史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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ちょっと長くなっちゃいました。
くどい気もするけど、大丈夫な……はず。

関係ないですが、今再放送の白い巨塔に嵌ってます。何回見ても面白いですよね。毎回、財前~! って心の中で叫びながら見てます(笑)

昨日投稿のはずが勘違いで投稿日がずれてしまいました。申し訳ありません。


第20話 発覚

 ――ほのかの誘拐騒ぎから三日ほど過ぎて。

 

「お兄ちゃん包帯変える時間だよ!」

「痛い! 痛い! ボクは怪我人だぞ、もう少し丁重に扱ってくれよ」

「心配かけた罰だじょ」

「し、心配って、お前が攫われたって聞いたから――」

 

 とまあこんな感じでじゃれあっている兄妹を横目に……。

 

「次の…型」

「はい!」

 

 先日の戦いのこと等まるでなかったかのようにいつも通り、この数日は休みなどなく剣を振るい続けていた。自分の中の何かをぶつけるように。

 今もしぐれさんから教えを受けている。

 兼一の怪我は、全身打撲と打ち身程度だ。果たしてそれで程度と言えるのか微妙だが、診察と治療をを担当した秋雨さんによると大した怪我じゃないとのこと。この人が言うと本当にそんな感じに思えるから不思議だ。徐々にだがここの人達に毒されて常識が崩れていくような気もするが、気のせいであると思いたい……。

 

「はっ!」

 

 しぐれさんの指示の元、庭先に立てられた人型の巻き藁に小太刀による攻撃を加える。刀との距離感の違いのせいなのか、感覚の違いに戸惑う。やはりオレの中で小太刀は防御の意味合いが強いのだろう。だが、防御だけだとフレイには通用しないだろう。あいつと渡り合うためにも小太刀での攻撃も学ぶべきだ。

 

「すと~っぷ」

「ふぅ。やっぱりすぐには上手くなりませんね」

「あたり…まえ。少しずつ上手くなればい…い」

 

 焦っているわけではないのだけれど、胸の中で何かがモヤモヤしていて気持ち悪い。

 

「しぐれさん! もう一度だけ手本を見せてもらえませんか?」

 

 モヤモヤを振り払うように詰め寄って懇願する。

 

「ん、いい…よ。小太刀貸して……」

 

 小太刀を受け取ったしぐれさんは、少しだけ腰を落としながら小太刀を振るった。

 お手本と言うだけあってその動作はオレの目で追えるものに調整されている。逆手に持った小太刀をまるで自分の身体の一部の様に淀みなく流れるような動きで振るっていく。時には順手に持ち替え突き、薙ぎ、斬り上げ等を見せてくれた。 

 

「こんなかん…じ」

「ありがとうございます!」

 

 しぐれさんの動きを目に焼き付けたが先は長そうだ。

 

「ん、最後にさ~びす」

「へ?」

 

 そのまま休憩でも入るのかと思っていたが、どうやらまだ何かあるらしい。気合を入れたのか、心なしかその表情はやる気に満ちている。

 新しい巻き藁を用意して対面に凛として佇む。目を瞑って集中しているみたいだ。

 次の瞬間、目を開いたしぐれさんが巻き藁に突貫する。右手に逆手に小太刀を持ったまま巻き藁の頭上に跳躍し勢いもそのままに身体を回転させながら巻き藁を何回も斬りつける。

 少量の土煙を上げながら攻撃を終えたしぐれさんが着地する。しかし巻き藁に変化はない、もしかして不発だろうか……?

 すると(おもむろ)に立ち上がったしぐれさんがゆっくりと巻き藁に近づいていき、ダンッ! とその場で足で地面を踏み抜いた。するとその振動を感じたのか突如巻き藁が六分割されて地面に転がった。特に巻き藁の中心、それを支えている芯と言うべき丸太まで綺麗に真っ二つにされているので、技の威力が伺える。

 

「今のが、香坂流飛炎五段…斬り」

「飛炎……五段斬り……」

「そ。由来とか…聞…く?」

「は、はい」

 

 しぐれさんの説明だと本来は香坂流飛炎斬り(こうさかりゅうひえんぎり)というらしい。今回はそれを五回連続で行ったそうだ。灯った炎を消さずに大本を斬る――早い話が炎を揺らさずに済む速度で対象を攻撃する技などだそうだ。実際オレの目には何回斬ったのかまではわからなかった。そもそも斬ったことすら疑った程なのだから、その凄さがわかる。

 

 一通りの説明を終えると、休憩に入るのかしぐれさんはその場を後にする。ふと気になって視線を向けると秋雨さんの所へ行って話しているのが見える。特に何か言われた訳でもないので、自己判断で自由時間ということにした。

 依然しぐれさんと秋雨さんが奥で何やら話しているが、聞いていても仕方がないので兼一の様子でも見に行くことにする。

 

「よぉ身体の具合はどうだ?」

「うーん、まだ本調子じゃないけどまぁまぁかな……」

 

 聞くと少し目が泳ぎながらもまずまずの答えが返ってきた。

 

