史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

11 / 27
第10話 第四拳豪

 

 ――次の日

 

 しょーがねぇ、あいつ等は当てにならねぇし……ここはオレ様自らが先陣をきるしかあるまい。

 まぁ兵は連れてきてるし、大丈夫だろ。まさかロキの野郎も一人で来るはずのオレ様が伏兵を連れて行くなんて思うまい。

 

「いらっしゃいませー」

 

 早速店内に入り、ロキの野郎を探す。

 む、あの網メガネのやつだな……野郎余裕こいて知恵の輪なんぞやってやがる。ようしここは一発……。

 

「よう、お前がロキだな! 戦う参謀つったっけか? こんなとこにノコノコ現れやがって八拳豪が聞いて呆れるぜ! オレ様がバカ正直に一人で来るとでも思ったかマヌケめ! テメェには聞きたいことが山ほどあるんだ、ちょいとツラかせや」

 

 ふっ決まったな、野郎……オレ様の迫力にビビッて声もあげらんねぇぜ。

 

「フフ……」

「あぁ! 抵抗しても無駄だぞ!」

 

 あの野郎笑ってやがる……不気味な野郎だ。

 そう思い部下の一人の背中に隠れる。

 

「コ、コイツらは我が新白連合の精鋭達だ! たとえお前ら八拳豪だろうが歯の立たねぇ強者達だぜ!」

 

 ここまで言えば、迂闊に下手なことはしねーだろ……。

 

「フッ……お粗末な作戦だな、本物の伏兵ってのはこうやるんだよ!」

 

 ロキのが声を荒げると、店中の人間が立ち上がりぞれぞれ武器を構えこちらににじり寄ってくる。

 

「なっ!? まさか……これ全員っ」

「そう! 今日、ここラグナレクの貸しきりなのよねぇ……」

 

 まずいまずいまずいっ! 囲まれた!

 

「みっ密集隊形~っ!」

 

 慌ててそう叫び、部下共をオレ様の周りに集まらせる。

 どうする、どうする……。

 

「そ、総督。敵が多すぎます! 我らが四将軍はまだ来ないのでありますか!?」

 

 松田がそう叫ぶが、あいつらは来るかどうか……。

 

「今はとにかくオレ様を守ることだけ考えろ!」

 

 とにかく、時間を稼がなくてはっ!

 

「どぉれ……お前達新白連合の実力見せてもらおうか……」

 

 パチンッと指を鳴らしそう言うロキ、それを合図にラグナレクのやつらが襲い掛かってくる。

 ぐぉおお……流石に時間を与えてはくれないかっ!。

 兼一っ! 不破!

 

 

 ☆

 

 

 オレは今、前を小走りする人物の様子を観察しながら後をつけている。

 

『あはは! 馬師父ったらこんな服まで用意して……どうせ断るんだからめかし込んでもしょうがないのにな~。うふふ……』 

 

 などと言いながらも、軽い足取りでスキップしてる様は楽しみだと周囲に公言しているようなものだ。

 オレに気づく様子もなく待ち合わせの場所を確認している。

 

 突如何かが割れる音と人の怒号が聞こえてきた。兼一も気づいたらしくオレと同じ場所を凝視している。

 

 こんなところでまでケンカかよ……。

 

『新島!?』

 

 なに? 本当だ……昨日言っていた場所ってここだったのか。結構やばそうだな追い込まれてる。

 あらら座り込んじゃったな兼一のやつ、助ける気はあまりなさそうだ。

 

「仕方ないオレが行くしかないか……」

 

 そう思って立ち上がると、店の中から声が聞こえてきた。

 

『総督! 四将軍は!? 四将軍は来ないのですか!?』

『来る! きっと……』

『いい加減諦めろ! お前らの大将をさっさと引き渡せ、そうすればお前らは見逃してやるよ』

 

 メガネの男の言葉に段々と諦めたような表情になっていく新白連合の面々。

 次々と戦意が失われていく……そんな中。

 

『来る! 白浜隊長はきっと来る!』 

 

 突然、一人のメガネをかけた青年が叫ぶ。あれは確か水沼だったっけ?

