バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今更ですが、第八十九問のバカテストの正解は県庁所在地のある市の名前です
答えを書くのをすっかり忘れていたww

それでは本編へどうぞ


第九十三問 悪夢

  SIDE 海人

 

 

「よーし、かっ飛ばしてくるで!」

 

 

一回裏が終わって次はこっちの攻撃

打順は四番の英雄君だ

 

 

「頑張ってね英雄君」

 

「まかせとき!」

 

 

そう言って英雄君は打席に向かって行った

 

 

「どう思う?北条」

 

「そうですね、あのフォークは初見で打つのは難しい。でも、英雄のバッティングセンスならもしかすると・・・」

 

 

『ストライーク!』

 

(今のは直球か。なら次はフォークやな。狙うんは曲がりが大きいやつや!)

 

 

「ここや!」(キンッ!)

 

 

英雄君の振ったバットはボールにジャストミート

打球は三遊間へ

 

 

「くっ!」

 

 

と、ここでサードの選手が飛びつくが取れず、ボールを弾いてしまう

その間に英雄君は一塁に到達

記録はヒットだ

 

 

「やった!」

 

「さすが英雄君!」

 

 

優子さんと僕がそう呟く

 

 

「す、すいません!」

 

 

っと、サードの選手が新藤君に謝っている姿が見えた

 

 

「ナイスサード。よく止めてくれたな。もし抜けていたらエラー製造機の小野寺先輩のトンネルでランニングホームランだったぜ」

 

「おいこら新藤!誰がエラー製造機だ!」

 

 

新藤君が冗談交じりに言うとレフトの選手が怒鳴り、他の選手は笑っている

どうやら打たれたショックは無いようだ

 

 

「サードはチーム唯一の一年生の前田君ね。守備が凄く上手で反射神経が凄く良いの。だから強い打球にも対応できるってことでスタメン起用されてるわ」

 

「だろうな。今の打球だって普通の奴なら止めるどころか反応すらできねえ」

 

 

夏川先輩が感心したようにそう呟く

たしかに、今のは良い当たりだったよね

 

 

『五番セカンド常村君』

 

 

「よし、常村!頼んだぜ!」

 

「先輩!頑張ってください!」

 

「おう!」

 

 

気合の入った常村先輩が打席に立つ

が、結果はボテボテのショートゴロ

ショートがセカンドに送球、セカンドはファーストに送球しダブルプレー

 

 

「・・・すまん」

 

「どんまいやで常村先輩」

 

「そうですよ!初見であのフォークに当てるなんて凄いです」

 

 

『ストライーク!バッターアウト!』

 

 

「田中もダメか・・・」

 

「気を取り直してしっかり守りましょう!」

 

 

そう言って僕達は守備についた

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子

 

 

試合開始から一時間と少し経過

たった今八回裏の星凰の攻撃が終わった

ヒットや四球でランナーは出る物の得点には至らず、点差は0―0のまま

さらに苦しい事に・・・

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

海人君の体力はもう限界だs

凄い汗の量に激しい息切れ

ちょっと押せば倒れてしまうんじゃないかというくらいフラフラだ

 

 

「藤本君、ちょっとスコアブック代って」

 

「あ、はい」

 

 

アタシは記録員としてベンチ入りしているので職務放棄になるんじゃないかと思ったが、それでも今の海人君を放っておけなかった

部費で用意したスポーツドリンクを紙コップに注いで海人君に渡す

しかし・・・

 

「あ、ご、ごめ・・・」

 

「大丈夫。いいからそのまま休んでて」

 

 

海人君は手を滑らせて紙コップを落としてしまった

ふと、海人君の手を見ると小刻みに震えていた

まさか・・・もう紙コップを持つだけの握力も残ってないの!?

