「海人?」
弟の後ろ姿を見つけた美波はそう言った
しかし海人は見向きもせず歩き出す
「ちょっと海人、待ってよ」
しかし海人は止まらない
「待ってってば!」
そう言って美波は海人に追いつき、後ろから抱き着く
「もう、お姉ちゃんを置いていくなんて酷いじゃn・・・」
そこまで言って美波は何かがおかしい事に気付く
視線を落とし、自分が抱えている物を確認する
するとそこには・・・首から下が無い、海人の生首があった
「イャアアアアアアアアアアア!!」
「み、美波!!」
「はぁはぁ・・・夢・・・?そうだ!海人!!海人は!?」
「今、雄二達が周囲の聞き込みをしてくれているよ」
「どうしようアキ・・・海人にもしものことがあったらウチ・・・」
「大丈夫。みんなで探せばきっとすぐに見つかるよ」
真っ青な表情で震える美波を明久は抱きしめる
そうは言うものの明久自身、かなり不安だった
海人が自分の意志で嘘をついてまで失踪とは考えにくい
「アタシのせいだ・・・アタシが海人君に送ってもらったりしたから・・・」
「ううん・・・優子のせいじゃないわ。あの時、ウチと葉月もついていくべきだったのよ」
優子と美波は青ざめた表情でそう言う
「戻ったぞ」
とそこに雄二、康太、英雄、美春、瑞希が戻ってきた
「雄二!海人は!?」
明久の問いかけに雄二は静かに首を振る
「人通りも少なかったせいか目撃者が見つからへん」
「美春もお兄さまの行きそうな所は探してみたのですが・・・」
「そんな・・・」
全員が黙り込む
と、そこへ・・・
「みんな!海人君は!?」
秀吉、愛子、友香がやってきた
「おまえら、今日は部活じゃ・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「うむ!友人が行方不明なのじゃ!」
「部活なんてしてる場合じゃないよ!」
三人とも部活で学校に向かっていたのだが、連絡を受けて引き返して駆け付けたのだ
と、そこに・・・
(pipipi)
「ん?俺か。須川からだな。もしもし」
『坂本か?海人かどうかはわからないんだが・・・』
雄二は数分間会話を交わし電話を切る
「雄二、今のは・・・」
「島田、木下姉。昨日の海人の服装を覚えているか?」
「え、えっと・・・たしか、水色のパーカーにハーフパンツだったはずだけど・・・」
優子はそう言って美波に視線を向けると美波は無言で頷く
すると雄二は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる
「昨日の夜、公園の近くで水色のパーカーを着た寝ている子供を車に乗せている男の姿が目撃された。何気なく見ていただけだったから男の顔やナンバーは確認していないらしい。車は白の普通車だ」
「そ、そんな・・・それじゃあ海人は・・・」
真っ青な表情で呟く美波
「まさかもう殺されたんやろか・・・?」
「縁起でもない事言わないで!!」
「す、すまん」
真っ先に最悪の事態を想定してしまった英雄に向かって友香が怒鳴る
と、そこに・・・
「すまない、遅くなった」
「北条君!」
「遅かったな」
「携帯を家に置いたままランニングをしていてメールに気付くのに遅れたんだ」
そう、智也だけは連絡がつかなかったためメールを入れておいたのだ
「そういえば霧島さんは?」
「アイツは昨日から家族で泊りがけで出かけている。連絡したら『すぐ戻る』とは言っていたが場所が遠いからすぐには戻れないだろう」
「そうなんだ」
「さて、手間をかけて悪いが現在の状況を教えてくれ」
智也がそう言うと瑞希が現在わかっていることについて説明する
「なるほどな・・・まず、すでに殺されている可能性は低いな」
「なんでだ?」
「拉致された場所は人気の少ない公園だろ?殺すことだけが目的ならそこで殺しているはずだ。わざわざ車に乗せて運ぶ理由が無い。それに島田姉にメールを入れているのは明らかに時間稼ぎだ。そんな次の日になったらわかるような嘘は必要ない」
「そう言われれば・・・」
「じゃあなんで海人は連れて行かれたの?」
「それはわからないが何かしらの理由があるはずだ。となると・・・ちょっと待ってろ」
そう言って智也は外に出る。そしてすぐに戻ってきた
「やっぱりな。誘拐なら何か要求があると思った。これを見ろ。郵便受けに入っていた」
そう言って智也が持ってきたのは『島田美波様』と書かれた封筒
「そ、そんなの新聞を取った時には・・・」
「ああ、これは業者が配った物じゃない。おそらくタイミングを見て犯人が入れたものだろう」
「なんでそんなことがわかるんや?」
「アホ、住所が書いてないだろうが。おまけに切手も差出人の名前も無い。島田、怖ければ代わりに俺が読むが・・・」
「・・・ううん。貸して」
そう言って美波は智也から手紙を受け取る
そして封筒を開き、中の手紙を読む
「『お、お前の弟は預かった。返してほしければ要求に従ってもらう。逆らえば・・・』」
そこまで読んだ美波はガタガタ震えてその場に泣き崩れる
それを明久が支え、雄二が手紙を受け取り、続きを読む
「『逆らえば・・・島田海人の命は無い』」
