新約 コードギアス   作:編集長

5 / 7
評価の高い方の書いたものを読むと、あぁこんな書き方もあるなとつくづく勉強になります。あとは世間一般で評価されている作家さんとかの作品もいい勉強になるので、もっといろんな本を読まなければ・・・。


肆話:急襲準備

 寥々とした大地にKMFがせっせとコンクリートでできた四角いブロックを積み上げていく。ここはアッツ島。ルルーシュを指揮官として出撃した北海道急襲軍は、敵に発見されることもなく順調にアッツ島まで辿り着いていた。到着した直後から臨時基地建設に取り掛かり、半分ほどまでの作業工程を終えたところである。次の日の、日の出までには基地を完成させなければならないことから、ラウンズ直属だけでなく、ラウンズ本人たちまでもが作業に従事していた。ちなみにルルーシュも最初だけ手伝ったが、体力のなさから早々に物資整頓及び管理のためアヴァロンの中へと引き戻された。

手早く資材管理を表にまとめたルルーシュは、アヴァロンに届く基地の建設進捗の報告を見て頬を緩ませる。

 

 「基地建設は順調だな。よし、あとは周辺の詳細な地域把握とそれに沿った基地防衛計画の策定さえすればいいだろう」

 

それには連れてきた100名ほどの中から4人の班を5つ作ってアッツ島内部と周辺を調査させる方向で、と考えていたところにロイドを連れたジェレミアが近寄ってくる。

 

 「殿下、基地建設はほぼ予定通りの時刻に完成します。そこで、そろそろ島内の探索と周辺地理の把握をしようと思うのですがいかがでしょう?」

 

 「俺も今それを考えていたところだ。ジェレミア、早急に4人ずつ組ませた班を5つ編成し、西を中心に探索を、」

 

そこでロイドが手をわちゃわちゃさせながらジェレミアとルルーシュの中に割って入ってきた。

 

 「殿下、そこで提案なのですが・・・。ユーウェインのデータを取りたいのです、島内探索をエニアグラム卿に任せていただけませんか?それと殿下のガウェインですが、そちらもデータを取りたいのでお暇な時に特派に来ていただけるといいのですが」

 

 「・・・実戦前の試験運用か。分かった、ロイドはすぐにエニアグラム卿を周辺探索へ向かわせろ。それとガウェインのデータ取りはあとで特派に向かうからそれまで待っていてくれ。ジェレミア、編成はそのままでアッツ島周辺海域の探索を任せる。それとキューエル卿を呼んでくれ」

 

 「「イェス・ユアハイネス」」

 

ロイドとジェレミアが駆け出していく姿を見送り、入れ替わりで来たキューエルに声をかける。

 

 「キューエル卿、貴方には補給路の確保を頼みたい。アッツ島までの道に少しづつ兵を置いてきたが、アラスカとの補給路を確立しておかねば私たちは動けなくなる」

 

ルルーシュの言葉にキューエルは少し顔を顰めて問い返してきた。

 

 「殿下、それは私を前線から遠ざけるということですか?」

 

 「あぁ。騎士としてはやりたくないと思うのは無理ないことだが、こればかりはどうにもならん。私に回されてきた直属の中で、熟知できているのはジェレミアだけだ。貴公とヴィレッタはまだよく把握できていない、能力の正確な把握という意味でもどういうことが向いているのか知りたいのだ」

 

 「・・・そういうことでしたら。では、ヴィレッタもお付け下さらないでしょうか?伸びきった補給路は維持することが難しい。そのためにも、気心知れる者と連携をとって行いたいのですが」

 

 「いいだろう。ただ、ヴィレッタはジェレミアの副官だ。先にジェレミアに確認を取っておけ。あとで面倒なことにならないようにな」

 

 「イェス・ユアハイネス」

 

これで補給路の心配もひとまずはなくなった、ではロイドのところに行くか、とアヴァロンのハンガーへと足を向けた。

 

 

 通路からハンガーを覗いてみると、ちょうどランスロットのスザクを載せての初期起動が終わったようだった。ユーウェインがないところを見ると既にノネットは探索に出かけたらしい。ランスロットの横に置いてある様々な機器とモニターから目を離したロイドがルルーシュに気付き声をかけてくる。

 

