バカとテストとウチの弟   作:グラン

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なんか長くなってしまった・・・
字数過去最大(多分)
おまけになんか無理矢理な感じに・・・
とりあえず更新です


第百六十四問 入部

このままじゃダメだ・・・と、意気込んだのはいいものの・・・

 

 

「どうしたものかしらね・・・」

 

 

下手に突けば海人の居場所がなくなる

でも放っておけない

優子の決断は・・・

 

 

「とりあえず顧問に相談ね」

 

 

野球部顧問の勝亦先生を訪ねることにした

 

 

「失礼します。勝亦先生はいらっしゃいますか?」

 

「ん?ああ、あそこの喫煙所にいるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

優子が喫煙所を覗き込むと中には二人の人物が煙草を吸っていた

一人は中年の男性、もう一人は後ろ姿で顔は見えないが、小柄な女性だった

勝亦先生の顔を知らない優子は、野球部顧問=男性と考え、ちょうど出てきた中年男性に声を掛ける

 

 

「あ、あの、勝亦先生。野球部の島田君の事でお話が・・・」

 

「?僕は福原ですよ。勝亦先生はあっち」

 

「へ?」

 

 

そう言って福原先生は喫煙所で煙草を吸っている女性を指差す

 

 

「勝亦先生、お客さんですよ」

 

「はいはい、どうしましたかー?」

 

「・・・子供?」

 

「子供じゃないですよー先生ですよー」

 

「あ、す、すいません!」

 

「わかってくれればいいですよー」

 

 

ポロっと本音が出た優子は慌てて謝り、勝亦は笑って許した

 

 

「あの、野球部の島田君のことでお話があるんですが・・・」

 

「・・・えっと、実はですね・・・」

 

 

勝亦の話によると、彼女は野球部顧問として引率などはしているものの、保険医としての仕事が忙しく、練習にはほとんど出ておらず、部の事は新主将の田中に任せているとの事だった

部員に直接言うのは気が引けて、少し迷った優子だったが、ここまで来てもう後には引けない

とりあえず田中先輩に会ってみることにした

 

 

「ん?ウチのクラスに何か用?」

 

「あ、あの、野球部の田中先輩はいますか?」

 

「うん。ちょっと待ってね」

 

 

活発そうな女の子は教室の中に入っていった

 

 

(田中先輩ってどんな人なんだろう?やっぱり筋肉ムキムキのごつい人なのかな?)

 

「俺に何か用か?」

 

「ひゃわ!・・・えっと、田中先輩?」

 

「そうだが」

 

 

出てきたのはどこにでもいそうなごく普通の男子生徒

優子の想像とは全く違う人物

ハッキリ言って・・・

 

 

(・・・地味)

 

「・・・おい、今何か失礼な事を考えなかったか?」

 

「い、いえ!滅相もない!」

 

「まぁいい。それで用はなんだ?」

 

「えっと、野球部の島田君のことでお話が・・・」

 

「島田?ああ、あのマネージャーか」

 

「?マネージャー?ちょ、ちょっと待ってください!島田君は野球がやりたいって言って入部したはずなんですけど?」

 

「何?しかし俺はたしかに前主将からマネージャー希望と・・・」

 

(どういうこと?もしかして島田君の日本語がどこかで間違って伝わったって事かしら?)

 

「えっと、つかぬ事をお伺いしますが・・・その・・・いじめとかじゃ・・・ないですよね?」

 

「ああ、もちろんだ。ただでさえウチの部は人数不足なんだ。入部希望者なら喜んで歓迎する。しかしそうか・・・わかった。今日にでも島田に話を聞いておこう。教えてくれてありがとう」

 

「本当ですか?よかった・・・」

 

 

優子は嬉しそうに胸を撫で下ろす

 

 

「それじゃあ、失礼します」

 

 

優子は頭を下げてその場を去った

 

 

「島田の奴も隅に置けないな・・」

 

 

ふふ、と笑いながら教室に戻る田中

 

 

「・・・そういや、今の子の名前、聞き忘れたな・・・ま、いっか」

 

 

田中は優子の名前を聞き忘れたことに気付いたが、まぁ知らなくても問題ないと気にしないことにした

 

 

 

 

「・・・とはいえ、やっぱり気になるわよね」

 

 

優子はこっそりと野球部の練習を覗きに来ていた

 

 

「なんか集まってるわね。何しているのかしら?」

 

「島田が投手志望だから現エースの夏川の続投かどうかで審議になってるみたいだぞ」

 