 

『あの人は、あの人達は必ず来る! あの人達が仲間を見捨てたりするものか!』

 

 仲間ねぇ……、そこまで言われて無視するのも後味悪いよなぁ……。

 見ると兼一も立ち上がって店の中に入っていく。

 んじゃオレも行きますか……。

 

「ボクは仲間とかって言葉に弱いんだよ!」

 

 店に入ると既に兼一は上着を脱いで戦闘モードで構えていた。

 

「よう兼一! 助太刀するぞー」

「えっ翔馬君!? なんでここに?」

「ん? まぁ偶々だよ偶々」

 

 本当はお前をつけてきたんだけどな、わざわざ言うことでもないだろ……言ったらいじけそうだし。

 兼一の隣に陣取り、両手に木刀を持ち構える。

 

「白浜隊長!」

「不破隊長! 来てくれたんですね」

 

 周りはそう言うが、オレはやっぱりもう新白連合に入ってることになっているのだろうか……この反応をみるとそうなんだろうな。

 

「へぇ白浜に不破ね……あんたらが噂の新白の双璧かい?」

「は?」

 

 網メガネの男に言われ思わず声が出てしまった。何? そんな噂が広まってんの? 

 

「ふぅん、少しは出来そうだけど……この人数相手に出来るかな?」

 

 確かに周りは全て敵、狭い店内だと武器の取り回しは少しキツイかな……?

 そう考えていると突然、目の前にいた数人の敵がぐぐもった声を出してその場に倒れた。

 

「ハーイ諸君! 裏口から失礼。パーティーならボク達混ぜて欲しいんだけどな~」

「まっ野郎だけのパーティーなんざこっちから願い下げだけどな!」

「なっ!? 突きの武田に投げの宇喜田! この裏切り者どもめ、まだラグナレクにたてつく気か!」

 

 軽口を叩きながら近寄ってくる二人、どうやらこの二人が倒してくれたようだ。

 その二人の登場に網メガネは怒りを露にして叫ぶ。

 

 そのまま武田さんと宇喜田さんが近づいてきて、オレ達の背中を守るように陣取った。

 よしこれで自分の前のやつだけに集中出来るな。

 

「ひゃははは! よくぞ集まってくれたお前達、行け! 新白連合四将軍の力を今こそこのバカどもに見せてやるのだ!」

「うるせーっ黙ってろ!」

 

 場が有利になってからなのか、さっきまでの態度とは打って変わり強きにでる新島。その態度が癇に障ったのか宇喜田さんはご立腹のようだ。

 

「二人ともどうして……?」

「偶々通りかかったら、君が見えてね……」

「ふんっ! 俺らも仲間って言葉に弱いらしいな」

 

 兼一が尋ねると、二人は少し照れた様子でそう答える。

 

「つーか、何でオメーがここにいるんだ?」

「オレですか? まぁお二人と殆ど一緒ですよっ!」

 

 宇喜田さんにそう答えながら、目の前の一人を木刀でなぎ払う。

 

「へっそうかよ! んじゃいっちょ暴れるか!」

「…………この知恵の輪がさ~、知恵の輪が…………はずれねーんだよぉおお!」

 

 軽口を叩きながらもう一人に攻撃を加えようとしたら、いきなり網メガネが叫びだした。

 

「ラグナレク第四拳豪、この戦う参謀ロキ様を怒らすとはいい度胸だね~!」

「だまらっしゃいメガネカトンボ! 新白連合総督兼戦わない参謀、新島春男様をなめんなよ!」

 

 威張るなと声を大にして言いたい……。

 

「さあ! やっておしまい四将軍!」

「…………」

「なぁ、まずアイツからぶっ殺さねーか?」

「奇遇ですね宇喜田さん、オレもちょっとウザイなぁーと思ってたところです」

「来ますよ! 三人とも!」

 

 兼一以外の三人で新島を標的に切り替えようとしていたら、そんな声が聞こえてきた。どうやらそんな暇はないらしい。

 

 

「しっ!」

「ひゅっ!」

 

