どうでもいいですね。ではどうぞ!
――都内某所
「新白連合とやらがキサラ隊に大打撃を与えたそうだが……」
「聞かないチームだな……」
豪華に装飾された椅子に腰掛けた白スーツの男が呟く。
「しかも、あの
「どんな組織か知れないけど、
スーツの男に続いて、男女それぞれが話し始める。
「へぇ……第三拳豪であるキミが興味を持つ相手か、少し興味があるね」
第三拳豪と呼ばれた女の言ったことに関心があるのか、薄く笑みを浮かべながら反復するスーツの男。
「私も一回だけしか会ったことないけどね」
そう答えると、待ってましたと言わんばかりに一人の男が立ち上がった。
「ほ~い、ちょいと探りでも入れてみましょうか。この戦う参謀ロキ様にお任せあれ」
ロキと名乗った網目のゴーグルをした男は、いやらしい笑みを浮かべ足早に歩いていく……。
☆
「そうだ兼一、昨日の夜何処行ってたんだ?」
登校中にふと疑問に思ったことを聞いてみる。
「そうですわ、昨日は馬さんと一緒に何処に行っていたんですの?」
少しばかりジト目で美羽ちゃんが兼一に尋ねる。
「えーっと、ある意味修行というか……ちょっと理不尽な人と一緒にいたというか」
「? 良く分からないんだけど……」
「そうですわハッキリ言ってくださいまし」
「長くなるので端的に言うと師父の知り合いの店に行ったわけなんですが……」
話をまとめると、
着いた先は横浜中華街、そこで剣星さんは
そしてそこで出会った剣星さんの娘、
正直、そのなんやかんやの部分が一番聞きたいのだが兼一は頑なに語ってはくれなかった。
「そんなわけで、昨日は大変だったというわけです」
「まぁいいや、大変だったのはよくわかったから」
「お二人とも着きましたですわよ」
話に無理やり納得しているといつの間にか学校に着いたようだ。話を切り上げ学校に入る。
☆
本日の授業も何事もなく終了し、いざ帰ろうと思って廊下に出てしばらく歩いていると……
「おう、アンタか。丁度いいアンタも来てくれ」
「はぁ? ちょっ引っ張んなって!」
突然新島に呼び止められ、わけもわからず連れて行かれた。後ろには新白連合と書かれた旗を持っている人などを含む、数人が着いてくる。
「おーい、兼一」
ガラッと教室の扉を開けずかずかと中に入る新島。
「おわっ!? ノ、ノックくらいしろ! 新島!」
「ノックってここはお前の部屋か……」
「アレ? 翔馬君? 帰ったんじゃなかったっけ」
「こいつに無理やり連れてこられたんだよ、オレだって早く帰りたかったさ」
何故か慌てた様子で文句を言う兼一に違和感を覚えたが大して気のも留めず続ける。
兼一の質問に答え、そのまま新島を睨むが本人は何処吹く風といった風で、まったく反省などしていない。
「ええいっ何なんだよ新島! わざわざ翔馬君まで連れてきてこんな大人数でゾロゾロと」
「まぁ待て、今ちょっと全員を集めているんだ――ガラッ――お、来たな」
新島の言葉の途中で教室の扉が開かれ、そこからサングラスをかけた柔道着の男と手にバンテージを巻いた褐色の男が入ってきた。
あれ、あの人って確か……。
「やあ兼一君、ボクに用事って何だ~い?」
「ったく、オレはこれから一年達の稽古に付き合うことになってんだから早いとこ済ませてくれよ」
「えっ宇喜田さんに武田さんどういうことですか? ボクは何も知りませんよ」
あの二人が以前話していたラグナレクを抜けた二人のようだ。まさかあの時の人だったなんてまったく思ってなかった。向こうはオレの事には気づいた様子もなく、そのまま会話を続けている。
「ククク……オレ様が呼んだのよ、ようやく全員揃ったようだな」
不気味な笑い声を上げながら新島が話し出した。
「謎の斬り込み隊長、白浜兼一!」
「え?」
「そしてその相棒とも言える二刀流の剣士、月影流不破翔馬!」
「お?」
「本来の力を取り戻したケンカボクサー、突きの武田一基!」
「ん?」
「武田との友情を選びラグナレクを抜けた柔道野郎、投げの宇喜田孝造!」
「さっきから何なんだてめーは!」