 「あ、殿下~、ちょうどいい頃合いに来ましたね。それにしても殿下のお知り合いはとびきり優秀なパーツが多いですね、枢木卿なんてランスロットの初期起動で適合率95%超えましたよ!エニアグラム卿も凄かったですけど、KMFの操縦技術においてはあのマリアンヌ様に迫るものがありますよ枢木卿は!」

 

 「そうか、お気に召して何よりだロイド。スザク、ランスロットの乗り心地はどうだった?」

 

 「シートの座り心地って意味だったら最悪もいいところだけど、機体性能のことを言ってるなら今の僕にとっては最高だよ!士官学校で少しだけ乗らせてもらったKMFとは大違いだ、少しだけ腕を回したりした程度だけどハッキリ違いが分かった。あとは実際に出撃してみてのお楽しみだね」

 

 「そうか、流石ロイド、KMFにかける情熱は桁違いだな」

 

 「それはもう!では殿下、あちらをご覧下さい」

 

ロイドに促され見やった方に通常の1.5倍ほどの大きさの黒いKMFが鎮座していた。機体の大きさもそうだが、両肩についた金色の突起、背面に見える赤い6本の光背にも似た細長い爪のようなものが印象的な機体だった。近づいて横から眺めると、両肩も全面に向けて盛り上がっている。

 

 「・・・これがガウェイン・・・。でかいな」

 

ルルーシュの無意識の呟きに敏感に反応したロイドが説明を始める。

 

 「そうです殿下、これが我が特派の試験段階のドルイドシステム、フロートシステム、加粒子砲の一種であるハドロン砲を実験的に組み込んだガウェイン!ドルイドシステムとは、現在KMFに搭載されているファクトスフィアをさらに発展させた解析装置で、多次元の分析・解析作業が一瞬でできる電子解析システムです。フロートシステムとハドロン砲は、って殿下に説明するまでもないか~、枢木卿でもあるまいし」

 

ロイドさんそんなに言わなくてもいいじゃないですか、と膝を落として涙を流すスザクをよそにロイドがルルーシュに向かって喋り続ける。

 

 「ガウェインの一番の問題はドルイドシステムによる火器管制、通信管制とかの制御と機体操縦の両立が非常に難しい点です。なので複座式になってますが、とりあえず、ドルイドシステムの制御でフロートシステムが正確に作動するかが知りたいことなので殿下おひとりでも動かせると思います。」

 

 「何はともあれ、乗ってみないことには分からん。ロイド、セットアップは頼む」

 

 「りょうーかーい!」

 

気が抜けるロイドの返事にルルーシュは苦笑しながらガウェインへと乗り込む。内部を見るとロイドの言葉通り複座式で、前部座席は通常のKMFの操縦桿、後部座席には通常のKMFの操縦桿に加えて、両側からキーボードのようなものが飛び出ている。おそらく後席に付いているキーボードがドルイドシステムの制御をおこなうためのインターフェイスなのだろう。これを一人で操作するとなると確かに骨を折りそうだ。

 

 「ロイド、今回のテストはアヴァロン内で動かすのか?」

 

 「いえ、殿下、実際に外を飛んでもらってデータを取りますよ。大丈夫、操縦は枢木卿に任せればいいので!」

 

 「・・・いや、操縦も俺一人でやってみよう。それにスザクはランスロットがあるし、実戦になればペアがいない限り俺一人で動かすことになるのだろう?」

 

 「それはその通りですが、よろしいのですか?」

 

 「操縦を後部座席でも行えるかどうかのみが問題だ。あとは俺の技量と慣れで何とかなる」

 

 「了解しました。では、ドルイドシステムに操縦プログラムも組み込みますので、少々お待ちを~」

 

そういうや否や、ロイドは脚立をガウェインの頭部にかけて大きなソケットを持って上がり、頭部装甲をひっぺはがし無造作にソケットを差してガウェインの横に持ってきたパネルを覗き込んでキーボードを叩き始めた。

 

 

 

         ◆         ◆         ◆

 

 

 

 「うぃーさみぃー!」

 

ルルーシュから出された指令によってユーウェインの試験運用を兼ねた島内探索にでたのは良かったが、空一面曇り模様に加えて準備してきた防寒具がやや足りなかったようでノネットは先ほどから寒い寒いと文句を繰り返していた。それは通信を開いているセシルのほうにも届いていたようで、微苦笑しながらノネットがいる周辺地域の地形情報を転送してくる。

 

 「エニアグラム卿、防寒具が足りなかったのですか?あ、そこから先クレバスに注意です」

 

