バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今回は第二の主人公、智也君のお話


第百三十問 智也の想い

事件から数日が経過

海人達野球部は練習を重ね、迎えた秋季大会

結果はなんと・・・まさかの一回戦負け

相手は決して強豪校ではなかったが、三年生の抜けた穴が予想以上に大きく、実戦経験の少ない選手がミスを連発

さらに・・・智也の采配ミス、暴投、捕球ミスが異常に多く、チームはそのまま敗退となった

そして試合の翌日・・・

 

 

「あ、あの・・・北条君」

 

「・・ああ、姫路か」

 

「はい。あの・・・隣・・・いいですか?」

 

「・・・ああ」

 

 

学園裏のベンチでボンヤリしている智也の隣にちょこんと座る瑞希

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 

励ましに来たものの、何を言えばいいのかわからず何も言えない

 

 

「・・・吹っ切れた・・・つもりだったんだがな・・・」

 

「え?」

 

 

ふいに智也がそう呟く

 

 

「聞いたんだろ?俺の過去」

 

「・・・すいません」

 

 

智也がそう言うと瑞希は気まずそうに静かに頷いた

 

 

「謝らなくていい。お前も巻き込んでしまったんだ。お前には知る権利がある。っと、あの時は手荒な真似をして悪かったな」

 

「い、いえ!北条君は私の事を想ってしてくれたんですから気にしないでください」

 

 

智也はふと思い出したように謝ると、瑞希もそれが事件の日のスタンガンの件だとすぐにわかり気にしていないと言う

 

 

「・・・さやかとは学校は違ったんだがちょっと縁があってな。そのまま毎日付き纏われるような感じで、当時入ってた野球チームに毎日見学に来てて・・・」

 

 

急に思い出話を始める智也

瑞希はそれを黙って聞いている

 

 

「毎日のように告白されて、毎日それを断って・・・ある日『次のテストで満点取ったらご褒美頂戴』とか言ってきやがって、『満点取れたらお前の言うこと何でも聞いてやる』って言ったらアイツすっごいバカの癖に三日間一睡もせずに勉強して」

 

「そ、それで満点を・・・?」

 

「いや、学校に行く途中でぶっ倒れて救急車で運ばれそうになってんのに『嫌だ。トモとテストで満点取るって約束したの』って泣きながら救急隊員から逃げようとして・・・まぁ結局搬送されたんだけどな。で、俺は次の日、アイツに『俺に何を頼むつもりだったんだ?』って聞いたらアイツは『デートしてって言おうとした』って答えたんだ」

 

「それだけ・・・ですか?」

 

「ああ、俺もてっきり『付き合え』って言うものだと思ってたから驚いたよ。あいつにそう言ったら『私はトモが好きだけどトモは私の事が好きじゃない。命令で無理矢理付き合わせても意味がない』って答えたんだ」

 

「よっぽど北条君の事が好きだったんですね」

 

「俺は『満点取れなかったから俺の命令を聞いてもらう。俺とデートしろ』って言ったらアイツ、たったそれだけの事で泣いて喜んでさ・・・」

 

 

智也は軽く微笑みながらそう呟く

 

 

「それからアイツに振り回されているうちにアイツが隣にいるのが当たり前になって・・・気がついたら・・・」

 

「さやかちゃんのことが好きになっていたんですね?」

 

「・・・ああ」

 

 

智也は目を閉じてそう言う

 

 

「姫路、この際はっきり言うが、俺はお前の気持ちに気付いている」

 

「・・・え?えええええ!?」

 

 

智也の言葉に瑞希は真っ赤になって慌てる

 

 

「でも・・・どうすればいいのかわからないんだ。このままじゃいけないのはわかっている。だが、さやかの事は忘れられない。俺にはどうすればいいのか・・・」

 

「忘れちゃダメです!!」

 

「・・・え?」

 

「北条君はさやかちゃんの事を忘れちゃダメです!死んだ人は誰かの記憶の中でしか生きられないんですよ!?なのに恋人だった北条君が忘れたら・・・さやかちゃんが可愛そうじゃないですか!?」

