史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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第12話 捜索

 ――翌日、教室にて

 

 長く苦しかった本日の授業も終わり、嬉々として帰り支度を始めているオレ達の前にそれは現れた。

 

「き、切り込み隊長っ大変だー!」

 

 そう言って慌てた様子で教室に一人の男が飛び込んできた。

 見るといつぞやのマツエラークの時にも見かけた、新白連合の一人だった。いつも旗を持っている彼だ、名前は……松田で合ってたかな?

 

 その松田が息を切らしながらオレ達の近くまで寄ってきた。そんな慌てるほどの緊急事態なのだろうか……。

 松田の後を追うようにその他の連合員も近づいてくる。一人で行動出来ないのだろうか彼らは。

 

「その呼び方やめてくれるかな? ボクは君達の隊長じゃない!」

 

 いきなり現れたことに驚いたのか、少し語尾がつり上がりながらもそう答える兼一。

 

「んで、どしたの? そんなに慌て――」

「不破隊長! 聞いてください! 総督がっ昨日から新島総督が本部に来ないんです!」

「昨日の三時にも臨時の会議があったのにすっぽかしたんですよ!」

「あの方が自分で召集をかけといて時間に遅れるなんてありえないんですっ!」

 

 オレがワケを聞こうとすると、教室にきた三人は一斉に振り返り矢継ぎ早に畳み掛けてくる。そんなに慌てて話しても伝わないと思わないのだろうか、三人にとってはそれほど重要なことなんだろう。

 

「落ち着けって、良く聞き取れなかったけど新島が学校に来なかったってことか? 普通に考えて病気とかじゃないのか?」

「いえ、それが……自分も気になって総督の携帯に連絡してみたのですが、『二人に知らせてくれ……』って言って切れたっきり、何度かけても繋がらないんです!」

 

 おいおいマジかよ……、しぐれさんの勘、もしかして大当たり?

 だとしたら死ぬときの相ってまずいよな……。

 

「兼一! 新島の身に何かあったんじゃ……」

「翔馬君までそんなこと言うの? ボクは知らないよ」

「突きの武田隊長と投げの宇喜田隊長もまた騙すつもりだろうって言って取り合ってくれないんですよ」

「ボクも同意見だ!」

 

 そりゃそうか……この前騙されたばっかだしなぁ。

 兼一も助ける気はなさそうだしな……。

 

「美羽ちゃんどう思う?」

「そうですわね、最後の新島さんの言葉から察するに……誰かに連れ去られたのかもしれませんですわ」

「未確認生物として、国に捕獲されたんじゃないですかー?」

 

 やっぱりそうなのかな、あの新島がそう簡単に捕まるとは思わないけど……。

 兼一にいたっては心配のかけらもない、きっと新島のことはまったく信じていないんだろうな。

 今回は兼一を置いていきオレが行こうかと思っていると……。

 

「そうだっ! これを見てください。僕が今朝ドブ川に浮いていたのを偶然見つけたんですが……」

「っ!?」

 

 水沼の手にある物を見て、目を見開いて驚く兼一。そこには新島が常に持ち歩いていた情報端末が握られていた。

 表面にはあけるな危険! と書いてあり、新島のNというイニシャルも書かれている。まず間違いなく新島の物だろう。

 いつも肌身離さず携帯していた情報端末をあいつがそう簡単に落とすはずがない、ましてやドブ川なんぞにあるわけがない。

 

 パタンッ!

 

 どうやら兼一もそういう考えに至ったのか本をたたんで真剣な表情で考え込んでいる。

 

「おい兼一……」

「うん。たぶん翔馬君の考えていることであっていると思うよ……あの宇宙人が自ら大事な情報端末捨てるなんてことは、天地がひっくり返ってもありえない」

「やはり何かあったんですわね?」

「たぶんな……」

「まぁでもあいつのことだから、きっと無事だと思うんだけ――」

 

 ピシッ!

 

「う゛っ!?」

「おいおい、演技でもない……」

 

 兼一の言葉の途中、突然新島の情報端末の真ん中に亀裂が走った。まるで新島の身に何かあったと暗示するように……。

 それを見た瞬間、オレの頭の中に昨日のしぐれさんの言葉が再生される。『……功をあせったやつが、死ぬときの相…………っぽい』あの人の言い方だといまいち信憑性に欠けていたけど、ここまで来るとあの言葉が頭から離れない。

 

「でもいったいどなたが新島さんを?」

「たぶんラグナレクの連中じゃないかな」

 

 美羽ちゃんが聞いてくるが、昨日の新島の言葉を信じると十中八九ラグナレクだろう。

 確かジークフリートについて調べてくるとか言っていたなあいつ……。

 

「そうです! ラグナレクのやつらの仕業に決まってます! 早く助けに行かないと新島総督の命がっ!」

「お願いしますっ! 不破隊長! 白浜隊長!」

 

 助けたいのは山々だけど手がかりが何もないこの状況じゃあ正直何も出来ないような気がする。

 兼一は何か思いついたのか、さっきからずっと考え込んでいる。

 

「美羽さん! 翔馬君!」

「はい!」

「んっ」

 

 考えがまとまったのか晴れやかな表情で呼ばれる。オレ達二人はその表情に期待を込めつつ返事をして次の兼一の言葉を待つ。

 

「さ、二人とも。そろそろ帰りましょうか」

「「はい!?」」

 

