バカとテストとウチの弟   作:グラン

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野球回です
野球に興味が無い方は退屈かもしれません



第五十二問 練習試合 後篇

  SIDE 美波

 

 

さて、試合再開だ

八回裏のこっちの攻撃

打順はちょうど一番からだ

 

 

『一番センター野村君』

 

 

アナウンスが流れた

ちなみにアナウンスをしているのは放送部の新野さん

休みの日だというのにわざわざ来てくれたのだ

 

 

「野村君って実力はどうなの?さっきも試合に出てなかったみたいだけど」

 

「ああ、球太郎君は一年生で唯一のレギュラーだよ」

 

「へぇ、じゃあ上手いんだ」

 

「まぁ彼の一番の長所はアレだよ」

 

 

そう言って海人は打席に立った野村君を指差す

そこではちょうどバントを決めた野村君の姿が・・・

そして・・・サードの選手が捕球した頃には一塁を駆け抜けていた

 

 

「速っ!」

 

「球太郎はチーム一の俊足だからね。100メートルを10秒台で走るんだよ」

 

「すごいですね」

 

 

『二番キャッチャー北条君』

 

 

「北条君です!」

 

「北条はどんなバッティングをするんだ?」

 

「智也君と得意なのは狙い打ちだよ」

 

 

などと言っていると・・・

 

 

(キンッ)

 

 

北条の打った打球は三遊間を綺麗に抜けてレフト前へ

これでノーアウト一、二塁

 

 

『三番ショート夏川君』

 

 

「おっと、先輩様の出番だな」

 

「夏川先輩は英雄君と1、2を争う強打者なんだよ」

 

 

『星凰学園、選手交代のお知らせです。ピッチャー鈴木君に変わりまして、剛田君』

 

 

「でかいな・・・」

 

 

たしかに大きい

西村先生と同じくらいだろうか?

などと考えていると相手投手が投球練習を始める

 

 

(ズドンっ!!)

 

 

「速っ!」

 

「あいつがエースか?」

 

「いや、エースは新藤って奴や。あいつは二番手投手の剛田勝、MAX155キロの速球派や」

 

「あれで二番手・・・」

 

「あんなの打てるのかしら・・・」

 

「問題あらへんよ。夏川先輩なら大丈夫や」

 

 

ウチらの心配を裏切るかのように夏川先輩は軽々と打ちかえす

打球は右中間を破り、走者一掃

打った夏川先輩は二塁へ

 

 

「ほらな?あんな速いだけの投手なんざ夏川先輩の敵やあらへん」

 

 

『四番ピッチャー島田君』

 

 

「「「「「は!?」」」」」

 

「どういうことだ?四番は中島のはずだろ?」

 

「はっ!投手を上位打線に入れるなんて馬鹿な野郎だぜ!」

 

 

みんなが驚き、向こうの投手も悪態をついてくる

 

 

「ふん、バカはどっちだ。攻撃はあと2イニングしかないんだぞ。上位もクソもあるか」

 

「しかし海人ってバッティングはどうなんだ?ピッチングが凄いのは知っているが・・・」

 

「まぁ見てろ」

 

 

(ズドン)

 

『ストライーク!』

 

 

「どうした?手も足も出ねえのか?そんな細い腕で俺の球が打てるかよ!」

 

 

(キンッ)

 

 

ジャストミート

 

 

「海人のバッティングフォームは完璧だ。無駄な力が加わらず、綺麗に真芯を捕らえているから、どんなに非力でも当たればこうなる。おまけに向こうは海人を舐めすぎている。コースが甘すぎだ」

 

 

北条もよくわかってるじゃない♪←海人を褒められ上機嫌

そして海人の打球はレフト方向にグングン伸びて行き・・・ワンバウンドしてフェンスを越えた

 

 

「「「「「ちっ!」」」」」

 

「なんで舌打ち!?あれ?海人君、止まっちゃいましたよ?」

 

「・・・?」

 

 

瑞希と霧島さんは野球のルールにあまり詳しくないのか首を傾げている

 

 

「あれは、エンタイトルツーベースって言って、野手が打球を追うことができないから、二塁打になるってルールなんだ」

 

「そうなんですか。なんかもったいないですね」

 

「全くよ。海人の足なら三塁は確実に行けたのに・・・」

 

「まぁ結果は同じことだ。なぜなら次の打者は・・・英雄だからな」

 

 

『五番サード中島君』

 

 

「海人、リードはいらんで。歩いて帰らせたるからな」

 

「あのバカ・・・また挑発しやがって・・・」

 