 「はいよ。いやー、防寒具は仕方ないとしてもKMFの中がこれだけ寒いとか聞いてないよ、エネルギーの放出熱で少しは暖かいと思ったのに」

 

ノネットはぶつくさ言いながらも手元にある操縦桿を握りなおして集中する。今動かしているのはノネットが搭乗している本体のユーウェインではなく、ユーウェインから分離した『ライオン』だ。ガウェインとは比ぶべくもないが、それでも一般のKMFに比べると遥かに性能の上回る簡略化されたドルイドシステムを介して、『ライオン』に搭載された碧の目の形をしたカメラから周囲の情報を得ては予測を付けて雪山の中に『ライオン』を突入させる。それがここ1時間ほど続けられていることだった。

 

 「仕方ありませんね、実験機な上にまだ脱出装置もつけられてませんからコックピットと外との壁が薄いですし。その上、今は『ライオン』のほうを動かしている状態ですから本体が寒風に晒されている現状、機内の温度は下がる一方です」

 

セシルの続く言葉にノネットは少しだけ驚いた。

 

 「へ?こいつ、脱出装置付いてないの?」

 

 「え、ロイドさんから聞いてませんでしたか?!」

 

 「うん、聞いてないけど」

 

画面の向こうでセシルが黒いオーラを発し始め、あぁこれはロイド死んだな、と少しの哀れみをロイドへ送った。まぁ、言わなかったロイドが悪いのだ、長々とした説教で終わることをロイドは祈るほかないだろう。やがてセシルの、ロイドへの呪詛にも似た文句が終わり先程までと同じように事務的な連絡のみを行いあう。

正直つまらないものだ、本来ラウンズとはこんな地味な役はやらず、皇帝の刃鋭き剣として一騎当千、万夫不当の気概を持って敵軍を打ち破るのが仕事であり、使命だ。何か退屈凌ぎになるものないかなー、とノネットが思案を巡らしていたところにセシルの緊張した声が耳に入ってくる。

 

 「エニアグラム卿、上空西方向から所属不明の機影を複数確認しました。至急確認お願い致します。」

 

お、これは?、とノネットは昂り始めようとする己を鎮めながらセシルに了解して、『ライオン』の頭部を上空へ向けて偵察し始めた。普通の映像からは何も感知できないが、サーマルビジョンを通して観察すると、すぐに青紫に映る空の中にオレンジ色の点がぽつりぽつりと姿を現す。

 

 「これはマズいかも。セシル、すぐにルルーシュに連絡とって。あたしはこのまま偵察を続けるからその情報をそのままルルーシュに転送し続けて。アウト」

 

セシルの返事を聞かずに一方的に通信を切ったノネットは、遠距離まで届く武装があるかユーウェインを確認し始めた。ランスロットよりほんのすこしあとに製作が始まったユーウェインには、基本的にランスロットと同じ武装を装備していて、ないのはヴァリスくらいだ。この場面でヴァリスがないというのは痛いが、この機体のコンセプトを考えると近接を中心にした武装が大半を占めるのは仕方のないことだろう。

それでも何か、武器になり得るものがあれば牽制の意味合いでこの場に縫い留めることができる。そう考えながら、パネルに映る武装スロットをしたまでスクロールしていくと、『ライオン』のタブに何かあった。クリックしてみるとハドロン砲、とある。どのように使用するかを確認すると、ユーウェイン本体に『ライオン』を再接続すれば発射できるようになるようだった。

ならば、と偵察に出している『ライオン』を、上空を偵察させながら全速力でユーウェイン本体へと戻す。来た道を引き返すだけだ、注意する必要のある所はすでに確認済み、あとは所属不明機群がどう出てくるかだ。そう考えながらパネルを睨んでいると、青紫に映る点々が俄かに赤く、大きくなり始めた。

 

 「おいおい、確認もなしに射撃体勢に入るつもりかよ頭大丈夫か?」

 

未だこちらが何者かわからないはずであろうに、勧告も警告もなしに射撃体勢に入るとは根性のあるやつらだ、とノネットは思いながらオープンチャンネルを開いて声を張り上げた。

 

 「こちら神聖ブリタニア帝国軍所属、ナイトオブラウンズが一角、ノネット・エニアグラムだ。当方はそちらの熱源を感知した。そちらの所属を明らかにせよ、繰り返す、そちらの所属を明らかにせよ。」

 

