ヤンデレなんてロクなもんじゃねぇ   作:Re:クロバ

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前回はぶっ飛んだ感じでしたが、今回は一変。

一気に雰囲気が変わります。では、どうぞ。


第2話:戦慄

学校に着き即座に教室に向かう。

 

「じゃあ、俺はあっちだから」

 

右手を挙げ、別れを告げてから彼女とは別の教室に入る。

 

どうやら一番乗りだったらしく、教室には誰1人としていないみたいだ。

 

殺風景の教室の1番端っこにある席。いわゆる、『全高校生が憧れる席』に俺の机は鎮座している。

 

この前の席替えのくじ引きは神引きだったなと、我ながらに誇らしい。

 

肩にかけたカバンを自分の机の上に少々乱暴に置く。

 

「さて…早めに登校したことは良いことなんだが…ちょっと暇だな」

 

今度の定期テストに向けて勉強するという手もあるが、俺はあえてしない。

 

理由は単純。こんな清々しい朝から1人で黙々と勉学に励むだなんてやってられないからだ。面倒くさい。

 

「しょーがない。自販機にでも足を運ぶか」

 

「あ、じゃあ私も」

 

「あ、そう?ていうか津島ちゃんはどうせ自販機行ってもいつもサイダーじゃ………ぶーーっ!!?」

 

予想もしなかった幼なじみの訪問に勢いよく吹き出す俺。

 

「な、なんでここに……ってか、お前来るなら来るで、もっとわかりやすく来いよ!

音立てないで来るとか忍者の才能あるね、お前!伊賀にでも行ったら!?」

 

「旅行のお誘いね!?謹んでお受けいたしま「とりあえず黙れ」

 

肩で息をしながら俺は彼女がその先言おうとしていたことを塞ぐ。

 

「んで?なんでここにいんの?」

 

「だって暇だし」

 

「やっぱりな……ってか、俺たち毎日早すぎるんだよ登校するの。もう少し遅めに行かねぇ?」

 

「だってそんなことしたらカイザーとの2人っきりの時間が……」

 

「え?なんて?」

 

「な、何でもないわよ!何でも!!」

 

急に慌ててどうしたんだろう?

 

まぁ、それよりもだ。

 

「さっきの話聞いてたんなら分かるかと思うけど……自販機行くの着いてくるん?」

 

「もっちろん!」

 

「だと思った」

 

呆れた眼で彼女を見やり、俺たちは自販機に足を運んだ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

目的地に到着。

 

俺は財布から100円玉1枚と10円玉2枚を取り出し、自販機の口に投入。

 

そのまま小銭が吸い込まれると同時に120の文字が浮き上がる。

 

「さて……何飲もうかなと……」

 

「どーせ、アンタコーラでしょ?いつもそうじゃない」

 

「いや、そうだけどさぁ。……ん?なんでそんなこと知ってんの?あんまり津島ちゃんの前で自販機に寄ったことないけど?」

 

「たっ、たまたまよ!たまたま!」

 

「?」

 

たまたま?

 

ま、彼女がそう言うのならそうなのだろう。

 

「そうか」

 

返事をした俺は、彼女の推理通り、指をコーラの下のボタンへと滑らせる。

 

ピッと電子音がしたと思えば、ガコンとペットボトルが落ちる音。

学内に設置されている物だけあり、定価より安く買えるのだからお得だよな。

 

「津島ちゃんも何か買うの?」

 

「あ、えと…その……」

 

「もしかして俺におごらせようとしてる?無駄だからね、無駄無駄」

 

「たまにはいいじゃない~!」

 

「たまにはって!津島ちゃんはもはや常習犯の領域じゃあないか!なんと媚びられようとも、買わないものは買わないからなッ!」

 

「このケチ…」

 

「お前にだけは言われたくないセリフベスト5」

 

冗談で返しながら、缶のプルトップを開ける。

 

プシュッと炭酸飲料を開ける時の独特な音がし、俺の口の中はコーラを早くぶち込んでくれと叫ぶ。

 

「アンタってコーラ飲む時には本当に幸せそうな顔するわよね」

 

「そう?」

 

「そう」

 

まぁ、コーラは大好きだし。

 

……で、

 

「あ、あのさ。なんでガン見?俺がコーラ飲むの見るの?」

 

「え…えーと………違うわよ?」

 

「今の謎の間隔が気になるところではございますが、深追いはしません」

 

