まどポの針の魔女の生前のお話。
キュゥべえに賛同する娘一人は居ただろうな、と言う感じに。
純白の部屋。
鼻腔刺すアルコール臭。
鉛が如く動かぬ肢体。
終末の時を迎えん、と、葬儀に向かう末期者が如く横たえらせられる僕の体。
「――キュゥべえ」
「何だい?」
見守ってくれている"感情無き白き獣"へと呼び掛ける。
――いつだって僕は独りだった。
僕は知りたかった。
僕は知恵を欲した。
僕は知識を欲した。
けれど、そうする度に人々は僕を異端とした。
背後から浴びせられる罵詈雑言。
背後からから突き刺さる怪訝な視線。
堪えようとした。
堪えられなかった。
母さんや父さんでさえ、一人娘である僕に理不尽な平等を強いた。
僕は絶望した。
僕に理解者は居ない。
僕を理解してくれる人は居ない。
僕と語り合ってくれる人はどこにも居ない。
僕を見てくれる人でさえ、この世界にはどこにも居なかった。
――いつしか、僕の隣には"感情無き白き獣"が居てくれていた。
彼は知らせてくれた。
彼は知恵を与えてくれた。
彼は知識を与えてくれた。
彼は、僕を異端としなかった。
正面から語りかけられる彼の理想。
正面から見つめてくれる彼の瞳。
堪らなかった。
堪る必要なんてなかった。
彼こそが、僕に一人理不尽な平等を強いて来ないたった一人の恩師だった。
僕は希望に満ち溢れた。
「――ありがとう」
「こちらこそ」
師の
寧ろ、悪魔の使いとして罵られる事さえ有り――否、そう称される事しか無かった。
僕は心を痛めた。
僕の心が滾った。
僕の心は憤った。
師の理想こそ、唯一無二にして、高潔で、最上の献身だと言うのに。
「僕……君の役に……立てるんだよね……?」
「もちろんさ」
燻らせた僕の
けれど、怖くはない。
例えそうなろうとも、僕には次の役目がある。
「――ああ、良かった」
「ああ、良かったさ」
いずれ迎える宇宙の熱的死。
文字通り、宇宙と言う名の孤立系に於いて、如何なるエネルギーも得られなくなる最終状態。
だがキュゥべえのお陰で、僕の
これ以上の悲願が、何処に、何が有ろうと言うのか。
「――じゃあね、キュゥべえ。君に出逢えて良かった」
「ああ、君みたいな娘は初めてだった」
そんなやりとりを最期に、僕は
最早僕にはもう、キュゥべえの言葉が届いてくれない。
――だからこそ、彼の
「――わけがわからないよ。君程度では、悲劇を覆すに至らないのに」