「!!あなたはたしか昨日島田君と練習してた・・・あなたは行かなくていいの?」

 

「俺は部員じゃない。色々あって島田の練習に付き合っていただけだ」

 

「ふーん・・・アナタから見て島田君はどうなの?」

 

「センスはあるよ。現エースの夏川より遥かに上だ」

 

「じゃあエースは島田君で決ま・・・『いや、それはないな』・・・なんで?」

 

「島田は上手いよ。問題は捕手だ。キャッチングを見る限り、あの捕手はおそらく経験が浅い。島田のキレのある変化球は捕れないだろう。捕手が取れない球を投げる投手は使えない」

 

「そんな・・・」

 

 

優子の表情が曇る

海人は野球がしたくて努力をしてきた

なのにその努力のせいで試合に出れない

 

 

「・・・ねぇ、あなたなら島田君の球を捕れるの?」

 

「まぁな」

 

「お願い!島田君を助けてあげて!」

 

「いや、俺は部員じゃ・・・」

 

「だって・・・努力が実らないなんて可哀想じゃない!」

 

「!!」

 

 

智也は優子の言葉でさやかの手紙の内容の一部を思い出す

『努力が実らないなんて可哀想だから・・・』

 

 

「・・・はぁ」

 

 

溜息をついた智也はスタスタとグラウンドの方に向かって歩いている

ちょうどその頃、とりあえず海人に投げさせてみようと言う事になり、海人がマウンドに立ったところだった

 

 

「すいません。その勝負の捕手、俺にやらせてもらえませんか?」

 

「北条君!」

 

 

智也の乱入に海人が驚きの声をあげる

そして驚いているのは海人だけではなかった

 

 

(北条!?まさか学年二位の北条智也!?)

 

 

優子もその名前を聞いて驚いていた

 

 

「君は?」

 

「一年の北条智也です。彼とは色々あってしばらく練習に付き合っていました。なので初対面の捕手より彼もやりやすいと思います」

 

「ふむ、自信はあると?」

 

「はい。島田の実力はわかっているつもりです。なんなら試してみますか?」

 

「?」

 

「そちらのクリーンナップの三人相手に島田が投げるんです。その結果を見て判断すると言うのはどうでしょう?」

 

「む・・・」

 

 

挑戦的な態度の智也

智也としては海人の実力が認められさえすればいいので自分への評価はどうでもいいと考えているのだ

主将の田中が考え込む

 

 

「ええやん。面白そうや」

 

「俺も異論はない」

 

「俺もだ」

 

 

そこに夏川、常村、中島の三人が好戦的な姿勢を見せる

 

 

「わかった。じゃあそれで島田の実力を見るとしよう」

 

 

主将の言葉を聞き、海人と智也は簡単なサイン合わせを行う

 

 

「しっかしそういうことだったんだな」

 

「ああ、女子じゃないことは気付いていたが、文句一つ言わずに雑用してるから、てっきりマネージャーとして入ったものだと思ったぜ」

 

「でもなんでマネージャーと勘違いされたんだ?」

 

「さぁ?」

 

「ま、まぁ過ぎたことはええやないですか」←元凶

 

「ま、そうだな。これで島田が使えるようなら俺らは元のポジションに戻れるな」

 

「そういやぁお二人は内野手やったな」

 

「ああ、でも手加減はしない」

 

「もちろんや」

 

 

海人と智也のサイン合わせが終わり、投球練習に入る

そして海人が一球、振りかぶって投げた

 

 

『・・・なんだ、たいして速くないな』

 

 

周囲からはそんな声が聞こえる

たしかに球速だけなら夏川の方が上だ

しかしそんな中、智也は他の事に注目していた

 

 

(四人か・・・予想以上に少ないな)

 

 

智也がカウントしたのは海人の投球フォームを見て目つきが変わった人物の数だ

 

 

(主将はさすがに気付いたか・・・あとはクリーンナップの三人だな)

 

 

「それじゃ、お先に行かせてもらうぜ」

 

 

トップバッターは常村

その目には油断も慢心も一切無い

 

 

(見下して油断してくれりゃやりやすかったんだがな)

 

 

智也は内心でそんなことを考えつつ、ミットを構える

 

 

(この人はかなりのパワーヒッター。特に直球に強い。だが・・・)

 

『ストライーク!!』

 

(変化球、特に外に逃げる球に弱い)

 

 