 

「だ、だが、お前の気持ちとかも・・・」

 

「私は良いんです!!たしかに私は北条君の事が好きです!でも、私は北条君の気持ちの整理がつくまで待ってます!」

 

「正気か?自分でもいつになるかわからないんだぞ?」

 

「それでも待ちます!」

 

「お前を選ぶかどうかわからないんだぞ?」

 

「それでもです!北条君はわかってませんね。女の子は人を好きになったらそう簡単には諦められないんですよ」

 

 

ふふっと笑いながらそう言う瑞希

 

 

「・・・やれやれ。さやかといいお前といい・・・どうして俺の周りには真っ直ぐな女が多いかな・・・」

 

「一途な女の子は嫌いですか?」

 

「・・・ノーコメント。さて、教室に戻るか」

 

 

そう言って智也は立ち上がり教室に向かう

その後を瑞希も追う

 

 

「姫路」

 

「なんですか?」

 

「ありがとな。俺の事心配して様子を見に来たんだろ?」

 

「ふふ、どういたしまして。あ、そういえば・・・」

 

「なんだ?」

 

「なんで私にさやかちゃんの事、話してくれたんですか?」

 

 

瑞希の指摘に智也は足を止めた

 

 

(そういえば・・・何でだ?なぜかこいつには隠し事をしたくないと思ってしまった)

 

 

智也は考え込む

 

(そもそもあの時姫路を気絶させたのはなんでだ?身体が弱いから?足手纏いだから?・・・いや違う。こいつにだけは死んでほしくないと・・・)

 

 

考えを巡らせ智也はある結論に辿り着いた

そして無言で瑞希の方を見る

瑞希はそんな智也の姿を見て首を傾げる

 

 

(そうか・・・俺もいつの間にかコイツの事が・・・)

 

 

「・・・あいつらの事言えないな・・・」

 

「え?」

 

「なんでもない。それもノーコメントだ」

 

「ええ!?ま、待ってください!」

 

 

早足で歩き出す智也を慌てて追いかける瑞希

二人が結ばれる日は・・・近い?

 

 

 

 

 

 

 

  ※※※※※

 

 

「ククッ、聞いたぞ・・・そうかそうか・・・そんなに姫路瑞希が大事か・・・」

 

 

多数の機械が置かれた隠れ家の中央で根本恭二はニヤリと笑う

彼は予め学園内に多数の盗聴器を仕掛けていたのだ

そのうちのほとんどは康太が回収し処分したのだが、智也がいた場所は普段誰も使わない場所だった為見落としていたのだ

 

 

「もう島田海人などどうでもいい。殺してやる・・・殺してやるぜ北条智也!!俺からアイツを奪った貴様だけは・・・」

 

 

恭二の言う『アイツ』とは言うまでもなく智也の元恋人、芹沢さやかの事である

とはいっても恭二とさやかは決して付き合っていたわけではなく、恭二の一方的な片思いだったわけで、要するに逆恨みである

 

 

「とはいえ、すぐには無理だな。警察はともかく、親父に見つかると厄介だ」

 

 

事件の日から根本は家を離れ、今いる隠れ家に隠れている

彼はこんな状況になることも想定して、保険としてこの隠れ家を作っていたのだ

 

 

「親父の奴、今頃俺を探しているんだろうな」

 

 

彼の予想通り、根本父は血眼になって恭二を探していた

だが、これは心配しているのではなく、根本家の恥を粛清するために探しているのだ

根本父は冷酷な人間だ

根本家の名誉を第一に考え行動する

それを傷つける者がいるならば、それがたとえ息子でも許しはしない

 

 

「まぁ焦る事は無い。時間はいくらでもある。あぁ・・・楽しみだなぁ・・・」

 

 

根本恭二は誰もいない部屋の中で狂ったように笑うのだった

 




智也と瑞希にフラグが成立?
そしてキノコの標的は瑞希に・・・

次回も頑張ります
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