バカとテストとウチの弟   作:グラン

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これにて過去編は終了
美波は海人の自殺を阻止することはできるのか?

それでは本編へどうぞ


第五十問 とある姉弟の過去 危機一髪編

  SIDE 美波(幼少期)

 

 

「海人!どこにいるの!お願い!返事をして!」

 

 

私はボロボロ涙を流し、叫びながら走るが、返事はない

走り過ぎて息苦しい

泣きすぎて声も枯れてきた

それでも私は立ち止まることなく海人を探し続けた

 

一回、落ち着かなきゃ・・・

まず海人がどこに行ったのか考えよう

海人の行きそうな場所は・・・

・・・どこだろう?

私・・・海人の事・・・何にもわかってない

生まれたときからの付き合いなのに・・・

 

 

「あれ?美波ちゃん?ど、どうしたの!?どこか痛いの!?」

 

 

私に声を掛けてきたのはクラスメートのフローラだ

誰にでも優しくて人当たりの良い彼女は泣いている私の心配をしてくれた

 

 

「ねぇ、海人見なかった?」

 

「え?海人君?見てないけど・・・」

 

「それじゃあ行きそうな所とか好きな場所とか・・・なんでもいいから教えて!」

 

 

彼女は海人とも仲が良い

きっとなにか手掛かりになることを知っているはずだ

 

 

「うーん・・・海人君の好きなところって言ったらやっぱりグラウンドじゃない?海人君、野球好きだし・・・って、美波ちゃん?」

 

 

私はそれを聞いて急いで野球チームの練習場に向かった

グラウンド・・・死ぬつもりならその前にもう一度大好きな野球を見たいと思ってもおかしくない

っていうか、なんで私はそんなこともわからなかったのよ!

自分の頭の悪さに苛立ちを感じながらグラウンドへと急いだ

 

 

「おっ、今度は姉の方か・・・」

 

 

私がグラウンドに着くと、海人と同じ野球チームに所属しているカールが声を掛けてきた

・・・って、ちょっと待て、今なんて言った・・・?

『今度は』?

 

 

「ねえ!ここに海人来なかった!?」

 

「ん?ああ、さっきまでそこで練習を見てたぞ。・・・やっぱりアイツ、野球がしたいんだろうな・・・」

 

「そ、それで!どこに行った!?」

 

「『試合頑張ってね』って言って、あっちの方に歩いて行ったぞ。でもよ・・・確かあっちって・・・・・・・・・海しかねえよな?」

 

 

それを聞いて私は寒気のような嫌な予感を感じた

たしかあの辺は水難事故が多いことで有名だ

 

 

「アイツ、あんなところに何の用が・・・って、おい!」

 

 

私はカールの言葉を無視して再び走り出した

・・・冗談じゃない・・・

せっかくもう一度、野球ができるかもしれないのに・・・

それを知らずに死ぬなんて・・・そんなこと、絶対にさせない!!

 

 

「・・・いた!」

 

 

少し遠くに海人の姿が見えた

・・・よかった・・・間に合った・・・

 

 

「海t・・・」

 

 

私が海人を呼ぼうとしたその瞬間、海人の身体が傾いて行き・・・

 

 

(ドボンッ)

 

 

・・・海の中に姿を消した

 

 

「う・・そ・・・」

 

 

私はフラフラしながら海に近づき海面を覗き込む

すると・・・海人の靴が片方だけプカプカと浮いていた

 

 

「いや・・・いやああああああああああああああああ!!!」

 

 

・・・泣いてる場合じゃない・・・

誰かに助けを・・・

そう思い周りを見渡すが近くには誰もいない

呼びに行っていたらその間に海人が死んでしまう

・・・私が助けるしかない

波はかなり荒れている

ここに飛び込めば私も死ぬかもしれない

でも・・・

 

 

「海人ぉぉぉ!!」

 

 

私は迷うことなく飛び込んだ

そしてそのまま潜って海人を探し始めた

予想以上に波が荒い

思うように進めない

それでも私は諦めることなく海人を探した

 

 

(・・・いた)

 

 

気を失っているのか、グッタリしている海人を抱きかかえて私は上に向かって泳ぐ

絶対に死なせない!私が海人を守るんだ!

だって私は・・・海人のお姉ちゃんなんだから!

 

 

「プハッ!海人!しっかりして!」

 

「美波ちゃん!大丈夫!?」

 

「これに掴まれ!」

 

 

陸の上からフローラの声が聞こえ、カールが紐のついた浮き輪を投げ入れてくれた

どうやら二人とも心配して様子を見に来てくれたらしい

私は海人を抱えたまま浮き輪に掴まり陸に上がった

 

 

「海人!お願い!目を開けて!」

 

「う・・・ん・・・お姉ちゃん?」

 

「海人!よかっ・・・「なんで?」・・・え?」

 

「なんで・・・死なせてくれなかったの?放っておいてよ!もう嫌だよ!苦しいよ!辛いよ!・・・野球がしたいよ・・・」

 

 

海人は悲しそうに呟いた

私のせいで海人はここまで追い詰められていたのだと再認識させられた

でも・・・それでも私は海人に生きていてほしい!

