から1キロほどしかない所だ
財布は教室の鞄の中だからタクシーやバスは使えない
取りに戻れば教師に捕まる可能性があるし戻ってる暇はない
「なんで・・・なんで黙って行っちゃうのよ!!」
家庭の事情による転校なら仕方ないのかもしれない
でもだからって黙って行くことないじゃない!!
「はぁ・・はぁ・・搭乗口はどこ?」
空港に着いたアタシは必死に辺りを見渡す
目の前は涙で滲んでよく見えない
もし・・・もう出発していたらもう二度と海人君に会えないかもしれない
そう思うと涙が止まらなかった
「・・・あ・・・」
見つけた・・・
視線の先には大好きな彼の姿
大きな荷物を持って歩いている
このまま黙ってお別れなんて・・・絶対に嫌!
「海人君!!」
「へ?え?ゆ、優子さん!?なんでここn・・・わわっ」
アタシは・・・海人君に抱き着いて無様に泣きじゃくる
「バカ!!バカバカバカ!!何で黙って行っちゃうのよ!?アタシ達、友達じゃないの!酷いじゃない!冷たいじゃない!残されたアタシの気持ちはどうなるのよ!!」
海人君にしがみついたままアタシは大声で叫びながら涙を流す
「え、えっと・・・優子さん?さっきから何の話をしてるの?」
「ぐすっ・・・・・・・え?」
海人君も美波達もキョトンとした表情でアタシを見ている
「え?え?だって海人君がドイツに行っちゃうって・・・」
「??ドイツに行くのはウチの両親だよ?三か月の長期出張になってね。フローラとカールも向こうに帰るから今日はその見送りだよ。学校にはそう連絡したはずなんだけど・・・」
「じゃ、じゃあその荷物は?」
「多いから運ぶのを手伝ってるだけだけど・・・」
「じゃあ・・・海人君はドイツには行かないの?転校しない?」
「もちろん。僕達は日本に残るよ」
・
・
・
ひ、ひでよしぃぃぃぃぃぃぃ!!!
あのバカ聞き間違えたわね!!
「・・・ハッ!」
辺りを見渡すと何事かと言わんばかりの無数の視線
「え、えっと・・・優子さん?」
「い、いやあああああ!!」
アタシは恥ずかしさに耐えきれずその場から逃げ出した
SIDE OUT
NO SIDE
「うぅ・・・どうしよう・・・」
海人がドイツには行かないと知り、安心したのも束の間
思い出せば思い出すほど恥ずかしい行動
その恥ずかしさに耐えきれなくなった優子は女子トイレに逃げ込んでいた
「このまま学校に帰ろうかな?でも、海人君の性格だと心配して探してるだろうし・・・」
ここに隠れていても仕方ない
そう覚悟を決めた優子はドアを開け・・・
「あ、いたいた。優子ちゃん」
(バタンッ!)
・・・再び閉めた
「ちょ、優子ちゃん!何で閉めるの!?」
※数分後※
結局、フローラの手によってトイレから引きづり出された優子は二人で空いていたベンチに座っている
「どうしちゃったの?海人君も美波ちゃんも心配してるよ」
「・・・」
優子は何も答えない
フローラは何も悪くないと頭ではわかっていても、自分の好きな人と付き合っている彼女と仲良く会話をする気にはなれないのだ
「・・・デパートの屋上」(ボソッ)
「!!」
「やっぱり・・・アレを見ていたんだね」
「ご、ごめん・・・」
「いいよ別に。それよりさ優子ちゃん・・・海人君の事、好きなんでしょ?」
「ふぇ!?・・・・・うん」
フローラの鋭い指摘に一瞬驚くが、すぐに落ち着きを取り戻して首を縦に振る
「バカだよねアタシ。今まで何度もチャンスはあったのに自分の気持ちに全く気付かなくって、気付いた時にはもう手遅れ。ホント・・・バカみたい」
辛そうに淡々と語る優子
「うーん・・・優子ちゃん、多分勘違いしてるよ?」
「勘違い?」
「うん。私と海人君、付き合ってないよ?」
「・・・・・・・・・へ?」
「振られちゃったんだ。『他に好きな人がいるから付き合えない』って」
「え?え?でも・・・海人君にキスして・・・あっ」
「そ、そこまで見てたんだ・・・アレは私が勝手にやったこと。どうしてもファーストキスは海人君にあげたかったからさ。海人君に初めては奪ってないから安心して」
「そ、そうだったんだ」
そう言って優子は安堵の溜息を吐く
海人の好きな人が自分とは微塵も考えていないが、まだ自分にもわずかにチャンスがあると思うと胸の奥が熱くなるのだった
「優子ちゃんは海人君に告白しないの?」
「ふぇ!?む、無理だよ!アタシはフローラみたいにスタイルよくないし・・・」
「関係ないよ。海人君は外見だけで人を好きになったりしない。きっと優子ちゃんのいいところをたくさんわかっているはずだよ。(ていうか両想いなのに・・・二人とも奥手だと苦労するね)」
