風飛に降り立つは   作:晴貴

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プロローグ

 

 

 走馬灯を見たことがある人間ってのがどれだけいるかは知らないが、恐らくは少数派だろう。

 しかもその走馬灯が前世の記憶だったりする奴となればもっと珍しい。さらにはその記憶が複数人のものだったりする奴はそれこそ世界に一人くらいしかいないかもしれない。

 そしてその一人とは俺のことだ。

 

 きっかけはミスティック――通称霧の魔物と遭遇したことだった。本来人の生活圏外に現れることがほとんどである魔物が突如として街中に出現し、その結果俺はマジでくたばる5秒前まで追い込まれた。

 襲い来る気色悪い怪物を前に「あ、これ死んだわ……」と諦めた瞬間、俺の脳内を様々な記憶が駆け巡った。

 断片的な記憶群。そしてそれは一人の人間のものじゃなかった。

 

 

 

 退魔を生業とする家系に産まれ、殺人衝動を抱えながらも人を殺めず苛烈な生を駆け抜けた記憶。

 

 

 正義の味方を目指して多くの人間を救ったにもかかわらず、最後は自らが救った人間に殺された英霊の記憶。

 

 

 不屈の心を宿し、管理局の白い悪魔と畏怖されながら魔導師として己の信念を貫き通した記憶。

 

 

 500年以上の歳月を生き、尊大でありながら吸血鬼の矜持を掲げて戦った夜の帝王としての記憶。

 

 

 終わりなき悪夢に囚われてもなお獣を狩り続け、月の魔物さえ屠り上位者に至った狩人(ハンター)の記憶。

 

 

 

 それ以外にも数多の、誰かが送っただろう生の記憶が俺の脳になだれ込んできた。

 時間にすればほんの一瞬。けど俺はその一瞬で彼らの人生を追体験した。そこに不思議と苦痛はなく、むしろ彼らの胸の内に触れられその強さと悲しみ、葛藤を知った。

 

 そしてその追体験が終わるのと同時に、俺の視界にいくつもの赤白い線が走っていることに気付く。

 その線は周囲の空間や道路、建物といった人工物、そして魔物にも刻まれていた。それが何なのか、この時の俺はすでに“知っていた”。

 

 考えるよりも先に体が反射的に動く。

 手にはいつ握ったのか分からないナイフ。魔物に立ち向かうにはあまりにも頼りないそれを、俺は躊躇うことなく赤白い線に沿うようにして振るった。

 俺がしたのは本当にそれだけ。そしてそれだけで人類にとって最大の脅威である魔物は切断されて息絶えた。

 しばらくその死体を眺めながら自分の身に起きている事態について考える。そして1つの結論に至ったところで握ったままだったナイフでひしゃげた道路標識の線をなぞる。

 すると標識はその線の部分から切断されて真っ二つになった。

 それを見て俺はこう呟いた。

 

 ――ああ、これが直死の魔眼か……と。

 

 

 

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