新約 コードギアス   作:編集長

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感想を下さった方、ありがとうございます、励みになりました。この調子で投稿できれば、と思います。

弐話の最後文章が抜けていたので加筆修正しました。


参話:蠢く者たち

 ルルーシュたちと別れたコーネリア一行は、部隊の編成を終え、将兵たちを鼓舞して周っていた。

 

 「さすがに平民出身の者たちは動揺を抑えきれてないな。だが、貴族出身の者がほとんど動揺していないおかげか、思ったより混乱は少ない。」

 

 「姫様、ダールトン将軍がうまく兵たちの心理を誘導しているようです。先程まで国防省の中ですら慌ただしかったというのに、ダールトン将軍が歩くだけで常時のように雰囲気が戻りましたな。」

 

 「あぁ、長いこと前線にいただけあって胆力も相当だ。我々も見習わなくてはな、ギルフォード。国内の細々(こまごま)とした貴族どもの反乱を鎮圧してきたのは我々とて同じだが、ダールトンはそれに加えて戦後の空気がそれほど薄れていない時分に生まれたとあって、ほどよい緊張感を保つことに慣れている。あのような者が軍にいれば、自ずと兵は纏り、士気が安定する。出陣するにあたっては良い傾向だ。」

 

 「はい、姫様。」

 

こんなことを話し合いながら国防省を出て、その正面に止めてあった車にコーネリアは乗り込み、ギルフォードに運転を任せる。車はピクリとも振動せずゆっくりと動き出し、皇宮外にある空軍基地へと向かい始めた。コーネリアはふと思い、ギルフォードに問いかけた。

 

 「ところでギルフォード、先程ルルーシュが言っていた北海道急襲作戦だが、ルルーシュの下に武官を付けたほうがよいだろうか?あんな(なり)でKMFの操縦も白兵戦も人並み以上だが不安だ・・・。」

 

 「姫様、今頃になって心配なさるとは・・・。そうお思いなさっていたのなら先程ルルーシュ殿下に申し上げればよかったではありませんか。」

 

 「ルルーシュの態度があまりに自信に溢れていたから言うのを止めたのだ。だが、今になって不安になる。どうしたものか。」

 

 「ならば姫様、今回の従軍者の中からルルーシュ殿下と面識のある者を、ルルーシュ殿下にお付けになされば良いのでは?幼い頃より多くの者が謁見しているはず、その中にも軍に進んだ者も多少はいると思いますが。」

 

 「・・・そうだな、従軍する騎士をリストにしてルルーシュに送ってやろう。ルルーシュも断るまい。少なからず直属の者がいれば、人を使うことには慣れているだろうルルーシュのことだ、上手く使ってくれるだろう。ギルフォード、すまないが基地に着いたら至急、騎士階級の者を見繕ってくれ。」

 

 「はっ、姫様。」

 

空軍基地に着いたコーネリアとギルフォードは一旦別れ、コーネリアは直接、兵を大型輸送機に乗機させる指揮にあたった。

 

 

 

 一方ルルーシュとスザク、ノネットの3人はとある博士の下を訪れていた。

 

 「あはっ、殿下、お久しぶりです~!晴れて参謀本部長となったことですし、デヴァイサーやりません?」

 

 「ロイド、何かにつけて俺をデヴァイサーにしようと勧誘するのはやめろ。そもそも俺は最前線に向かないし、デヴァイサーとしてなら十分すぎる能力を持つスザクを紹介したじゃないか。」

 

 「それはそれ、これはこれです~。殿下ほどの頭脳を持ち人並み以上にKMFを動かせるんならデヴァイサーとして欲しくなるじゃないですか!それにスザク君はラウンズになっちゃったから、うちで面倒見るの当然になっちゃったし~。」

 

そこに女性士官が割って入る。

 

 「ロイドさん!申し訳ありません、殿下!」

 

 「構わないセシル、いつものことだ。それで、ロイド、今回は従軍するのか?」

 

 「もちろんです、殿下。ラウンズの機体を開発している僕たち特派が着いていかなくちゃ、メンテすら覚束(おぼつか)ないでしょ~?おめでとう、セシル君、これで僕らも晴れて従軍経験者だ、勲章の一つでも貰えるよ!」

 

 「ロイドさん!!」

 

ここまで聞いていたスザクがそれぞれセシルとロイドに尋ねる。

 

 「それで、自分たちの機体は準備できているのでしょうか?」

 

 「できてるわ、スザク君。それとエニアグラム卿。エニアグラム卿のための専用KMFが完成しました。スザク君のランスロットと共に今回が初の運用となります。不具合や、改善点があれば遠慮せずお申し付け下さい。」

 

自分専用の機体ができたと聞いたノネットは張り切ってセシルに聞き返す。

 

 「お、遂にできたか!どんな奴?」

 

 「残念でした~それは見てみてからのお楽しみ~!ただ、面白いですよ~!」

 

 「ロ・イ・ド・さん!申し訳ありません、エニアグラム卿、ただ見てもらったほうがご理解が早いと思います。早速見て行かれますか?」

 

 「そうね、ついでにスザクが乗ることになったランスロットだっけ?も観てみたいな。スザク、一緒に行かないか?」

 

 「そうだね、それじゃあ案内お願いします、セシルさん。ルルーシュはどうする?」

 

 「俺は後でいい。ロイドと話したいことがあるから、話し終わったらロイドに案内させる。」

 