フローラは内心、溜息を吐きながら顔を真っ赤にしている優子を見る
「ふーん・・・じゃあ私が猛アタックして海人君奪っちゃおうかなぁ~」
「だ、ダメ!」
「あ、優子さん、フローラ」
そんな会話をしていると海人が二人を見つけてこっちに向かってくる
それを見たフローラは『良いタイミング』と思い、小悪魔のような笑みを浮かべて海人に近づき・・・
「海人君♪せっかくだから記念写真撮ろうよ」
海人の腕に抱き着いた
「ちょ!何してんのよフローラ!離れなさい!」
「えーいいじゃん。友達なんだし」
「だ、ダメよ!だって・・・その・・・とにかくダメなの!!」
ニヤニヤしながら海人に抱き着くフローラとそれを必死に引き剥がそうとする優子
なにがなんだかわからず困惑している海人
そしてそれを見てほのぼのしている島田家とカール
「いやー青春だねー」
「お兄ちゃん、お顔真っ赤です!」
「オロオロしてる海人も可愛いわ」
『海人の奴相変わらずモテモテだな」
その後、海人の右腕にフローラ、左腕に優子が引っ付いたまま記念写真を撮った
そして名残惜しそうな表情をしながらフローラとカール、海人たちの両親はドイツへと飛び立っていった
彼らを見送った後、海人達は予め学校は休むと連絡を入れているためそのまま家に帰るが、優子は無断で飛び出してきたので学園に戻らなければならない
「さて・・・職員室に行って反省文を書かなくちゃね」
そう言った彼女の表情は晴々としていた
「・・・っと、その前に」
そう言って優子は携帯を取り出した
※一方その頃※
「お、お願いじゃ明久!見捨てないでほしいのじゃ!!」
明久から真相を聞かされた秀吉は顔面蒼白
それもそのはず、自分が伝えた情報が間違いでその情報を真に受けた姉が学校を飛び出して行ってしまったのだから・・・
帰ったら殺される
そう思った秀吉は必死に『一晩泊めて欲しい』と頼み込むのだった
その時・・・
(pipipi)
「秀吉、電話だよ・・って!ひ、秀吉の周りだけ地震が起きてる!?」
コール音を聞いた瞬間、秀吉の身体は小刻みに震え始める
画面には『姉上』と表示されている
でるのが怖い。だが無視すれば殺される
「も、もしもしなのじゃ」
「秀ちゃ~ん?随分面白い事をしてくれたわね~?」
「あ、姉上!ち、違うのじゃ!これにはワケが・・・」
「今日はちょぉぉぉぉっとオハナシがあるから早く帰ってきなさいね?」
「い、いや、今日は明久の家に・・・」
「逃げたらコロス」
「すぐに帰るのじゃ」
電話を切った秀吉は真っ白に燃え尽きていた
※おまけ・その日の木下家※
「ひ・で・よ・し?よくも恥をかかせてくれたわねぇ?」
「あ、姉上!ワシが悪かったのじゃ!許してほしいのじゃ!」
「と、普段なら腕を5本位へし折るところだけど」
「ワシの腕は2本しかないぞい!?」
「今回はアンタのおかげで気付けたこともあるし、特別に許してあげるわ」
驚きつつも優子の表情を見る秀吉
その姿は朝とは違い晴々としていた
「もしや、自分の恋心に気付いたのかの?」
「ぶっ!な、なんでアンタがそのことを・・・」
「見ていれば誰でもわかるのじゃ。それで?海人からの返事はどうだったのじゃ?」
「ふぇ?そ、それは・・・まだ・・・」
「告白はまだじゃったか。・・・ヘタレじゃのう・・・ってあ、姉上!その関節はそっちには曲がらな・・・」
口は災いの元
その言葉の意味を身を持って知った秀吉だった
※おまけ2・飛行機内にて※
『本当によかったのか?』
『うん。仕方ないよ。海人君ってさ、いつもニコニコしてるけど、優子ちゃんと一緒にいる時が一番楽しそうなんだもん』
フローラは少し寂しそうに呟く
『ま、優子ちゃんが海人君を傷つけるようなことがあったら全力で海人君を奪いに行くけどね』
『怖ぇなおい』
『冗談はさておき、はぁ・・・私も新しい恋を探さないとね』
『俺もだな・・・』
『カールはすぐ見つかるでしょ。普通にカッコイイし、スポーツしてる人ってポイント高いよ』
『お前こそ、可愛いしスタイル良いし、恋人の五人や十人すぐにゲットできるだろ』
『どこの悪女よ。ま、褒め言葉として受け取っておくわね』
ほのぼのと会話する二人
しかしその内心は・・・
(か、カールってばいきなり可愛いなんて言うんだから、ちょっとドキッとしちゃったじゃない)
(ふ、フローラの笑顔ってあんなに可愛かったっけか!?)
少年と少女
二人の関係は『幼馴染』から『気になる相手』に変化したのだった
オリジナルストーリーはこれでおしまい
次回からは体育祭編を始める予定です
(間に番外を挟むかも)
次回も頑張ります