「たえ?何でここにいるんだ?」
「何でって…バンドの練習だよ!この前同じ学校の子と組んだって言ったよね?もしかしてすばるん忘れてたの?」
「ああ…そんなこと言ってたな…」
そういえば学校の友達からバンドに誘われたという話を聞いたな。ここにいるってことは…
「ああ…ということは無事バンド組めたんだな!おめでとう!」
「えへへ…ありがと♪」
バンドを組めたのはめでたい話だ。だけどここで練習しているとは思わなかったな。
「誰かと思ったらたえか。久しぶりだな。」
「けーじくん久しぶり!」
「たえちゃん!俺のことも忘れてないよな?」
「ほっしーのこともちゃんと覚えてるよ。大丈夫!」
たえは中学まで同じ学校だったしギターという共通点もあったので慶次ともそれなりに仲が良い。星也や他の2人とも何だかんだで顔なじみになっている。
「あ!すばちゃんにけーくんだ!」
「なーんか聞き覚えのある声だなって思ったらあなた達だったのか。」
「香澄に市ヶ谷さん?」
「け、けーくん?」
いきなりあだ名で呼ばれて戸惑ってる慶次のことは放っておこう。たえの後ろからひょっこり現れたのは今朝あったばかりの香澄と市ヶ谷さんだった。
「そこの可愛い女の子たち…あとで俺と一緒にお茶でもしないかい…?」
「えっ…ええ…」
「ああ、こいつのことは気にしなくていいぞ。こいつは女性を見つけるとすぐにナンパを始めるからな。」
「すばちゃん達は何人でバンドやってるの?」
「香澄達と同じ5人だ。今日は俺ら3人しかいないんだけどな。」
「ほんと?他の2人にも会ってみたいなぁ…」
「いつもここのスタジオで練習してるんだったらそのうち会えるさ。」
「ねぇねぇ!他のみんなもすばるん達に紹介してもいい?2人ともいい子だよ。」
「気持ちは嬉しいけど今は練習に集中したいんだ。それにお前達だって早く再開しないと時間が無くなっちまうぞ。」
「それもそうだね。香澄!有咲!練習に戻ろっか!」
「うん!すばちゃんにけーくん!また後でね!」
「それじゃー」
「おう!」
「ま、また後で…」
一旦3人と別れ、俺達は自分の練習に戻った。そんな俺と慶次は部屋の隅で何故か泣き崩れている星也を見つけた。
「おいおい2人ともぉ…いつの間にお前らはこんなに多くの女子と親しくなってるんだよぉ…俺寂しいし置いてかれた気分だよ…」
「なんだよ…てか泣くことはねぇだろ!」
「これはたまたまだ!俺はお前と違って女子に飢えてる訳じゃないから君の言ってることが正直よくわからないな!」
「あとちょっと悔しいけどおめでとな!お前らにもやっと春が来たんだって思うとお兄さん嬉しくてなぁ!」
可愛い女の子を見つけるとナンパばっかりしてる星也だが、本当は友達思いで何だかんだ言っていい奴なんだ。少しくらいは感謝しないとな…
「ああ…うん、ありがと。」
「お前に育てられた覚えはないが一応感謝はしとく。ありがとな。」
「おう!昴ぅ!慶次ぃ!お前ら大好きだぜぇ!」
「離れろ!気持ち悪い!」
「お前は女好きなのか男好きなのかはっきりしてくれぇ!」
前言撤回、やっぱこいつやだ。涙で顔ぐしょぐしょにしながら男に抱きつくってどうゆうことなんだ…これじゃ俺らまでそういう趣味だと思われ…
「もう!桐生さん達うるさい!…えっ?」
「「あっ…」」
騒ぎまくる俺達が気になったのだろう。市ヶ谷さんが俺達の現状を見てしまっていた。
「ああ…えっとお邪魔しました…どうぞごゆっくり…」
「市ヶ谷さん?いや俺達はそういう関係じゃ…」
「いえ!大丈夫です!あなた達にどんな趣味や性癖があったとしても私達はあなた達のことを軽蔑するつもりはないです!ただ…」
「ただ?」
「その…防音なんで大丈夫だとは思うんですけど…音は控えめにお願いしますね…?」
そのまま市ヶ谷さんはドアを閉めて自分達の部屋に戻っていってしまった。
「ちょ!市ヶ谷さん!違いますってぇ!」
「お願いします!俺達を信じてください!」