返事はない。これはいよいよ日本軍かもな、と思い始めたところにルルーシュから直接通信要請が届いたのを見て、迷わず開く。

 

 「エニアグラム卿、所属不明機を複数確認したらしいな、現状は?」

 

 「ただいまこちらの所属を明らかにした上で所属を問いましたが応答しません。奴ら、どこの、お?」

 

ルルーシュに返答していたところ、所属不明の機影が旋回していることを確認する。

 

 「どうした?」

 

 「奴ら、旋回しています。元来た道を引き返すつもりのようです」

 

 「まずいな、こちらの行動が筒抜けになる。エニアグラム卿、牽制程度になる武装はあるか?」

 

 「あります、牽制程度でよろしいのですか?やろうと思えば撃墜できると思いますが」

 

ノネットの回答にルルーシュは少し逡巡した後、ノネットに命令を下した。

 

 「なるべく牽制に留めてほしい。逃げられそうなら撃墜せよ」

 

 「イェス・ユアハイネス」

 

通信を開いたまま、本体と合流を果たした『ライオン』を変形させる。頭部は上下に開き、前足は地面に固定され、後足はユーウェインが持つハンドルとなり、尻尾のように上を向いていた通信用アンテナは根元から折れ曲がって『ライオン』の胴体上部にぺったりと張り付き照準器となった。所謂固定砲台というやつだ。モニターにはパネルに映してあったサーモが全面に映し出され、そこにハドロン砲照射時の予測射線が表示されている。

 

 「では、いっちょ撃ってみますか!」

 

そう言うと、ノネットは射程が伸びるよう本体のエナジーも固定砲へと充填していき、充分なエナジーを確保したことを確認した後、ハドロン砲を発射した。

 

禍々しいまでの赤の射線が大地から天へと槍投げのように突き抜けた。そのあとには、空を覆う雲から一点の陽光が大地を照らし始める。

 

ハドロン砲の牽制射撃を受けた所属不明機群は慌てふためき、その場をさらに旋回、ユーウェインへと突撃してきた。そこにもう一発、ノネットはハドロン砲を撃ち上げる。機体には当てていないが、すぐそばをとんでもない熱線の塊が通り過ぎるのだ暑いなんて生易しいものではないだろうに、それでも所属不明機は揃って突っ込んでくる。そこに10体の小さな飛翔体がユーウェインの背後から飛んできて、所属不明機の翼をコックピットに当てずに切り裂いていき、すべての所属不明機が翼を折られ、天から落ちていった。

ノネットが背後を確認すると、上空に腕を前方に突き出しているガウェインの姿があった。その下をランスロットが猛スピードで所属不明機へと駆けていき、自分を瞬時に通り過ぎていく。これは所属不明機のパイロット捕獲が目的だ、と気づいたノネットは固定砲から本体を切り離し、ランスロットの後を追随した。ランスロットは次々と落ちてくるコックピットを受け止めては地に転がし、転がしては受け止めて、とまるで軽業師のようだった。

ノネットもそれに倣い、落ちてくるコックピットを受け止めていたが、パイロットが逃げないよう、MVSを起動させ構えておく。そこにルルーシュの声が空から降り注いだ。

 

 

 

         ◆          ◆          ◆

 

 

 

 ルルーシュは、スザクがコックピットを受け止めているのを空から眺めながら、そろそろか、と頃合いを見図ってオープンチャンネルを開いた。

 

 「所属不明機に搭乗していた諸君に告げる。当方は神聖ブリタニア帝国軍である。投降せよ。おとなしく投降するならば、ハーグ陸戦条約に則り捕虜としての身分を保証する。再度勧告する、投降せよ、投降するならば捕虜としての身分を保証する」

 

これで少しは降りてくるはずだ、と高を括ったルルーシュは次の瞬間信じられないものを目にした。

 

「なっ!」

 

翼をもがれた鳥から出てきた所属不明の人々は、腰元のホルスターから拳銃を抜いたかと思うと次々に自らの頭部を撃って自決していったのである。止める間もなく、全員が一瞬の迷いすら見せず死んでいった光景にルルーシュは大きく動揺した。人が死ぬ光景を初めて見たこともショックだったが、それよりもなぜ死を選んだのだ、という疑問が頭の中を支配する。

