バカとテストとウチの弟   作:グラン

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根本家に監禁されたさやかに救いの手が・・・


第百七十八問 逃走

さやかが監禁されて一週間

拘束されているためまともな食事はとっておらず、栄養は全て点滴によって補給

もう死んでしまいたいとすら思い始めたその時

 

 

「へ?わわっ!」

 

 

急に手足が動くようになり、さやかは重力に逆らえず、尻餅をついた

 

 

「芹沢さん!」

 

 

そう言って室内に入ってきたのは・・・恭二の兄の正一だった

身動きの取れないさやかの世話は彼が任されていた

さやかの手を出すことは無かったが、さやかの助けを求める声を聞くこともなかった

彼女は自分が裸である事も忘れ、身体を隠しもせず、彼を睨み付ける

 

 

「・・・すぐに助けられなくてごめん。父さんに逆らえなかった臆病な僕を許してくれとは言わない」

 

 

正一は申し訳なさそうにさやかに頭を下げる

さやかは彼の事をまだ疑っているのか警戒を解かない

 

 

「僕の事はいくら恨んでも構わない。でも今はこれを着てすぐに逃げてくれ!父さんが出張中の今がチャンスなんだ!」

 

 

そう言って正一は紙袋から女性物の服を取り出し、さやかの拘束具を外す

さやかは罠かもしれないと思ったが、ここにいてもどうせ死ぬまで閉じ込められたままだと、素直に正一に渡された服を着る

そして二人は屋敷の外に出て、待たせていたタクシーに乗り込んだ

 

 

「このお金でどこか遠くに逃げてくれ。警察に通報しても父さんは警察上層部に繋がりを持っているからもみ消されるだけだ。とにかく父さんの目の届かないところに・・・」

 

 

そう言ってさやかに万札を数枚渡す正一

その行動を見てさやかは正一が本気で自分の事を逃がそうとしてくれているのだと思った

 

 

「なんで・・・私の為にそこまでしてくれるんですか?」

 

「・・・父さんのやり方は間違ってる。それなのに逆らえなかった自分への罪滅ぼしだよ。もちろんこんなことで許されるとは思ってないけどね」

 

「・・・優しいんですね」

 

「臆病なだけさ」

 

 

黙り込む二人

 

 

「キョウ君はどうしてますか?」

 

 

沈黙を破るようにさやかが口を開く

 

 

「学校にも行かず、部屋に閉じこもってるよ。多分アイツも責任を感じているんだ」

 

「キョウ君は悪くないんです。私がキョウ君の気持ちを知らずに無神経な事を言ったから・・・」

 

「君は優しいね」

 

「バカなだけです」

 

 

苦笑いしながらそう言うさやか

 

 

「すいません。何か書くものありませんか?」

 

 

タクシーの運転手に問いかけるさやか

 

 

「メモ用紙でいいかい?」

 

「はい。ありがというございます」

 

 

メモ用紙とボールペンを受け取り、何かを書きはじめるさやか

 

 

「これを、キョウ君に渡してください」

 

 

そう言って正一に畳んだ手紙を渡すさやか

そしてしばらく走ったところでタクシーを降りるさやか

 

 

「ありがとうございました。でも・・・こんなことして貴方は・・・」

 

「君は本当に優しいね。でも僕の事は気にしないで。なんとか誤魔化すから・・・どうか、父さんに捕まらないで逃げ切ってね」

 

 

そう言い残すと正一を乗せたタクシーは再び走り出した

 

 

「罪滅ぼし・・・か」

 

 

正一はさやかに言った言葉をぽつりとつぶやく

その言葉は嘘ではない

だが、正一が父親に刃向ってまでさやかを逃がした本当の理由は別にあった

 

 

(・・・今更言えるわけないよ・・・『君の事が好きだから』なんてさ・・・)

 

 

辛そうな表情を浮かべる正一

そう、正一は恭二を通じて知り合ったさやかに恋をしていたのだ

さやかを逃がしたのは好きな女の子が他の男に犯されるのを見たくなかったから

 

 

「僕は本当に卑怯だ・・・」

 

 

自分に対して『お願いします。助けてください』と必死に頼み込むさやかを無視し、父親の言いなりとなってしまった事を後悔していた

でもようやく助けることができたと正一は安心していた

父親にはきっと怒られるだろう。殴られるだろう

もしかしたら・・・殺されるかもしれない

しかし彼の心にはもう後悔はない

これ以上さやかの涙を見るくらいなら死んだ方がマシだと思っているから・・・

 

 

「ありがとうございました」

 

 

タクシーを降りる正一

父親が帰ってくるのは明日の夕方

それまでにはさやかは逃げてくれるはずだ

そう思っていた・・・

 

 

「遅かったな?正一」

 

「と、父さん!?なんでここに!?」

 

 

家に入るといないはずの根本父が待ち構えていた

 

 

「出張は急遽中止になったのでな。それよりも・・・どこに行っていたんだ?それにあの女の姿が見えないようだが?」

 

「え、えっと・・・」

 

 

必死に言い訳を考える正一

 

 

「か、彼女がトイレに行きたいというので拘束を外すと、どうやらそのまま逃げてしまったようでして・・・周囲を探しに行っていました」

 

「・・・そうか」

 

 

正一の説明に根本父はそう呟く

その姿は一件納得したかのように見えたが・・・

 

 

(ふんっ、嘘が下手な奴だ。別室に保管していたあの女の鞄が無くなっている。一刻も早く逃げなきゃいけない奴がわざわざ鞄を探す?ありえん話だ。大体、アイツは裸だぞ?裸の女が外を歩いていたら目立つに決まっている。大方、自分で逃がしたんだろう。正一は成績は優秀だが、どうにも甘すぎる)

 

 

根元父は全てを見抜いていた

 

 

「も、もう一度探してきます!」

 

「構わん。放っておけ」

 

「え?し、しかし、それでは彼女が警察に通報すれば・・・」

 

「問題ない。あの女を抱いた連中の中には警察上層部の人間もいるからな。公には出来んさ。それに・・・あの女には少々細工をしておいた」

 

 

根元父はニヤリと下品な笑みを浮かべた

 




前回の後書きで次話でさやかが自殺に至った経緯を書くと言いましたが、書く時間が無くてそこまでたどり着けず、キリのいいところで刻みました
焦らすような結果になってしまい申し訳ありません
今度こそ、次話にて書かせていただきます

次回も頑張ります
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