 「了解。じゃあ、セシルさん、お願いします。」

 

こう言って、セシルがノネット、スザクを伴って特派の拠点であるヘッドトレーラーから降りていくのを見届けてからルルーシュはロイドに話しかける。

 

 「それで、アヴァロンは動かせるのか?セシルが開発したフロートユニットはまだ試験運用段階だろう、兄上からアヴァロンがもう『飛べる』と聞いたときは驚いたぞ。」

 

 「セシル君は優秀ですからね~、あとは僕がまとめて飛行航空母艦の形にもっていくだけでしたし、大して苦労しませんでしたよ?ただ~、エネルギー効率化問題が片付いていませんから、ブレイズルミナス展開時の飛行時間はあまり期待しないでください~。」

 

 「アヴァロンを実戦使用するのはなるべくなら避けたい。兄上に無用な借りは作りたくないからな。現段階では特派が乗り込むことを考慮してラウンズ用の臨時の洋上補給拠点としたい、その方がラウンズの2人も楽だしな。」

 

 「僕としても直接戦闘行為に介入するのは嫌ですし、殿下に賛成~!それで、殿下~、やっぱりデヴァイサーやりません?殿下向けの機体を開発中なんですよね~。」

 

 「俺向け?どういうことだ、なぜ俺が使用することを前提とした機体を作ってる?」

 

 「厳密には、殿下しか扱える人がいないっていうのが本当のところです~。簡単に言うと、指揮官機としての運用がメインコンセプトなんですが、多数を相手にしても勝てるよう試験でハドロン砲を載せてるんです。あと、何と言っても目玉は、ドルイドシステム!電子解析システムなんですが、こいつの制御が僕とかシュナイゼル殿下とか、超一級の頭がないと使いこなせないんですよね。だから、殿下向けかな~って。」

 

 「なるほど。まぁ、それは今回の作戦が終わったら見に行ってやる。今はアヴァロンのことだ、ラウンズ用の機体に必要なものは積み込んだな?」

 

 「はい、殿下。まだ余裕はありますし、なんならさっき言った実験機も予備パーツ込みで載せれますよ?」

 

 「・・・・・そこまでして俺を載せたいのか、それに。・・・・・・・はぁ、分かった、載ってやる。あとで概要をまとめて見せてくれ。」

 

 「やった~!!!これでハドロン砲とドルイドシステム、フロートユニットは試験運用できて、さらには上手くいけばセシル君のエナジーウィングが開発段階まで持っていけるかも!おめでとう~、これで当面の課題はエネルギーの問題だ、ラクチンラクチン!」

 

 「その辺にしておけ、ロイド。さぁ、スザクとノネットの後を追おう。」

 

 「はあーい、殿下。こっちですよ~。」

 

 

 ロイドについてヘッドトレーラーを降りたルルーシュは、しばらく歩いてから見えてきた巨大な構造物を見上げて息を呑んだ。

 

 「これがアヴァロンか。壮観だな。」

 

 「驚くのはまだ早いですよ~、殿下。では中に入りましょう。」

 

そのままロイドについていくと、2体のKMFとその前に立つセシルがそれぞれの機体に乗り込んでいるスザク、ノネットにインカムを通して話しかけているを見つける。

 

 「ハンガー到着~。セシル君、どう、2人の反応~?」

 

 「あ、ロイドさん、スザク君はすぐ慣れたようですけど、エニアグラム卿はまだ少しかかりそうです。まぁ、ユーウェインはかなり特殊なKMFですから時間をかけて調整したほうがいいでしょう。」

 

2体のKMF、一方は白と金を基本色としたスリムなボディに両肩と頭部の突起が特徴的な機体、そしてもう一方は特徴的な形をしていた。まず、特に目を引くのは4足であることだ。そのくせして隣の白金の機体より一回り大きく見える。色は黄をメインにところどころに赤が配色されている。

 

 「こっちの白いのがランスロット、黄色いのがユーウェインです~、殿下。」

 

 「これがランスロットか。ユーウェインは特徴的な見た目だな。なんでこんな形になった?」

 

 「いやー、軍用KMFが実用化されて戦場の動きが速くなったでしょ~?一応、今は事前偵察で地形の把握したり、航空管制したりして戦況の把握に努めてるけど、これからじゃ戦況把握が追い付かなくなるかな~って思って、ドルイドシステムを簡素にして乗っけた自動走行するKMFをくっつけたのがこのユーウェインでーす!4足に見えるけど、運用するときはユーウェイン本体と自動走行するKMFが分離するから実際は6足で、自動走行するKMFは本体から指令を出すことも、自律して動くこともできるようにしてあるんだよ~!」

 

ここでルルーシュがロイドに問いかける。

 

 「つまりこのユーウェインも実験機なのか?」

 

 「つまるところそういうことですね、殿下。」

 

 「はぁ、ロイド、作るのは構わないがもうちょっと実用的な段階に入った機体を使ってもらおうとは思わないのか?いくらなんでも、3体とも実験機とは頭が痛くなってくる・・・。」

 

 「殿下~、ここは特派ですよ?そんな平々凡々とした機体作って何になるって言うんです?それに面白くないじゃないですか、そんな機体。」

 

 

 ルルーシュがこのロイドの言葉に溜息をついたとき複数のカンカンと高い足音を聞きつけ、ロイドとルルーシュは来た道を振り返った。そこには3人の武官が立っていた。先頭にいた青い髪の、キャラメル色の目をした男がルルーシュの前に跪き、後ろの灰色の髪の女とオリーブ色の髪の男の残りの2人も続く。