「ふーん、早く復帰できると良いのにな」

「そ、そうだね! あはは……」

 

 少しつっかえながらも笑顔でそう返す兼一。だが何かあやしい、何か隠している気がする。

  

「なぁけん――」

「ふむ。翔馬君、兼一君のリハビリがてら組み手でもしてみないかね?」

 

 少し突っ込んだことでも聞いてみようかとしたところで、後ろから秋雨さんに遮られた。

 

「「え?」」

 

 思わず重なる声……。

 

「兼一君も寝てばかりだと退屈だろう? 翔馬君も何か行き詰ってるみたいだし丁度良いじゃないか」 

 

 秋雨さんが兼一の具合を見ながら提案してきた。やっても良いのだが怪我は平気なんだろうか。

 

「ちょっと待ってくださいよ師匠! ボクは怪我人ですよ!」

「おや? この前のケンカの傷はもう完治した筈なんだがねぇ……」

「うっ」 

 

 あれ? 兼一の言うことと食い違ってるな。

 秋雨さんに指摘されあたふたしながらも尚食い下がる兼一。よく見ると額に汗が滲んでいる。

 

「で、でもまだ身体の彼方此方が痛いんですがっ」

「ほう! それは大変だ。ではこの前、()と共に開発したこの痛み止めを処方してあげ――」

「治りました! ですからそのあやしい注射器を近づけるのは止めて下さい!」

 

 秋雨さんが懐から取り出した物を見た途端、青ざめてその場で土下座する勢いでそれを制す兼一。よっぽど嫌なのだろう、若干涙目になりながら懇願している。

 というか仮病だったんだな。道理で態度が可笑しかった訳だ……。

 

「えーっと、結局やるんですか? 組み手」

「勿論、準備したまえ」

 

 

 ☆

 

 

「何か前にもこうやって強制連行されたなぁ~」

「ああ~そんなこともあったねぇ」

 

 秋雨さんの決定に文句を言うこともなく、道場に移動した後も呑気に昔のことを思い出して感慨に耽る。

 あの時はオレが勝ったけど今はどうなのだろう。聞けば兼一は前の新島救出の時に第五拳豪に勝ったそうだし、ハーミットとも普通に渡り合っていた。バスの上で戦ったときより強くなっているのは確実だ。

 それに比べてオレは……強くなっているんだろうか。確かに以前よりは体力も付いたし動けるとは思うが、フレイには勝てていないし今も勝てる気はしない。

 

「どうした? 翔馬君」

 

 おっと、考え事していた間に向こうの準備は終わっていた様だ。既に離れた位置に正座して集中している。

 

「すいません、今行きます」

 

 秋雨さんの呼びかけに応じ、考えてたことを頭の隅に追いやる。今は目の前のことに集中だ! 両手に組み手用の木刀を持ち兼一の対面に正座する。

 

「両者用意はいいね?」

「「はい!」」

 

 答えると同時に立ち上がりお互いに構え。

 

「では……始め!」 

 

 開始の合図と共に動き出した。

 まずは様子見の心算で左手で兼一の右肩に袈裟気味に振り下ろす。

 

「おっと」

 

 それを難なく腕で受け流され、そのまま両掌を顔に向かって突き出してきた。

 

 ――ゾワッ!

 

「っ!?」

 

 瞬間、言い寄れぬ不快感が襲ってきて慌ててその場から大きく離脱する。

 

 パシンッ!

 

 移動したすぐ後に、乾いた音が道場内に響く。兼一のカウ・ロイが避けられたことによる音だ。カウ・ロイとはムエタイの技の一種で、自身の両手で相手の頭を掴み、そのまま顔面に膝蹴りをする恐ろしい技である。本気で食らった場合、鼻血では済まない。勿論加減はしているのだろうけど出来れば当たりたくないのが本音だ。

 

「避けられたかぁ、流石翔馬君!」

「…………」

 

 兼一に賞賛されたが、今のは避けたというよりは逃げたに近い。攻撃を回避したという点では対して差はないが、意味合い的には全く違う。

 

「じゃあどんどん行くよ!」

 

 無言なのを肯定と思ったのか、兼一は特に気にすることなく向かってきた。

 

「はぁ!」

「くっ」       

 

 その右足から繰り出された蹴りを両手の木刀で防ぐ、しかし想定していたより重い蹴りに思わずその場で蹈鞴を踏んでしまう。

 

「隙あり!」

 

 オレの体勢の崩れたところで正拳突きが腹に決まる。

 

「あぐ……」

「ご、ごめん! 大丈夫!? 翔馬君」

「けほっ、ごほっ……。あ、あぁ大丈夫だ」

 

 兼一の拳は浅く懐に入っただけなので大したことはないのだが。殴られた衝撃で肺から空気が抜けたためか、その場で咳き込んでしまった。

 秋雨さんからの続行か否かの問いに続けると返し、再び兼一の前に立つ。

 

 このまま、ただ攻撃を防ぐだけではダメだ。こちらからも仕掛けなければ……。

 

「ひゅっ」

 

