ヤンデレなんてロクなもんじゃねぇ   作:Re:クロバ

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第3話:驚愕の通知

夕飯は俺の好物の鶏の唐揚げだった。

 

1人っ子の俺は父さんが仕事から帰ってくるまでは毎日母親と2人っきりなので、会話は弾まない……と、いうことはない。

 

案外この一家は家族仲がすこぶる良く、俺は今も仲の良いクラスメイトと今日したことを自慢げに話していた。

 

「それでさぁ。あいつが……ーー」

 

「へぇ」

 

「あ、唐揚げ上手い」

 

「じゃあ、レモンかけてあげるわ」

 

「やめろっ!無断でそれをかけるな母さん!ぐぁぁぁ!このサディストがぁぁ!!」

 

こんな感じにな。

 

 

 

「それじゃあ、母さんお風呂入ってくるわね」

 

「おっけぇ」

 

「たまには一緒に入らなぃ?」

 

「体クネクネするな!一緒にお風呂とかどんな罰ゲームだよ!」

 

「えー、まだ私ピチピチの39よーん?」

 

「もう39だなババァ!さっさと入れ!センス無し!」

 

「センスならたらふくあるわよ!?」

 

「よくそれを息子の前で言えるよな!?」

 

「カイザーって素敵な名前じゃない!」

 

「あぁ、そうだよ!幼稚園まではな!そん時は特別感があってなんか嬉しかったけど、小学校にあがって初めて出席取られたとき、担任に笑われて現実を知ったんだよ俺は!!」

 

「その担任がおかしいわ」

 

「おーい、特大ブーメラン刺さってんぞ母さーん。ってか、とっとと入れッ!!」

 

 

 

母親との陳腐な会話を終わらせ、ソファに座りTVでバラエティーを見る。

 

「あっはっは!」

 

しかも、やっていたのはたまたま俺のお気に入りの番組。

 

すっかり緊張感が抜けさり、程よい眠気も来て、寝落ちしかけたその時だった。

 

 

ブーッ!ブーッ!!

 

 

ビクッと体を震わせ跳ね起きる。どうやらこのバイブの振動音は俺のスマホから鳴ってるっぽい。

 

スマホを取り上げる。

 

液晶画面にLINEの通知。

せっかく気持ちよく寝ていたのに、自分の快眠を阻害したこのスマホを忌々しく睨みながら、ロック解除。

 

「えーと……誰からLINE来たのか……えっ」

 

瞬間、スマホを取り落としそうになった。

かろうじて声は服の襟を噛み、殺す。

 

 

『通知:94件 不在着信20件』

 

 

しかも、これが何かのグループ、もしくは複数人ならば良かったのに、送信主は1人。

 

もちろん『堕天使ヨハネ』

 

 

ーーな、なんだよこれっ!?一体どうしたんだ津島ちゃん!?

こんなに通知が来たのは2人で夏コミに行ってはぐれた時以来じゃねぇかっ!

 

 

なぜだか怖くて彼女の連絡先を開けれない。

指が震えて、多量の手汗が出る。

またもやスマホを取り落としそうになった。

 

多分俺は今、いわゆる顔面蒼白とやらになっているのかもしれない。

 

ただ彼女から異常な数の通知が来ただけだというのに、動悸は治まらず、息は荒くなるばかり。

 

脳裏にはせっかく忘れかけれていたあの冷徹な瞳が鮮明に蘇る。

 

「津島ちゃんから…ら、LINEが来てるだけ……だ、ぜ……?何をこ、こんなにビビる必要が……!」

 

しかし、体の震えは治まらない。

 

けれども……

 

「こ、こんなのが続いてると俺はおかしくなっちまう!パッと津島ちゃんのLINEを見て、テキトーに返事返して寝よう!」

 

簡単に言うが、本当にできるのか?

 

「……ええい……ままよ!」

 

意を決して、とうとう彼女の連絡先を開く。

 

そして、俺は当然の如く後悔する。

 

そこには同じ内容の文字の羅列がビッシリとあった。

 

 

『なんで今日待っててくれなかったのよ』『待ってて欲しかったんだから!』『ちょっとくらい待てなかったの?』『ヽ(´・ω・`ヽ)まってー』『。゚ヽ(゚´ω`゚。ヽ)マッテヨ-』

 

 

途中から顔文字に変わっていたりもするが、そんなのに可愛さなど微塵も感じない。

 

「『待ってて』って……それだけのことで……こんな……」

 

驚きを隠すつもりはもう無く、俺はそそくさと自室に入り、ベッドに身を投げる。

 

スマホの画面を見て、どう返事しようか迷ってしまう。

 

 

しかし、その一瞬の逡巡が最大のミスだった。

 

 

俺がLINEを開けたことにより、計114件のモノが『既読』となった。

そして、俺がLINEを見てまだ1分と経っていないにも関わらず、津島ちゃんからメッセージ。

 

『あ、やっとLINE見たわね』

 

「なっ……」

 

『驚いた?悪いわね』

 

「え………え?」

 

『なんでアンタが先に帰ってるのか凄い気になって……その……ごめんなさいね』

 

「……つ、津島ちゃん」

 

蓋を開けてみれば。

 

蓋を開けてみれば、ただの彼女の疑問から成るLINEだった。

 

「俺が先に帰っちゃったの……気にしてただけ……なのか?」

 

『カイザー?』

 

「あ、悪い悪い……」

 

『すまん。今日は用事があって、どうしても早く帰らなくちゃならなかったんだ。先に言っておけば良かったな』

 

こ、これで良いだろう。

 

『……それって、私を待つよりも大切なことだったの?』

 

「は……?」

 

何を言ってるんだコイツは。

 

『重要な用事だったんだ。お前よりも大切じゃなかったら、お前を待たずに帰ったりはしなかったさ』

 

『私を待つより……私より大切な用事』

 

おい、ちょっと待て。

 

『待てよ。なんでお前が大切かどうかなんて話になるん?』

 

『だって、そういうことでしょう?』

 

『ちょ……わけわかんねぇこと言うなって』

 

『カイザー。ふざけるのはやめなさいよね。アンタは私と一緒にいれて楽しいって常日頃言ってたわよね?アンタは楽しく日々を過ごすのが夢なんでしょ?それってつまり、私が必要。私が何よりも大切ってことじゃあないかしら?』

 

『おい。なんか話が違ってきたぞ』

 

『逃げるの?』

 

『だから、そういう話じゃないだろって!』

 

 

 

 

「もういい」

 

 

 

 

ーー衝撃。

 

直後、暗転する視界。

 

耳には毎日飽きるほど聞いていた彼女の声がかろうじて聞こえた。

 

「………ザ………き………にも…………わせない…………」

 

 

ーーなんで、お前が俺の部屋に……?

 

 

やがて、俺は完全に気を失った。

 

 

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