 

 「ジェレミア・ゴッドバルト、ヴィレッタ・ヌゥ、キューエル・ソレイシィ、ルルーシュ殿下の下に付き補佐をせよとのコーネリア皇女殿下の命により、参上仕りました。」

 

 「あんれ~ジェレミアだ、なんでこんなところにいるの?」

 

 「ロイド、殿下の前で失礼であろう!」

 

 「良い、ジェレミア、ロイドはほっとけ。それよりもジェレミア、どうせ姉上のことだ、今更になって俺の身の回りの心配をしてわざわざお前たちをハワイ攻略部隊から引き抜いたのだろう?」

 

 「さすがですな、殿下。恐らくはその通りでございます。コーネリア殿下は、ルルーシュ殿下の下に使えるコマがいなければ殿下は苦労なさるだろう、としか仰っておられませんでしたが。」

 

 「まぁいい、来たからには働いてもらうぞジェレミア。」

 

 「はっ。ご期待に沿えるよう全力を尽くします。」

 

 「ヴィレッタとキューエルといったか。お前たちもよろしく頼む。」

 

 「「イェス・ユアハイネス。」」

 

こうして新たに3人を加えた北海道急襲部隊は、出兵へ向け準備を急ぐのであった。

 

 

 

         ◆         ◆         ◆

 

 

 

 シュナイゼルはシャルルに呼ばれ、アリエス宮へと出向いていた。中庭を通り、宮殿の裏にある庭園へと出て左右を見回すと、右のほうにある闘技場にナナリーとアーニャの姿を見つけ近寄った。屋根を支えている、大人2人分はあろうかという太い大理石が立ち並ぶ間を通って闘技場に入ると、奥にシャルルが椅子に座ってナナリーとアーニャの決闘を見守っていた。

そこから少し手前にはマリアンヌが車椅子の上から声を張り上げてナナリーとアーニャのダメ出しをしている。そこへシュナイゼルは近づいていき、シャルルの前で跪いた。

 

 「父上、お呼びでしょうか。」

 

 「おぉ、シュナイゼル、よく来た。ちと話をしたくてな。まぁ、儂の横に座れ。」

 

では失礼して、と断ってからシュナイゼルはシャルルの左にある椅子へと座った。

 

 「それで、父上、話とはなんです?」

 

 「ルルーシュのことよ。あやつにはまだ、」

 

 「ギアス、ですか。父上、すでにルルーシュはギアスのことを知っております、あとは契約だけでしょう?」

 

 「その通り。だが与える前に出発してしまった。」

 

 「失敗ですね。日本とE.U.の動き、おそらく裏ではギアス嚮団が動いています。E.U.には潜り込んでいることは火を見るよりも明らか、それにあの悲劇から8年が経過している以上、日本にもおそらくですが潜り込んで直接政府を動かしているでしょう。」

 

 「となると、やはりギアスを無理やりにでも引き留めて与えるべきであったな。」

 

 「・・・父上、そもそも叔父上は今、何を目的に動いているのです?以前お話し頂いた計画はすでに破綻も同然、しかし、なぜずっと活動を続けているのか。」

 

 「わからぬ。そもそも、儂とマリアンヌ、C.C.の同盟関係に自分で(ひび)を入れたV.V.が、未だにあの計画を遂行しようとしているとは考えられぬ。こればかりは本人に聞いてみるしかあるまい。」

 

 「遺跡の方に変化はありましたか?もしあれば、何を企んでいるのか推測はできます。」

 

 「特になかった。だが、遺跡は未だ謎が多い。もし儂らが知らないことをV.V.が知っていれば隠すことは容易だろう。」

 

 「そうですか。しかし今となってはルルーシュが無事に帰ってくることを祈るしかありません。」

 

 「・・・うむ。何事も起きなければよいのだが。」

 

そこから2人は黙り込んで、しばらくナナリーたちの決闘を見ていると、決闘が終わったのか、ナナリーがアーニャの手をグイグイ引いて闘技場から出ていき、宮殿の中へと消えていった。声を張り上げていたマリアンヌが、シュナイゼルたちの前へと車椅子の向きを変え近寄ってくる。

 

 「いらっしゃい、シュナイゼル。何のお話をしていたのかしら?」

 

 「挨拶が遅れ申し訳ありません、マリアンヌ様。そうですね、ルルーシュのことです。」

 

 「構わないわ。あら、あの子は問題ないでしょう。ちょっと、おっちょこちょいなところはあるけど、心配するだけ無駄よ?」

 

 「マリアンヌよ、あやつ自身のことではない、ギアスのことだ。」

 

 「まさか、契約し損ねたの?!あなた、それはダメよ、何としてでも連れ戻さなければ!」

 

 「ぬぅ・・・。しかし、」

 

 「V.V.の居場所がわからない以上、ギアスなしにあの子を外征させるのは危険よ。かと言ってC.C.を皇宮から出すのもあまりいいとは言えないし。」

 

そこに別の女の声が割り込んできた。声のした方向を見やると、緑色の髪をした、美しい『少女』が立っている。

 

 「心配ないさ、私はむしろ坊やのことの方を心配するべきだと思うぞ。」

 

