加賀むかしばなし (縄文人からやり直してこい スレ支援) 作:詞連
加賀むかしばなし
昔々、あるところに、体の丈夫なおにーにが生まれました。
そのおにーにの父親も母親も、祖父も祖母もみんな長生きで、
この子も長生きするだろうといわれていました。
ある時、童のおにーには、腰が曲がり頭の毛が真っ白な御子様が、
何かをしているのをみかけました。
「御子様、なにしてるでち?」
「道具を作っているのです」
見ると、御子様はいろんな道具を作っては試し、試してはまた新しい道具を作っています。
土を掘ったり、岩を割ったり、物を計ったり、おにーにには使い方も想像できないような道具もありますが、
そのどれもに御子様は満足できないようで、作っては試し、作っては試しを繰り返しています。
「そんなにつくってどうするでちか?何のために道具を作ってるでち?」
「山や川を動かす為です」
「ワッヂョイ!?」
おにーには驚きました。
山や川を動かすなんて、御子様にだって出来っこありません。
「そんなの無理でちよ」
「けどやるのです。やりたいのです」
御子様はそう言うとまた道具を作っては試し、作っては試しを繰り返します。
びっくりしたおにーには、それをただそれを眺めていました。
◆
おにーにはすくすく丈夫に育ち、たくましい若者になりました。
友達もたくさんできました。
ある時、青年になったおにーには、髪が少しずつ白くなり始めた御子様が、
何かをしているのを見かけました。
「御子様、腰の曲がった御子様はどうしたんでち?」
「その御子は私の祖父です。祖父は死に、私が祖父の後を継ぎました」
「新しい御子様は、なにをしているでち」
「穴の掘り方を試しています」
見ると、御子様はいろんな掘方で穴を掘っては埋め、掘っては埋めを繰り返しています。
いろんな道具を使ったり、手順で掘ってみたり、掘る場所を試していますが、
そのどれもに御子様は満足できないようで、掘っては埋め、掘っては埋めを繰り返しています。
「そんなに穴を掘ったり埋めたりしてどうするでちか?何のために穴を掘ってるでち?」
「山や川を動かす為です」
「ワッヂョイ!?」
おにーには驚きました。
山や川を動かすなんて、御子様にだって出来っこありません。
「そんなの無理でちよ」
「けどやるのです。やりたいのです」
御子様はそう言うとまた穴を掘っては埋め、掘っては埋めを繰り返しています。
びっくりしたおにーには、それをただそれを眺めていました。
◆
おにーには一人前になり、立派な大人になりました。
結婚して、子供もたくさんできました。
ある時、髪が少しずつ白くなり始めたおにーには、たくましい若者の御子様が、
何かをしているのを見かけました。
「御子様、髪が少しずつ白くなり始めた御子様はどうしたんでち?」
「その御子は私の祖父です。祖父は死に、私が祖父の後を継ぎました」
「新しい御子様は、なにをしているでち」
「石の積み方を試しています」
見ると、御子様はいろんな詰み方で石を積んでは崩し、詰んでは崩しを繰り返しています。
いろんな詰み方を試したり、石の種類を試したり、石の形や大きさを試していますが、
そのどれもに御子様は満足できないようで、積んでは崩し、詰んでは崩しを繰り返しています。
「そんなに石を積んだり崩したりしてどうするでちか?何のために石を積んでるでち?」
「山や川を動かす為です」
「ワッヂョイ!?」
おにーには驚きました。
山や川を動かすなんて、御子様にだって出来っこありません。
「そんなの無理でちよ」
「けどやるのです。やりたいのです」
御子様はそう言うとまた石積んでは崩し、詰んでは崩しを繰り返しています。
びっくりしたおにーには、それをただそれを眺めていました。
◆
おにーには年を取り、すっかりお爺さんになりました。
子供達も結婚して、孫もたくさんできました。
ある時、腰が曲がり頭の毛が真っ白なおにーには、童の御子様が、
何かしているのを見かけました。
「御子様、たくましい若者の御子様はどうしたんでち?」
「その御子は私の祖父です。祖父は死に、私が祖父の後を継ぎました」
「新しい御子様は、なにをしているでち」
「ついに山を動かせるようになったのでお祝いをしているのです」
「ワッヂョイ!?」
おにーには驚きました。
確かに、ずっとずっと山を動かすために、道具を作り、穴を掘り、石を積んでいたはずの御子様が、今は何もしていません。
「本当でちか!?本当に山を動かしたり川を動かしたりできるようになったでちか!?」
「ええ、必要ならばいくらでも」
笑顔で言う童の御子様に、おにーには、本当かなあ?と疑わし気な目を向けました。
◆
その二人を、こっそり眺めている者がいました。
マガツ神です。
「山や川を動かす?生意気な御子め!ちょっとこらしめてやる!」
マガツ神は両手を叩きます。
すると、どうでしょう。途端に川が暴れまわり、村を引き裂き、畑を水浸しにしたり、逆に川から離れて干乾びさせようとしました。