新島が大げさにオレ達のことを大声で語り始める、それぞれ反応は返したが頭が追いついていないのか事態に着いてはいけてない……。
というか、何でオレの流派を知っているんだこいつは……。
「これぞ新白連合最強の四将軍!」
何を言っているんだこいつは……。
オレ同様周りは以前開いた口がふさがらないといった風に唖然としている。
「そして人類を超えた驚異の頭脳の持ち主、この新島春男様と屈強な兵士達! 今まさに新白連合がここに結成したのだぁああ!」
新島がそう高らかに宣言した瞬間、オレ達四人は一斉に動き出した。
「「「「死ねぇええ!」」」」
「ぶるあぁぁっ!?」
「そ、総督ぅ~!?」
「し、しっかり新島総督!」
四人の攻撃をそれぞれ受け新島は沈んだ。それを見てオレ達以外の者達が新島に駆け寄る。
それぞれの鬱憤を晴らしたオレ達はこの場から帰る事にした。
「なんだよ、兼一が呼んだんじゃねぇのかよ」
「いえまったく」
「なぁ、なんでオレまで新白連合に入ってることになってんだ?」
「あれ? キミってもしかして、前にボクに道を尋ねてきた娘か~い?」
教室を出て話しながら廊下を歩く、出る直前新島の「照れんなよ四人とも……」なんて声が聞こえたが、誰も反応することなく教室を出た。
というか今頃気づいたのかこの男は……。
「遅くないですか? でもあの時は助かりました」
「困ったときはお互い様じゃな~い、お礼といっては何だけど今度ボクと食事でも行かないか~い?」
「男同士で飯行って何が楽しいんですか……」
「……え?」
相変わらず軽い態度の男だな。というかなんだろうちょっと悪寒が……。
部活があるらしい二人と別れオレと兼一は梁山泊へと帰っていた。
その帰り道……
「あれ、兼一。そういえば美羽ちゃんは?」
「えっ!? み、美羽さんなら先に帰ったけど……」
「何でそんなに慌ててるんだ?」
「えーと、実はさっきね……」
問いかけると、少し視線を彷徨わせながらぽつぽつと話し始める兼一。
「なるほどな……それで先に帰ったってことか」
「そうなんだよ、翔馬君これどうしよう……」
話を聞くと、どうやら兼一がラブレターを貰ったらしい。それを目撃した美羽ちゃんが気を利かせて先に帰ったようだ。
「呼び出された時間は明日なんだろ? 今日、目一杯考えて答えを出すしかないだろ」
「そうしようかな」
「まぁ師匠達にでも相談してみろよ、あぁ見えてもオレ達より長く生きてんだからそれなりのことは言ってくれるだろ」
「うん」
そんなことを話しながら歩いていると梁山泊に着きそれぞれの修行が始まる。
この時間はオレも兼一も技とかの高度な修行はせず、基礎体力と筋力をつけるためにトレーニングを行っていた。
「ぬぐぐっ」
「五十、五十一、五十二……」
今はしぐれさんを背中に乗せて腕立て伏せの最中だ。しぐれさんは別に重いわけではないのだが長く続けていると結構辛いものがある。因みに三セット目だ。
兼一はというと、現在の修行担当である剣星さんにラブレターのことを相談していた。
「そんなのはとりあえず付き合ってみればいいね」
「いや~しかしですね~。ボクには美羽さんという人がいましてですね……」
別に付き合っているわけではないのだが、そんなことを言う兼一。
壷の上に逆立ちで乗り更に剣星さんを上に乗せた状態で壷から壷へと移動している。正直真似出来る気がしない、オレもいつかあんなことをさせられるのだろうか……。
「兼ちゃんは別に美羽と付き合ってるわけじゃないね? 相手にもされてないね」
「う゛っ」
「だから色んな娘と付き合ってみなきゃ真実の愛は見つかんないね」
「うーん」
「おいちゃんが言えるのはそんなとこね、ほいじゃあ今日はここまで」
「ありがとうございます……」
そう言って部屋を出て行く剣星さん、次いで逆鬼さんが入ってくる。
「終わったか? じゃあオレの番だな」
「お願いします!」
剣星さんの修行に続き今度は逆鬼さんか、師匠が五人もいるって一見凄く贅沢に見えるけど実は物凄く大変なんだよな……。