「?なんか相手の投手、怒ってないですか?」

 

「そりゃそうよ・・・走者が歩いて帰る方法はただ一つ。ホームランだけだもの」

 

 

向こうにもプライドがあるだろうし、予告ホームランなんてされたら、怒るのも無理はない

 

 

「くそ・・・舐めやがって」

 

「お、おい!ここは敬遠を・・・」

 

「うるせえ!こんなバカっぽい奴に俺の球が打てるかよ!」

 

 

投手と捕手が喧嘩している

挑発の効果は抜群のようだ

 

 

「打てるもんなら・・・打ってみやがれ!」

 

 

そう言って投げられた剛速球を中島は難なく打ち返す

打球はグングン伸びて行き、レフトフェンスを越えて行った

 

 

これで8-5

このペースでいけば勝てる!

 

 

『六番セカンド常村君』

 

 

「問題はここだな・・・」

 

「?常村先輩がどうかしたの?」

 

「先輩は今、スランプ中でな、調子を崩してるんや」

 

「一度失った自信を取り戻すのは難しいからな・・・ここでも打てるかどうか・・・」

 

「なるほどな・・・そういうことなら任せろ。秀吉、ムッツリーニ、ちょっとこっちに来てくれ」

 

 

そう言って二人を連れて坂本はどこかに行ってしまった

どうするつもりなのかしら?

 

 

『ストライーク!』

 

 

そんなことを考えながら試合を見ていると、一球目を見逃し

 

 

『ボール!』

 

 

二球目はボール

それもかなり大きく外れていた

このピッチャー、コントロールはよくないのかもしれない

もしかしたら打てなくても四球を狙えるかも・・・

 

 

『ストライーク!ツー!』

 

 

そんなウチの考えを裏切るようにストライクゾーンに決めてくる

先輩はバットを振ったがかすりもしていない

もう後がない

 

 

(ダメだ・・・打てねえ・・・クソっ!情けねえ・・・)

 

 

常村先輩の顔に焦りが浮かんでいる

・・・と、そこに・・・

 

 

「常村先輩!」

 

「こ、この声は・・・」

 

 

全員が声の方に視線を向ける

するとそこには・・・

 

 

「が、頑張るのじゃ!!」

 

 

チアの格好でボンボンを持って顔を赤くしながら応援する木下の姿があった

そして・・・常村先輩の目つきが変わった

 

 

『ホームラン!』

 

「じょ、場外・・・」

 

「凄っ・・・」

 

 

常村先輩の打った打球はフェンスどころか学園の外まで飛んで行った

一体何メートル飛ばしてんのよ・・・

 

 

「それにしても・・・その衣装、どうしたのよ?」

 

「ムッツリーニが持っていたのじゃ」

 

「・・・ホントは海人に着せるつもりだった」(ボソッ)

 

「ちょっと待って!今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど!?」

 

 

土屋の発言に海人がツッコむ

まぁなんにせよこれで8-6

このままこの回で一気に逆転よ

・・・と、思いきや・・・

今のホームランで目が覚めたのか、向こうの投手からは全く甘い球が来なくなった

そんな球を素人のアキ、坂本、土屋が打てるはずもなく、三人とも三振でスリーアウトチェンジとなった

 

 

「よし、いよいよ最終回だね」

 

「まぁ俺らは交代したばっかりやけどな~」

 

 

ちなみに守備位置は・・・

 

1番センター 野村

2番キャッチャー 北条

3番ショート 夏川先輩

4番ピッチャー 海人

5番サード 中島

6番セカンド 常村先輩

7番レフト 坂本

8番ファースト アキ

9番ライト 土屋

 

 

と、なっている

さて、向こうの打順も1番からね

 

 

『一番サード田中君』

 

 

「勝てるんでしょうか?」

 

「そうね・・・もう攻撃が一回しかないからこれ以上点を取られたら勝ち目はないわ」

 

「そんな・・・」

 

「大丈夫よ。誰が投げてると思ってるのよ」

 

 

海人が投げてるんだもん

打たれるはずないわ

 

そして海人は振りかぶって・・・投げた

 

 

『ストライーク!』

 

 

外角低めにストレート

バッターはそれを見逃した

そしてフッと笑う

おそらく大した球じゃないと思ったんだろう

たしかに海人の直球はおよそ130キロ。至って普通だ

でも・・・甘いわね

投手の実力は球速だけで決まるものじゃないわ

 

そして海人は二球目を投げる

 

 

「くっ・・・」

 

 