 「C.C.!でもあなたがV.V.に捕らえられれば向こうが大きくアドヴァンテージを得れる。それだけはさせてはいけないわ。V.V.が今、何を考えて動いているのかわからない以上、余計なカードを向こうに掴ませる可能性はなくさないと。」

 

 「だが、ルルーシュとは契約できていない。ギアス嚮団相手にギアスを持っていないのは、武器を持っていないことと同じだ。なら、私が出向いて契約を結んでくるしかないだろう。」

 

 「でも!」

 

マリアンヌとC.C.が早々にヒートアップしかけているところを、シュナイゼルが水を差す。

 

 「マリアンヌ様、C.C.、言い争っても益はありません。行動を決めてそこから逸れることのないよう、最大限の対処を考えることのほうが良いと思います。」

 

 「シュナイゼルの言う通りよ。この際仕方あるまい。C.C.、お前は今すぐルルーシュの下へと向かえ。ルルーシュが予想していない事態に間に合いさえすれば良い。」

 

 「わかったよ、シャルル。」

 

そう言うとC.C.はふらりと闘技場から出て行った。

 

 「なら、これでルルーシュの問題は一旦解決です。あとは何か起きてからでないとわかりません。父上、日本が攻めてきた以上、E.U.も動き出すのは時間の問題でしょう、前もって動員を行えば対処しやすいと思いますが。」

 

 「動員するのはよいが、誰が指揮を執る?」

 

 「私、と言いたいところですが宰相として一方面軍に留まるのは好ましいとは言えません。かと言って、コーネリアはしばらく日本に釘付けされるでしょう。」

 

シュナイゼルの言葉に3人が考え込むが、答えは出ない。シャルルが考え込む素振りをしながら口を開いた。

 

 「・・・とりあえず、動員だけは済ませておけ。指揮官は後に決めても遅くはなかろう。」

 

 「ではそのように。」

 

そこにナナリーとアーニャが装いを変えて闘技場へ入ってきた。ナナリーがスタスタと近づいてくるのとは対照的に、アーニャはゆっくりと歩いて、シャルルとシュナイゼルの前で跪く。

 

 「こんにちは、シュナイゼルお兄様。遊びにいらっしゃって下さったのですか?」

 

 「やあ、ナナリー。そういう目的で来れればよかったのだがね、宰相にもなってしまうとそうもいかない。今日は父上から呼ばれて来たのだよ。」

 

 「そうですか・・・。あまりいいお話ではなさそうですね・・・。」

 

ナナリーに変わって今度はアーニャが挨拶をした。

 

 「皇帝陛下、アーニャ・アールストレイム、御身の前に。宰相閣下、お久しぶりです。」

 

 「アーニャ、ここには身近な者しかおらぬ、そう畏まるな。」

 

 「そうだよ、アーニャ。もっと楽にしてくれないと。」

 

では、と返事をしたアーニャは立ってナナリーの隣に並び、いつも持ち歩いているラウンズ用の携帯を取り出し、1枚写真を撮る。その様子にシャルルは苦笑した。

 

 「変わらぬな、アーニャ。その写真はどうしておるのだ?」

 

 「毎日の日記に貼付します。ただ、ルルーシュ殿下の写真はブログに時々アップします。」

 

 「ほう?あやつには許可をもらっているのか?」

 

 「はい。殿下の写真を投稿した日は反響がすごいので、折を見つけてはアップするのが最近のマイブームです。」

 

 「はははははは、ルルーシュは皇族だがあまり顔を知られていないからね、新人の俳優か何かと推測されているんじゃないかい?」

 

 「はい、殿下。でも、もう俳芸能人である可能性は既に排除されてて、高貴な家の生まれではないかと議論が交わされています。」

 

 「当たりでも外れでもあるところだね、ただ、ルルーシュは今後一気に有名になる。そうなったらブログの投稿者がアーニャだとバレる可能性も高くなるが。いいのかい?」

 

 「構いません、殿下。ラウンズを相手にしようと思う者は数えるくらいしかいないでしょう。そのときはこの携帯にとって記録にします。」

 

アーニャはそういう意味で取ったか、とシュナイゼルが呟いたのが聞こえたのか、アーニャがそういう意味?、と問い返し2人の間で問答が始まる。それを横目に見てマリアンヌがナナリーに話しかけた。

 

 「ナナリーもそろそろ将来どうするか決めないとね、婿を取るのか、コーネリアのように軍に入るのか、いずれの道を進むにしろ好きにするといいわ。」

 

 「はい、お母様。・・・最近は軍のことを考えています。スザクさんとアーニャにも聞いてみたんですけど、2人とも厳しいけど、やりがいがあるって。だから、早いうちに士官学校とかを見に行こうかなって考えているんです。」

 

 「そう。まぁ、私のときは、座学はそれなりにしたけど、実技は本当につまらなかったわ、途中でラウンズに入ることになったから退学したけど。」

 

 「お母様はあまりに格が違います!とにかく、私は士官学校に行ってみます。」

 

 「あら、ナナリーも案外、私と同じようになるんじゃないかしら?すぐに退屈すると思うわよ?」

 

 「そうでしょうか・・・?」

 

 「そうよ。それにアーニャと互角に戦えてる時点で、士官学校の実技は合格したも同然だわ。あとは座学だけど、ルルーシュに聞けばすぐ教えてくれるだろうし、退屈極まる学校生活になるかもしれないわよ?現校長の私が言うのだから間違いないわ。」

 