智也は県予選で見た情報と照らし合わせながらリードする

 

 

『ストライーク、ツー!』

 

「くっ!」

 

 

常村は海人の変化球に掠りもしない

 

 

(ここまで変化球を二球見せた。これで海人が変化球投手だと気付いただろう。そこをあえて・・・)

 

『ストライーク!!バッターアウト!』

 

(直球で締めくくる)

 

 

「すまん」

 

「どんまいや」

 

「よし、次は俺だ」

 

 

二番手は夏川

 

 

(この人はミートが上手いし長打もあるが・・・)

 

『ストライーク!』

 

「は、入ってるのか?」

 

「ギリギリだ」

 

 

海人のスローカーブがコースいっぱいに決まる

 

 

(選球眼が悪い。初球の際どい球はほぼ確実に見逃す。次はボール一個分外に同じ球)

 

『ストライーク、ツー!』

 

「くっ!」

 

 

智也の思惑通り、夏川は手を出してしまう

 

 

そして海人は三球目を振りかぶって投げた

コースは外角低め

 

 

(くっ、際どい!どっちだ!?ストライクか?ボールか?)

 

 

結果、詰まった当たりとなり、サードゴロ

 

 

「夏川先輩、今の球はなんやった?」

 

「多分カットボールだ」

 

「多彩な変化球やな・・・面白そうや!」

 

 

嬉しそうな表情をしながら三人目の英雄が打席に立つ

 

 

(問題はコイツだ。どう考えてもこの部で一番センスがあるのはコイツ。この前の県大予選でも弱点が見当たらなかった。なんでこんな奴がこんな無名校にいるんだ?)

 

 

智也は強敵相手に頭を悩ませる

一方、英雄は打席に立った途端、先ほどまでのへらへらした表情は消え、真面目な表情に切り替わる

 

 

(構えも良い。隙が無いな。とりあえず様子見だ。外角低めにボール一個分外に外したスローカーブ)

 

 

海人は首を縦に振り、振りかぶって投げた

 

 

『ボール!』

 

(選球眼も良さそうだ。甘い球を投げたらやられる。次は内角高めギリギリのカットボール)

 

 

海人が振りかぶって投げる

英雄は内角の甘い球と思い打ちに行く・・・が

 

 

(曲がった!?)

 

(よし、打ち取った・・・)

 

 

しかし、英雄は・・・

 

 

『ストライーク!』

 

(くっ!こいつ、当てれば打ち取られると思ってわざと空振りしやがった)

 

『中島が・・空振っただと?』

 

 

よほど珍しいのか周囲からは驚きの声が上がっている

 

 

(配球を予測するなら次は遅い球や)

 

(裏をかくぞ。同じコースにストレートだ)

 

 

英雄の予想とは裏腹に、智也は直球を投げさせる

 

 

(!!真っ直ぐ!?)

 

(よし、今度こそ・・・)

 

『ファールボール!』

 

(嘘だろ・・・完全に裏をかいたはずなのに・・・)

 

(この人・・・凄い)

 

(やるやんけ。でも、何が来ようと俺は負けへん)

 

 

驚く智也、ドキドキしている海人、嬉しそうな表情の英雄

そして海人は覚悟を決めたような表情を見せ、左手で頭を掻く

 

 

(お前、ソレはまだ未完成・・・)

 

(お願い、投げさせて。この人を打ち取るにはコレしかない)

 

(・・・わかった。来い!)

 

(あの目・・・遊び球は無い。決めに来る!)

 

 

海人の目を見てそう判断した英雄

海人は大きく振りかぶって・・・投げた

 

 

(速い球・・・どっちや?真っ直ぐか?カットボールか?)

 

 

しかし・・・

 

 

(!?落ち・・・)

 

(よし、決まった!コースも球威も完璧)

 

 

空振った。万が一当たっても凡打

そう確信した智也だったが・・・

 

(キンッ!!)