その言葉に全員が息を飲んだ
「・・・要求は?」
「『文月学園に行き、島田海人の下駄箱を見ろ。そこに次の指令を入れてある。言うまでもない事だが警察に連絡した場合も彼の命は保障しない』・・・以上だ」
それを聞いてその場の全員が黙り込んでしまう
「これはマズイな・・・明らかに罠だが、そうわかっていても俺達は行くしかない」
「や、やっぱり警察に・・・」
「やめてぇ!!海人が殺されちゃう!!」
携帯を取り出す愛子に美波が泣き叫ぶ
「とにかく行くしかないやろ」
「ああ、だが英雄、悪いがお前はここに残ってくれ」
「はぁ!?何言ってんねん!?友達のピンチなんやぞ!」
「それはわかっている。だが、犯人の目的が分からないからな。もしここから遠ざけることが目的なら全員が出払うのは得策じゃない。それに、この家には島田姉と海人の他に誰が住んでいる?」
「え?あ、そっか!葉月ちゃん!」
「そうだ。ここで島田妹を一人にするのはあまりにも危険すぎる。何かあった時の事を考えるとこの中で坂本の次に喧嘩が強いお前に残ってもらいたい」
「・・・貸し一つや。海人を無事に連れて帰ってきたらチャラにしたる!」
「わかった。他にも何人か残って欲しいんだが・・・」
「あのさ、これって住人の美波がいないのはまずくない?」
「その通りだが、あの状態じゃあチビッ子が不安になるだけだろ。それにあの手紙は島田に送られたものだ。もし島田にしかわからない内容があったらマズイ」
明久の指摘に雄二はそう答える
結局、英雄、友香、康太、愛子、秀吉、美春が残ることになった
理由としては、康太は周囲の気配の察知に長けており、秀吉はポーカーフェイスで葉月を不安がらせないようにコミュニケーションをとることができるだろうと言ったものだ
「姉上、どうしても行くのかの?」
いつものポーカーフェイスではなく、心配そうに優子向かってにそう言う秀吉
「心配してくれてありがとね。でもゴメン。やっぱりじっとしていられないの。海人君はアタシを家に送ったせいで誘拐された。もしここでじっとしていて海人君にもしものことがあったらアタシは一生後悔する。だからアタシは北条君達と一緒に行くわ」
「・・・わかったのじゃ。じゃが約束じゃ。絶対に無事に帰ってくるのじゃ」
「うん。わかってる。必ずみんなで帰ってくるわ」
そう言って優子は秀吉の頭を軽く撫でた
そして美波、明久、雄二、優子、瑞希、智也の六人はタクシーに乗り込み文月学園へと向かった
「なぜわざわざこんなに回りくどい事を・・・何か理由があるのか?」
文月学園に着いた一行は下駄箱に向かう
智也はブツブツと呟きながら考え込んでいる
「ここだね」
明久が海人の下駄箱を開けるとそこには先ほどと同じ封筒が入っていた
「えっと・・・『二年Aクラスに行きパソコンを調べろ』」
「パソコンって・・・生徒が利用するノートパソコンの事?アレを一台一台調べろって言うの!?」
「わからん。とにかく行ってみるしかないだろ」
そう言って一同はAクラスへ
教室には鍵がかかっているはずなので、まずは職員室に向かった
「あれ?みなさんお揃いでどうしたのですかー?」
そこにいたのは野球部顧問の勝亦先生だった
「あの!実は海人が・・・」
「みんなで勉強をしたいのですがどうしてもわからないところがあって、Aクラスのパソコンで調べたいので鍵を取りに来ました」
明久の言葉を遮るようにして智也がそう言った
「うーん。本当はダメなのですけどー、北条君なら信用も出来ますし、少しだけならいいでしょう。ただし、備え付けのお菓子なんかは片付けていますからありませんよー」
「ありがとうございます」
智也は礼を言って鍵を受け取る
「ところで勝亦先生の車って・・・白の普通車でしたよね?」
「「「「「!?」」」」」
「?そうですけど、それがどうかしましたかー?」
「いえ、ちょっとした確認です」
「?」
智也がそう言うと勝亦先生は首を傾げた
「じゃあ鍵は後で返しに来ます」
そう言って一同は職員室を後にする
「北条!今のはどういうことなの!?」
「犯人は男のはずじゃ・・・」
「ああ、『車に乗せたのは男』だ。だがもし複数犯なら『運転者』も男とは限らないだろ?吉井、海人に恨みを持つ人物で真っ先に思い浮かぶのは誰だ?」
「え?そりゃあ・・・根本君かな?」
「ああ、だがもしあいつが犯人なら車を運転したのは別人と言うことになる」
そう、根本も智也たちと同じ高校生
車の免許なんて持っているわけがない
「・・・じゃあ勝亦先生が海人を・・・?」
「それはわからない。正直、いくら人通りの少ないところとはいえ誘拐するのにマイカーを使うのはあまりにもマヌケすぎる気がするしな」
「結局のところ何もわからねえか・・・もどかしいな」
「仮に勝亦先生が犯人だとしても、協力者がいるならうかつに手は出せない。結局、こいつを見てみるしかないわけだ」
そう言って智也は封筒に視線を落とす
一同はモヤモヤする気持ちを抱えたままAクラスに向かうのだった
犯人は勝亦先生!?
それとも別の・・・
翔子がいないのには理由があります
後々わかる事でしょう
次回も頑張ります