マリアンヌの言葉に再度考え始めるナナリー。そこにシャルルが声をかけた。

 

 「ナナリー、ある程度士官学校で学んでからコーネリアに付いていくのもいいかもしれぬぞ?コーネリアとその麾下は歴戦の猛者どもだ、士官学校では学べないことも多く学べるだろう。」

 

 「そういう手もあるのですね、お父様。それだったらいずれお兄様に付いていくこともできるのでしょうか?」

 

 「そうだな。マリアンヌとの約束の手前、ルルーシュも否とは言えないだろう。そういえばマリアンヌ、士官学校の生徒を連れての戦場観戦はどうなったのだ?」

 

 「今のところ、士官候補生を中心とした4年次以降の生徒を中心として、ルルーシュが派遣される方に放り込むつもりで段取りをつけてるわ。今回は無理だけど、次はルルーシュがメインとなって主導する作戦を立案してってコーネリアにも言っておいたし。」

 

 「・・・それだとナナリーは付いていけないな。まぁ、ルルーシュのことだ、妹に流されて連れて行ってくれるだろう。」

 

不憫な奴よ、とルルーシュを心の中で慰めたことに自己満足したシャルルは、侍女を呼び時間を確認する。昼の休憩は終わり、そろそろ執務に戻らなければならない。

 

 「さて、アーニャ、シュナイゼル、その辺にしておけ。そろそろ執務に戻らねば。お主らも仕事に戻れ。」

 

シャルルの一言に、これ幸い、とばかりにアーニャとの問答を切り上げたシュナイゼルは心なしか安堵した表情を浮かべて、もう一方のアーニャは遂にシュナイゼルから明確な答えを得られなかったことを残念がっていた。

 

 

 

         ◆         ◆         ◆

 

 

 

 

 

 真夜中、京都。その中の、寝殿造で建てられた広大な日本家屋の中で密談が交わされていた。いずれもこの国の象徴する血統の者たちが日の光の当たる場所で議論できないこの状況が、どれだけこの国が変化したかを示している。権力者にはならないと決めたはずの者たちが、皮肉にも周囲に担ぎ上げられて権力者となる現状を憂い、そして打破するための策を模索していた。

集った者たちの名は、通称『京都六家』。天皇の血筋である皇家、天皇の血筋から出た分家の中で最も尊いと言われる吉野家、朝廷が成立する以前の時期から続く古き名家である宗像家と刑部家(おさかべけ)、幕府を率いた武家が再度公家化した公方院家(くぼういんけ)、戦国時代に公家となった桐原家の六家を総称する。その中で発言力のある桐原家の当主、桐原泰三が口を開いた。

 

 「軍部の阿呆どもめ、戦を始めおった。そして、よりにもよって相手が、あのブリタニア。これは我ら『京都六家』も腹を括る必要があるやもしれぬな。」

 

刑部家の当主、刑部辰紀、公方院家の当主、公方院秀信が次々に苦言を呈する。

 

 「そもそも、文民統制の効いていない軍が我が国の代表者のような顔をして政治をしている現状がおかしいのだ。さらには憲法を違反してまで皇家の神楽耶を担ぎ上げて、神楽耶を頂点とした全体主義を推し進めている。議会も今や軍部の犬だ。」

 

 「議会と軍部の関係が逆転していることも問題だが、それ以上に軍部が何を考えているのか読めないのが頭の痛いところだ。奴ら、内部で何を考えているのやら。」

 

吉野家当主の弘嗣、宗像家当主の唐斎も続いて言う。

 

 「立法府が軍部に押さえられている以上、何もできない。神楽耶から何かを提言させようにも軍部が出張ってきて、政治は我々にお任せください、の繰り返しだ。法律で国家反逆罪の適用範囲が異常に広げられた今、民衆レベルですら迂闊なことは言えないと聞く。」

 

 「完全に三権分立の原則が崩れておる。国外に助けを求めようにも不必要な介入を招くことを考えれば得策とは言えぬ。手詰まりだ。」

 

 「まだそうと決まったわけではありませんわ。」

 

そこに一人の年若い女の声が響く。それにつられて全員が御簾の奥へ目を向ける。代表して宗像唐斎が御簾の奥にいる人物へ問いかける。

 

 「それはどういう意味か、神楽耶。」

 

 「枢木家の跡取りの足取りが掴めました。それによると、現在はブリタニアにて皇帝直属の騎士に叙任されているとのこと。また、ブリタニア皇子と友人関係にあるとも言われています。」

 

それは本当か、と他の六家はにわかに浮足立つ。もし本当のことなのであれば、枢木家を通してブリタニア帝室に話を持ち掛けることができる可能性がある。ブリタニアがテーブルにつくかは未知数だが、もしつけばいくらでもやりようはある。何より日本は、地下鉱物資源の一つで今やどのような工業製品にも必要不可欠なサクラダイトの一大採掘国だ。世界のサクラダイトの採掘量の実に半分が日本で採れる。

採掘業は桐原家が資本となっている桐原鉱業で大部分が行われている。その桐原鉱業が産出する量のいくらかを優先的にブリタニアに回すことを交渉のカードの一枚として引き合いに出せば、それなりに対等な交渉をすることができるだろう。そうとなれば、まず桐原産業を軍部に接収されないように地均しをしなければならない。そこまで話し合い、具体的な対策を出し合う。

 

