PACIFIC EXTERMINATION ~特生自衛隊第2海上機動部隊~ 作:阪奈瑞洋
文章を書くのは大変ですね。最近自分は設定を考える方面が得意なのではと考えるようになっています。
航空自衛隊から特生自衛隊に転属となった中田悠一。幕僚監部のある八王子駐屯地で彼はとある艦娘と出会う。
大分から日豊本線の特急に乗り博多まで行き、博多から新幹線で新横浜に、新横浜から横浜線で八王子というルートで特生自衛隊の幕僚監部がある八王子まで行った。大きな遅れなどがなかったので予定どおりに夜には八王子に着いていた。その日は八王子のホテルで体を休め、翌日、僕は指定されていた時間より早く特生自衛隊八王子駐屯地に向かった。
・・・とそこまでは順調だった。ところがここで問題が発生した。駐屯地の正門がさっぱり分からない!どこの門も似たような作りのため幕僚長の執務室への近道である正門が分からないのだ。
(まずい、どこがどうなってるのかさっぱり分からない。時間はまだあるけど・・・。そもそもの話、執務室はどこにあるんだ?聞こうにも警務の人は特自のようだしどうしよう。)
と僕が迷っていると・・・
「失礼いたします。」
と後ろから声をかけられる。
振り返ってみるとそこには変わったセーラー服に身を包んだ栗色の髪の見た感じ高校生ぐらいの少女が僕を見ていた。
「もしかしてと思いお声を・・・、中田・・・龍一三等空佐でしょうか?」
「いかにも自分が中田です。あの、あなたは?」
「よかった! あっ、すみません申し遅れました、私、特生自衛隊統合司令部所属、あたごと申します。以後お見知りおきを。」
そう言うと彼女は海軍式の敬礼をする。
「中田龍一三等空佐です。えっとその・・・」
僕も反射的に敬礼する。
実は今、僕は少し混乱している。
というのも彼女が特生自衛隊の隊員であるという事が気になったからだ。基本的に自衛隊は高校を卒業してからでないと入隊することは出来ない。ましてやエリート部隊である特生自衛隊に彼女のようなか弱い女の子が入れるわけがない。
「?、どうされました?」
ふいに彼女に声をかけられたので我に返る。
「三宅幕僚長から申し付けられまして、迷っているだろうから迎えに行ってきなさい・・・と。でもすぐに見つかって良かったです。」
確かに、ここは政府の重要機密がある場所だから一自衛官では場所がわからないのも当然である。なるほどそのために迎えを出したのか。
「さあ参りましょう。司令部までご案内いたします。」
そう言って彼女は駐屯地の中に入っていく。僕も警務の自衛官に身分証を見せて駐屯地に入る。
「あたごさんでしたっけ。」
暫くして僕は彼女に声をかける。
「あたごでけっこうです、三佐。」
「あ、じゃああたご。」
僕は彼女にある疑問を投げかける。
「なぜ僕だってわかったんだい?駐屯地の前であんなに人がいたのに。」
「知りたいですか?」
「差し支えなければね」
「三佐の航空自衛隊の蒼い制服が人混みの中で目立っていましたから。」
とあたごは目を輝かせながら答えた。
僕は思わず照れて下を向きながら歩く。
「到着です。」
前を行くあたごが足を止めたので僕も足を止める。
「ようこそ特生自衛隊八王子駐屯地へ。」
と僕に振り返ってあたごは言った。
顔を上げるとそこには白い鉄筋コンクリート製の六、七階建ての建物があった。
「ここが・・・」
一見僕が元いた基地の建物と変わっている点はなかったが何故か僕は緊張した。
「そうです。白塗りの壁で清潔感があって良いと思いませんか?」
とあたごは再び目を輝かせながら言うが、実際自衛隊の基地の建物はほとんどこんな感じだ。なので僕は正直反応に困った。
「中もご案内いたします。」
「いや、あんまり時間ないんだ。じゃあありがとう。ここから先は自分ひとりで行けるから!」
と言って僕は慌てながら建物の中に入る。実際建物の中は基本的に全ての基地が統一されているのでここから幕僚長の部屋に行くことは自衛官にとっては容易なのだ。
「あのっ、私も一緒に・・・!」
あたごの慌てた声が聞こえたが僕は「大丈夫だから。」と言って入っていった。
「約束の五分前に来ているとはさすが空自のエースパイロットだ。」
「お褒めの言葉、ありがとうございます。」
ここは特生幕僚長の執務室。今僕は幕僚長と面談をしている。特生自衛隊の幕僚長は雰囲気のいい老紳士だった。
「とりあえず、私は特生自衛隊の幕僚長をしている三宅浩一という者だ。これから長い付き合いになると思うがよろしく。」
と言うと三宅幕僚長は右手を差し出す。
「はい、航空自衛隊第四航空隊所属 中田龍一三等空佐と申します。これからよろしくお願い致します。」
僕も自己紹介をして握手を交わす。
「さて、君は特生自衛隊に配属された理由は分かるかな?」
と三宅幕僚長は質問を投げかける。
