バカとテストとウチの弟   作:グラン

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タイトル通り、野球編はこれにて終了




第二百問 決着!!

「藤本」

 

「わかってます。あとは主役にお任せしますよ」

 

 

六回の守備を終え、ベンチに戻った藤本に智也はそう告げる

調子が良さそうなのでどうするか迷ったが、当初の予定通り、交代することにした

 

 

「はい、お疲れ様」

 

 

そう言って優子はドリンクとタオルを差し出す

藤本はそれを受け取りベンチに座り、ある事に気付く

 

 

(?手が震えて・・・)

 

 

ドリンクを持つ手が震えていた

よくよく見るとアンダーシャツは汗でびちゃびちゃになっていた

 

 

(お、俺、いつの間にこんなに・・・?)

 

 

自分が思った以上に疲弊していることに気付き驚く

 

 

(たった2イニングで・・・じゃあ海人先輩も・・・)

 

 

海人の方を見る藤本

よくよく見ると表情には出ていないが、他の選手より多く汗をかいていた

エースが疲れを見せると他の選手が不安になる

故に海人は疲れを見せず、平然を装っているのだ

 

 

(俺の倍以上は投げているのに・・・まだだ。まだ俺は海人先輩には遠く及ばない)

 

 

尊敬する先輩の凄さを改めて実感し、自身の未熟さを知るのだった

一方、応援席では・・・

 

 

「八番はアウトか」

 

「向こうは完全に勢いに乗ったな」

 

「さて、次は藤本の打順だが、北条はどうするか・・・」

 

 

『九番、藤本君に変わりまして、毒島君』

 

 

「やはり代打・・・って!?毒島だと!?」

 

 

常村が驚愕の声をあげる

 

 

「あの筋肉バカ。そういえば野球部だったわね」

 

「でも試合に出てるところは見たことないよね」

 

「夏村先輩。今、なんで驚いたんだ?長打力はありそうに見えるが・・・」

 

「アイツは野球に関しては素人なんだよ。後、俺の名前は常村だ!」

 

 

質問してきた雄二にツッコむ常村

 

 

「アイツがそもそも野球部に入った理由は『種類豊富な筋トレグッズを自由に使えるから』だからな。練習にはちゃんと参加していたが、試合に出たいとかそう言う気持ちは無いらしい。去年はベンチ入りすらしていないからな」

 

「ま、北条の事だ。何か考えがあるんだろう」

 

 

そう言って一同は再びグラウンドに視線を向けるのだった

 

 

 

『ストライーク!』

 

(これがフォークか・・・凄い球だ。俺の筋肉が武者震いしてるぜ)

 

 

意味不明の事を考える筋肉バカ

一方、新藤も彼の事は警戒していた

 

 

(見送り方は素人同然だが、万が一当たればでかそうだな・・・警戒しねえと)

 

 

そして新藤は振りかぶって投げる

結果は・・・

 

 

『ストライーク!』

 

 

盛大に空振り

ツーストライクと追い込まれた

 

 

(やっぱり当たらねえか。にしても不思議な気分だな。試合になんて興味なくて、筋トレグッズを使わせてもらえればそれでいいって思ってた。けど・・・)

 

 

『ファール!』

 

 

彼は夏の大会を思い出す

応援席から見た熱い戦い

同級生の少年の涙

 

 

『ボール!』

 

 

(・・・勝たせてやりたいじゃないか。あの戦いを見て何も感じない奴は男じゃねえ!!)

 

 

投げられたボールに対し、彼は変化する場所を予測し、思いっきり振った

 

 

(ゴッ!)