空中に浮遊させていたガウェインを地上に下ろし、既にそれぞれの機体から降りたスザク、ノネットの下に走り寄る。スザクは立ち尽くしたまま握り拳をこれでもかというくらい握り込んで目を(つぶ)っていた。ノネットは手近な死体に向かって黙祷(もくとう)した後、死体の横に転がっているコックピットの中を調べ始めていた。スザクの横に立ったルルーシュはスザクにどう声をかけたものか、迷ったがスザクが先に口を開いた。

 

 「ルルーシュ、これが今の日本の姿だ。間違った考えを持った奴らによる統治の結果だ。僕は認めない。正当な手順を踏んで統治権を得た者のみが正しい政治を行える、そして僕はそれを実行するために戦う」

 

 「まだ、この所属不明の人々が日本人とは限られた訳じゃないだろう」

 

 「いや、日本人だよ。ほら、そこのマスクを取った顔、見えるだろ?あれは日本人の顔立ちだ」

 

かつて日本に旅行に行ったことのある程度で顔立ちだけでは判別がつけられないルルーシュだが、スザクがそういうならそうなのだろう、と思い、スザクから離れてノネットのほうへ足を向ける。

 

 「ノネット、何か見つかったか?」

 

 「あぁ、ルルーシュ、さっきはありがとう。見つかったよ、3つ調べたけどすべてにこれが貼り付けてあった」

 

そう言ってノネットがルルーシュへ差し出した(てのひら)には白地に赤い丸が縫われた小さな布切れだった。見るも明らか、日本の国旗だ。スザクの言う通り、彼らが日本人であった事実と何も言わずに死んでいった光景にルルーシュは胸が張り裂けそうだった。

 

 「なぜ死んだのだ、たとえ恥辱であろうとも生きていればいくらでも(すす)ぐ機会はあるはずなのに・・・」

 

 「そう教育されている可能性もあるけど、・・・ルルーシュ、ギアスが絡んでいる可能性も否定しきれない。何も言わずに自殺なんて普通はおかしい、裏があるぞ、これは」

 

ノネットが発したギアス、という言葉にルルーシュは感情を押し込めて、頭の中で計算を始めていた。ノネットの言う通りだ、いくらそうあれ、と教育されていたとしても一瞬は迷うはずだ。人間であるならば、回顧し、自らの将来を予想しそれに絶望してなお、自殺できない人だっている。それが全員が全員、あっさりと命を投げ出すなど本来あってはならない事態だ。となると、条件付けのギアスを何者かにかけられていた可能性が高い。

そう考えると、ハッキリと日本の背後に何がいるのか分かり始めた。日本の背後にギアス嚮団がいる。しかも軍の末端にいるであろうパイロットたちにかけられるということから、日本軍部の中央まで入り込んでいることになる。これは相当厄介なことになるだろうな、とルルーシュは早速本国に連絡するべき事項が出てきたことに嘆息した。ルルーシュは再起動したスザクの肩を叩いてから、スザクとノネットに命令した。

 

 「スザクとノネットはこの場を保持しろ。敵機を認知した場合は即刻撃墜させ、所属不明の場合は友軍の場合を除きこれを排除せよ」

 

そこにノネットが質問してくる。

 

 「もしE.U.軍だった場合はどうしましょう?」

 

 「いずれ戦端はE.U.とも開かれる。向こうが撤退しない場合は撃墜していい、責任は俺が取る。これから俺は回収部隊を呼ぶからそれまで2人で頼む」

 

 「「イェス・ユアハイネス」」

 

2人を残したルルーシュは基地へと全速力で取って返した。

 

 

 

         ◆         ◆         ◆

 

 

 

 基地に着いたルルーシュはロイドとセシルを呼び出し、予備のエナジーフィラーを4つ持って、スザクとノネットの下へ急行させた。その次に、島周辺部の探索に出ていたジェレミアを基地に呼び戻し再補給させたうえで死体とコックピットの回収へと向かわせた。これが終わると、コーネリアに通信を求め、本国との中継を頼みシュナイゼルに会見を求めた。長めのコールが続いたあと、少し眠そうなシュナイゼルが顔を出した。

 

 「宰相閣下、夜分遅くに申し訳ありません。ですが至急連絡いたしたい議がございましたので、」

 

 「いいよ、ルルーシュ、これは帝室専用チャンネルだ、変に畏まらないでくれ」

 

 「では。兄上、日本軍にギアス能力者が紛れ込んでいる可能性があります。さきほど、アッツ島に日本軍機が少数乗り込んできたので撃墜し、尋問を試みましたが瞬時に自害されて果たせませんでした」