 

 

「木下、そっちの袋にストローが入ってる。悪いが飲ませてやってくれ」

 

「あ、うん。わかったわ」

 

 

さすが北条君。準備がいいわね

アタシは新たに飲み物を注ぎ直しストローをつけて海人君に飲ませる

 

 

「ありがと・・」

 

 

海人君は擦れるような声でアタシにそう言う

 

 

(島田はもう限界だな)

 

(延長に入ったらやられる)

 

(ここで決めるしかないで)

 

 

「北条君。海人君はもう限界よ。藤本君と交代した方が・・・」

 

「・・・お前は知らないだろうが藤本は少し前に練習試合で二軍相手に滅多打ちにされたんだ。一軍相手には歯が立たないだろう。ああ、もちろん藤本が下手なわけじゃ・・・」

 

「わかってます。僕自身、あの化け物どもを抑える自信はありませんから。やっぱり海人先輩は凄いですよ」

 

 

これが・・ウチの最大の弱点

選手層が薄すぎる

元々海人君、北条君、中島君が入るまではかなりの弱小校だったらしいからそれは仕方ないことだ

やっぱり上手い人は強豪校に行きたがるからね

 

 

『三番ショート夏川君』

 

 

打順は三番からの好打順

ここで決めないとウチに勝ちは無い

・・・が

 

 

『ストライーク!バッターアウト!』

 

「クソッ!」

 

 

残念ながら三振

 

 

「まかせとってください!俺には勝利の女神(友香)がついてますから」

 

 

そう言って中島君は打席に入る

 

 

(キンッ!)

 

 

「やった!」

 

 

三遊間に鋭い打球

これは抜け・・・

 

 

『アウト!』

 

 

・・・なかった

サードのダイビングキャッチでツーアウト

 

 

「すまん海人」

 

「どんまいだよ英雄君」

 

 

ションボリとして帰ってくる中島君を海人君が微笑みながら励ます

 

 

『ストライーク!バッターアウト!』

 

 

っと、そうしているうちに常村先輩も三振でスリーアウトチェンジ

 

 

「すまない」

 

「大丈夫ですよ。僕はまだまだ投げられます」

 

 

一番苦しいはずの海人君は笑顔で励ましてマウンドに向かう

これでかなり厳しくなった

ウチは先攻だから勝つためには次の回で点を取っても、9回と10回の裏の攻撃を0点で抑えなければならない

つまり海人君は最低でも2イニング投げなければいけないのだ

そう『最低でも』だ

次の回点が入らなければもう1イニング、また次も点が入らなければもっと投げなければならない

 

 

「頑張って、海人君」

 

 

アタシは一人静かにそう呟いた

 

 

  ※数分後※

 

 

あれから数十分が経過した

アタシ達にとって最悪の状況に陥っている

現在・・・延長14回

海人君は・・・いや、他の選手ももうボロボロだ

 

 

「オラッ!」

 

『アウト!チェンジ!』

 

 

夏川先輩の気合のプレーで三番の紅松君はアウト

これで14回裏が終了

高校野球の延長は15回までだからここで点が取れなければウチに勝ちは無い

 

 

『四番サード中島君』

 

 

「今度こそ打ってやるで!」

 

 

気合十分の中島君が打席に向かう

 

 

(疲れとるんは海人だけやない。新藤だって限界が近いはずなんや)

 

 

『ストライーク!』

 

 

コースギリギリに直球が決まってストライク

 

 

(この終盤にこの球威・・・バケモンかいな・・・せやけど弱音は吐いてられへん)

 

 

そして二球目

 

 

(キンッ!)

 

 

打った!左中間!これは大きい!入れば文句なしの一点先制だ!

そしてボールはフェンスに・・・入らなかった

わずか数センチ届かずフェンス直撃

打った中島君は二塁へ

今の打球は惜しかったけど、まだウチの攻撃が終わったわけじゃない

先制点のチャンスはまだ続いている

 

 

「よし!ここで打てなきゃ男じゃねえぜ!」

 

 

気合を入れて打席に向かう常村先輩

・・・が、五番六番七番と連続して凡退

この回も無得点でチェンジ

 

 

「クソッ!情けねえ・・・」

 

「後輩がこんなに頑張ってるって言うのによ・・・」

 

 

常村先輩と田中先輩は悔しそうに呟く

 

 

「どんまいです。常村先輩、田中先輩。なんとかこの回を凌いで再試合に備えましょう」

 

 

海人君は笑顔でそう言いマウンドに向かう

そう、この15回表で得点できなかった以上、ウチの勝ちはなくなった

裏の攻撃を抑えて後日行われる再試合に臨むしかないのだ

でも、たしか次の打者は・・・

 

 

『四番ファースト武蔵丸君』

 

 

最強の打者、武蔵丸君だ

どう攻めるんだろう?

