梁山泊にて
「というわけなんですよ岬越寺師匠」
「ふむ、なるほど大変だねぇ」
あれからしばらく探しても手がかりはなく、仕方なく一度帰ってきた次第である。
やはり困ったときの師匠頼みというのか、人生の先輩である師匠方に今日のことを相談している。
「あんなやつ本当はどうでもいいんですけど……ここで見捨てると寝覚めが悪いっていうか、祟られそうっていうか」
「ほっほっそう邪険にするものでない」
「どうしましょう……兼一じゃあないですけど、一応知り合いなんで助けないっていうのも忍びないんですよ」
「ふむふむ、そういうことならここはおいちゃんに任せるね」
今後のことを相談すると剣星さんが前に出て自信たっぷりに言い放った。何かいい策があるんだろう流石頼れる、相談してよかったな。
おもむろに何かの準備を始めたと思ったら、取り出したのは何やら怪しい方位盤? の様な物とよく占いなんかで使いそうな棒。
「最後に新島君を見た場所は何処ね?」
「
「決まってるね風水ね、八卦で占うね」
「師父! 真面目にやってくださいよ!」
剣星さんの占いの腕前は知らないが、兼一が怒鳴るのも頷ける。当の剣星さんは自分は大真面目だったと言わんばかりに少し気落ちした様子でシュンとしてうつむいてしまった。
「他に何か良い考えはないですか?」
「じゃあ、アパチャイに任せてよ!」
「へ?」
自信ありげに自分の胸を叩きながらそう言うとアパチャイさんは何やらチラシ裏に何かを書いて、書き終わったと思ったらそのまま外に行って屋根の上に上っていった。
慌てて庭に出て上の様子を伺うと、口笛を吹いているのが目に入ってきた。何をしているかよくわからなかったが、一分も経たずにアパチャイさんの周りにはハトやカラス、スズメなどが大量に集まってきた。
ここからだとよく見えないが、先ほどのチラシを取り出して何やら話しかけているように見える。
「翔馬ーー! わかったよ! ニイジマ知ってる子がいたよー!」
「なぁ兼一……アパチャイさんは何やってんの?」
「さぁ……真面目にやって欲しいんだけどな……」
こちらに向かって叫んでるアパチャイさんをよそに疑問に思っていたことを、オレと同じく外に出てきている兼一に聞いてみるが、どうやらこいつもわからないらしい。良かったオレだけが理解できていないのかと思ってた……。
「あぱっ!」
そうこうしている内にズウゥゥン! という重い地響きとともにアパチャイさんが屋根から落ちてきた。
危ないので飛ぶんじゃなくて普通に降りてきて欲しい。
「アパチャイさん、結局上で何やってたんですか?」
「この子達にニイジマのこと聞いてたよ」
そう言って肩にとまっていたハトをこちらに差し出してくる。差し出されたハトは特に暴れることもなく大人しくアパチャイさんの指の上で鳴きながら首を傾げている。
言いたいことは沢山あるが……この際何でもいいや。
「じゃあさっきのわかったって……」
「そうよ、ニイジマを見たって子がいたよ!」
「ホントですか! 良かったな兼一」
「師匠方……真面目にやってくださいよ~」
「まぁまぁ……一応聞くだけ聞いてみようよ。なっ?」
なんとか兼一を宥めてそのまま居間に戻り新島のことを聞く。
「美羽ちゃん地図ある?」
「はいですわ」
「ん、ありがと」
美羽ちゃんからこの近辺の地図を受け取ってテーブルの上に広げる。えーと新島の情報端末が見つかったのはここだから……この辺の近くにいると思うんだけどな~。
「おいちゃんも馬式占星術で新島君の居場所を突き止めたね」
地図に印を書き込んでいると占いが終わったのか剣星さんも近寄ってきた。
あれ? 風水じゃなかったっけ?
