ヤンデレなんてロクなもんじゃねぇ   作:Re:クロバ

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第5話:曇天のち曇天

「これはね…こうやって、こうやるんだ!」

 

俺は〇〇〇に〇〇〇〇を見せていた。

 

「わぁ~すごいね!」

 

〇〇〇はショートボブの髪を揺らし、俺の〇〇〇〇の〇に見入っていた。

 

「僕も凄く練習して、やっとできるようになったんだ!〇〇〇だってできるよ!」

 

「本当!?」

 

「本当、本当!」

 

互いに顔を見合わせニシシと笑う。

 

すると、急に〇〇〇が俺の〇〇〇〇を〇〇いて、自分と俺の小指にま〇〇けた。

 

「えへへ…」

 

「ど、どうしたの〇〇〇」

 

「これは私と〇〇〇〇を繋ぐ〇〇〇!……嫌だった?」

 

「まさか!嬉しいに決まってるよ!!」

 

「やった!私もずっと〇〇〇〇……ーー!」

 

「そうだね!」

 

「じゃあ!将〇〇〇〇さ〇にしてね!」

 

「うん!約〇する!必ず〇えに行くからッ!!」

 

 

「ーーーだ」

 

 

「いつ迎えに来てくれるの!?」

 

 

「ーーーまだ」

 

 

「そうだね…じゃあ僕が高校生になったら〇〇にいくね!まず〇〇〇ってか〇、〇〇だね!」

 

「絶対だよ!」

 

「もちろーー

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「山田ッ!!」

 

バンと机を叩かれ「はい!?」と言いながら飛び起きる。

 

「授業中に寝るとは…いい度胸だな?え?」

 

俺の目の前にはこめかみに青筋を立てた(せんせい)がいた。

 

周りを眠気まなこで見渡すと、俺を見て笑うクラスメイトの数々。

そして、皆の手には教科書が……

 

「あッ!?授業中だった!」

 

「お前もうずっと立ってろ」

 

 

 

「ちっ……あのクソ教師が……」

 

「それはカイザーくんが悪いずら」

 

「うるせぇ、あとカイザー言うな。そして、相手が俺だと分かった途端元の口調に戻るな」

 

昼休み。

 

おれはズラ丸(こいつ)がいる教室で弁当を開ける。

 

「わぁ。昔と変わらずキャラ弁なんだね」

 

「あんの母親(ババァ)!いい加減やめてくれよ!」

 

ズラ丸が『普通』の弁当を開ける横で、俺は『異常』なキャラ弁を見て、げんなりとしている。

 

ちなみに、俺は女子を呼ぶときは基本的に苗字に『ちゃん』付けだが、こいつはズラ丸。

 

まぁ、理由は単純。

 

「本当に久しぶりずら。ていうかビックリしたのはカイザーくんそこまで背高くなってないこととか、未だにカイザーくんのお母さんがキャラ弁作ってることとか。

それに感動の再開がテディベアを忘れたのを届けるとかロマンがないずら。

ただ笑っちゃったのはカイザーくんは相変わらず女の子みたいに可愛いものが好き……「もういいだろ!?」

 

俺がこいつをズラ丸と呼ぶ理由、それはずらずらうるさい。

 

そして、可愛げがないほどに毒を吐きやがるからだ。

 

「俺も再開の糸を引いてくれたのが(こいつ)なのは流石に嫌だわ!」

 

「笑っちゃうずらね」

 

「お前無理してずらずら言うなよ」

 

窓の外を見る。

 

とうとう、雨は降り始めていた。多分、海は荒れ狂っていることだろう。

 

「今日バス出るかな…」

 

「そういえばカイザーくんって、まだマルの家の近くに住んでるの?」

 

「いんや。津島ちゃんのマンションだ。ってか、カイザー言うなし」

 

「あ、引っ越したんだ」

 

「うん」

 

特にこの空白の10年の間何があったとかそういったことを話すわけでもなく、「雨、降ってるなー」「そーだねー」と、他愛のない話をする。

 

しだいにチャイムが鳴り、解散。

 

俺たちは昔っから、こんな感じだ。

のんびりとした時間を共有する仲。

 

俺たちの間に津島ちゃんがいたからこそアイツの寸劇に付き合わされていただけだ。

 

俺は、自分の教室に向かう生徒達の間をぬい、廊下を歩く。

 

欠伸を噛み殺し、腕時計を見る。

 

さぁ、午後の授業(たたかい)の開始だ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「花丸ちゃん。今、さっきの……」

 

「あ、幼なじみのカイ…山田くんずら」

 

「へぇ」

 

「あ、ルビィちゃん…男の人苦手だったもんね」

 

「あ、その……ゴメンね?」

 

「いいよ、いいよ。あ、それより席座らないと!先生来ちゃうずら!」

 

「ホントだ!じゃ、じゃあ後で」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

「……カイザーくん……ふふ………立派になったね」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

俺は現在、放課後。廊下の掃除をさせられている。

 