「九十九、百……。一旦休け…い」
「ぷはー」
そう言い渡され仰向けに転がる。
しんどい……。一セット毎は大して数はこなしていないのに、どんだけひ弱なんだろう。基礎の筋力ではたぶん兼一に勝てないだろうな。
「逆鬼師匠はどう思います?」
おっと、今度逆鬼さんに相談し始めたぞ。
「ラブレターだっけか? 言っても美羽とはただのダチなんだろ? じゃあ別に気兼ねすることもねーだろ」
「しかしですね……」
二人そろって気組みをしながら、器用に会話をしている。
「ボクにとって美羽さんは目標であり友人であり、そしていつかこの手で守ってあげたい……とても大切な人なんです」
真剣な表情でハッキリとそう言い切る兼一、逆鬼さんはその顔を見てニッと笑い……
「んじゃ、待ち合わせ場所に行って断って来い! ハッキリとな」
「はい……」
その言葉に返事をしたが、まだ整理がついていないのかボソボソと小さな声で何かを呟き始める兼一。
「翔馬、次……スクワッ――」
あら、もう休憩終わりか……と思ってるとしぐれさんの声を遮るように……。
「けーんいーちくーん! あっそびーましょー!」
そんな声が聞こえてきた。
「……行ってく…る」
「ははは……お手柔らかに」
言うが早いかあっという間に行ってしまうしぐれさん。すまん新島、オレにこの人を止めることは出来ないんだ……と内心ほくそ笑みながら、新島の安否を祈っていた。
一分もしない内に新島の悲鳴が聞こえてきて、鎖に縛られた新島がアパチャイさんに連れられてきた。抵抗を許さないためか喉元にはしぐれさんの刀が突きつけられている。
「くせものよ。くせものがまた現れたよ」
「ん!」
「おー新島いらっしゃい、良かったな超VIP待遇だぞソレ」
「しぐれさんとアパチャイさんは毎回絶対わかってやってません?」
「じゃかーしい! 不破、早くこのねーちゃんどけろ!」
おっと、捕まった分際で何でこんなに上から目線なのだろうか?
「どうしよっかなー。オレとしては何で命令されているかわかんないんだけど? 別にお前なんかどうなってもい――」
「お願いします助けて下さい!」
オレの言葉に被せる様にして新島が叫ぶ、そんなに嫌なんだろうか……あの二人は単に脅かして遊んでるだけだろうから、そこまで被害はないはずだけど。
「ふぅー毎回こうなると流石のオレ様も疲れるぜ……」
また二人にお願いして新島を開放してもらい、一息ついている時に兼一が話を切り出した。
「で、今度は何しに来たんだ? お前は」
「うむ。単刀直入に言おう、お前の師匠をオレ様に貸してくれ!」
「はぁ?」
新島の言った事に、何言ってんだこいつ? みたいな顔をする兼一。
正直オレもわけがわからない、武術でも学ぶのか? こいつ……。
「どういうことさ?」
「実はよ、ラグナレクの八拳豪のロキってやつが平和的に解決したいから、明日一人で指定した場所に来いって言ってきたんだ」
「ええっ! ラグナレク!?」
「だからよ……あの野郎が一人で来たとこを、おめーの師匠達を使って平和的にボコボコにしようって思ってよぉ~!」
言うに事欠いて何言ってんだこいつ、駄目に決まってんだろうが!
「ダメダメ! そんなの絶対ダメ!」
兼一も反対なのか大声でそう伝える。万が一師匠達の一人でも行ったとしたらその場所は血の海になるだろうな。特にウチには手加減できない人もいるし……。
「じゃあ、その代わりに兼一お前が来い」
兼一の態度に師匠は諦めた様だが、その代わりの人材を要求してきた。
「ごめんだね! だいたいラグナレクはお前一人に来いって言ってきたんだろう? それにボクはもうこれ以上ラグナレクとは関わりたくないね……それに」
一回そこで一呼吸入れて、少し顔を赤らめながら言い放つ。
「明日はちょっと用事があるし」
「かーっ! 使えねぇ男だな! もう頼まねぇよ!」
そういい捨て、足早に出て行く新島。
「ったく、何しに来たんだあいつは……」
「ホントだよまったく」
オレ達はそれぞれ愚痴り、修行を再開するのだった。