結局その後の俺達は練習どころじゃ無くなってしまったのであった。
─────────────────────
「あはは!有咲もすばるん達も面白いね。」
「わ、笑い事じゃねぇし…なんか私まで恥ずかしいんだけど…」
「オワッタ…モウオヨメニイケナイ…」
「お…お前は男だから嫁にはいけないぞ…はぁ…」
無事に市ヶ谷さんの誤解を解いた俺達はたえや香澄達と一緒に羽沢珈琲店に来ていた。(本日二回目)
「はぁ…1日で2回もここにくるとは思わなかったな…つぐみ、とりあえずコーヒー1杯頼む。」
「はーい!桐生くんも大変だね…」
「同情するなら俺に和やかな時間をくれ。」
「あはは、ごゆっくりどうぞ!」
とりあえず本日二回目の注文をしてつぐみがコーヒーを持ってくるまでの間に俺達の本来の目的を思い出した。
「それで…ここに来た本来の目的は果たさなくていいのか?」
「そうそう!他の2人を紹介するってこと!」
「まぁここに来るまでに少し話したりしたからどんな人なのかってのはなんとなくわかったよ。」
「あはは、そうだね!それじゃ改めて、私はPoppin'Partyのドラム担当の山吹紗綾っていいます。」
「わ…私はベースやってる牛込りみです…」
「2人ともよろしく。俺は桐生昴だ。そしてこの2人は同じ学校とバンドのメンバーの五十嵐慶次と橘星也ってやつだ。」
「よろしく。」
「よろしくっす!」
さっき2人と少し話してみたけど、山吹さんはとても面倒見が良さそうな印象。牛込さんは引っ込み思案だけど優しそうだった。
「えへへーみんないい子でしょ?」
「ああ、いい人達なんだろうなってのは話してる時に伝わってきたよ。」
お互いに軽く自己紹介をした所でつぐみが人数分のコーヒーや紅茶を持ってきてくれた。
「はい!お待たせしました!」
「ありがとな、つぐみ。」
「ごゆっくりどうぞ!」
「それでね!今度他のバンドのみんなとライブやるんだ!すばちゃん達も見に来てよ!」
「そうなのか!それは面白そうだな。俺達も今度出てみたいなぁ…」
「それはちょっと厳しいかもしんないね。それはCiRCLEっていうガールズバンドだけのライブハウスでやることになってるから桐生くん達が出るのはちょっと…」
「そうだったのか。残念だなぁ…」
「見ることは出来るからよかったら来てね!」
「ああ!他の2人も誘って行ってみるよ!」
ライブをすることが出来ないのは残念だけど決まりなら仕方ない。たまには見るだけってのもいいものだろう。俺達は香澄達のライブを楽しみに待つことに決めた。
そんな他愛もない話をしているうちに空は少しずつ赤みを帯びていった…
─────────────────────
あまり長居しすぎても店の人の迷惑になるだろうと思った俺達は会計を済ませて解散することにした。今、俺の隣にはたえがいる。
「よかったねーみんなと仲良くなれて。」
「ああ、みんないい子で安心したよ。」
「でしょ?だって私の友達だもん!」
昴はたえが仲間のことを楽しそうに話すのを聞いて静かに笑みを浮かべる。
(友達か…昔からたえは俺以外の人とはあまり接したりしてなかったから高校でどうなるのか不安だったけどその必要は無かったみたいだな。だってあんなに素敵な仲間が出来たんだから…)
「どうしたのー?そんなにニコニコして?やっぱりみんなに会えて嬉しかったのかな?」
「そういうことにしておくよ!」
たえは1人でギターを弾いていた時よりも楽しそうにしている。それは香澄達のおかげでもあるのだろう。あには自分が羨むくらいにいい仲間が出来て本当によかったと思う。
「よし!練習頑張ろう!」
「頑張れ!ライブ絶対に見に行くし楽しみにしてる!応援してるよ。」
「うん!すばるんありがと♪」
これから色んな壁にもぶつかっていくだろうけどお互いに頑張っていこうな…たえ。
To be continued…
非常に遅くなってしまいましたが、気長に待っててくれた人がいるのなら心から感謝したいです。
それではまた。