 対峙したままこちらの出方を窺っている兼一に、今度はこちらから仕掛ける。加速の勢いを乗せて左手を突き出す。しかし兼一は、少し驚いていたものの直ぐに冷静に化勁(かけい)の動きで腕を回転させ、突きの威力を外に逃がして受け流してしまった。

 そしてすかさず突き出したオレの腕を取り、自身の身体を下に滑り込ませて畳の上に叩きつけるように投げ飛ばした。

 

「止め!」

 

 起き上がる前に喉元に兼一の拳が突きつけられていた。

 

「も、もう一本お願いします」

 

 少しふらつきながらも立ち上がり兼一、秋雨さん両名に頼む。

 

「もう今日は止めといた方が良いよ! フラフラじゃないか!」

「大丈夫だ……頼む」

「こ、岬越寺師匠~」

「構わん、やらせてあげたまえ」

 

 心配してくれる兼一を余所にゴーサインを出してくれた秋雨さんに感謝して構える。オレを気遣う兼一の抗議は尚も続いたが、秋雨さんの本人にやる気があるのならという一言によって渋々ながら了承してくれた。

 

「ありがとう兼一」

「これが最後だからね」

 

 何を思ったのか苦笑しながら構える兼一。負けず嫌いとでも思われているのだろうか、まぁこの状況を見るとそう思われても仕方がないな。

 軽く頬を叩いて気合を入れ直し兼一の前に立つ。 

 

「始め!」

 

 再び秋雨さんの声によってお互いが動き出した。

 さっきから自分の中にある違和感が拭えない。一体何なんだ……。もう少しで何かがカチリとはまりそうな気もするのだが、靄がかかったように掴めないでいる。

 

「山突き!」

 

 直ぐに終わらせるためなのか、以前の組み手のときにオレが防げなかった諸手突きを繰り出してきた。技を繰り出す瞬間、また背筋に悪寒が走って大きく距離をとる。幸か不幸かその悪寒のお陰で兼一の技は空を切ってオレに当たることはなかった。

 微かに震える身体を気のせいだと思い込み、反撃するべく兼一に肉薄する。

 兼一もカウ・ロイのこともあって技を避けられたことに特に驚きはないらしく、直ぐ様体勢を整え迎撃するべく待ち構えていた。

 

「せいや!」 

 

 掛け声と共に放たれた正拳突きがオレの顔面を捉える……。かと思いきや、ここで更に踏み込むことで正拳突きを躱しこちらの技の間合いに入る。

 兼一が山突きを使うならば、と。オレもお返しとばかりに以前使用したこの技を放つ。

 

「影突き――!?」

「十字受け!」 

 

 前にもましてタイミングバッチリと思っていた突きがあっさり防がれる。何処を突くかなどオレ以外にわからないというのに大した集中力である。放たれた木刀の切っ先は胸の前に交差させた兼一の腕によって止められてしまった。

 

「いてて、相変わらず凄い突きだね」

「簡単に防いどいてよく言うよ」

「偶々だよ、実際危なかったし」

 

 軽口を交わしながらも、これからそう動くかを頭の中で考える。

 影突きの放つタイミングは完璧だった。なのに防がれたとなると……兼一の集中を乱してみようか……、となると、何かあいつの意表を突く攻撃かな? うーん。あ、思いつきだけどこれなら……。

 

「さて仕切りなおすか」

「そうだね。早く終わらせよう、翔馬君が心配だ」

 

 何か兼一が何時にもまして過保護な気がするが、まぁ今回は仕方がないのかもしれない。

 作戦というほどでもないが、その時を計るため兼一の動きを注視する。

 

「いくよ!」

 

 兼一が動き出す。

 今だ! こちらに向かって駆け出してきた兼一目掛けて右手に持っている木刀を投げる。  

 しぐれさん直伝の投擲術によって投げられた右手の木刀は、そのまま勢いよく真っ直ぐに兼一の身体目掛けて突き進む。

 

「えぇ!? わっ!」

 

 あたふたしながらも兼一は木刀のことで精一杯のようでオレのことは追えていないだろう。

 投げられた木刀の方に気を取られている隙に素早く兼一の懐に入り技を繰り出す。      

 

「影無し」

 

 一瞬の脱力、そしてその後放たれる一閃。

 

扣歩(こうほ)――」

 

 決まった思ったその時、視界から兼一の姿が消える。

 

擺歩(はいほ)!」

 

 次の瞬間、オレは何が起こったのかもわからず倒され、そのまま意識を失った。

 

 

 

 




復帰二回目の投稿です。ここまで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字などがありましたら報告してもらえると助かります。

兼一君強いですねー主人公をこんなにボコボコにする気はなかったのですが……どうしてこうなった。

補足
【化勁】腕をコロの原理で回転させ、相手の攻撃の軌道を変化させ無効化する太極拳に見られる身法
【扣歩、擺歩】特殊な足運びにより上体をギリギリまで残し、一気に回転させることで相手の攻撃を捌く八卦掌の歩法。その際足を引っ掛けて腕で相手を押すことで転倒させることも出来る
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