前回の話でお気に入りが200件を突破しました。沢山のかたが読んでくれていて感激です。
アクセス解析を見たらいつもの何倍もお気に入り登録してくれていたのですが、そんなにフレイさんが好評だったのでしょうか(笑)
「してどうじゃったかのう、彼の様子は?」
「はい。操作に難がありそうですが……なんとかという具合でしょうか」
「ふむ……まったく難儀なものを遺していきおって」
「まぁ対の刀もありますし、大丈夫かと」
「そうじゃのうあやつの様にならない様にせねばな……」
「大丈夫ですよ、なったとしてもきっと乗り越えられますよ。かつての彼女の様に」
☆
「……こ、こは?」
目が覚めると何処かの部屋の中で横になっていた。
自分の上に何やら乗っていることに気づく、どうやらここは布団の中の様だ。
「気がつい…た?」
「しぐれさん!?」
「あ……起きちゃ…ダメ」
「何を――っつ!?」
しぐれさんがいることに驚き、急いで身体を起こそうとするが突然身体に痛みが走り、反射的に身を縮める。その行動で乱れた布団もオレを落ち着かせた後、懇切丁寧に直してくれた。
オレのことを見下ろすように枕元に正座でついているしぐれさん。見るとその近くには手桶がありオレの頭にもタオルが乗っていた。
正直何でこんな状況になってるんだか、まったく把握出来ない。昨日は確か……
「っ!? そうだ! 新島っ!」
「ねて…ろ」
ボスンッという音とともに再び布団に戻され視点が天井に固定された。
まったく状況が理解出来ないまま布団の中にいると障子を開けて誰かが部屋に入ってくる。
「しぐれさん、翔馬さんの様子は……あら、目が覚めましたのですわね」
「えっ本当!? どう? 翔馬君具合は」
美羽ちゃんと兼一がそう言いながら入ってきた。手にお盆を持っていることから何か持ってきてくれたんだろうか。
「お~二人とも具合はまぁボチボチかな? ちょっと痛みで上手く立ち上がれないけど」
「それって大丈夫なの……?」
苦笑いで聞いてくる兼一だが冗談で言ったのがわかったのだろう、それ以上聞いてはこなかった。まぁ痛いのは痛いけどそこまで酷くはなさそうだしな。
「ちょうどいいや、あの後どうなったか教えてくれない? 途中からまったく覚えてないんだよ」
「え? あ、うん。えーっとあの後は……」
兼一によると、自分が第五拳豪であるジークフリートを倒した後船着場に向かったそうだが、既にそこには船はなく、途方に暮れながらトボトボと歩いていたらオレを見つけたらしい。そのままおぶって帰ってきたそうだ。
「ふんふんなるほど、じゃあ新島は……」
「あ、心配しなくていいよ。今日学校に行ったら無事に登校してたから」
「は?」
あれ、あいつって船に積み込まれたんじゃなかったっけ? 何で学校行けてるんだ?
しかも昨日今日で復帰出来るものなのか?
「翔馬君の言いたいことはもっともだと思うけど、当の本人もこの前のことはよく覚えてないらしいだ。何でも気づいたら朝で浜辺に打ち上げられてたんだって」
む、無茶苦茶だ……。ん? この前? 朝?
「兼一、オレってどれくらい寝てた?」
ただの勘違いかも知れないけど一応聞いておこう。
「えっと丸二日くらいかな……」
言いづらそうに呟く兼一、それを聞いたオレが再び布団から飛び上がろうとするが、その前にしぐれさんによって強制的に阻止された。
「……しぐれさん、一応病人らしいんで優しくしてくださいよ」
「病人なら、動く…な」
現在のオレの状態は寝ていた布団の上から鎖鎌が巻かれどうあっても抜け出せないような状態だ。どうやったらこんなことが出来るかなんて聞かないで欲しい、オレにも何が起こったかなんて見えなかったのだから……。
「そうですわよ、熱まで出て結構大変でしたのに」
「えっそうなの?」
オレが聞き返すと皆頷いて答えてくれた。そんなに重体だったのか?