なぜなら、5、6時間目と爆睡し、教師たちの怒りを買ったからだ。

 

昨日、あんまり良く眠れなかったからな……

 

 

 

『もういい』

 

 

 

ビクッ!と震え、背筋に冷たいモノが走る。

 

「だぁかぁら!アレは俺の杞憂だっつーの!あんなのありえないから!」

 

 

「何がありえないんですの?」

 

 

「あ、いや……その…すいません生徒会長。……お仕事されてて大丈夫ですよ?」

 

「結構です。先生方から貴方を厳重に見張っておくよう言われておりますので」

 

「ちっ……面倒だな…」

 

「何か言いまして?」

 

「いぇ!何もッ!!」

 

居残り掃除。これだけでも嫌だっつーのに、ハッピーセットで黒澤生徒会長付きだぜ?

 

見張りに付けるの美化委員とかで良かったじゃん…!?なんで、よりにもよってこの人!?

 

女子危険人物の五指(by男子一同)に入ると言われてんだぜ!?

 

たまったもんじゃねぇよ!

 

「ちなみに、掃き掃除が終わりましたら次は拭き掃除なので」

 

「あんまりだ……」

 

「居残り掃除で済んだだけマシだと思いなさい!」

 

くっそ……!

 

俺が悪いから何も言い返せないが……

 

断言出来る。

 

俺、この人絶望的に苦手だ。

 

俺を見張るのクラスの美化委員とかだったら冗談ほのめかしながら気軽に掃除できたっつーのに……

 

絶対冗談効かなさそうじゃん。

 

硬度10って顔してんじゃん。

 

「先程から人の顔をジロジロと見て……何か用でも?」

 

「ないです!申し訳ないです!」

 

頼むから早く終われこの時間……!!

 

 

 

もう午後7時になり、最終下校時間を迎えたとき、俺はやっとこの激務から解放された。

 

久々の重労働で、足腰に力が入らずふらふらと玄関へと向かう。

 

空を見上げると墨汁のような漆黒の夜闇が広がっていた。

 

雨は止みあがったものの、夜の曇天は月の光を完全に覆い、ただでさえ街頭の少ないここいらを闇で包んでいる。

 

「まぁ、あの強い雨は止んだからバスは来るだろうけど……帰ったら一体何時になるんだ?」

 

「少なくとも9時はまわるのでは?」

 

「まぁ、たしかに。って、なんで自然と隣にいらっしゃるんですか生徒会長」

 

「だって貴方を見張っていたのですよ?私もこの時間に帰ることになって当然です」

 

「俺なんか放っておいてさっさと帰れば良かったのでは?」

 

「そうすれば、貴方はサボるでしょう?」

 

なんて心を見透かしてくる女なんだこの人は。

 

ってか、俺愛想良くない方なのに普通に喋っちゃってるよこの人と。

 

「あぁ~……8時から見たいTVあったのに……」

 

「残念でしたわね。ま、全部自業自得ですが」

 

「はいはいそうですね」

 

「はいは1回」

 

「んぐっ……!」

 

あぁぁぁぁ!!なんだよこの女!

 

俺たちほとんど初対面みたいなもんじゃねぇか!

 

その癖して、俺に難癖付けてきやがってぇぇぇぇ!

 

マジで苦手ッ!この人合わない!

 

俺は(月明かりの無いことで間近でしか互いの顔を視認出来ないようになっている状況に感謝しつつ)嫌悪感丸出しの顔をしながら、バス停へと歩き出す。

 

まぁ、ご想像通り。

 

周りに何があるかかろうじて見える程度なので、歩き出して3歩目で頭を何かに勢いよくぶつける。

 

「「痛ッた!!」」

 

「なんで右に向かって歩くんですか会長!」

 

「だって正門そっちでしょう!?」

 

「左ですって!」

 

「右ですわ!まぁ、そんなに左と言うのなら1度ついていってあげてもいいですわよ?」

 

 

 

「左で正解でしたね」

 

「ぅぅ……!」

 

あ、この人ポンコツだ。

 

「お願いしますよ会長?頼みますから俺と同じ方向に歩いてください。ぶつかりたくないんで」

 

「それは私だって一緒です!じゃ、じゃあ行きますわよ!?せ、……」

 

「「せーの」」

 

ゴツン。

 

「「痛ッたァ!!」」

 

「会長バカなんですか!?俺今言いましたよね!?」

 

「だって、地面に何かが落ちてたので…!」

「拾おうと思ってたんですか!?なら先に言ってくださいよ!……で、何が落ちてたんで?」

 

「熊のぬいぐるみが」

 

「熊吾郎ぉぉぉぉ!!!」

 

落し物の正体は熊五郎もとい俺のテディベア。

 

「会長ありがとうございます。マジで感謝です。こいつが無いともう日常生活を普通に送ることができませんでした。なんなら今すぐにでもここで土下座して今までの無礼を謝りましょう」

 

「……大袈裟ですわ」

 

