SIDE 優子
「今日の対戦相手は韋駄工業、特徴は簡単に言うと足の速さを生かして機動力で戦うタイプのチームよ」
「この学校の校風はかなり特殊で、『速さを制す者は勝負を制す』ってのが学校のスローガンになっていて、学力テストの他に走力テストがあって、100mを14秒以下になったら退学処分になるってほど走力に力を入れている学校だ」
・・・ここまで来ると異常よね・・・
「たしか陸上の大会なんかでよく聞く学校名だよな」
「中でも要注意人物が一番打者の『多岐俊輔』。彼は100m10秒15で走る俊足。出塁率は9割以上よ」
「「「「「速っ!!」」」」」
「・・・ちなみに男子高校生の100mの日本記録は?」
「10秒01ッス」
「球太郎はどれ位なんや?」
「自己ベストは10秒88ッス。おいらもまだまだッス」
「いや、充分速いから」
海人君が野村君にツッコむ
実際、一年生でそのタイムならかなり高い方だ
「しっかし全員俊足ってのは厄介だな」
「ですね。海人は左投げだし、クイックも上手いですからそう簡単には盗塁できないとは思いますが・・・」
極端な話、全員が一番打者みたいなチームだ
噂だと、レギュラーは全員、100m10秒台って話だ
「ま、海人なら心配あらへんよ。いくら足が速くってもバットに当たらなきゃ意味ないからな~」
「ま、情報は出そろってるんだし、後は出来ることをするだけだな。っと、着いたぜ」
そう言ってみんなバスから降りる
そして海人君が降りたその時
「あ、お兄ちゃん!!」
「葉月?」
「ごめんね海人。葉月ってばどうしても試合前に海人に会いに行くって聞かなくて」
海人君に小さな女の子が抱き着いた
あれは・・・海人君の妹の葉月ちゃんね
近くには美波と吉井君の姿もある
「平気だよ姉さん。葉月、お兄ちゃんの応援に来てくれたの?」
「べ、別にお兄ちゃんの応援に来たわけじゃないんだからね、ですっ!」
「誰だ!?葉月にツンデレを教えたのは」
「あぅ・・・違ったですか?男の人はこう言ったら喜ぶって明久お兄ちゃんの部屋にあったマンガに書いてあったです」
「アキ兄さんの?」
「はいです。裸の女の人がたくさん書かれた・・・「葉月、その本の内容は今すぐに忘れるんだ」・・・?はいです」
海人君は葉月ちゃんの言葉に被せてそう言った
・・・それはおそらく18歳未満が買ってはいけないマンガだ
「アァァァキィィィ!!アンタ小学生に何見せてんだゴルァ!!っていうかこの前全部処分したのにまだ隠し持ってたのね!!」
あ、美波がキレたわ
「ご、ごめんなさい!!あの本は出てくる女の子が美波に似ているからどうしても捨てられたくなくて・・・」
「ふぇ!?そ、そうなんだ・・・」
あ、この子、けっこうチョロいわ
※ちなみにこの漫画のタイトルが『貧乳ツンデレアンソロジー』だったことにより後日、美波の怒りが頂点に達することになるのだがそれはまた別のお話※
「そ、それじゃ僕はそろそろ行くね」
「はいです!お兄ちゃんがんばれです」
葉月ちゃんはそう言って手をパタパタ振って見送ってくれた
美波は・・・まだ顔を赤くしてモジモジしている
長くなりそうだし、放っておこう
※数分後※
いよいよ試合開始
ウチは先攻だ
『一番センター野村君』
相手のピッチャーが振りかぶって投げた
『ストライーク!!』
「思ったより速いな」
「さすが、速さに重点を置いたチームですね」
「でも、こういうタイプはコントロールが悪いもんや」
『ストライーク、ツー!!』
「・・・コントロールが何だって?」
「・・・なかなかやるやないか」
「今のところ変化球を投げてない。木下、相手投手の情報はわかるか?」
「それがわからないのよ。彼は一年生でまだ他の公式戦には出てないし、この大会もこれが初登板なの」
「一年生が名門校でエース・・・なら速さだけじゃない。何か切り札があるかもしれないな」
「何が来ようが俺がホームランにしたるで」
(キンッ!)
「おっ!球太郎が打ったで!」
野村君の打った球は三遊間を抜けてレフト前ヒット
『二番ライト大村君』
大村君はあっさりと送りバントを決めてワンアウト2塁
「よっしゃ!一点は固いで」
「・・・なんだ?随分簡単に送らせてくれたな・・・」
北条君が顎に手を当ててブツブツと言っている
『三番ショート夏川君』
「夏川先輩は直球に強い。速球投手とは相性抜群や」
そして夏川先輩はピッチャーが投げた球を綺麗に打ち返した
打球は右中間へ
「よし!球太郎の足なら余裕でセーフや!」
「・・・!!野村!!戻れ!!」
突然、北条君が叫んだ
グラウンドに目を向けると打球に向かって凄い勢いで走る一つの影
そして・・・センターの選手が確実にヒット・・・普通なら二塁打は固いと思われた打球をノーバンでキャッチ
すでに三塁を回っていた野村君は戻ることができずアウト
「う、嘘だろ・・・」
「あれに追いつくのか・・・」
「あれがバスの中で言った要注意人物『多岐俊輔君』よ」
「あれはただ速いだけじゃないぞ・・・あの打球は打つと同時に走らないと間に合わない。おそらく打った時の音と打球の向きで落下地点をあらかた予測して走ったんだ。恐ろしい感性の持ち主だ」
そんな話をしているとアウトになった野村君がトボトボと帰って来た
「すまなかったな」
「え?」
謝ったのは野村君ではなく北条君だ
野村君はなぜ謝られたのかわからずきょとんとしている
「まさかアレを捕るとは思わなかった。おかげで指示が遅れた。悪かった」
「い、いえ!オイラがもっと気をつけていれば・・・」
「もう過ぎた事だし仕方ないよ。それより次は守備だよ。気を取り直してしっかり守ろう」
「は、はいッス!!」
そう言うとみんなはグローブを持って勢いよく走っていった
『一番センター多岐君』
さっそく要注意人物ね
出塁率は驚異の9割以上
盗塁の失敗は高校の公式戦三年間でわずか一回
どんなバッティングをするのか注目ね
驚異の機動力を見せた多岐俊輔
彼は一体どんなバッティングを見せるのか?
次回も頑張ります