 

「なっ!?」

 

 

英雄の振ったバットに当たり、打球は左中間を綺麗に破った

海人は打球を見てただ茫然と立ち尽くした

そして・・・

 

 

「あ、あの・・・時間をとらせてしまってすいませんでした。雑用に戻ります」

 

(ダメだった・・・主将や北条君がせっかくチャンスをくれたのに・・・)

 

 

海人はトボトボとマウンドを後にする・・・が

 

 

「待て島田。まだ練習の途中だぞ」

 

「え?でも・・・」

 

「誰が打たれたら参加させないなんて言った?俺は『これで島田の実力を見る』と言ったはずだ」

 

「じゃあ・・・」

 

「もちろん、今日からお前も我が部の一員だ。よろしくな」

 

『すげーじゃん!島田!』

 

『あんなに曲がる変化球初めて見たぜ』

 

 

海人の周りに部員が集まる

一方その頃・・・

 

 

「一件落着だな」

 

「田中先輩、もし島田君に実力が無かったら練習に参加させへんやったんか?」

 

「バカ言え。ウチの部に贅沢言う余裕なんかねえよ」

 

「そらよかったわ。好きな事出来へんのは辛いからなぁ・・・」

 

「俺からも質問だ。島田ともう一打席勝負したら勝つ自信はあるか?」

 

「・・・正直厳しいで。最後のあの球を打てたんは完全にまぐれやし・・・」

 

「やっぱりそうか・・・っと、そうだ。よかったらお前も野球部に・・・っていない!」

 

 

田中は智也も野球部にと勧誘しようとするが、そこにはすでに智也の姿はなかった

 

 

  ※校門前※

 

 

(これで俺の役目も終わりだな)

 

 

海人は明日から練習に参加できるのだからもう智也が自主練に付き合う必要はなくなったのだ

 

 

「ねぇ」

 

「ん?まだいたのか?」

 

「まぁね。島田君の事、ありがとね」

 

「気にするな。これで俺はアイツの自主練から解放されたんだしな」

 

「ふーん・・・そう言ってる割にはちょっと寂しそうに見えるけど?アンタも本当は野球がしたいんじゃない?」

 

「・・・」

 

 

優子の指摘に黙り込む智也

海人と出会う前の彼ならすぐに否定しただろう

さやかのことがあって野球から離れた智也だったが、久しぶりにミットを被り、グラウンドを一望したことにより、自分がどれだけ野球が好きだったのかを思い出した

 

 

「何があったのか知らないけどさ。やりたいなら素直にやればいいんじゃない?」

 

「・・・」

 

 

智也は無言で歩き出す

 

 

「あ、ちょっと待った」

 

「今度はなんだ?」

 

 

うんざりしたような表情の智也

 

 

「島田君にはアタシがお願いしたこと、黙っててくれない?別に恩を売るためにやったわけじゃないから」

 

「・・・わかった」

 

 

そう言うと今度こそ智也はその場を去って行った

 

 

(・・・素直に・・・か)

 

 

さやかの事を思いだして辛いという理由で野球を辞めた

しかし野球を辞めた後はいまいち勉強に集中できず、むしろさやかの事を思いだすことが増えていた

それでも一度辞めた以上、今更、野球を再開すると言うのは気が引けた

そんな日々がズルズル続いたある日、一人で練習する海人に出会った

真っ直ぐに野球をやりたい一心で努力する彼を見て応援したいと心から思ったのだ

 

 

(・・・いい機会かもな)

 

 

そう考えた智也は携帯を取り出し、電話を掛ける

 

 

「もしもし、シュウか?久しぶりだな。実は俺・・・」

 

 

  ※翌日※

 

 

「新入部員を二人紹介する」

 

「島田海人、投手希望です。よろしくお願いします」

 

「北条智也、捕手希望です。よろしくお願いします」

 

 

こうして海人と智也の入部が決まった

 

 

 

 

 

 

  ※おまけ、後日談※

 

 

「~♪」

 

「島田君、なんだか機嫌がいいわね」

 

「えへへ、実はようやく本格的に練習に参加させてもらえるようになったんだ」

 

「そうなんだ。よかったわね」

 

「うん。全部木下さんのおかげだよ。ありがとう」

 

「うぇ!?ななな、なんのことかしら?」

 

「田中先輩から聞いたよ。『女子生徒に指摘された』って。これ、木下さんでしょ?」

 

(しまった。先輩の方を口止めするの忘れてた!)

 

「ありがとう。木下さん」

 

「あ、えっと・・・ア、アタシ、先生に呼ばれてるんだった」

 

 

面と向かってお礼を言われた優子は恥ずかしくなって顔を赤くし、脱兎のごとく逃げ出した

 

 

(木下さんって本当に優しい人だなぁ)

 

 

海人はますます優子の事が好きになるのだった

 




優子の大活躍によって野球部に優秀な人材が二人も入りましたね
なんかグダついてきたので過去編は次回で終了しましょう
次は明久と美波のお話

次回も頑張ります
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