「それが、人間的にも技術的にも優れているとしか向こうでは言われてなくて詳しくは・・・」
実際向こうで言われた理由はこんな内容だった。
「そうか、まぁ座ってくれ。立ったままでは私の説明も頭に入らないと思うし過度に緊張してしまうからね。」
僕は返事をして既に用意されていた椅子に腰を下ろす。
「現在、太平洋に面した国々では未曾有の事象が起こっている。これは自衛官だけでなく国民のほとんどが理解している事だ。」
幕僚長はそれまでの穏やかな目つきから一転、真剣な目つきに変わって話を進めていく。確かにこれまでに無い事象が太平洋で起こっていることは僕も理解している。
「2013年の12月の事件は君も知っていることだろう。ハワイ沖に突如として現れた異界の武装海洋生物群。生物と兵器両方の性質を持っているこれらによって太平洋のあらゆる海域が制圧され、日本以外の国々は鎖国状態になっている。」
幕僚長が日本以外という言葉を加えた理由も僕は既に知っている。というのも、今(2018年)から4年前の2014年にその武装海洋生物群が初めて日本に侵攻したが創設以来多くの怪獣たちに対処してきた陸海空の自衛隊と特生自衛隊で撃破されたというのを聞いた。
生憎戦闘には参加出来なかったが。
「そしてそれらを私たちは公的に深海棲艦、自衛隊内ではDSFと呼称している。」
「ディーエス・・・エフ・・・」
僕は深海棲艦という名前は知っていたがDSFのほうは知らなかった。特生自衛隊のような専門の部隊でしか使われていない名称なのだろうか?
幕僚長の説明は続く。
「この生物たちは特生自衛隊の兵装はもちろん自衛隊の通常兵装でも撃破できることは分かっている。しかし陸海空自衛隊を海外に派兵することは『専守防衛』の域を超えることになってしまう。」
「特生自衛隊の海外派兵は『専守防衛』の域を超えないのですか?」
「2010年に憲法と特自法が改正されたことは知っているね。この中に特生自衛隊の立ち位置や行動目的が明記された。特生自衛隊の行動目的は極東地域を怪獣といった脅威から守るということであって、決して国や人間相手に戦う軍隊ではない防衛省直属の自衛隊という内容がね。そういうことで今、特生自衛隊は海外からの駆除要請を受諾しているんだ。」
「なるほど。」
「話を戻すが、個体数が未知数のDSFの生物に対して特生自衛隊の既存の兵装をそのまま使用するのではコストや万が一の大型怪獣の出現に対応できないという点が懸念された。そこで我々はDSFが出現した5日後に小笠原諸島で保護された『異世界人』たちと協力して、『海上機動部隊』を創設し、とある兵装を開発・投入した。それがWGこと艦娘なのだ。
先程君を案内してきたあたごもああ見えてFGだ。最新のね。」
「WG?・・・艦娘??」
僕はその言葉を聞いた途端、頭の中に正門で出会った少女、あたごを思い出していた。
「話には聞いていましたが、一見普通の少女にしか見えないのですが。」
「確かに、異世界人たちの話では彼らの世界にいた『守護者』という少女の一種らしいからね。」
「とは言っても・・・」
僕は正直あんな少女達に日本、ましてや太平洋の平和を守ることが出来るのかと困惑していた。
僕の心中を察したのか幕僚長が立ち上がりパソコンの画面を僕の方向に回す。
「まあ、まずは映像を見ればわかるだろう。最初の映像は2015年7月の台〇派遣時のものだ。」
と言い幕僚長は映像を再生する。
そこには金属の塊にアームや小銃くらいにスケールダウンした連装砲や魚雷発射管が付いた背嚢みたいなものを背負い、肩に小銃を掛けた少女たちがヘリコプターからラペリングし、海面を30km程のスピードで滑っていく姿が映っていた。
しばらくすると映像が替わり戦闘ヘリからのものに変わった。よく見ると少女たちが銃や連装砲を禍々しい生物に向かって撃っている。
「これが彼女たちの戦闘なのですか?」
「そう、彼女たちはこのようにして戦うんだ。まるで海上専門の歩兵みたいにね。」
「なるほど、よく分かりました。ですが二つほど疑問に思ったことがあります。」
さっきの映像を見る前から僕は幾つか疑問があった。
「どんな疑問かな?」
「なぜ彼女たちは兵装扱いになっているのですか?先程会ったあたごを見たところ、彼女には我々人間ど同じく感情がありました。個人的には彼女たちを兵装とするには少々酷かと。」
「確かにそうだ。ただ誤解しないでほしいのは彼女たちは“書類上”兵装とされているだけで自衛隊内では兵士として扱っているからそのことについては安心してくれ。」
「なるほど、ではあと一つだけ、何故この映像を公表しないのですか?少なくとも私は今まで見たことがありません。」
「その事についても教えよう。こういった映像を公開してしまうと世論からの反発や、WGを狙った犯罪が起きる可能性が高くなるからだ。一連の作戦を遂行するためには致し方ない事だと理解してもらいたい。」