 「ブリタニアと戦争となると、国家を挙げての総力戦になることは間違いないだろう。となると、早い段階でブリタニアと通じること、また、戦争中に接収できないよう桐原ともども保護する必要がある。」

 

 「桐原鉱業を神楽耶の私物とすることはどうか。そうすれば軍部も手は出せまい。そうして現在軍部に供給しているサクラダイト量のうち、いくらかを軍部の目が届かない場所からブリタニアに流して先に恩を売っておく。」

 

 「神楽耶の私物とすることには賛成だが、軍部の目につかない場所などあるのか?それに、桐原鉱業だけを私物化すると返って目立つ。どうせなら一旦、桐原財閥そのものを神楽耶の皇財閥の傘下に収めさせれば良いのではないか?桐原公は桐原財閥のトップとして桐原鉱業を運営し、それを皇財閥で管理しているという建前を作ってしまえば絶対に軍部は手を出せなくなる。」

 

 「それが良かろう。あとはブリタニアとの連絡をどうつけるかだが。神楽耶、お主の情報筋は使えないのか?」

 

 「残念ながらそこまではできないようです。ただ、直接の面識はありませんが、1人だけ心当たりがあります。その方なら連絡をつけてくださるでしょう。」

 

 「信用はできるのか?」

 

 「・・・おそらくは。そういった依頼を受け続けてきた家系です、腕も信用も確かです。それに、こちらから頼むのです、信用の一つくらい見せないでなんとします。」

 

 「良かろう。では神楽耶、早急にその人物へ依頼することを頼む。我々はいろいろと工作せねば。桐原鉱業の過去の財務諸表の改竄、採掘量のごまかしなど、やることは多い。皆頼むぞ。」

 

桐原泰三の一言をもって密会は終了した。天皇が住まう御所の中で行われた密議は、喋りさえしなければ軍部に漏れることはまず有り得ない。あとは如何に軍部の目を潜り抜けるかが『京都六家』の課題だった。

 

 

 翌日の昼、神楽耶は真夜中の密会で提言した相手を御所へと呼び出した。本来は軍部の力が強くなったことに危機感を覚えたことからSPとして雇うつもりだった相手を、国外との連絡係にする。それが神楽耶が思いついた案だった。侍女が相手の到着を告げる。

 

 「失礼します、神楽耶様、お客さまがご到着されました。」

 

 「通しなさい。」

 

一旦下がった侍女が1人の女性を伴って、再び神楽耶の部屋へと現れる。神楽耶は女性を部屋の中に入れると、侍女に部屋の周囲に絶対に人を近づけるな、と厳命して部屋の外へと侍女を追い出した。

 

 「お初にお目にかかります、皇神楽耶様、篠崎流37代目当主、篠崎咲世子と申します。本日よりSPとしてお側に侍ることとなります。何なりとお申し付けください。」

 

 「初めまして、篠崎咲世子さん、お待ちしておりましたわ。・・・それで、言いにくいのですが、SPとしてではなく、連絡係をして下さらない?」

 

挨拶も早々に神楽耶が突然の契約内容変更を申し出てきたことに咲世子は眉を顰めた。SPとしての腕が信用ならないと言っているのだろうか、と見当を付けて神楽耶に問い質す。

 

 「・・・どういうことでしょうか?私の腕が不安になられているのなら、」

 

 「いえ、そういうことではありませんの。突然ですが、現状の日本をどう思われますか?」

 

これまた突然だ。どう答えるべきか、神楽耶の性格をまだよく知らない咲世子は当たり障りのない答えを探して返す。

 

 「そうですね、軍部が東南アジアへと兵を派遣し、亜細亜連邦建設計画は現実味を帯びて、国民の生活も少しですが良くなりました。このままいけば、さらに国民の生活水準は良くなるのでは?」

 

 「それが一瞬の繁栄だとしたらどうしますか?」

 

 「どうして一瞬だとわかるのでしょうか?」

 

 「今、日本は軍部が政権の中枢を握り、議会に圧力をかけて立法権も意のままに、司法権力も正常に機能せず、軍部に取り込まれかけています。戦争には人間が必要です、このままでは、いずれ軍部は国民を使い捨てにし始めるでしょう。これはれっきとした国民への冒涜、私たちはこれを正さなければなりません。人なき国家など、国家ではありません。人と自身の信ずる心あってこその国家。そのためにあなたを国外との連絡係として雇い、戦争状態へと入った神聖ブリタニア帝国に秘密裏に交渉を持ち掛けたいのです。」

 

神楽耶の言った言葉をゆっくりと飲み込んだ咲世子は、神楽耶に問いかけた。

 

 「事情は分かりました。では連絡係として雇って頂くという契約に変更しましょう。連絡先の相手はどのような方が対象となるのでしょうか?」

 

 「先代の日本国首相、枢木ゲンブの一人息子である、枢木スザクを通して、彼と面識のあるブリタニアの皇子が直接の交渉相手となるでしょう。」

 

 「では、その枢木スザクという方を探し出して神楽耶様の言伝をお伝えし、返事を頂いてくればよいのですね?」

 

 「そうなるでしょう。ブリタニア軍の動きを注視していてください、必ず接触できる機会があります。」

 

 「分かりました。では、これにて。」

 

 「少し待って下さる?契約をまとめた正式な書状を今から書きますからそれを持っていてください。」

 

 「それならば、神楽耶様、その書状とは別にもう一通書いていただけませんでしょうか?」

 

