時間のあるときにこつこつと書き溜めたものを投稿していきます。
決して今までサボってた訳じゃありませんよ?
ホントですよ? 例え、ダークソウル2とかスパロボが出てたからって、それをやりまくってたなんてことはないですよ。ホントだよ?
「あ、目…覚めた?」
気がついたオレの目に映ったのは見慣れない天井と、それを遮るように顔を覗き込むしぐれさんの顔だった。
「あれ、しぐれさん?」
「うん、そう。ボクしぐ…れ」
自分の顔を指差しながらそう告げるしぐれさんを見やりながら、今がどういう状況なのかを確認する。
「倒れたから、介抱して…た」
おかしいな……聞きたかったことの半分も判らなかったぞ。
えーと、確か……あれ? 何だっけ?
そうだ、刀を狙ってきた奴らに囲まれて、その中のリーダーっぽい奴と無理やりに近い形でしぐれさんに戦わされて、それで――
「あれ?」
んーと、そこからがはっきりしないなぁ……。
あ! そうだ思い出した。恐怖に怯えて、プルプル震えていたオレをしぐれさんが勇気付けてくれたんだっけ。
んでその勢いのままアイツに一発入れて? うーん入れられたんだっけ?
……ダメだ! 思い出せないし、何だか頭痛くなってきた。
「お連れの方は気がつきましたかな?」
顳顬を抑えて襲ってくる痛みに耐えていると、部屋の襖が開きこちらを窺うように天津原氏が入ってきた。
「ん、このとお…り」
「おぉ、それは何よりですな」
何だか微妙に会話が成立していないような気がするが、気に留めず話を促す。
「あの、あいつ等ってどうなったんですか?」
「ん? おぉ、彼奴等なら主らが伸した後縛ってその辺に転がして置いたわ」
「へ?」
「まぁ……今朝方様子を見に行ったら、物の見事にもぬけの殻になってましたがね」
「それって結構まずいんじゃ……」
その懸念を制するように、豪快に笑いながら「問題ない」と言われてしまい、そのまま出かかった言葉を飲み込む。
「そんなことより、身体の具合はどうだね?」
そんなことで片付けられることなのだろうか、まぁ本人がそう言うのならそうなんだろう、そのことを頭から追い出して身体の調子を確認する。
「ちょっと節々が痛みますが、動く分には特に問題はないです」
「そうかそうか、まぁ大事にならなくて良かった」
「これくらいで、根を上げるような軟弱に育ててはいな…い」
「ふむ。高坂殿が師ならそれも頷けますな。それはそうと、この後お時間もらってもよろしいですかな? 高坂殿」
「ん」
頷くとそのまま立ち上がり部屋を出て行こうと襖の方へ向かう。
先に天津原氏が廊下に出て、続くようにしぐれさんも退出するかと思いきや、ふと、何かを思い出したように振り向き……。
「自由にしていて良い…が、なるべく、大人しくしてい…ろ」
「あ、はい」
「あんまり騒ぐようなら、分かる…な?」
言い終わるのと同時に、着物の袖口から鎖の付いた文銅がゴトッ! と音を立てて畳の上に落ちた。
その一連の挙動で何が言いたいのか察したので、必死に首を縦に振ることでその問いに答える。
しぐれさんはオレの答えに満足したのか、鎖鎌をしまい足早に部屋から出て行った。その際後ろに控えていた天津原氏の少し引きつったような笑みが頭に残った。
☆
結局、何をするでもなく持ってきていた荷物を漁る事もせずに、ただずっとジッと寝転がり天井をぼうっと眺めていた。
疲れていたのか、そうしている内に心地よい眠気に誘われてそれに導かれるように瞼を閉じて身を委ねる。
次に目が覚めたときは、日を跨いだ翌日。
つまり、あのまま眠ってしまったようだ。
「……腹減ったなぁ」
目覚めてからの第一声がこれだった。
それもそのはず、実のところ昨日の夕飯はそれ所じゃなかったので食べていないし、その状態で戦闘までこなしたのだ。腹が減っていない訳がなかった。
「おは…よ」
「うわっ」
突然後ろから声をかけられて思わず上擦った声を上げてしまう。
振り返ると、いつもの出で立ちのしぐれさんが壁に背を預けながら座っていた。刀は肩に立てかけているので、何だか警戒しているようにも見える。
「し、しぐれさん。ずっとそこに居たんですか?」
「う…ん」
ということは、一晩中見張られて――看病のために起きていてくれたのか……。悪いことしたかなぁ、とりあえずお礼言って今度何かお詫びでもしよう。
「ありがとうございます、何かすいません」
「ん、気にする…な」
挨拶も程ほどに立ち上がって身体の状態を確認する。
ん。本音を言うと昨日は結構辛かったけど、沢山寝たお陰か全開とは言わないまでもかなりマシになったな。
この分だと組み手くらいは出来そうだ。
「大分、良くなったようだ…な」
「あ、やっぱりバレてました?」
「師匠を舐める…な」
やっぱりしぐれさんには敵わない、それを再確認した朝だった。
☆
「いやーもうちょっとゆっくりして行けばいい物を、そんなに急ぐのですかな?」
あれから朝食を頂き、少し休んだ後オレ達は天津原氏に見送られているところだった。
「ん、用は済んだ」
「そうしたいのは山々ですが、これ以上学校を休むと色んな意味でちょっとマズイ状況になるんで……」
「ふむ、学生は大変だな。思えば私の学生時代は――」
あ、これは長くなる気がする。
「おい、もうボク達は行く…ぞ」
「おっと、これは失礼。つい長話を……年はとりたくないものですなぁ」
しぐれさんが半ば強制的に話を切り、此処を立ち去ろうとすると少し慌てながらも非礼を詫びる天津原氏。
「では、改めて此度のことをお礼申し上げる。そして高坂殿、その刀のことは頼みましたぞ」
「ん、任せた…よ? 翔馬」
はいはい任されましたよって……ええ!?