 そう言ってそのまま周囲の制止を振り切ってスタスタと歩いていってしまう兼一。オレ達は慌ててその後を追い兼一に問いかけるが、知らぬ存ぜぬを貫き通しまったく助けに行く気配がない。

 校門を出てからもいやに上機嫌で歩く兼一、その軽い足取りは時折スキップも織り交ぜ、先ほどのことなど微塵も気にしている様子もない。

 

 そのまましばらく兼一の様子を後ろから見ていたとき突然「そうだ!」と得心いったという風に手を叩き立ち止まる。

 

「はい?」

「どうかしたか?」

 

 さっきから兼一の行動はよくわからない。

 

「よく考えたら今日はボクの好きな本の発売日だった。ボクは本屋さんに寄ってから帰るので、二人は先に帰っててください」

「えっ? け、兼一さん!?」

 

 そう言い残しそのまま駆けていってしまう兼一。

 そんなに本が欲しいのだろうか?

 

「案外照れ屋さんですわね……」

「えっ? どういうこと?」

「まさか、気づかなかったんですの?」

 

 聞き返すと美羽ちゃんがジト目で見つめてくる……。

 え? 何? オレ何かした?

 

「はぁ……案外鈍いんですわね。意外でしたわ」

 

 そんなことは……あるのか? 結構鋭いと思っていたのに……。

 この反応をみるとそうなんだろうか……。

 

「ほらっ! 私達も行きますわよ!」

 

 考え込んでいると、美羽ちゃんに手を取られて無理やり走らされた。

 いったい何処に行くというんだ……。

 文句を言う暇もなく、手を引かれる形でそのまま道路を走らされる。待って待って早いよ!? もうちょっとスピード落として!

 

 

 ☆

 

 

 あのまま少し走って、近くのドブ川沿いの道に入ったところで足を止めた。美羽ちゃんの視線はある一点に注がれている。

 

「追いつきましたわ、あの橋で何か探している様ですわね」

「追いつくって誰に……って兼一じゃないかっ! 確か本屋に行くって言ってなかったか?」

「だからそれは……まぁいいですわ、行けばわかることですし」

「?」

 

 またもやため息をつかれてしまった、考えてもわからないので先に行ってしまった美羽ちゃんの後を追って兼一の元へと近づく。

 集中しているのか近くにいてもオレ達に全く気づく気配のない、なにやらそのままぶつぶつ呟いている。

 

「この橋であれを見つけたってことは少なくともここよりも上流で新島はさらわれたってことになるか……行ってみよう」

 

 そう言ってそのまま下を見ながら歩き出してしまった。美羽ちゃんはソロソロとその後を着いて行っている、見るとオレに向かってチョイチョイと手招きしている。ついて来いってことだろうか……。

 まぁ言われなくても着いて行くつもりだったけど……。しかし兼一め、新島を探すつもりなんだったらオレ達とそのまま行けばいいものを……。

 

 川沿いに少し歩くと、今度は兼一が地面に膝をついて何かを探していた。

 美羽ちゃんを見ると落下防止の鉄柵に軽々と飛び乗って兼一のすぐ横にまで近づいていく。

 

「何されているんですの?」

「あぁ、あいつのことだから何か目印なりヒントなり残しているんじゃないかと思って探してるんで……ってええっ美羽さん!?」

 

 美羽ちゃんが鉄柵の上から質問をぶつけると何事もないように普通に答え始め、かと思うといきなり叫ぶ兼一。

 でも今はそんなことより……。

 

「この野郎兼一! 結局探すなら素直に言えっての、おかげでよくわかんないけど理不尽に呆れられたじゃねーか!」

「翔馬君まで!? え? どういうこと?」

「そんなことは今はどうでもいいですわ、それよりあそこにも何か落ちてますわよ」

 

 正直八つ当たりなのだがしょうがない。内緒で探しに来ていた兼一が悪い。

 気持ちを切り替え美羽ちゃんが指差した方向へと目を向ける。何だあれ……靴?

 駆け寄ると確かに靴が脱ぎ捨てられていた、兼一が言うにはこの靴は確かに新島の物らしい。だがこれだけだと何の足しにもならないけど、やっぱり攫われたのは本当なんだろう。

 

「でもこれだけじゃあ……」

「あっちにも同じ様な靴が見えますわ! 大体三百メートルくらいのところに」

 

 次に美羽ちゃんが指差した方向にはもう片方の靴があるらしいのだが、遠すぎてまったく見えない。

 急いでその場所に向かい回収する。言ったとおりに靴が落ちていた。

 それからも大体二、三百メートル毎に何らかの遺留品が落ちていた、靴から始まって靴下、制服のワイシャツ、Tシャツ、ズボン、と次々に新島の着ていたであろう服が見つかった。

 目印になるものは他になかったんだろうか……新島の必死さが伺える。まぁだが流石の新島もズボンが限界だったのだろう、それ以上の物はなかった。

 

「新島~お前もここまでが限界だったか……」

「これ以上は色々まずいんじゃないか? 人として……」

「で、でも向かっている方向くらいはわかりましたわっ!」

 

 少し慌てながら言う美羽ちゃん見ると若干頬が赤くなっている。新島の今の状態でも想像してしまったのだろうか、美羽ちゃんの言うとおり新島の連れ去られた方向はわかった……だが逆にそれしかわかっていないのだ。

 

 それからもしばらく探してみたのだが、有力な手がかりは見つからず……この場は出直すためにも一旦帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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