スローカーブだ

バッターは完全にタイミングを崩され、空振った

フン、海人を甘く見るからよ

たぶん次は直球、もしくはカットボールね

遅い球に目が慣れた分、打ちにくいはず

・・・ところが・・・

海人が投げたのは・・・またスローカーブ

 

 

「舐めやがって・・・こんなもん、狙えばただの失投なんだよ!」

 

 

バッターがそう言いながらバットを振る

たしかに・・・タイミングをずらす球を二球連続で投げるなんて無謀だ

・・・と、思っていたが・・・

 

 

『ストライーク!バッターアウト!』

 

「くっ・・・逆回転だと・・・?」

 

 

バッターが悔しそうに呟く

そう・・・海人が投げたのはカーブとは逆方向に曲がるスクリュー

しかも・・・今の球、バッターは気付いてなかったみたいだけど・・・ボール球だ

きっちりとバットの届かない位置に投げている

さすが海人ね♪

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 海人

 

 

ふぅ・・・うまくいった

全く・・・実戦で使ったことない

まだ調整中のスロースクリューを投げろだなんて・・・

智也君も無茶言うよな・・・

 

 

「海人!素敵よ!最高よ♪」

 

 

ベンチでは姉さんが嬉しそうに手を振っている

・・・正直、恥ずかしい・・・

 

 

『二番セカンド佐藤君』

 

 

僕はこれ以上、姉さんがヒートアップする前に終わらせようと振りかぶる

そして僕が投げた球は真ん中低めの直球

バッターはそれを見逃す

『やっぱり』見逃したね

このバッターはこの試合、必ず初球は見逃している

今の球だって割と打ちやすいコースだったのに見逃した

これを利用して僕が次に投げるのは同じコース

・・・から、内角に曲がるカットボール

打球は詰まってサードゴロ

英雄君はそれを難なくさばいてツーアウト

 

 

『三番ピッチャー剛田君』

 

 

さっきの大きい人だ

ってか、自分だって投手なのに上位打線にいるじゃん・・・

 

 

「ガハハ!貴様のへなちょこ球なんざ場外まで吹っ飛ばしてやるわ!」

 

 

そう言いながら打席に立つ剛田君

結果は・・・

 

 

(キンッ!)

 

 

鋭い打球が僕の左を通っていく

僕も慌ててグローブを出したが間に合わなかった

打球はセカンドの常村先輩がダイビングキャッチ

しかし体勢が悪い

誰もが内野安打だと思った

しかし・・・

 

 

「夏川!」

 

「おう!」

 

 

常村先輩はショートの夏川先輩にトス

夏川先輩はそのまま一塁に送球

さすが『鉄壁の二遊間』だ

これでスリーアウト・・・

 

 

「あっ!」

 

『セーフ!』

 

 

・・・と、思いきや・・・

どうやらファーストのアキ兄さんが送球を落としてしまったらしい

 

 

「ご、ごめん!」

 

「ドンマイだよ」

 

 

慌てて謝るアキ兄さん

『ラッキー』と向こうから野次が飛んでくる

 

 

「悪い、送球が逸れちまった!」

 

 

夏川先輩が手をパタパタと振りながらそう言う

もちろん送球は逸れてなどいない

夏川先輩はいつもこんな感じで場の空気を和まそうとするのだ

 

 

「気ぃ取り直して行こか!」

 

「あと一つだ」

 

 

英雄君と智也君もそれに気づき、後に続く

まぁアキ兄さんは硬球に慣れてないはずだし、仕方ない

 

 

『四番キャッチャー阿部君』

 

 

四番か・・・

たしかこの人は長打はあるけど打率はあまりよくなかったはず・・・

 

 

『外角低めに直球』

 

 

智也君からサインが来た

そして僕はその通りに投げる

・・・鈍い音がして打球は一塁側(相手チーム)のベンチの方にフラフラと上がった

ファールか・・・誰もがそう思った・・・が

 

 

「うおおおおおおお!!」

 

「アキ兄さん!?」

 

「無茶や!」

 

 

アキ兄さんは・・・そのままベンチに突っ込んだ

そして・・・ボールが入ったグローブを上に上げた

 

 

『ア、 アウト!チェンジ』

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 美波

 

 

「全く・・・無茶ばっかりして・・・」

 

「・・・反省しております」

 

 

ウチは打球を追ってベンチに突っ込んだバカの傷の治療をしている

 

 

「はい、おしまい」(ペシっ)

 

「痛っ」

 

 

ガーゼを当てた傷口を軽く叩く

ウチに心配掛けた罰よ

と、それはさておき試合は・・・

今、打席には海人が入っている

一番の野村君は三振

二番の北条君はシングルヒット

三番の夏川先輩はサードゴロ

なので今はツーアウト二塁

ここで海人が打てばチャンスで中島だ

・・・が

 

 

『フォアボール!』

 

 

海人はフォアボール、敬遠された

どういうこと?