 オレと兼一の二人で目の前にいるやつらを次々に沈めていく、兼一は片手で一人ずつをオレは一人ずつを確実にしとめる。

 素手での相手の攻撃は身体を捻って躱し、鉄パイプや角材などの武器持ちのやつは出来る限り右手の木刀で受けるようにする。半分以上躱しているけど……。

 

「ひゅ~、凄いね二人とも!」

「フハハハ! すげーなお前ら! こりゃオレらも負けてらんねーぜ武田!」

 

 そう言いながらもラグナレクのやつを肩車して他のやつらに投げていく宇喜田さん。流石に投げの宇喜田と呼ばれていただけのことはある。

 

「みんな飛ばしてるね~、じゃあボクはロキを貰おうじゃな~い」

 

 武田さんはそう言って前に出るが、ロキの部下が立ちはだかる。

 

「ちっ! 邪魔じゃな~い!」

「オレがやります!」

 

 武田さんが行く手を阻まれている間にロキに近づき……。

 

「ふっ!」

 

 そのままの勢いで突きを繰り出す。

 ロキはコートのポケットに手を入れ、オレの木刀をじっと見ているだけだ。何だ? 避けも受けもしないつもりかこいつ……。

 

「動くなぁ!」

 

 えっ!? ロキが突然大声で叫び、コートのポケットに入れた手をこちらに向けてきた。良く見ると拳銃のようなシルエットだ。

 大声と拳銃、その二つによってオレの中で撃たれるという考えが頭を過ぎり繰り出した木刀が止まってしまう。

 

「警棒が外れるから!」

「あぐっ!?」

 

 一瞬動きが止まったオレの隙を見逃さなかったロキは警棒で殴りかかってきた。その一撃は見事にオレの側頭部に当たり、ぐぐもった声とともに後ろによろめく。

 新島が何か言っているが痛みでそれどころではない……。

 

「ほうら次だ~!」

 

 ロキが追撃のために殴りかかってくるが……

 ガシッ!

 

「大丈夫っ翔馬君!?」

 

 心配する声を上げながら、ロキの攻撃を受け止める兼一。

 

「あぁ、ちょっと油断した。もう大丈夫だ」

 

 兼一のおかげで無事に体勢を整え再びロキに向き合う。隣には兼一も構えていた。

 

「こっけいですね、それで兵法のつもりですか? ボクはもっと華麗な兵法の使い手を知っているよ!」

「なんにぃ~~」

 

 兼一の挑発によりあからさまに機嫌が悪くなったロキ。

 

「二人とも、そいつの格闘スタイルはトリッキーだ気をつけろ!」

 

 後ろでロキの部下を殴りながらそうアドバイスをくれる武田さん。

 

「もう引っかからない、次で決めてやるさ」

「ボクがやるよ、翔馬君は下がってて」

「そうはいかない、ロキのやつにはさっきの借りがある」

 

 オレ達が話している間もポケットをまさぐりながらユラユラとその場で動くロキ。

 

「フフフ……何が出るかな、何が出るか――――な!」

 

 語尾を強く言って、そのタイミングでこちらに突撃してきた。左手には何かを隠し持っているようだ。

 

「先手は貰うぞ兼一! さっきの仕返しだ! 月影流、夕月(ゆうげつ)!」

 

 ロキが突き出してきたスタンガンを左手の木刀で上に払い上げ、空いた腹に右手の逆さ持ち木刀で一太刀を入れて返しの左手の木刀で渾身の一撃をお見舞いする。技の終了時には両腕をクロスしている状態なので隙があるのが弱点だが今は関係ない。

 本来、刀一本でやる技だがオレなりのアレンジだ。本来より隙がでかくなっているのは今後どうにかするつもりだ。

 

「ぐっ……! な、なんだ……と」

「山突き! カウ・ロイ! 鳥牛擺頭(うぎゅうはいとう)! 朽木倒し!」

 

 おれの攻撃を受けてよろめいているロキに次々と連続技を決めていく兼一。凄いなそれぞれ違う流派の技をつなげるなんて……。

 ちょっと参考にしたいくらいだ。

 

「ロ、ロキ様~!?」

 

 流石にあれだけの攻撃を受けては立っていられないだろう。

 