「剣星さん、占星術って詳しく知らないですけど星図とか見るんじゃあ……」
「男が細かいこと言っちゃダメね! とにかく居場所がわかったね」
デリケートな部分なのか指摘されると、一瞬顔を曇らせ深くは聞いてはいけないようなオーラを醸し出しながら、シッシッと手を振って無理やり話を終わらせる。
「まぁわかったならいいですよ……。んで、二人とも新島は何処にいるんです?」
「占いによると――」
「フンフン、この子が見たって言ってるのは――」
剣星さんとアパチャイさんの二人はそれぞれのタイミングである一点を指し示した。
「ここね!」「ここよ!」
「えっ!?」
「まさかの一致……偶然か?」
何と二人が指し示した場所は全くの同じ場所だった。
示されたのはここから少し距離のある港近くの倉庫である。
「この子がそこで十数人の若者といるところを見たって言ってるよ」
「占いでもこの倉庫街と出ていたね」
ふむ……このまま何もしないよりは少しでも可能性があるなら行ってみた方が良いか……。
「行ってみるか兼一」
「うーん、場所は一致したけど信用出来るのかなぁ」
「とにかく行って見て来ましょう。手をこまねているよりはマシですわ」
「よし、決まり! 行くぞ二人とも」
そうと決まったら今すぐ準備だ、でもどうやって行こうか……。
美羽ちゃん達は自転車の二人乗りで行くらしい、オレはこっちに自転車持ってきてないしなぁ……やっぱり買っとくべきだったなぁ。
どうしよう……。タクシー使うか? いやでも乗り場まで行くんだったら、その辺の自転車をちょっと拝借して……あくまで借りるだけだ、後でちゃんと返すし……。
「話は聞いたぜ、オレが送ってやろう」
「ボクもい…く」
危うく犯罪に手を染めるところだったが、逆鬼さんが送ってくれると申し出てくれた。
助かった~ちょっと罪悪感があったんだよなぁ……。
しぐれさんも着いてくるのか……師匠達二人も来てくれるんだったら何があっても安心だな。
「本当ですか! 助かります、是非お願いします」
「おう! んじゃあ行くか!」
「はいっ!」
本当に助かった。今は逆鬼さんが仏のように見える、やっぱり顔は恐いけど中身は良い人だ。地獄に仏とはこのことだな。
「弟子のケンカに師匠は出ない!」
「うわぁあ!?」
移動手段を確保して安心していると、突然背後から岬越寺さんが現れそんなことを言い放った。
「こ、岬越寺さん驚かさないでくださいよ……」
「かてーこと言うなよ秋雨、ちょこっと送ってくだけじゃねーか」
「行きた…い」
「ダメなものはダメ」
「ちっ! わぁーったよ」
注意だけしてさっさと戻って行ってしまった岬越寺さん。
なんだと……せっかく行けると思ったのに物の数秒でご破算となってしまった。やはり地獄には仏なんていなかった……悪鬼ばっかだよチクショウ!
やばいどうしよう美羽ちゃん達今さっき出発しちゃったし、このまま置いていかれるのは何もしないみたいで嫌だし……。
仕方ないやはりここは原点に還って自転車を拝借するという手段を――
「よし、行ったな……ほれ行くぞ翔馬」
「へ?」
「何呆けてんだ、秋雨の前で言ったのは出任せだよ。さっさと行くぞモタモタしてたらあの堅物に見つかっちまう」
そう言って、歩いて行ってしまった。
慌てて後を追う、その間オレの中の逆鬼さん株が急上昇していた。オレも空手習おうかななんて思ったり思わなかったり……。でもそれを口に出すと横で歩いている
――梁山泊車庫
「なぁ~動いてくれよ頼むからぁ」
「まだですか~逆鬼さん」
「まぁ待て、焦っても仕方ねぇだろ。こういうのはだなこう誠意を持ってだな……」
「御託はいいですから早くして下さいよ~兼一達に追いつかなくなっちゃいますよ」
「わかってる! 黙って見てろっ! 動いてくれって、今度高級オイル入れてやっからよぉ」
そう言って自慢の愛車を撫でる逆鬼さん、だがこのバイクはうんともすんとも言わずただそこに留まっている。
しぐれさんに至っては早くも飽きたのかクナイや手裏剣を使ってお手玉しているし……。
すまん二人ともやっぱりオレは行けないかも知れないよ……。
当たり前ですが師匠は戦いません(笑)