改めて。

 

コーラを俺は一息に煽る。

 

喉の奥で炭酸が弾けて、爽快感が頭まで突き抜ける。

 

「んくっ…んくっ……ふぁーっ!やっぱコレだよなぁ!」

 

ヤバイ。なかなか俺、オヤジ臭い。

 

オヤジ臭いか……

 

俺がオヤジになったら……

 

 

『山田さん!1杯いかがですか!?』

 

『お、いいねぇ!』

 

『今日は会社の新人歓迎会ですからねっ!山田さんも若返ったつもりでドンドン飲んでくださいっ!』

 

『気が利くねぇ!それじゃあ、新人に戻ったつもりで今日は無礼講だ!是非とも下の名前で読んでくれ!呼び捨てで構わないよっ!』

 

『え、で、でも……山田さんの下の名前……』

 

『いいじゃないかぁ!今日くらい!』

 

『そ、そんなんじゃなくってですね…』

 

『な、なんだ?』

 

『居酒屋の喧騒に負けじと声を貼ってカイザーと叫ぶのはちょっと……』

 

 

「ぐほぇぉぉぉ!!」

 

「ど、どうしたのよ一体!?」

 

「ちょ、ちょっと自分の未来と戦ってた……」

 

「はぁ?」

 

なんでだろうか、俺の未来の扱いが鮮明に連想できるぞ。

 

戦慄しか感じねぇ……

 

「ってか、コーラ飲んだの?」

 

「あ、おぉ」

 

「んじゃ、戻るわよ」

 

「な、なんでそんなに急ぐんだよ。いいじゃんか。教室いても暇なんだから風に当たってるくらい」

 

「そ、そうじゃなくって……!」

 

その時。

 

「千歌ちゃーん!早く早くっ!」

 

「ま、待ってよ曜ちゃーん!」

 

彼方から女生徒の声が聞こえてきた。

 

「ちっ…!か、カイザー。早くっ!」

 

グイグイと俺の肩を押す津島ちゃん。

 

「い、痛いって!ど、どうしたの?」

 

「だからっ!ここから早く退散しなきーー「あ、善子ちゃん!ヨーソロー!」

 

女生徒の1人に声をかけられた津島ちゃんの体がこわばるのを感じた。

 

ゆっくり振り返ると、そこには短い銀髪を揺らした女生徒が立っていた。

 

「おはよ!善子ちゃん!」

 

向こうからも声。

 

今度はオレンジ色の髪の女生徒がこちらに駆けてくる。

 

「だ、誰だ…?あの2人」

 

「っ……」

 

「お、おい津島ちゃん。返事くらいしないと。リボンの色を見て分かったけど、アレは上級生だぞ?」

 

「ちっ……んなの分かってるわよ」

 

「え…?」

 

彼女の態度があからさまに変わった。

 

それに嫌な感じを覚えたのは俺だけのようで、銀髪の人(どうやら善子の知り合いのようだ)は、話し出す。

 

「えーと……そっちの人は…」

 

「あ、山田といいます。はい」

 

「山田くんって言うんだね!よろしく!私は渡辺 曜って言うんだ!ヨーソロー!」

 

「よ、ようそろ……」

 

ダメだ……この人のテンションにはついていけない気がする。

 

すると、オレンジ色の髪の人も自己紹介をしてくれた。

 

どうやらこの人は高海 千歌さんという人らしく、スクールアイドル(なんだそれ?)をやってるらしい。

 

しかも、驚くことにその中には津島ちゃんも含まれているらしいのだ。

 

「へー……なんか最近部活入ったと思ってたら……なぁるほど、こういうことね」

 

「何よ……なんか文句あるわけ?」

 

「いっ、いや……別にそんなんじゃないけど…」

 

鋭く睨まれた俺は一瞬で縮こまる。なかなか俺もチキン野郎だな。

 

「あ」

 

すると、唐突に渡辺先輩が手打ちし、俺と善子を交互に目配せしてから何かを察したようにニンマリと笑う。

 

「もしかして私たち…お邪魔だった?」

 

それに、高海先輩も便乗しニマニマと笑う。

 

「べ、別に大丈夫ですよ!?自販機に来ただけですしっ!な、なぁ!?津島ちゃん!」

 

慌てて言い訳をする俺。

 

これなら、まるで本当に先輩たちが来たのが迷惑だったみたいになるんじゃね?