たしかにゲッツー狙いで塁を埋める策も無くは無いけど・・・それはワンアウト以下の場合だ

今はツーアウトなんだから塁を埋めなくてもあと一人で終わりなのに・・・

 

 

「リベンジマッチってわけやな・・・ええで・・・その勝負受けて立つ!」

 

 

気合十分で打席に立つ中島

しかし・・・

 

 

『フォアボール』

 

 

中島も敬遠

これで満塁だ

???意味が分からない

なぜわざわざ逆転される可能性をあげる?

二点差だから下手すれば一打で・・・

・・・ん?二点差?・・・あっ!!

 

 

「あっちのチーム、何考えてんだろうね?」

 

「マズイわアキ。このままじゃ負ける」

 

「?美波?どういうこと?」

 

「もしウチの予想通りなら・・・常村先輩も敬遠されるわ」

 

「まさか、それじゃあ押し出しで一点入っちゃうよ」

 

「それでもまだ8-7よ。そして・・・常村先輩の次の打者は誰?」

 

「え?えっと・・・ああっ!!」

 

 

『フォアボール』

 

 

審判の声が聞こえ、押し出しで一点が入る

そして次の打者は・・・坂本だ

 

 

「クソッ!舐めやがって・・・」

 

 

そういうことだ・・・

あいつらは・・・アキや坂本が素人だと気付いた

だからあんな意味不明な策をとってきたんだ

 

 

「やり方が汚いッス!」

 

「クソッ!俺が打っていれば・・・」

 

「北条君、何とかならないんですか?」

 

「・・・こうなった以上、坂本に打ってもらうしかない」

 

 

さすがの北条もこの奇策は見抜けなかったらしい

いや、見抜いたところで防ぎようがない

 

 

「・・・吉井、準備して」

 

「え?」

 

「・・・雄二は打つ。雄二の次の打者は吉井」

 

 

霧島さんがそう言う

どうやら坂本が打てない可能性は微塵も考えてないようだ

 

 

『ファール!』

 

『ファール!』

 

『ボール!』

 

『ファール!』

 

 

「クソッ!しつけえんだよ!ど素人が!」

 

「ここまでバカにされて負けられるかよ・・・(それにあいつが見てる前で無様な姿見せれねえんだよ)」

 

 

そして・・・決着が着いた

剛田君の投げた球を・・・坂本は打ち返し打球は一二塁間を抜けた

そして海人と中島がホームに戻り8-9で逆転した

 

 

「やるな雄二、よーし、次は僕の番だ!」

 

「吉井君、頑張ってください!」

 

「・・・吉井も雄二に続いて」

 

「うん!頑張るよ」

 

 

アキと野球のルールをいまいちわかっていない二人がそんな会話をしている

 

 

「アキ・・・今、九回裏の攻撃で今ので逆転したから・・・もう試合終了よ」

 

 

そう言ってウチは『アキ以外の試合メンバー』が集合している方を指差す

その直後、アキは顔を真っ赤にしてそっちに走って行った

ふふ、アキってばおっちょこちょいなんだから

こうして練習試合は文月学園の勝利で幕を閉じた

 

 

  SIDE OUT

 

  NO SIDE

 

 

  ☆翌日☆

 

 

『文月新聞』

野球部、奇跡の大逆転

 

昨日、野球部は去年の覇者、星凰学園と練習試合を行い、八回までに八失点という大量失点を負い敗北確定と思われましたが、途中出場したエースの島田、知将の北条、スラッガーの中島、鉄壁の二遊間常夏コンビの活躍により、奇跡的に大逆転。星凰学園を8-9で下しました

今年の夏の甲子園は期待が持てそうです

 

 

 

「へぇ・・・海人君、頑張ってるのね。でも・・・なんで吉井君や坂本君が試合に出てるのかしら?」

 

 

そう呟きながら、張り出された文月新聞を見ている木下優子の姿が目撃された

 




優子「ちょっと!?アタシの出番、これだけ!?」

まぁまぁ、次回からの強化合宿編では出番を増やすから・・・

優子「本当でしょうね?」

・・・・・・・・・もちろん

優子「その間は何!?」

次回も頑張ります


優子「ねえ!大丈夫よね!?ヒロイン交代なんてしないわよね!?」
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