「しぐれさんがずっと看病してくれたんですわよ」
「ん!」
そうなのか……。なんか皆に心配かけちゃったのかな。
「すいませんしぐれさん。ありがとうございました」
「ん、気にする…な」
そう言って美羽ちゃんが持ってきたお茶を啜るしぐれさん、それはいいんだけどこの鎖早く解いてくれないかなぁ。
そうだ! しぐれさんで思い出した。もう一つお礼を言うことがあったんだっけ。
「しぐれさん、いつぞやの時は刀ありがとうございました。おかげで助かりました」
「?」
お礼を言うと首を傾げ一体何のことだと言わんばかりに怪訝な顔をするしぐれさん。
あれ別に変なこと言ってないよな……。
「兼一、オレの刀は?」
「あぁそれならここの押入れにしまっといたよ、ちょっと待ってね」
オレをおぶって帰ったきた兼一なら刀の行方を知っているだろうとあたりをつけ尋ねると、やはり心当たりがあったのか刀を取りに行く兼一。
「これでしょ? いやぁ刀って意外と重いんだね、これと翔馬君両方持って帰るのしんどかったよ。鞘が見当たらなくてこのままだったから凄く気を使うし……美羽さんがこなかったらどうなってたか」
「っ!?」
やがてその手に二本の抜き身の刀を携えて戻ってきた。確かに慣れない者にその状態の刀は危険でしかないだろう。兼一達には今度改めて礼を言うとして、刀を見て目を見開いているしぐれさんの方へ意識を向ける。どうしてそんなに驚いているのだろうか、しぐれさんが渡してくれたのに……。
「これなんですけど……どうかしました?」
「……なんでもない。翔馬……この刀どうした…の?」
「どうしたも何も、あの時しぐれさんが渡してくれたんじゃないですか? コンテナの上から」
「ボクは知らな…い」
何だって、じゃあ一体誰が……あの時あの場にいた身内は逆鬼さんくらいだけど、たぶん関係ないと思うし……。
考え込んでいるとジッと視線を感じ目を向けるとしぐれさんがこちらを凝視していた。
「翔馬、……こっちのはボクが預かる…良い?」
「あっはい。どうぞ」
真剣な目で打刀を手元に置いてそう問いかけてきた。有無を言わせない様な雰囲気だが、もともとオレのでもないし了承することにした。
「んっ」
しぐれさんは刀を持ってそのまま部屋から出て行ってしまう、勿論鎖はそのままだ。
体調も悪くないし足が痛い程度なのでオレも部屋から出たいのだが美羽ちゃん達は決して認めてはくれなった。鎖を外してくれたのは嬉しかったがせめて夕飯までは大人しくしていろとのこと。
「暇だ……」
皆が出て行き手持ち無沙汰になったオレは、何をしようかと部屋の中を見渡すが残念ながら暇つぶしになるような物は見当たらない。
どうしようかと考えていると、部屋の入り口の方からこちらを伺う二つの視線に気づいた。
「何やってんですか? アパチャイさん、ほのか」
声をかけるとビクッと身体を震わし逃げていくが、しばらくするとまた現れ先程と変わらず障子を少しだけ開けて、そこからこちらの様子を伺っている。
何なんだ一体……。
「二人ともそんなとこにいられたら気が散るんで入るなら入って」
そう言うと、待ってましたと言わんばかりに我が物顔で入ってくるほのか。アパチャイさんはオレを心配するような目を向けるが思いのほかオレが元気そうだったのか、すぐにいつものアパチャイさんに戻った。
「よっ来てやったぞ翔ちゃん」
「大丈夫かよ翔馬」
どうやら二人はお見舞いにきたらしい。
因みにほのかの言う翔ちゃんとはオレのことである。最初はもっと変な呼び方だったのだが、何度も訂正して改めさせた結果こうなった。
ほのかには人のことをあだ名で呼ぶ癖があるのか美羽ちゃんのことはムチプリ、岬越寺さんのことはひげの人、などと呼んでいる。会った人にこういったあだ名をつけているようである。しぐれさんやアパチャイさんのことは何故か普通に名前呼びなのだが本人曰くなんとなくなんだそうだ。
逆鬼さんのことをキズポンと呼んだ時には、兼一と一緒に腹を抱えて笑ったのだがその際二人ともぶっ飛ばされたのは記憶に新しい。
「見ての通り元気ですよ、んで何しに来たんですか? そんな物を持って」
アパチャイさんの手にはオセロ盤が握られていた。それだけで二人が何しに来たかなんてわかるが……。
「アパ、退屈してると思ったからオセロやりに来たよ」
「アパチャイ相手だとほのかが簡単に勝っちゃうからつまんないんだじょ」
「あぱ……」
ほのかの一言によってアパチャイさんの顔から元気がなくなる。
そんなに負け続いているのだろうか……。
「で、オレのところに来たってわけか」
「そうだー! この間のリベンジしに来たんだじょ」
この前は結局五回くらいやったんだっけ? んで三勝したオレが勝ち越していると……。
「いいだろう、相手をしてやる。まぁ結果は見えているけどな」
「ムキー! 馬鹿にして!」
鼻で笑いながら少し嫌味っぽく挑発してやると、凄まじく単純なこいつは前回と同じくピコピコハンマーを手に飛び掛ってきた。
「ちょっ! だから直接は卑怯だっつの! オレ怪我人だぞ」
「うるさいうるさい! 見てろっ絶対勝って見せるからな!」
間一髪のところでアパチャイさんが止めてくれて、ほのかがこちらに突っ込んでくることはなかった。
その後夕飯までほのかの相手をしていた。途中からアパチャイさんも参加し三人で喋りながらオセロに興じていた。
勝率は依然オレが上で大体七割ほどだ。帰る時までほのかは涙目で睨んできて、それを見かねた美羽ちゃんがわざと負けてはどうかと言ってきたが、勿論そんなつもりはない。勝負の世界は厳しいのだ。
兼一が刀に触れられるのは、理由がありますがここでは明かせません。
まぁ単純なことなので、特に気にする必要はないです。