 「それはどのような?」

 

 「私が神楽耶様にお仕えする者であるという書状です。これがあれば、万が一にも軍に捕まったとしても、下手に手を出せなくなると思います。」

 

 「まあ、それはそうですわね。分かりました。すぐ書き上げるので、少し待っていてください。」

 

そう言うと、神楽耶は文机を持って来て、咲世子の前でさらさらと2枚の書状を書き上げ、天皇家の菊花紋を朱肉につけ両方の書状に()してから、契約書の方を菊花紋が金色で捺されている紫の封筒に入れ、さらに金色で色付けされた蝋で封筒を閉じ、まだ熱い蝋に菊花紋の印綬を捺して封をしてから、これまた菊花紋が焼き(ごて)で捺してある細長く、薄い桐箱に収め、その上から金糸と銀糸でできた細い組紐(くみひも)で箱を縛り、その組紐にも蝋を垂らして菊花紋の印綬を入れて厳重に封をした。もう一方の書状は紫の封筒に入れ封をせずに桐の箱に収めて、書状の準備は整ったようだった。両方の桐箱を神楽耶は咲世子に手渡す。

 

 「念を入れて組紐で縛ってある方が契約の書状、簡素な形にしてある方が任命状です。有事の際は、組紐で縛ってあるものは見せるだけ、任命状の方は中まで見せても問題ありません。」

 

神楽耶から書状を受け取った咲世子は、2通の書状を大事そうに懐にしまい込んで挨拶をした。

 

 「ありがとうございます、神楽耶様。では、私はこれにて。」

 

 「侍女にお送りさせましょう。」

 

 「いえ、結構です。神楽耶様に報告させてもらうときも2人きりのほうが良いでしょう、失礼ながら勝手に出入りさせてもらうことになること、お許しください。」

 

そう言って、篠崎咲世子は部屋から出て行った。ふぅ、と一息ついた神楽耶は侍女を呼び出す。

 

 「失礼します、神楽耶様。お客様の、・・・あら?」

 

 「ふふ、あの方はすでに帰られましたわ。お茶を用意してくださらない?」

 

 「・・・っあ、はい、ただいま!」

 

側付きの侍女の間が抜けた顔を見れたことに満足した神楽耶は、先行きに一抹の不安を覚えながらも大いに期待をかけていた。

 

 京都御所を神楽耶以外に気付かれずに抜け出した咲世子は、早速情報を集めるためにまず軍部の動向を探ることにした。だが、軍部に直接入るのはリスクが高い。まずは順当に全国・地方に限らず、国内で発行されている新聞を集めてみましょうか、と今後の方針を決め早速今日の分を買い出しに行った。全国紙からまとめて買い、地方紙を扱っている店を片っ端から周っていく。

流石に京都では全地方の新聞を揃えられなかったので、東京へ移動を開始する。1時間後、東京への列車に乗り込んだ咲世子は先ほど購入した新聞紙の束に目を通し始めた。どれもトップに書かれているのは東南アジアに進出した企業の好調っぷりを称賛するものばかりで、2面や3面も大して変わらず、国内に関して書いてあるものがほとんどだ。国外に関する情報は、文化欄やスポーツ欄を除くと全く見当たらなかった。

東京まで行かなければ後はわからないか、と諦めかけた咲世子は、そこでヒソヒソと話し合っている2人の男を見つめた。ところどころ軍部、ブリタニア、と言葉が聞こえる。咲世子は東京で新聞を買い集める予定を変更し、この男たちの後を尾行してみよう、と考えた。

 

男たちは東京駅に着くと、新宿方面への電車に乗り込んでいく。すかさず咲世子も男たち後をピッタリと付け一緒の電車に乗り込んだ。しばらく電車に揺られ新宿駅に着くと、男たちは降りていき北口を出て歩き始める。15mほど離れて男たちの後を付けながらさりげなく2人の男の身なりや仕草を盗み見る。

左の男は天然パーマで背が高く、服装はパッとしない。そして、もう一方の男との受け答えから明確な主義主張をしない、日和見主義的な傾向を持っているように見える。もう一方の、右を歩いている男は、紅に近い茶髪に引き締まった体付きをしていて、スーツを着こなし、気付かれないように周囲を確認しながら歩いている。

もしやりあうことになったら右の男のほうが厄介だろう、と見当を付けておいた咲世子は、2人の男が歌舞伎町の一角にある『呑みや 玉城』という看板が立てかけてある地下室へと通じる階段を下りていくのを見届けてから、周囲の飲み屋をぐるりと回って、10分ほど経ってから先程男たちが下りて行った階段を下りた。

下りた先には『呑みや 玉城』の表札が和風の扉の横に下げてある。扉に手をかけゆっくりと開けて中を確認すると、カウンター席だけがある狭い飲み屋だった。しかし、明かりがついているのに誰もいない。そう、カウンターの向こう側にいるはずの料理人すらいないのだ。何か変だと思った咲世子が、一歩だけ足を店の中へ踏み入れた瞬間、こめかみに冷たいものが当たった。

横に目を向けると先ほどの茶髪の男が、自分の頭に銃を突き付けているのが見えた。その男が口を開く。

 

 「何者だ。なぜ我々を付けていた?」

 

 「・・・気付かれていましたか。」

 