そう思い口を開こうとしたその時・・・

 

 

(パンッ)

 

 

乾いた音が鳴り響いた

近くにいたフローラが涙を流しながら海人の頬を叩いた音だった

 

 

「バカな事言わないで!!海人君がいなくなって美波ちゃんがどれだけ心配したと思ってるの!?泣きながら街中走り回って声が枯れるまで叫び続けて・・・自分の危険も省みずに海人君を助けるために海に飛び込んだんだよ!それなのに放っておいてですって?ふざけないで!」

 

 

フローラは本気で怒っている

温厚な彼女がこんなに怒ったのは見たことが無い

 

 

「野球ができなくなったなら他の楽しみを見つけようよ・・・私も手伝うから!私にできることなら何でもするから!だから・・・死ぬなんて言わないで・・・私、海人君が死んじゃったら寂しいよ・・・」

 

 

そう言ってフローラはその場に座り込んで泣き出した

この子・・・もしかして海人の事が・・・

 

 

「なぁ海人?お前、残された人の事、ちゃんと考えたか?お前の姉貴は自分がお前を自殺に追い込んだって一生苦しみながら生きていくことになるんだぞ?フローラだって今、お前の為に泣いているし、お前の両親だってきっと悲しむ。俺やチームのみんなだって悲しい。それでもお前は死にたいって言うのか?」

 

 

海人は俯いて何も言わない

 

 

「海人・・・もしかしたら・・・アンタ、もう一度野球ができるかもしれないわ」

 

「・・・え?」

 

 

私は医者の先生から聞いた内容を話した

 

 

「ほんと・・・?本当に・・・また野球ができるの?」

 

「本当よ!だから死ぬなんて言わないで!」

 

「海人君!もう一回頑張ろうよ?私も協力するからさ!」

 

「海人!一緒に頑張ろうぜ!」

 

 

横で聞いていた二人も海人を励ます

それを聞いた海人は・・・

 

 

「・・・うん・・・僕、もう一回頑張ってみるよ!・・・お姉ちゃん・・・心配かけてごめんなさい」

 

「いいのよ。海人が元気を出してくれたんだからそれでいいの」

 

「フローラもカールも・・・心配かけてごめん」

 

「もう死ぬなんて言わないでね」

 

「ったく、世話が焼けるぜ」

 

 

そう言ってみんなで笑いあう

 

 

「海人・・・帰ろう」

 

「うん!」

 

 

私は海人と手を繋いでずぶ濡れのまま家に帰った

家に帰り、まずはお母さんが帰ってくる前に遺書の処分

そして二人でお風呂に入って海人の部屋を片付けた

それから数分後、お母さんが帰ってきて、なんで服が濡れているのか?と聞かれたが、散歩に出た海人を見つけて声を掛けたら驚いて海に落ちてしまったと言って誤魔化した

お母さんは少し不審に思ったようだが、元気を出した海人の姿を見て、それ以上は何も言わなかった

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子(現代)

 

 

「それから海人は必死に努力して中学に入るころにはキャッチボール位ならできるようになった。それから一年後にはレギュラー入りしたわ」

 

 

島田さんの言葉を聞いてアタシは驚きを隠せなかった

海人君がどれだけ努力したのか位、野球に詳しくないアタシにでもわかる

 

 

「海人君を虐めていたこと・・・後悔しているのね・・・」

 

「ええ、だからウチには幸せになる資格なんてない。一生、海人を支えて償い続けようって・・・『昔は』思ってた」

 

「昔は?」

 

「実はね、アキからの告白、一度は断っているの。そしたらアキってば『勉強も運動も頑張って、島田さんにふさわしい男になってまた告白しに来る』って言うのよ。その姿が、ウチと仲良くしたがってた海人とダブって見えて、断った理由を説明したの。そして『ウチも吉井のことが好きだけど、ウチは幸せになっちゃいけないから諦めて』って言ったの」

 

「・・・それで、どうなったの?」

 

「それを聞いた海人にさんざん怒られたわ。『姉さんの幸せを奪って夢を叶えてもちっとも嬉しくない』ってね。ホント、ウチは失敗してばっかりだわ」

 

 

苦笑いを浮かべながら、ため息を吐く島田さん

 

 

「聞いてくれてありがとね。なんかスッキリしたわ」

 

「こっちこそ、同じ弟のいる姉として貴重な話を聞かせてもらったわ」

 

「あ、もうこんな時間。帰って夕飯作らなくちゃ」

 

「すっかり話し込んじゃったわね」

 

 

そう言いながら会計を済ませて店を出た

 

 

「あれ?姉さんに優子さん」

 

「あ、海人。いま帰り?」

 

「うん、姉さんたちは?」

 

「ちょっとガールズトークをね♪さ、帰りましょ」

 

「あ、うん。ばいばい優子さん」

 

「じゃあまたね・・・『優子』」

 

「じゃあね海人君。『美波』もまたお話しましょうね」

 

 

そう言って二人と別れた

 

 

『姉さん、優子さんのこと名前で呼んでたっけ?』

 

『まぁちょっと友情が深まったってとこね』

 

 

なんて会話が聞こえた

 

 

「弟・・・か・・・」

 

 

仲良さそうに帰る二人の背中を見ながらそう呟き、アタシはケータイを取り出した

そして通話ボタンを押す

 

 

「あっ、もしもし秀吉?今日何か食べたいものある?」

 

 




美波は無事、海人を止めることができましたね

今回出てきたフローラとカールの名前の由来は適当ですww
ヤフーで『ドイツ 名前』で調べたら出てきましたww
もしかしたら再登場あるかも・・・

もう一話番外編を挟んでから強化合宿編に移ります

次回も頑張ります
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