 

ここで中継をしているコーネリアが声を挟む。

 

 「それはそういう風に教育されていたとかではないのか?」

 

 「それは考えましたが、それにしては自害するまでが早すぎたのです、姉上。普通、どれだけ自殺しようと思っても、少しは逡巡するはずです。ですが彼らは、戸惑いなく自害しました」

 

 「その様子から日本軍内部にギアス能力者がいるのでは、と?」

 

 「はい兄上。もっと言うならばギアス嚮団そのものが日本軍を裏で操っている可能性があるのでは、と俺は思ってます」

 

 「・・・いよいよ動き始めたということか。ルルーシュ、周囲には気を付けるんだよ?今C.C.を君のほうへ向かわせているが、コーネリア、C.C.はそちらに着いているかい?」

 

 「既に到着し、大量のピザを入れたコンテナを補給部隊に引き渡してからルルーシュのいるアッツ島へと向かっていきましたが・・・。兄上、C.C.を皇宮の外に出してよかったのですか?」

 

 「本来ならば避けたい事態だが、ルルーシュは契約する前に出撃してしまった。ギアスを持たずに皇族が皇宮の外を歩き回るのは本当は帝室の暗黙の了解に反することなんだがね」

 

シュナイゼルの言葉に勢いに乗って出撃してしまったルルーシュとそれを失念していたコーネリアは、揃って、うっ、っと詰まったがルルーシュが何とか立て直す。

 

 「それは申し訳ありませんでした、兄上。しかし、兄上がC.C.をこちらに遣わすことでその問題も消えます」

 

 「あぁ。あ、それとルルーシュ、C.C.はそのままそちらで預かっていてくれ。また連れ戻して駄々をこねられると私も父上も痩せるほど辟易する、頼んだよ」

 

 「え、はっ?」

 

ルルーシュが困惑した声を上げた瞬間にシュナイゼルを映していた映像タブは砂嵐に覆われた。中継していたコーネリアがルルーシュに目線を移し、語り掛けてくる。

 

 「ルルーシュ、日本軍が現れたと言っていたが、被害はあったのか?」

 

 「大丈夫ですよ、姉上。先に発見したのが特派のセシル嬢とエニアグラム卿でしたので、エニアグラム卿に押さえてもらって俺とスザクで撃墜、捕獲しました。被害はありませんでしたよ」

 

 「そうか、それはよかった。こちらはアラスカに軍を集結し終えたところだ。今夜に出撃、明日の未明にハワイ基地に襲撃をかけるつもりだが、それでいいだろうか?」

 

 「構いませんよ、姉上。こちらは姉上の襲撃のタイミングを見計らって北海道に急襲をかけることにしましょう」

 

 「そうすると、今夜に同時出撃だな。だが、ルルーシュ、C.C.を待ったほうがよいのではないか?兄上もああ言っていたし、ギアスの契約をしてからでも遅くはないと思うが」

 

 「そのことなのですが、特派が建造したガウェインという機体を私が搭乗することになったのですが、複座式なのでいざとなったらそこに一緒に入ってもらうことになると思います。その時に契約するほうが手っ取り早くていいと思いますが、どうでしょう?」

 

 「・・・いいのではないか?私はあまりあの者が好きではない、煙に巻かれている感覚がどうにも好かん、奴が嫌いそうなことをお前がするなら全面的に賛成だ」

 

 「酷いですね、姉上。俺は少ししか会ったことがないのでよくわかりませんが、まぁ仲良くしてみましょう」

 

巻かれるなよ、と念を押すコーネリアに、笑いながら分かりましたよ、と返したルルーシュは通信を切った。その後、死体と機体を回収したジェレミアの部隊と共に帰ってきたスザク、ノネットに今夜襲撃をかけること、そのために今から仮眠を取るよう促し、ジェレミアには死体の火葬を頼んだ。ロイドとセシルには回収した機体からデータを抽出するよう命じると自分も仮眠をとるためアヴァロン内にある仮眠室へと向かい、寝台に寝っ転がるとすぐに意識が微睡の中へと落ちていった。

 

 夜の帳が下り室内の寒さに目を覚ましたルルーシュは、自分の寝ている寝台に無理やり入り込もうとしている人影と目が合った。

 

 「ほおぁっっっ?!」

 

