なんとか更新です
「次、セカンド行きます!」
真琴のコーチ就任から数日が経過
彼女は現在ノックを行っている
事前に彼女の実力を知っていることもあり、反対するものは一人もいなかった
マネージャーとしても力仕事を率先して行うので、優子の負担も軽減・・・
「ふぅ・・・今日は暑いなぁ~」
「だ・か・ら!!そういう無防備な動作をやめなさいって言ってるでしょ!!」
・・・されていなかった
シャツの裾をパタパタとさせる彼女に優子は注意をする
「木下先輩は気にし過ぎですよ」
「アンタが気にしなさすぎなのよ!・・って、海人君!どこに行くのかしら?まだ休憩時間のはずでしょ!?」
「うぐ、そ、そろそろ練習を・・・」
「10分休憩って言ったのが聞こえなかったのかしら?まだ5分も経ってないんだけど?」
「す、すいません・・・」
優子の迫力に圧され素直に引き下がる海人
「遅くなってすまない」
そんな会話をしていると遅れていた智也がグラウンドにやってきた
智也がいない状態でも、真琴が指導することにより、練習は回る
全てが順調に思えたが・・・
「あっ、北条先輩、ちょっとココ、代ってもらっていいですか?」
「ああ・・・椎名」
「はい」
「・・・頼む」
「・・・はい」
そう答えると真琴は智也にバットを渡し、歩き去っていく
「椎名さん、どうしたのかな?」
「さぁ?」
海人と優子は深刻そうな二人の様子に首を傾げるのだった
※グラウンド裏・投球練習場※
投球練習場にて一心不乱に投球練習を行う一人の人物
彼は控え投手の藤本
「ふぅ・・・」
「お疲れ様。はい」
「椎名か。ありがとう」
真琴からスポーツドリンクを受け取る藤本
「・・・なぁ。お前から見て俺の投球はどうだ?」
「え?」
「練習試合じゃ星凰の二軍に滅多打ち、夏の大会でも良いとこなし、おまけに女の子の椎名にまでボコボコに打たれて・・・俺、投手に向いてないのかな・・・?」
「・・・向いてないって言ったら、諦めるの?」
「え?」
「向き不向きで野球をやっているの?好きだからやっているんじゃないの?好きだから頑張れるんじゃないの?どんなに好きでも・・・試合に出ることすらできない人だっているんだよ・・・」
「あ・・・わ、悪い」
「ううん。こっちこそごめん。これじゃあ八つ当たりだ」
真琴は野球が大好きな女の子だ
海人に憧れてマネージャーになったものの、女子である以上、試合で海人と同じグラウンドに立つことは許されない
藤本は己の失言を謝るが、真琴も八つ当たりのようになってしまったことにすぐに謝罪する
「はっきり言っていい?」
「・・・ああ」
「藤本は投球スタイルがあって無いんだと思うんだ」
「投球スタイル?」
「うん。藤本もさ、海人先輩に憧れているでしょ?投球スタイルも似てきてるし・・・」
「ああ、あんな綺麗な変化球を自分も投げられたらって思っている」
「じゃあ藤本には海人先輩かそれ以上の投球ができる?」
「そ、それは・・・」
できない
真琴の問いかけに一瞬の迷いも無くそう思う藤本
「海人先輩の変化球は確かに凄く綺麗だよ。でも、海人先輩ほど技術が無い以上、それをそのまま真似ても劣化コピーにしかならない。だからもっと自分の長所を生かした投球の方がいいと思う」
「俺の長所・・・」
「・・・憧れを捨てろだなんて残酷なことを言ってるのはわかっている。でも・・・」
「いや、お前の言うとおりだよ。はっきり言ってくれてありがとう。でも・・・一日だけ、考えさせてくれ」
「・・・わかった」
そう言って真琴はその場を去って行った
そして練習を終えた藤本は家に向かって歩きながら自分の今後について考える
(・・・椎名の言うとおりだ。この先、万が一海人先輩が不調で降板して、同じ投球スタイルの劣化版の俺が登板したって打たれるに決まってる。俺は今まで何をやっていたんだ・・・チームの事を考えるなら同じスタイルじゃダメだ)
海人の背中を追うことばかり考え、チームの事を考えていなかった自分に反省する藤本
(視点を変えて考えよう。違うスタイルで行くなら海人先輩の苦手分野を伸ばすのも手だ。海人先輩の弱点と言えば・・・)
「スタミナ不足・・・そうだ。俺は体力には自信がある。海人先輩は体力が無い分、少ない球数で終わらせようとしてるけど、それなら俺は逆にわざとボール球を投げて球数を増やしてでも粘るピッチングでいけば・・・」
自分のスタイルの原型が見えてきた藤本
(でもこれじゃあまだ足りない。考えろ。海人先輩に無くて俺にある物・・・球速?確かに球速は俺の方が速いけど、そこまで大きな差は無い・・・いや、待てよ・・・?)
「あった・・・海人先輩だけじゃない。変化球投手の最大の弱点!!」
※翌日※
藤本は部活開始直後に智也と真琴と話をしていた
「じゃあお前の案を聞かせてくれ」
「はい。俺が重点を置いて伸ばしたいのは、海人先輩の苦手分野です」
「・・・それでいいのか?」
「はい。確かに俺は海人先輩に憧れていました。その結果、自分の事ばかり考えてチーム全体の事を考えていませんでした。チームの事を考えるなら俺と海人先輩は違う投球スタイルの方が対策を取られにくいと思います。それに、海人先輩の弱点のスタミナ不足ですが、俺はスタミナには自信があるんで、それを生かした投球は自分に合っていると思います」
「確かにな」
藤本の言い分に智也も納得する
「そしてもう一つが変化球投手の苦手分野である、ランナーが塁に出たときの対処法です。要するにクイックモーションと牽制です」
「確かに、ランナーが出ると、変化球は投げにくいね」
「上手くいく保証はないぞ?」
「覚悟の上です」
智也の言葉に真剣な表情で言い返す藤本
「・・・わかった。お前の野球人生だ。お前のやりたいようにやってみろ。俺も可能な限りサポートする」
「はい!ありがとうございます!」
頭を下げて練習に向かう藤本
「椎名」
「わかってます。ちょくちょく様子を見に行けばいいんですよね」
「ああ、頼む」
「もちろんです。煽ったのは自分ですからね」
そう言って藤本の後を追う真琴
「これなら、俺らが引退した後も大丈夫そうだな」
二人の後ろ姿を見てそう呟く智也だった
控え投手藤本が活躍する日は近い・・・?
後一話日常編を挟んで本編に戻ります
次回も頑張ります