「あ、はい」

 

テディベアを胸ポケットに入れて歩き出す。

 

なんか、もうテディベアを胸ポケに入れて周りに見せびらかすということに恥じらいというものを俺は感じなくなっていた。

 

「そういうの好きなので?」

 

「いえ、気のせいです」

 

「いや、でも確かに今」

 

「会長の杞憂ですよ」

 

「熊五郎と」

 

「大好きです。えぇ。可愛いものに目がありません」

 

てか、話をしている間にバス停に着いたんだけど。

 

さっさと来てくんねぇかなバス。

 

それから俺は会長と喋り続けた。初対面というものを感じさせないほどにスムーズに会話は進んだ。

 

気が付くと20分が経ち、バスがようやく到来。

 

……やっと帰れる。

 

 

 

「……と、いうわけで……聞いてますの?」

 

「いや…だって……その話さっき聞きましたし」

 

「いいえ!貴方にはこれを聞いていただく義務があります!まず本校の生徒としての心構えとしまして授業中に居眠りをするだなんて言語道断であり……ーー」

 

ーーマジかよこの人……

 

バスに乗った瞬間説教が始まったよ。

 

これなら掃除を見張られてた方がまだマシだぜ……

 

「お願いしますよ会長。俺すんごい疲れてるんです。マジでやめてください。説教なら明日聞きますんで」

 

「はぁ!?……まぁ、仕方が無いので勘弁してあげますわ」

 

そして、静かになった。

 

俺の家まではあと1時間と30分。

 

居眠りくらいならできそうだな。

 

「では、教科書を見せてください。せっかくですので、先輩のよしみで勉強を見てあげますわ」

 

「アンタは鬼か!」

 

「何を言っているのですか!?こういう時間こそ活用しないと意味が無いでしょう!?」

 

「嘘つけ!絶対会長だって疲れ果てた時はバスの中で眠っちゃうようなタイプの人種でしょうが!」

 

「そ、そんなことは……その……」

 

「あからさまな反応どーも」

 

通路を間に挟み、座っている俺たちだというのに会長は俺のツッコミに耐え、自分のカバンを漁り出す。

 

「では、私のノートを見せてあげますわ。3年生の予習をしましょうか」

 

「だから鬼!?お忘れでないですか!?俺1年ですよ!?基礎も出来てないのに理解出来るわけがないじゃないですかッ!!」

 

「ああ言えばこう言いますわね」

 

「ああもこうも言いたい状況なんですよ今は!」

 

憤慨し、足を組む俺。

 

横目でちらりと会長を見やると、ようやく俺に勉強を教えることを諦めたみたいで再びカバンを漁り出していた。

 

ーーったく……しぶとすぎだろこの人。

 

すると、彼女はカバンから何かを取り出した。

 

多分生徒証か。

 

シンプルな黒ベースのカバーが車内の照明に当たり、黒光りしている。

 

そこには『黒澤 ダイヤ』と……

 

 

ん?

 

 

「待てよ」

 

「はい?」

 

「黒澤生徒会長」

 

「え?」

 

「黒澤 ダイヤ生徒会長」

 

「な、なんですの?」

 

「………勇気の合言葉」

 

「ッ!?困り人は全力を持って助けるべし……って、なぜこれを!?」

 

「だ、だって……」

 

 

「これ作ったの俺だからだよ……ダイヤッ!!」

 

 

「ま、まさか……山田って……か、カイザー!?」

 

 

「カイザー言うな」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

薫る草木の匂い。

 

芝生に包まれた場所で開眼する。

 

先程から瞼に日光がかかり、オレンジ色の景色しか見えていなかったので、いきなり見えた緑に驚きを隠せない。

 

すると、ふわりと頭を撫でる手。

 

そこにいたのは年端のいかないショートボブの少女。

 

「おーい!〇〇〇〇!何イチャイチャしてんのー?」

 

その時、声がした。

 

聞いたことのある声だった。少し、クセのある声だ。

 

「お、おーい!〇〇〇〇!」

 

またもや、声。今度は聞き取りやすい声。こちらも聞き覚えがある。

 

すると、唐突に生まれる羞恥心。

 

「〇〇〇〇ってもしかして〇〇〇のこと〇〇〇〇……ーー!?」

 

「ち、違ェよ!そんなんじゃねぇってば!」

 

ーー俺は立ち上がり、ショートボブの少女の膝枕から逃れる。

 

「だっ、誰がこんな〇〇〇〇……ーー!!」

 

ーーあの時俺はなんて言った?

そして、彼女は誰だ?懐かしい声の主たちは誰なんだ??

 

けれど、これだけは思い出した。

 

俺がその時吐いた言葉は的確に彼女を傷つけ、彼女を初めて悲しませたのだった。

 

 

 

 

 

そして、この時の聞き取りやすい声。

 

それこそが俺のかつての大親友。

 

俺のイトコの友達……

 

 

黒澤 ダイヤだったのだ。

 

 

 

 

 

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