「よく分かりました。ありがとうございます。」
「まあ、詳しいことは後でWGに関する資料を渡すから心配しなくてもいい。」
「わざわざありがとうございます。」
「話を戻そう。」
そういうと幕僚長は再び椅子に座る。
「君には今後、海上機動部隊の主戦力となるであろう第2海上機動部隊を組成、運用してもらい、この一連の作戦に終止符を打ってもらいたい。」
「なるほど、ですが昨日まで一戦闘機乗りであった私にそのような大役が果たせるのか、いささか不安は残ります。」
航空隊の隊長すら経験していない僕がたくさんの少女たちの上に立ち、彼女たちの命を預けることになるのだ。不安しかない。
すると幕僚長はこう話を切り出した
「三佐、その気持ちは分かる。私もそういう気持ちになったことは沢山ある。しかしだね、今現在世界中には君の助けを求めている人が沢山いる。どうかな、やってくれるかな?」
その言葉で僕は決心がついた。
「分かりました。私の力が世界中の人々の助けとなるというのであればその下命お引き受けします。」
僕はこの下命を引き受けることとした。
「分かった。ありがとう。」
そう言うと幕僚長は立ち上がり、僕の手を握った。
「それじゃあ中田3等特佐、君の秘書艦を紹介しようか。」
「ひ・・・秘書艦ですか?」
また聞いたことのない名前が出てきた。秘書艦ってなんだ?名前のニュアンスからして僕の秘書なのは間違いないが・・・
「幕僚長、秘書艦というのは何でしょうか?一般的な秘書とは違うのですか?」
「そうだった、君にはまだ説明していなかったね。秘書艦というのは君の部隊運用をサポートしてくれるWGの事なんだ、基本的に彼女たちは前線に出ることは少ないが戦闘に関してはかなりのベテランだ。」
「なるほど」
つまりその名前の通り、僕の秘書でもあり、前線にも出れるWGのことなのか。
その時、幕僚長の執務室のドアをたたく音がする、そして
「幕僚長、ただいま参りました。」
どこかで聞いたことのある声がした。
「いい頃合いに来たみたいだね。入りなさい。」
幕僚長がそう言うとドアが開き、一人の少女が入ってくる。その少女を見た途端僕は「あっ!」と声を漏らした。
「あたご型ミサイル護衛艦一番艦 あたご、参りました。」
そう、そこには正門から執務室のある建物まで案内してくれた少女、あたごがいた。
「いいタイミングで来たねあたご。早速だけど今日から君と一緒に部隊を運用する司令官を紹介しよう。」
幕僚長がそう言うと僕は立ち上がり、あたごを見下ろす。
「あ、また会ったね、あたご、まあなんだ・・・これからよろしくね。」
と挨拶としてどうなのか怪しい挨拶をする。
すると、
「はい、改めて、これからよろしくお願いします。三佐!」
とまんべんの笑みで彼女が挨拶をした。
その後僕は瀬戸内新都市という海上都市に隣接する瀬戸内新都市統合司令基地の総監兼第2海上機動部隊司令として僕の秘書艦となったWGことあたごと共に基地のある瀬戸内新都市に赴くこととなった。
後書きです。取り敢えずオリジナル艦娘を紹介します。
あたご
兵装
62口径127mm単装速射砲(対空よりは寧ろ対艦・対地向け) × 1門
90式対艦誘導弾 4連装発射機(実は艦これの艦娘の主砲と同じくらい使用頻度が多かったりする) × 2基
68式3連装短魚雷発射管(彼女たちにとってはミサイル=空飛ぶ魚雷みたいなものだから使用頻度は結構少なめ?) × 2基
Mk.15 Mod25 高性能20mm機関砲(CIWS)(これで砲弾等を着弾する前に堕とすので敵にとってはかなりの脅威になる) × 2基
Mk.41 Mob20 VLS(SM-2艦対空誘導弾(対空戦闘では欠かせない装備) SM-3弾道ミサイル防衛用誘導弾(DSF側が弾道ミサイルを出してこない限り使わないはず) VLA SUMアスロック対潜ミサイル(艤装内に異世界人はいないので何処かのタイムスリップしたイージス艦みたいに誤発射はしない)搭載) × 96セル
艦載機
なし(ただしヘリ甲板と格納庫はある)
外見
身長は軽巡ぐらいある(胸部装甲は意外とある)
髪は栗色のセミロング
服装はセーラー服を模した半袖ワンピース(赤の幅広リボン)+グレーと赤で塗り分けられたブーツ。戦闘時のみ部隊識別帽(青い帽子)を被る。
特徴
・自衛艦型WGの中では新型のWGで年頃の少女らしい気質である。そして稀にドジる。
・性格は落ち着きがあって明るく優しい
お気づきの方もいるかもしれませんが、あたごとの出会いから幕僚長の話まで某艦これまんがをベースに書きました。
さて次回で遂に中田が瀬戸内新都市基地の総監として、また第2海上機動部隊の司令としての活動が始まります。第3話「瀬戸内新都市基地着任」お楽しみに!