 

 

明らかに芯を外れた鈍い音

しかし・・・

 

 

「レフト!バックだ!!」

 

 

打球はフェンスにダイレクトでぶち当たり、レフトがクッションボールを処理してツーベースヒット

 

 

「芯を外してあの打球・・・マジかよ、化け物め」

 

 

流石の新藤もこれには動揺を隠せない

もう少し打球が高かったらスタンドイン・・・そう思うとゾッとする

バットに当たったのはまぐれだとわかっているが、それでもあそこまで飛ばされたとなれば脅威である

 

 

「成長したらヤバイかもな・・・」

 

 

その後、毒島に変わり代走で一年生が入る

しかし、新藤は気持ちを切り替え、野村、大村を抑え、得点には繋がらなかった

 

七回裏

海人は再びマウンドに立つ

少しマウンドを離れたことで体力が回復できたのか、キッチリと三者凡退

 

だが、新藤も負けてはいない

島田、中島、北条の三本柱を先ほど見せた高速フォークを出し惜しむことなく使い抑え込む

そのまま八回裏も終わり九回表、そこでも文月学園は追加点を取れず試合は九回裏

二対一で文月学園リードのままだ

三番打者を打ち取り、次は四番の武蔵丸

先述の通り、この男だけは別格

敬遠という選択肢もあるが、今は海人の調子が良い

せっかくの勢いに水を差すのも気が引ける

さらに言えばランナーなしで勝負から逃げて万が一観客を敵に回すようなことがあれば気の弱い海人は調子を崩してしまうだろう

フォアボール覚悟で厳しいコースを突いていこうと覚悟を決め、智也はグラブを構えた

 

 

(キンッ!!)

 

 

しかし、コースはよかったが、武蔵丸はそれを打ち返す

左中間を抜けるが、球太郎が素早くボールを確保し、中継に投げて何とか二塁打で済んだ

 

 

(あのコースをあそこまで持っていくか・・・化け物め)

 

 

デジャブ

先程、新藤が毒島に対して思った感想とほぼ同じ感想を言う智也

打たれはしたものの海人には動揺した様子はない

 

 

(大丈夫そうだな)

 

 

続く五番打者をセカンドゴロに打ち取るがセカンドランナーの武蔵丸は投球と同時にスタートしており、そちらは間に合わずツーアウト三塁

 

 

『六番ピッチャー新藤君』

 

 

バッターは新藤

偶然にも夏の大会と同じ状況だ

あの時と違うのはここを抑えれば勝利だということ

 

 

『あと一人!あと一人!』

 

『し・ま・だ!し・ま・だ!』

 

『し・ん・どー!し・ん・どー!』

 

 

会場中に響く島田コールと新藤コール

 

 

「前回サヨナラホームランを打たれた相手だ。敬遠したって文句は言われないと思うぜ」

 

「ふん、そっちのベンチにどんな化け物が控えているのかも分からないのにわざわざ逆転のランナーを出すわけないだろう。素直に言えよ。海人と勝負したいんだろ?安心しろ。逃げたりしねえよ」

 

 

軽口を叩く幼馴染二人

マナー違反ではあるが、正式な試合ではないということもあって審判も多めに見てくれているようだ

 

 

『ストライク!』

 

『ボール!』

 

『ファール!』

 

『ファール!』

 

『ボール!』

 

 

海人の投球にくらいついていく新藤

 

 

(ハハッ、やっぱり楽しいな。いつまでも続けていたいぜ)

 

(ふぅ、さすがだなぁ。なかなか空振ってくれないや。長引いたらこっちが不利だ。次で・・・決める!)

 

(・・・来る)

 

 

根拠なんてない

本能的にそう感じ取った新藤はバットを握る手に力を込める

 

 

(キンッ!)

 

 

会場に良い音が響き渡る

・・・が、それだけだ

ボールはピッチャーの頭上に高々と上がっている

 

 

(あぁ・・・これはダメだ)

 

 

新藤はもはや走ってすらいない

打った瞬間に残った感触でわかってしまったのだ

この打球はダメだ。前回のような奇跡は起こらないと

 

 

「あぁくそ・・・悔しいな・・・」

 

 

そう呟く新藤

しかしその表情は満足しきった表情だった

 

 

「完敗だな・・・」

 

「あぁ・・・俺達の勝ちだ」

 

 

新藤の呟きに智也がそう答える

そしてボールはゆっくりと落ちてきて、海人のグローブに収まった

こうして彼らの熱い戦いは幕を閉じた

 




見事、文月学園の勝利ですね
どうでもいいことですが、『決着』というサブタイトルを使うのがコレで三回目という・・・
文章を読み返しても良いサブタイを思いつかない
こういうことってあるよね?w

次回も頑張ります
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