 「あぁ、東京へ向かう列車の中で変な空気を感じたが、気のせいだと思った。しかし、新宿駅へ向かう電車の中で明確に視線を感じた。それが貴女からのものだというのは、降りて駅を出てから気付いたよ。さあ答えろ、なぜ我々を尾行していた?」

 

男の詰問に答えざるを得ないと状況から判断した咲世子は、渋々ながら自分の尾行の理由を話した。

 

 「・・・列車の中で軍部、ブリタニアという言葉を耳にしたからです。」

 

間を空けた咲世子の返答に、横の男はカウンターのほうへと少しだけ顔を向け溜息をつくと、そのままカウンターへ語りかける。

 

 「だから言ったんだよ公共の場で滅多なことは言うなって。」

 

 「す、すまない、直人。緊張して思わず喋ってしまった・・・。」

 

 「言っただろ、絶対厄介を招くことになるからどうでもいい話題を話してればいいって。あと、こういう場合のときは本名で呼ばない!はぁ、それにしてもこの人、どうすっかな・・・。」

 

あ、あぁ、と戸惑い気味に返事を返してくる背の高い天然パーマにもう一度、この直人と呼ばれた横の男が溜息をついた。そこにでもよー、とさらに別の男の声が割り込んでくる。

 

 「殺すにしてもこの近辺でやるのだけはやめてくれよな!そしたら直人も困るだろ、この店使いにくくなるぜー?」

 

 「本名を言うなって言ってるのに・・・。あぁ、分かってるよ真一郎。」

 

ここまで黙っていた咲世子は、一番話してくれそうな真一郎と呼ばれた男に問いかけた。

 

 「あなたたちはお互いに知人なのですか?でも私の横にいらっしゃる直人さんという方は、失礼ですが残りのお二方とは別世界の住人のように見えるのですが。」

 

 「んなこたぁー俺が一番知ってるわ、直人が俺ら2人とは出来がちげーってよ!!だけどな、直人のためなら俺は喜んで働くぜ、なんたって親友だからよ!」

 

玉城の答えに咲世子は、これは素直に腹を割って話したほうがいいかもしれないと思い、自分の目的を3人に正直に話した。

 

 「そうですか、ところで、日本軍についての動向を知っているのですか?もし知っているのなら、教えてくださいませんでしょうか?」

 

 「なぜ、俺たちが知っていると思う?物的証拠はないし、状況証拠としても、俺とそこの男が列車の中で軍部、ブリタニアと言ったというだけの、弱いものだ。」

 

 「信じてもらえるかどうかはこの際、問いません。私は皇神楽耶様からとある依頼を受けて、日本軍とブリタニアの動向を探ろうとしているのです。ですので、たとえ弱い証拠であっても逃すわけにはいかないのです。」

 

咲世子の言葉に背の高い天然パーマが、直人へ声をかけた。

 

 「なあ、俺たちの目的を言ってもいいんじゃないか?あの、『京都六家』の皇神楽耶様の伝手ってことは、俺たちが味方するべき相手なんじゃないのか?」

 

この言葉に直人が冷たく返す。

 

 「この女が皇神楽耶様とどう関係しているのか、明確な証拠がない。見せられれば別だが、そんなもの、持ってないだろう?」

 

早速使いどころが来たな、と咲世子は懐から組紐で縛られていない桐箱を取り出し、直人に見えるよう掲げた。

 

 「ん?・・・それは・・・、本当に神楽耶様の・・・?」

 

 「はい、有事の際はこれを見せるよう言われております。これで証明になりますか?」

 

 「・・・中身はまだ見ていない。開けて中にある書状を見せろ。」

 

では、と咲世子は箱を開け、中にある任命状を直人の目の前に突き出す。間違いなく、天皇家のみが使用できる菊の御紋が朱印で捺された正式な書状だった。咲世子のこめかみに当てられていた銃が下ろされる。

 

 「確かに確認した。はぁ、分かりました、我々が知っていることを貴女に教えましょう。ここで話せば外に漏れる可能性がある。奥に行きましょう。・・・貴女のお名前は?」

 

書状を見て態度を改めた直人は咲世子を協力者として取り込めないか考え始めていた。

 

 「篠崎咲世子と申します。」

 

 「では、篠崎さん、奥へどうぞ。真一郎、店は通常営業していてくれ、あとで結果を教える。要、奥に行くぞ。」

 

こうして咲世子は、未だ目的を掴めていない相手とともに店の奥へと続く通路へと消えていった。




ラウンズの機体は、原作ではそれぞれのラウンズに直属の技術チームがついて専用機体を開発していますが、スザクの下についた特派の新名『キャメロット』しか技術チームの名前がわからなかったので、こちらでは特派が一括でラウンズの機体を開発・整備していることにしました。新たな組織名として、特派には新しいチーム名を付けようと思います。
あとせっかくラウンズの一員なのに、原作では特に円卓の騎士の名を冠した専用機体を所有していないノネットさんにオリジナルで専用機体をプレゼントしました。

『京都六家』のメンバー、名前に漢字を当てられていないキャラクターもいたので、当て字をした上で、姓から連想される役割を後で与えようと思います。

はい、覚えている人は覚えているでしょう、直人は『紅月ナオト』です。おそらくですが、ブリタニア人とのハーフかなと思ったので、勝手に漢字を当てました。
漢字が当てられていない日本人名のキャラには基本的に漢字を当てています。

オリジナル設定はこれくらいでしょうか?
少し、というより5000字くらい多くなってしまいました。次もこれくらいになるかも?
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