ここは敬遠?

 

 

『ストライーク!』

 

 

勝負だ!でも今の海人君に彼を抑えるだけの力はあるの?

 

 

(勝負・・・やけくそか?いや、あの目は勝負を諦めた者の目じゃない。あくまでワシに勝つつもりの様じゃな。面白い!)

 

 

二球目、海人君は振りかぶって投げた

 

 

(キンッ!)

 

 

打球は・・・セカンドフライ

 

 

(なっ、このワシが打ち損じた!?それもただの直球を!?それに・・・なんじゃ、今の重い球は・・・この土壇場でこれほどの球威のある球を投げられるとは・・・今回はワシの負けじゃな)

 

 

最大の山場は去った

でもまだ後二人いる

海人君、頑張って!

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 新藤

 

 

武蔵丸先輩、そして五番の白沢先輩もアウトでツーアウト

次は俺の打順だ

 

 

『六番ピッチャー新藤君』

 

 

「ほぅ、代打は出さないんだな?」

 

「まぁな、監督からは好きにしていいと許可をもらった。俺はバッティングも悪くないと自負している。それはトモもよく知っているだろう?」

 

「そうだったな」

 

 

俺はキャッチャーのトモと軽口を交わしながら打席に立ちピッチャーに視線を向ける

島田海人・・・君には感謝しているよ

敵同士とはいえトモと再び一緒に野球ができるのは君のおかげだ

だが・・・この勝負は勝たせてもらう!

 

 

『ストライーク!』

 

 

まずは外角高めにストレートか

トモの性格を考えると次は内角低めに変化球ってとこかな

そして島田君は振りかぶって二球目を投げた

内角低め、予想通りだ

後はどっちに曲がるかだ

・・・んな!?

 

 

『ストライーク!』

 

 

曲がらない!?ただのスローボールだと!?

・・・いや、違うな。島田君の表情を見る限り今のは失投だ

おそらく体力はもう限界。握力もほとんど残っていないんだろう

基本的に変化球は直球よりも握力を使うからな

トモはそれも考慮して直球を織り交ぜていたがそれももう限界なのだろう

体力を考えても遊び球は無い

次の球は・・・

 

 

(海人はもう限界か・・・なら・・・)

 

(ダメだ、たまたま空振ってはくれたけど、僕にはもう変化球を投げる握力は残ってない。だったら次は・・・)

 

(((外角低めストレートだ!)))

 

 

そして島田君は振りかぶって投げた

予想通り!外角低め!

これで俺達の勝ちだ!

俺はそう思いバットを振った

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 明久

 

 

限界を迎えている海人の気合の投球

打球は・・・

 

 

「よし!センターフライだ!」

 

「海人、よく頑張ったわね」

 

 

美波は嬉しそうに呟く

・・・が、その時!

 

 

(ビュッ!)

 

 

急に突風が吹いた

 

 

「お、おい!まずいぞ!」

 

 

雄二の声に僕達は顔をあげる

落下しようとしていた打球が風に乗ってグングンと伸び始めていたのだ

センターの野村君も必死に追いかける

 

 

「う、うそ・・・ダメ・・・やめてぇぇぇ!!!」

 

 

美波の声は届かず・・・打球はスタンドに入ってしまった

サヨナラホームランだ

全員が・・・打った新藤君ですら唖然としている

直後、海人はマウンドに膝をつき、涙を流した

こうして文月学園野球部の今年の夏は終わった

 




野球編はこれにて終了です
ぐだついてきたのでサクッと終わらせました
野球描写を楽しみにしていた皆様(いないとは思いますが)申し訳ありません
次回からは新章突入

次回も頑張ります
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