今回は根本とさやかのお話
これは、現在より四年前、恭二が中学一年生だったころのお話
彼、根本恭二は裕福な家庭に生まれ育った
成績だって決して悪くない
しかし・・・彼には優秀過ぎる兄がいた
そのせいで兄は優等生、弟は劣等生と呼ばれ、親族からはいつも兄と比べられてきた
学校でも『根本家の出来損ないの方』とイジメられる毎日だった
だが、そんな彼にもたった一人だけ友達がいた
「こらー!!キョウ君をいじめるな!!」
彼女の名前は芹沢さやか。小学校からの幼馴染だ
正義感の強い女の子で困っている人は放っておけず、いじめなんて絶対に許さない性格だ
「キョウ君、大丈夫?」
「う、うん。ありがとう」
心配そうに声を掛けるさやか
「あ、キョウ君凄い!90点じゃん!」
「こんなもんじゃダメだよ。兄貴には遠く及ばない」
「そうかな?私は充分凄いと思うけどなぁ~」
「・・・兄貴に追いつけなきゃ意味がないんだよ」
「そんなことないよ」
「え?」
「確かにキョウ君のお兄さんは凄い人だけど、お兄さんはお兄さん。キョウ君はキョウ君だよ。まぁバカな私が言っても説得力が無いかもだけど」
そう言って、てへっと笑うさやか
明るくて優しくて可愛くてスタイルも抜群
唯一の欠点は頭が悪いことぐらいだった
誰にでも優しい性格の為クラスの中でも人気者
男女問わず好かれている
それは恭二も例外ではなく、彼も彼女に好意を寄せていたのだ
彼女だけは自分の事を『根本家の出来損ない』ではなく、『根本恭二』として見てくれる
恋に落ちるには十分過ぎた
「じゃあねキョウ君、また明日」
そんな彼女も最近、他の学校に気になる男の子が出来たらしく、学校が終わったらすぐにそっちに行ってしまう
恭二も気にならないと言えば嘘になるが、自分が彼女にふさわしいとは微塵も思っていない為、自身の想いを伝えられずにいた
そんなある日の夕方、たまたま出かけていた恭二は彼女と男が二人で歩いている姿を目撃する
男の顔は暗くてよく見えない
気になった恭二は様子を窺う
・・・が、次の瞬間、二人が抱き合う姿を目撃
しかも・・・そのままキスをしているところを見てしまったのだ
恭二の頭の中は真っ白になる
その後、さやかが一人になったところに声を掛ける
「芹沢」
「あれ?キョウ君。どうしたの?こんなところで・・・」
「ちょっと買い物。あ、あのさ・・・さっきの男って・・・」
「あ、み、見てたの?その・・・恋人だよ」
照れくさそうに頬をかきながらそう言うさやか
それを聞いた恭二はやっぱりそうなのかと予想通りの言葉にがっかりする
(まぁ仕方ないよな・・・諦めて芹沢の幸せを願って・・・)
ナゼ、アキラメナケレバナラナイ?
(願って・・・)
ズットスキダッタノニ・・・
(願・・・)
ナゼアキラメナケレバナラナイ?
「さっきの人ね、トモ君って言うんだけど、カッコよくて、素直じゃないけどホントはとっても優しくて、そこがちょっと可愛くて、大好きなんだ」
幸せそうに語るさやか
それを聞いた瞬間、恭二の中で何かが・・・切れた
「う・・・うあああああああ!!!」
「キョウ君!?どうし・・・え、な、なに・・・や、やめ・・・いやあああああ!!」
さやかを押し倒し、着ている服を引き裂いて襲い掛かる恭二
「畜生!畜生!俺だって・・・俺だってずっと芹沢の事が・・・」
正気を失った恭二は『やめて、キョウ君!もうやめて!』と叫ぶさやかの言葉に耳を傾けない
そして数分後・・・
「あ・・・ああ・・・」
正気に戻った恭二の目の前には服を引き裂かれ、ほとんど裸同然のさやか
その頬には涙が伝っていた
「ち、ちが・・・俺は・・・こんなつもりじゃ・・・」
「・・・キョウ君・・・」
ゆっくりと体を起こすさやか
そして顔を恭二の方に・・・
「う、ああぁぁぁぁぁぁああああ!!」
・・・向けるその前に恭二は逃げ出した
目を合わせるのが怖かった
非難されるのが怖かった
さやかに嫌われるのが怖かった
そして恭二は・・・自分の部屋に引きこもった
やってしまった・・・たった一人の友達を傷つけ失った
あれだけの事をしてしまったのだ
いくら優しい彼女でも、もう自分の事を友達とは思ってくれないだろう
謝らなければいけない。でも顔を合わせるのが怖い
恭二は一週間学校を休んだ
そして月曜日、恭二は学校でさやかに謝る決意をする
許してもらえるとは思えない
それでも恭二は謝らなければならないと思った
学校に辿り着いた彼はいつも自分を虐めてくる男の子と顔を合わせる
が、どうにも様子がおかしい
普段ならすぐにでもちょっかいを掛けてくるのに、今日は恭二に見向きもしない
それだけじゃない
他の連中も何故か表情が暗い
違和感を感じつつ恭二は教室の前に辿り着く
緊張する恭二
一週間も学校を休んだのだ
自分の事を周囲はどんな目で見てくるのか
いや、他の連中の事はどうでもいい
さやかは・・・どんな目で自分を見るだろう?
いつもの笑顔はきっと無い
怒りだろうか?悲しみだろうか?それともゴミを見るような目だろうか?
意を決してドアを開ける恭二
しかしそこに見えた光景は恭二の予想を超えるものだった
「な、なんだよ・・・これ?」
机の上には・・・花が置かれていた
恭二の机なら嫌がらせだろうと理解できる
しかし花が置かれていたのは・・・さやかの机だった
(何の冗談だよ・・・)
混乱する恭二
頭ではわかっている
でも理解したくない
そんなことを考えていると周囲の会話が聞こえてくる
『ひっく・・・さやかぁ・・・どうして死んじゃったの?』
頭が真っ白になる恭二
周囲の話題はさやかのことばかりで恭二が来たことにすら気づいていない
全く頭が回らないまま時は過ぎ放課後・・・恭二はフラフラと自室に戻る
テレビを点けるとニュースで『女子中学生投身自殺』について放送されていた
「アイツが・・・死んだ・・・?う、うぅっ・・・」
恭二はようやく現状を理解し、涙を・・・・
「うっ・・・く、くは、クハハッハハハっ!」
・・・流しながら狂ったように笑いだす
「なんで・・・なんでこんな簡単な事に気付かなかったんだろうなぁ!欲しいものは無理矢理奪えばいい!手に入らないならいっそ殺せばいい!ざまぁみろ!!どこのどいつか知らねえが芹沢を・・・さやかを奪いかえしてやったぜ!!さやかを手に入れたのはあの男じゃねえ!!この俺だ!!クハハッハハ!!」
誰もいない部屋で狂ったように笑う恭二
その日、根本恭二は壊れた
卑怯者誕生の瞬間でした
次回も頑張ります