「お前ら鬼だな……」

 

 呆れた表情で呟く宇喜田さん。

 おかしいな……追撃したのは兼一だからオレは別に何も悪くないと思うんだけど。

 

 大将であるロキが倒されたとあってラグナレクの面々の士気ががた落ちである。見るからに意気消沈しているのがわかる。

 

「やい貴様ら! 聞いて驚け!」

 

 そんな中新島が大声で周りに呼びかけ始めた。

 

「我が新白連合の将軍が一人の白浜兼一はなぁ、空手、柔術、ムエタイ、更には中国拳法の達人を師に持った……まさに史上最強の弟子なのだ!」

「また大ブロシキを……」

 

 新島の大見得を聞いて周りはどよめいている。兼一のつぶやきは誰の耳にも届くことはなかった。

 

「更に!」

 

 まだあるのか……。

 

「その史上最強の弟子の相棒であり、唯一対等に渡り合える男! 武器の達人を師に持つ様はまさに現代に蘇った忍者! それがこの男、不破翔馬だぁああ!」

「嘘ばっかだな……第一オレって剣士だし……」

 

 兼一に続いてオレのことまでそうのたまう新島。

 オレのつぶやきも兼一同様周りに伝わることはなかった……。

 

「ひぃいい!? そ、そんなバケモンなんかと戦ってられるか~」

 

 新島の大ボラをそのまま信じた様子のラグナレクの不良達は我先にと出口へ向かって逃走して行く……。

 

「ちょっと待て! ボクは新白連合とは関係ないぞー!」

「オレも忍者なんかじゃないからなー!」

「聞いてるわけないじゃな~い」

 

 こんなやつらと一緒にしてもらっては困るので、オレと兼一は逃げていったやつらに向かってそう大声で話しかけたが武田さんの言っている通り聞いている様子はない。

 

 

 それからひと段落して……。

 

「あ、そうだお前ら。この辺にあるマツエラークって店しらねーか? ちょいと急ぐんだ、人と待ち合わせてるんでな」

 

 何やら手紙の様な物を取り出してそう尋ねて来る宇喜田さん。

 

「マツエラークだって?」

「ん? なんだよ武田……お前も待ち合わせなんだろ? 早く行って来いって!」

「いや、ボクの待ち合わせもそこなんだ……」

 

 武田さんもマツエラークに行くらしい……。

 二人の話を聞いて、オレはここに来た本来の目的を思い出した。

 

「そうだ、兼一お前はどっか行くんじゃないのか?」

「あっそうだった。えーっと……あーーーっ! ボクもマツエラークです!」

 

 こんなことってあるんだな、そんなことを考えていると……

 

「あのう、将軍……三人が探しているマツエラークって……ここですよ」

 

 新白連合の水沼が言いづらそうにそう告げる。

 

「「「なにぃ~~っ!?」」」

 

 三人が驚いていると、何やら新島がゴソゴソと何かをしている。

 

「うっふーん、あーら三人ともアタシのために来てくれたんだ~嬉しいわ~。ラブレターの地図、少しわかりにくかったかしら~?」

 

 黒髪ロングのウィッグを被った新島がそう言い放ったその瞬間、三人は時が止まったかのように固まった。

 

「来てくれなかったらどうしようかと思ったけど~、全員時間ピッタシって感じみたいな~?」

 

 物凄く頭にくる口調をくねくねと身体を捩りながら言う新島。ウィッグを被ったその姿は逮捕されても文句は言えないくらいおぞましい……。

 手紙の差出人に検討がついた三人は怒りで身体が震えていた。

 

「新島貴様ぁ!」

「アタマにきたぞ!」

「この野郎殺してやる!」

「ウキャアアキャキャキャ~~!」

 

 三人の攻撃を避け、店外に飛び出していく新島。三人もそれを追って飛び出す。

 

「はぁ……アホらし帰るか」

 

 結局新島の手の上で転がされていただけだったのか……。

 限りなく無駄な一日だったな。

 

 

 




憎き試験期間というものが始まってしまったので今日から一週間ほど更新は停止します。
申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。