 

しかし、当の津島ちゃんからはなかなか返事が帰ってこない。

 

チラリと彼女を見やる。

 

 

そして、俺は戦慄した。

 

 

津島ちゃんはその時……今まで生きてきた中で見たこともないような冷たい瞳をしていたのだ。

 

 

生唾を飲み込み、彼女の様子を見る。

 

わなわなと肩を震わせているが、それは何から来る感情なのかわからない。

だがしかし、明らかに彼女が普段の様子と違うのは容易に視認できた。

 

すると、彼女はやっと口を開いてくれた。

 

 

「えぇ、そうよ。ただ飲み物を買いに来ただけよ。迷惑なんかじゃあないわ」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

その日の放課後。

 

俺は普段なら津島ちゃんのクラスのHRが終わるのを待つのだが、そそくさと帰路に着いた。

 

理由は2つあり、まず1つ目。

 

彼女は最近ずっと俺と同じ時間帯に帰宅していた。

 

つまりそれはせっかく入った部活動をサボっているってことだろう。

 

それはよくないことだ。

話によれば、津島ちゃんは先輩に誘われたらしいではないか。

 

なら、尚更クラブには行くべきだ。

 

そして2つ目。

 

これはものすごく私的な理由なのだが……

 

今朝の彼女の様子を目の当たりにした俺は……完全に臆してしまったようで、本能的に彼女を避けてしまっている。

 

なぜなら、あんな冷徹な眼をした彼女を見たことがなかったから。

 

いつもは快活に笑う、ちょっと変だけど朗らかなヤツだった。

なのに、今朝のあいつは……

 

思い出しただけで、寒気がする。

 

「今日の最高気温は確か28℃だよな…?な、なんでこんなに寒気がするんだよッ……!」

 

背筋に冷たいものが走った気がし、余計に足を速める。

 

 

 

しだいにバスが来て、沼津のマンションへと到着。

 

何かに追われているような気がしてならない俺は(気のせいであってほしい)、急いで自宅へ帰宅。

 

そこにはいつもと変わらぬリビングと、夕飯をせっせと作る母親の姿。

TVには夕方のワイドショーが映っており、『明日のお天気』のコーナーが開始していた。

 

俺の帰りに気づいた母親が近づいてきて、

 

「どうしたの?そんなにビッショリ汗なんかかいて……まさか走って来たの?」

 

「い、いや違う……そんなんじゃなくって……俺はそ、その……元から汗っかきなんだよ母さん」

 

「あんたって真夏でも汗かかないじゃない。変ねぇ」

 

と、ケラケラ笑い飛ばす。

 

今の俺はなぜかその笑い声を聞くだけで、落ち着けるような気がした。

 

……津島ちゃんにはまた後でメールしておこう。何か適当な理由をつけてな。

 

「ふ、風呂湧いてる?」

 

「あ、もちろん」

 

「じゃ、じゃあ先入るよ」

 

「は~い」

 

そう言い、自室に入る。

着替えを出すためだ。

 

カバンを俺には珍しく、荒く床に放り、適当な部屋着を出す。

 

……待てよ、俺。

 

「ま、待てよ俺!何を俺はビクついてんだ?津島ちゃんは聖人じゃあないんだ!あーいうとこもあるのが人間として普通じゃあないか!そ、そうだ!そう……だ、よな?」

 

答えの見つからない自問自答ほど気持ち悪いものは無い。

 

「あーっ!考えてても埒が明かねぇ!風呂入ってサッパリしよう!そして、津島ちゃんの今朝のことは忘れろ!そう!それが1番だぜ!」

 

そして、俺は風呂に入った。

 

 

その時浴室のドアを開けると同時に、耳にワイドショーの音が聞こえてきた。

 

『えー、明日は東海地方、それも特に静岡県辺りに梅雨前線が停滞し、大雨になるでしょう。

外出の際には、雨具を必ず身につけ、また、風も強く吹きそうなので、洗濯物はなるべく干さないように努めてください。』

 

明日は悪天候らしい。

 

まるで俺の心そのものだ……

 

 

なーんて、な。

 





設定ミスで、『ログインユーザーのみ感想を書ける』という設定にしていました。

訂正いたしまして、『非ログインユーザー』の方でも感想を書けるように致しましたので、ぜひぜひこの感想乞食に感想を下さいませ。
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