「やりました!人類がついに月面に到着しました!
これは人類史上、偉大な一歩です!」
西暦三〇六九年、人類は初めて月に到着した。
その時、私は思ったのだ。スペースシャトルってなんかおちんちんみたい。
宇宙にE.T.はいるんだろうか?なんて思う私はEDである。
何故私がキャプテンEDになったのか、どうしておちんちんが動かないという個性を手手にしたかを語るには過去を振り返らねばならない。
私は幼少期の頃から、人が努力しなければできないことも人並み以上にできた。
それが当たり前だと思っていたし、優れた成績を残し続けろというのが父の教えだったので、勉学、スポーツ、芸術において全て優れた成績を残しつづけた。
中学校までの私は、自信と誇りに満ち溢れていた。
人より劣っていることなど何一つないと思っていた。
しかしインターネットを通じて、私は大海を知った。私の自信と誇りはあっさり消え去った。私以上に優れた人は大勢いたのだ。
学歴はみなハーバード大学を出ており、タワーマンションに住んでいる。
仕事が忙しいであろう時間帯を見ても掲示板から人がいなくなることはなかった。 それだけ早く業務を終わらせられるとは、と私は戦慄した。
それ以上に、私の心を深く傷つけたのは、男性器のサイズの平均を記したサイトだった。興味本位で自分のサイズを測ってみたら、なんと平均よりもずいぶんと小さかった。
何度計測しても、平均を超えることはなく、皮をかぶっていて慎まし
く謙虚だと密かに思っていたのも、どうやら女性には嫌われるらしい。
当時思春期だった私のプライドは木端微塵に砕け散った。
私はおちんちんの大きさも、世界一と疑う事はなかったのだ。
器の大きい男はおちんちんも大きいと言うし、当然自分のおちんちんがナンバーワ
ンの聖剣だと思った。まさかひのきの棒だったとは思いもしなかった。
銭湯や温泉などで性器を隠す大人があまりにも多く、ははぁさては小さいのかな可哀想に、などと思っていた私は隠すこともなく堂々と、むしろ誇らしげに平均以下のおちんちんをさらしていたのだ。
思い返すと羞恥で顔が赤くなって、その倍ぐらい死にたくなっていく。
おちんちんが小さい、その事実を認めると世界から色や輝きが失われた。
世界からのけものにされたみたいな気分になり、友達も信じることが出来なくなった。
誰もおちんちんが小さいですよと教えてくれなかった。教えてくれたとしても信じなかったかもしれないが、まるでピエロじゃないかと思ってしまう。
あれから自信をなくしたわたしのおちんちんはぴくりとも動かない。
それでもまだ自分は特別なのだと、おちんちんが小さくても自分は優秀なのだと言い聞かせた。
おちんちんが小さいという呪いを振り切るように、今まで以上に優秀な成績を残すよう死ぬ気で努力を続けた。失った自信を取り戻すために、血反吐をはいて必死に働いた。
自分が目指すところまでは、自分の実力で出世できるところまでは、出世できたと思っている。
出来ることは何でもしてきたと思う。
だが、まだ自信が取り戻せてない。お金を得ても、地位を高めてもいつまでも下を向いているおちんちんを元気づけることすらできない。
私はまだ答えを見つけられないでいる。
私はいつものように自分のおちんちんに話しかけた。おちんちんは裏声で答えた。
「なぁ。君はどうしたら上を向くんだ?」
「パパの背中を見て育ったらコウナッタヨ!」
いつからだろう。自分のおちんちんに話しかけるようになったのは。
反応を示さない自分のおちんちんの気持ちが知りたくて、自分に息子がいたらこう返すだろうなと考えながら一人で会話している。
はたから見たら危ない人だというかもしれない。しかし、哲学だって自分に問い続ける学問ではないか。私は答えを求めているだけだ。それが間違っているとは思わない。
しかし本当にそれは自分の意志なのだろうか。おちんちんのことなどどうでもよくて、父の教えを守り、定められたレールの上を進んでいるだけではないだろうか。流されているだけではないか。
「いつからそんな受動的になったんダロウネ」
おちんちんは裏声で言った。私は静かにうなづいた。そうか、これはきっと罰なのだ。本当の意味で自分の意志で何かをすることはなく、人から
の評価を気にして生きてきたこと、への罰だ。
責任の所在を人に求めてしまうことへの報いなのだ。
立ち上がらないおちんちんは、前を向かず足元ばかりを気にして生きてきた私そのものなのだろう。
私は愕然とした。孫悟空のが岩に閉じ込められたように、私も反省するまでおちんちんが立ち上がることはないのだろう。
生き方を変えねばならない。でもどうやって変えればいいのか。そもそも変えられるのだろうか。
きっと私は一生童貞なのだろう。不甲斐なかった。情けなかった。この先もずっと不幸なのだろう。それを象徴するように、机の上に飾ってあった指人形が椅子の上に落下した。
私はそのことに気づかず、勢いよく椅子に腰かけた。襲い来る衝撃。
指人形が尻にずぼっと入ってしまった。すると奇跡が起こった。枯れて村人のいなくなった生命の泉に僅かに、反応があったのだ!!
こころなしかおちんちんも驚いてるような気がする。
私は声をあげて笑った。前立腺を刺激するだけでこんな簡単に解決するとは。
気づくのがあと十年早ければ。おちんちんが立ち上がっていたら今どうなっていただろうと物思いにふけっていると、慌ただしく部下が部屋に入ってきた。
「総理、国務長官からお電話です」
髪や服装が乱れているところを見ると余程急いできたのだろう。
顔色もよろしくない。つまるところ、面倒な案件ということだ。
しかし、今の私なら何とかなる気がした。
フルには立ち上がらない。それでも上を向きはじめた。ここからがスタートだ。
ロケットにならなくても、月まで行けなくてもいい。
明日を目指して、私は飛んでいこう。
おちんちんに同意を求めて話しかけたが返事はなかった。
それでもなんとなく同じ気持ちのような気がした。