TSSS~引きこもりが性転換したところでなにがあるわけでもない~ 作:ウルリヒト
「お、本当に女になってるんだな……冷静に考えると何だこれ」
「なんだこれって……僕が言いたいよそれは」
帰ってきた兄貴の反応にちょっと安心する。
なにせこの身は美少女である。兄貴の知るほねかわすじおの弟の姿からはかけ離れた容姿になっていることは間違いない。誰だお前は、とか言われたら悲しみのあまりショック死していたまである。
「まさかお前がなぁ……需要の無さが半端ないな」
「どこの需要も満たしてなくていい。いや、兄貴の需要は大事。どう兄貴、可愛い美少女に変わった僕は。庇護欲MAXじゃない?」
「もともとお前は庇護欲の塊だよ、落ち着け」
落ち着こう。たしかにちょっと興奮しすぎてた。うん?興奮しすぎた美少女……うわ、字面だけ並べるとなんてエロティックなんだ。
いけない、これはいけないな。迅速に落ち着こう。まさかこの僕が存在自体がエロの塊になってしまうなんて思わなかった。とんでもない破壊力だ。
「兄貴、僕はとんでもない凶器になってしまったかもしれない」
絶対馬鹿な事を考えていただろう、と兄貴は苦笑してスマートフォンを取り出した。
「ちょっと彼女を呼ぶわ。あいつのがその……色々用意も出来るし相談にも乗ってやれるだろうし」
「待って兄貴、それはこの家によりにもよって泥棒猫を呼び込もうっての?」
「いやお前、泥棒猫って……」
泥棒猫、そう泥棒猫。僕から兄貴を奪おうというとんでもない悪人である。兄貴がいなくなれば餓死待ったなしの僕からすれば敵以外の何物でもない。まさかその敵を僕の安息地ともいうこの家に呼び込もうというのか。兄貴よ、頭がおかしくなったのか。
「断固拒否する!兄貴が用意してくれればいいじゃないか」
「お前は俺に女ものの下着を買って来いと申すか」
「ガチムキ兄貴が女ものの下着コーナーで買い物か。事案案件待ったなし、僕じゃなくても通報するね。誰だってそうする」
「つまり無理だ、分かったか」
「……いいや、それでも」
それでも泥棒猫が我が聖域に来ることだけは阻止しなければ。あの女の臭いがするというだけで三日間は鼻が曲がって食事も喉を通らないに違いない。ただでさえ食の細い僕が三日も食事できなければ餓死待ったなしである。兄貴は僕を殺すつもりだろうか。おお、とうとう僕を捨てるんだね兄貴。
「いや落ち着け。分かった、分かったから」
どうどう、と兄貴の大きな掌で顔を包まれる。ああ、安心する。
「いやぁ、突然女になって流石のお前もかなり混乱してるのかかなり不安定だな」
「ん?何か言った、兄貴?」
いや、なんにもと言って兄貴は僕の頭を撫でると部屋から出ていった。スマホ片手に。
ん、いやこれはまさか……
「ごまかされた……だと」