「ワッヂョォォォイ!?た、大変でち!?」
おにーには驚き、慌てふためきます。
けれども御子様はまるで慌てず、落ち着いています。
「大丈夫大丈夫。ほらさ!」
御子様がそう言って手を叩きます。
すると、どうでしょう。村を引き裂いた川には石の橋が架かり、行き来できるようになり、畑をめちゃくちゃにしていた川はまるで線で引いたかのようにまっすぐとなり、すべての畑が程よく潤うように引き直されてしまいました。
「スゴイでち!本当に川を動かしたでち!」
「どうです。私の祖父の努力です」
驚くおにーにと、自慢げな御子様。そしてそれを見て、マガツ神は歯ぎしりします。
「おのれ生意気な御子め!次こそこらしめてやる!」
マガツ神は足を踏み鳴らします。
すると、どうでしょう。途端に山と沼地が動き出し、道をふさぎ、人が通れなくしてしましました。
「ワッヂョォォォイ!?た、大変でち!?」
おにーには驚き、慌てふためきます。
けれども御子様はまるで慌てず、落ち着いています。
「大丈夫大丈夫。よいさ!」
御子様がそう言って足を踏み鳴らします。
すると、どうでしょう。途端に山が切り開かれ、沼は埋められ、人も車も楽々通れる、立派な道ができてしまいました。
「スゴイでち!本当に山を動かしたでち!」
「どうです。私の祖父の祖父の努力です」
驚くおにーにと、自慢げな御子様。そしてそれを見て、マガツ神は歯ぎしりします。
「おのれ憎たらしい御子め!今度こそこらしめてやる!」
マガツ神は山に飛んでいき、冬の神の声を真似て、眠っていた山の神に叫びます
「おい!おい!私は冬の神だ!山の神!聞こえるか!?」
「ん~なんでしょう?冬の神様」
「あの御子とおにーに達が、悪さばかりしている!こらしめてやれ!」
「んん~わかりました」
寝ぼけた山の神はまんまと騙されてしまいました。
騙された山の神は顔を真っ赤にして力を込めて、大声で叫びました。
すると、どうでしょう。白い灰が、まるで雪のように、おにーに達の村に降り注ぎます。
◆
「ワッヂョォォォイ!?た、大変でち!?」
おにーには驚き、慌てふためきます。
けれども御子様はまるで慌てず、落ち着いています。
「大丈夫大丈夫」
「み、御子様がまた何とかしてくれるでちか!?」
喜ぶおにーにですが、御子様は首を横に振ります。
「私がなんとかするのではありません。あなたたちがするのです」
「おにーにたちが!?」
びっくりするおにーにに、御子様は道具を差し出しました
「これは、私の祖父の祖父の、そのまた祖父の作った道具です。これを使ってみんなで灰をどけるのです」
「わかったでち!」
おにーには、子供の頃からの友達と、子供と、孫を呼びました。
友達はさらにその子供や孫を呼び、子供や孫はその友達を呼びました。
たくさんのおにーにたちに、御子様は道具を渡しました。
「やるでちよ!オニーニワッショイ!オニーニワッショイ!」
「「「オニーニワッショイ!オニーニワッショイ!」」」
おにーにたちは、みんなで一緒に歌いながら、降り積もる灰をどけてゆきます。
「「「オニーニワッショイ!オニーニワッショイ!」」」
どんどん灰は降り積もりますが、おにーにたちは歌いながら負けじと灰をどけてゆきます。
「「「オニーニワッショイ!オニーニワッショイ!」」」
その様子を見て、マガツ神は歯ぎしりします。
「おのれ!おのれ!生意気な御子め!生意気なおにーにめ!」
次はどうしてやろうかと考えるマガツ神。
その首根っこを、白くて冷たい手がむんずとつかみます。
本物の、冬の神様です。
「おい!おい!貴様!何をしている!」
「ひ、ひええ!?」
「私の名前を騙るとは大した度胸だ!
おい!山の神!灰を振らせるのはやめだ!私が本当の冬の神だ!」
「ん~わかりました」
山の神はそういうと、再び眠りにつきました。
それを見届けた後、冬の神はマガツ神をつまみ上げ、睨みつけます。
「こいつめ、あとでたっぷり罰をくれてやる」
睨みつけられたマガツ神は、カチンコチンに凍り付いたまま、身動きが取れません。
その後、冬の神はおにーにたちと御子様を見ていいました。
「よくやった。マガツ神の悪さに負けず、立派であった。褒美をとらせる。何がいい?」
言われたおにーにたちは大喜びで、欲しいものをいいました。
綺麗な布や、便利な道具、種もみや家畜。
その一つ一つに、冬の神様は答え、他の神様に命じて褒美をとらせていきました。
そして最後に、御子様に褒美を与えようとしたところ、御子様の姿が見当たりません。
冬の神様が探してみると、御子様が何かをしているのを見かけました。
「おい!おい!何をしているのだ?」
◆
おにーに達には御子様が何を答えたのか聞こえませんでした。
けれども、それを聞いた冬の神様が、たいそう驚いていたとこころをみるに―――
「御子様は、きっとまた、とんでもないことをしようとしてるんでちね」
おしまい