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――ここは荒涼高校、今日からオレが通う予定の高校だ。
校内に入ったは良いが、この学校に来るのは初めてで勝手がわからず右往左往してしまう。朝早いだけあって、校内にも生徒はあまりいない。
どうしようかと考えていると、前から長髪を後ろで縛ったガタイの良い男がやってきた。部活の朝練なのかボクシングのグローブの様な物を方にかけている。
「あの、すいません」
「ん? ボクか~い?」
声をかけると、そんな返事が返ってきた。イケメンなのだがどうにも軽そうな男だ。
「はい。ちょっと迷っちゃって、職員室はどうやって行けば良いですか?」
「あぁ職員室なら丁度この上さ。そこの階段から行くと良い、良かったらボクが送ろうか?」
「いえ大丈夫です。ありがとうございました」
無駄にさわやかに対応してくる男だったが、必要なことはしっかり教えてくれた。その言葉に従い職員室を目指す。
「ここかな?」
言われた通りに進むと職員室と思われる一際大きい教室があった。
突っ立っていても仕方がないので、ノックをして入る。
「失礼しまーす」
そう言った瞬間、室内にいる人の全員がこちらを向く。こういうのは嫌いだ、恥ずかしいやら怖いやらで。比率で言うと9対1だけど……。
「すいません、今日転校してきた不破なんですけど……」
紹介が遅れたが、オレの名前は
オレには両親というものが既にいない。両親は剣術の道場をやっていたが、中学の初めの頃に事故にあって死んだと聞いている。死体は見つからず、死因も不明だがオレを担当した刑事がそう言っていた。
祖母の家で暮らしていたのだが、転校を気に一人暮らしをしようかと思っている。幸い両親はお金を遺してくれていたので、その辺も特に問題はない。
「はいは~い。君が不破君ね~」
「シャンとしなさい小野先生」
しばらくすると、やたらほんわかした雰囲気の若い女性とその女性を注意しながら輝く頭が眩しい男性がやってくる。
「君が不破君か、私は君の担任になる
「は~い、副担任の
「小野先生!」
「は~い」
「返事は短く!」
「はいはいはい」
なんと言うか、大丈夫なんだろうか新しい学校は……出だしから不安しかない。
漫才もとい説教を終えたハゲせん……安永先生はこちらに向き直り、やや疲れた顔をしながら話を始める。
「やれやれ……さて不破君、君はこれから私達と教室に来てもらいクラスの皆に紹介するわけだが、大丈夫かね?」
「はい」
「よろしい。では行こうか二人とも」
「はい」
「は~い」
安永先生に返事をして、オレ達は職員室を後にした。
しばらく歩いて一つの教室の前で立ち止まる、どうやらここらしい。
呼ぶまで教室の外にいてくれとのことなので、呼ばれるまで窓の外を見ながらぼーっとしていた。ここに案内されている時も思ったが、この学校は広すぎる流石はマンモス校というべきか……
「不破、入ってきなさい」
考え事をしていたら先生に呼ばれた。深呼吸して心を落ち着けようとするが、その甲斐なく少し緊張しながら教室に入る。
「先ほど説明した通り、今日からこのクラスの一員になる不破君だ」
「不破翔馬です。よろしくお願いします」
先生につられて自己紹介をする。ついでに教室内を見渡すがこちらをしっかり見る生徒、興味ないのか各々別のことをしている生徒が半々といった感じだ。
「不破は家庭の都合で松竹高校からウチの学校に来たんだ。まだ慣れないこともあるだろう、皆も何かあったら助けてあげるんだぞ」
学校には家庭の都合とだけ伝えてある。書類偽造かもしれないが望まないレッテルははられたくない。
「何か質問のある者いるか?」
このハゲは……。このまま穏便に席に着きたいというのに何言ってんだ!