ルルーシュの上げた奇声にその人影はくくくっ、と可愛らしく、くぐもった笑い声を上げた後ルルーシュを寝台の奥へ奥へと押しやると、壁と自己の間にルルーシュを挟み込み機先を制して挨拶をした。

 

 「やぁルルーシュ、私はC.C.。初めましてではないが、よろしくな」

 

 「お、お前がC.C.か。幼いころに母の隣にいたような覚えしかないが・・・」

 

 「あぁ、あのあとはひたすら遺跡を調べていたからな、マリアンヌやシャルルとは顔を合わせることが多かったがお前たちとはなかったな。それにしても、マリアンヌに似て美しく育ったな、貰ってやってもいいぞ?」

 

 「なっ、誰が婿に入りに行くかっ、冗談にしては面白くないぞ?!」

 

 「ふふっ、ちゃんと冗談とわかっているじゃないか」

 

そう言うと、C.C.は腕をルルーシュの首に回し抱き着く。いい匂いだ・・・、このままもう一度寝るか・・・、などとトリップしかけたルルーシュは、はっ、としてからC.C.腕に手をかけて体を離そうともがいた。

 

 「離れろ、そろそろ出撃だ。おいっ、聞いているのかっ」

 

 「聞いているとも、だがお前にはギアスを授けなければならない」

 

 「っ、そ、そういえばそうだったな。いいだろう、ここでやろう」

 

C.C.はルルーシュの首から腕を(ほど)くと、ルルーシュの手をおもむろに取った。その直後、C.C.の額に前髪で隠されていた緋色の紋章が光り始めたかと思うと、ルルーシュは真っ白な世界にいた。そこに脳内に直接語りかけてくるようにC.C.の声が厳かに響く。

 

 「これは契約、王の力をお前に授ける。その力はお前を孤独にするが、お前が本当に望むものを与えてくれる、・・・」

 

その声が聞こえた後、ふと我に返ると、先程と同じようにC.C.と一緒に寝台に横たわっている自分がいた。体を起こして、異常がないか確認するが、特に何もない。疑問に思ったルルーシュは隣に未だ寝そべっているC.C.へと問いかけた。

 

 「本当に契約は為されたのか?」

 

 「あぁ、だがギアスとは本当に自分が望むものに至るために必要な力を具現化するもの、死に瀕するようなときにやっと発現するものだ。今はまだギアスが覚醒していない、皇族では今はシャルルとマリアンヌくらいしかギアスは発現していないだろう」

 

 「そういうものか。まぁいい、これで契約は成された。C.C.、お前はどうする?ここに残るか?」

 

 「そういえば出撃するのだったな、暇だ、私も連れていけ」

 

 「い、いや、俺は別に戦場に立つわけではないんだが・・・」

 

 「ならお前も出撃しろ、私は暇だ」

 

 「俺は指揮官だ、基地を離れるわけには、」

 

 「屁理屈をこねる奴は嫌いだ、さっさと機体に乗り込んで出撃しろ、私も付いて行ってやるから」

 

 「なんて横暴なっ、もごっ」

 

C.C.の言葉に文句を言おうとしたルルーシュの口に手を当て、ルルーシュの右手を引っ張って立たせると、C.C.は意気揚々、アヴァロンのハンガーへとルルーシュを引きずっていった。

 

 不本意ながらも、ガウェインに乗せられたルルーシュは、仕方ない、と諦め、前部座席に乗って明らかにワクワクしているC.C.を無視して、パネルに映っているスザク、ノネットに声をかけた。

 

 「準備はいいか、2人とも」

 

まさかルルーシュも付いてくるとは思ってなかった2人は困惑しながらも返事をする。

 

 「あ、あぁ、僕は大丈夫だよルルーシュ」

 

 「あたしもいけるよ。それにしてもルルーシュ、お前は出撃しないものだと思ったんだが」

 

 「俺もそのつもりだったんだが、急遽予定変更で付いていくことになった。基本俺は後方で警戒に当たるから、指揮は予定通りノネットが執ってくれ」

 

怪訝な顔をしていたスザクとノネットだったが、まぁ戦場視察とでも思えばいいか、とルルーシュに聞こえない秘匿回線で喋りあった後、ノネットが声を張り上げた。

 

 「了解、じゃあ行くか!」

 

ノネットの掛け声にそれぞれ返事をした後、ラウンズとその直属部隊、それにルルーシュとC.C.を加えた一行は北海道の根室目指して、アッツ島を飛び立った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。