誰も手をあげるなと願っていても無常にも手はあがる。
「何で男子の制服を着てるんですか?」
「はい?」
おっと最初っから理解出来ない質問が飛んできたぞ、何でも何も男だからに決まっているんだが……。
昔からこうなんだよなぁ、そんなに間違うほど女っぽいかな。
「えっと男だからですが……」
「嘘だッ!!!」
なにやら断言されてしまった。オレにどうしろって言うんだ……。
「えー。不破君はこの容姿だがれっきとした男なので皆間違わないように」
どう説明しようと考えていると、横から安永先生がフォローしてくれた。
「じゃあ不破君の席は……白浜の隣で良いな、あそこだ」
「わかりました」
注目を帯び続けるのも嫌なので先生に指を指された席に急いで座る。
「はじめまして。ボクは
席に着き一息ついていると、隣の生徒が話しかけてきた。白浜兼一か……。
「こちらこそよろしく。あ、オレのことは翔馬で良いよ」
「そう? じゃあボクのことも兼一って呼んで、よろしくね翔馬君」
「あぁ」
さっそく友達が出来た、幸先が良いぞ。この調子で皆と仲良くなれたら良いけどな……。
そんな感じで授業も恙無く終了し現在は放課後。
授業も終わったし、部活でも見学しようか考えてたところ、突然教室の入り口が勢い良く開かれる。
「いよーう兼一! お前んとこに転校生が来たって? どんな奴だ?」
現れたのはオカッパ頭に尖がった耳、まるで宇宙人が皮を被った様な男だ。どうやら兼一の知り合いらしい。オカッパ男は取り巻き数人とともに兼一に近づいてそう言った。
「本当に事ある毎に出現するなお前は」
「ヒャハハ! 情報のためなら努力を惜しまないぜ? オレ様は」
「まぁいいや。ボクの隣の彼だよ、不破翔馬君」
そう言ってオレの方に手を向ける兼一。
「ほう、アンタか。オレ様は
「新白連合?」
なにやら聞きなれない単語が出てきて、思わず聞き返してしまう。
「また勝手なこと言って、ボクは認めてないぞ! 新白連合なんて」
「じゃかーしぃ! お前の意見なんぞ聞いちゃいない」
どうやら兼一も関わっているらしい。
「新白連合ってのは、強きを挫き弱きを助ける正義の集団さ」
宇宙人もとい新島がそう説明するがなんとも胡散臭い。
「ふーん、で? その新白連合の総督さんがオレに何の用?」
関わってもあまり良いことなさそうなので、用件だけ聞いてさっさとここから立ち去りたい。
「いやな、転校生が来たって聞いたからどんな奴かと見学に来ただけさ。趣味とか特技ある?」
なにやら制服のポケットからタッチパネル式の情報端末を取り出して聞いてくる新島。
「そんなん聞いてどうするんだ? まぁいいか、趣味は猫と触れ合うこと、特技は剣術かな……」
「ほうほう剣術っと、つーことは持ってるソレは竹刀か……んじゃ次は――」
答えたものから次々に端末に入力していく新島、前の学校の成績からどうでも良いことまで細かく質問してくる。十分もするといい加減飽きてくるので、この辺で話を切り上げる。
あと持っている包みは竹刀ではなく木刀なんだが、まぁ別にここで言う必要はない。
「もういいだろ? この後行くところあるんだよ」
「まだ聞きたいことは山ほどあるが良いだろう」
一瞬、お前は何様だよと思ったが言葉を飲み込み席を立つ。
「じゃあこれで、兼一また明日な」
「うん。翔馬君こんなのに律儀に付き合わなくてもいいんだからね」
兼一の言葉に手をあげて応え教室を後にする。
予定していた剣道部の見学も終わり家路に着いていると、空き地の方から複数人の怒号が聞こえてくる。何かと思い覗くと、何と喧嘩が行われていた。見るからに不良と思わしき連中が大勢で二人を囲んでいる。転校初日から面倒は避けるべきだろう、例に漏れずオレもそうしようとしていると、絡まれている二人のうち一人が今日友達になったばかりの兼一ではないか。
兼一ともう一人の女子が不良相手に殴り合いの喧嘩を繰り広げていた。
「はっ!」
一人また一人と不良が倒れていく。
この分なら無視しても問題ないかなと思っていると、不良の一人が懐からナイフを出して切りかかろうとしている。兼一に気づいている様子はない。
「まずいっ!」
そう言って、オレは包みから木刀を取り出して不良の方へ走る。
「死ね白浜ぁ!」
「危ない兼一!」
キンッ!
不良が突き出してきたナイフを間一髪木刀で弾き上げる。
「ふっ!」
「うぐっ」
そのまま返しの太刀を脳天に決め、不良を昏倒させる。
向こうも終わったらしく、こちらに寄ってきた。半分以上女の子の方が倒していたのには驚いた。
「翔馬君!」
「よう兼一。危なかったな」
「ありがとう助けてくれて」
「兼一さんを助けて頂きありがとうございますですわ」
兼一と一緒に戦っていた女の子からもお礼を言われる。あれ? この子クラスにいたような……
「いいっていいって、しかしここら辺は物騒なんだね。街中であんな大勢で喧嘩なんて」
「あはは、まぁ色々あってね……」
オレがそう聞くと、兼一は答え難そうに苦笑いを浮かべる。
「そうだ兼一、この娘は?」
「あっ紹介がまだだったね、この人は
「あっやっぱり? 何処かで見たことあるなぁと思ってたんだけどね」
「私、風林寺美羽ですわ、よろしくお願いしますですわ」
「自己紹介して知ってるかもしれないけど一応、オレは不破翔馬。よろしくね」
ですわ口調の女の子は風林寺というらしい。
「助けてもらったお礼にウチでお茶でも飲んでいってもらったらどうですの? 兼一さん」
「そうだね、これから何か用事ある? なかったらどうかな翔馬君」
また友達が増えて内心上機嫌でいると風林寺さんからお誘いが来た。兼一も誘ってくるし、せっかく友達が誘ってくれているのに行かないのも悪いな。よし行くか……。
「じゃあお邪魔しようかな」
そう言って二人の誘いを受ける。
しかしこの出会いが後にオレの人生を大きく変えてしまうことになるとは、この時は微塵も考えていなかった。
誤字脱字などあったら教えてもらえると助かります、目標は週一更新です。