「な、なんでオレが?」
「なんとな…く」
当然だろうオレの疑問に、それまた当然のような顔をしてそんな言葉が返ってくる。
「差し上げた手前あまり言える立場でもありませんが、よろしいので? 元々その刀は――」
「ん、問題な…い」
「ならば私の方からは何も言いません」
え? え? 何か勝手に話進んじゃってるけど、オレがこの刀を持つのはもう決まってるの?
「えーと、もう決まりなんですか?」
「(こくり)」
「あ、そうですか……」
思わぬ形で刀がもう一本手に入ってしまった。あれ、そう言えば昨日使ってた刀は?
「しぐれさん、昨日使ってた黒い刀は?」
「……あれは、少し痛んだから、めんてなんすす…る」
「え、本当ですか!? なんかすいません」
「だいじょ~ぶ、気にしな…い」
うーん、そんなに酷い使い方してたっけかなぁ?
刀の手入れはしっかりやってたと思うけど、戦う時はあまりその辺を意識してなかったから反省しなきゃ、気をつけよう。
「話は纏まったかな?」
「あ、はい」
「さて、高坂殿の希望で君に任せることになったが、その刀――」
先程までの真面目ながらも、何処か好々爺然としていた天津原氏の雰囲気が一変し一気に場の空気が重くなったような印象を受ける。その雰囲気に若干気圧されながらも、その視線から目を離さず受け止める。
ゴクリと喉がなり、少し緊張しながら次の言葉を待つ。
「――銘は、『新月』。
「新月……」
天津原氏の告げたこの刀の銘を、決して忘れまいと自分の中で何度も反復するようにその名を刻む。
そして、ふとあることに気づいてしまった。
「……今更ですけど自己紹介してませんでしたね。失礼しました、不破翔馬と言います」
「おぉそうか。不破翔馬か……覚えて置こう」
自分のせいでもあるが、直前までの重い空気は見事に霧散しお互いの顔に笑顔が戻った。
「では達者でな」
「はい、お世話になりました。失礼します」
「…………」
境内で軽く手を振って見送る天津原氏をこちらも軽く会釈し後にする。しぐれさんは無言で少し手を上げるだけだったが、気持ちは伝わったのだろう。現に顔を顰めることもなく笑顔で手を振り続けていた。
「まさか、あの少年……不破君といったか? 彼に渡るとは、人生とは分からぬものだな。いや……これも運命なのかもしれぬな」
☆
帰り道も同じように、時間をかけにかけて公共機関を乗り継いでいく。
梁山泊に着く頃には日も傾き始め、辺り一帯は夕暮れ時ということもあって夕飯を作る匂いが漂ってきていた。
「やぁーっと帰ってこれたぁ」
往復するだけでも半日かかる道のりともなると、それだけでも結構疲れてしまうものだ。それを噛み締めつつ、漸く我が家とも言える梁山泊を前にすると思わず気が緩んで脱力してしまう。
ギギギッと重い音がする門を開いて玄関へと向かう。
「あっ翔馬君! 帰ってきたんだねお帰り!」
玄関の戸を開けようとしたオレの耳に少しの間離れていた兄弟子の声が届く。
その方へと顔を向けるとグローブにボクサーパンツといった軽装でこちらに向かって手を振り上げていた。
その姿から察するにムエタイか何かの修行中なのだろう。
しかし次の瞬間、兼一に応える為に声を上げようとしたオレの目に映ったのは、今も尚手を振っている兄弟子に迫る危険だった。
「おいっ! 兼一後ろっ!」
「翔馬、オカエリよー」「へぶっ!?」
出迎えの声と共に繰り出された、アパチャイさんの右ストレートが兼一の後頭部にクリーンヒットし、そのまま前のめりに吹っ飛ばされオレの足元まで運ばれてきた。
二十メートル位だろうか、見事に顔面から地面に着地した兼一は、その位の距離を顔面を使ってブレーキをかけていた。
綺麗にパンチが決まったのか横たわる兼一はピクリとも動かず地に臥している。顔の痛みを感じることのない様は、ある意味幸運だろう。
「お、おぉ~」
「あーあ、ボクし~らない…と」
アパチャイさんが驚いて固まっている中、しぐれさんは我関せずの姿勢でひょいと兼一を乗り越えると「たたい…ま」と家の中に入っていってしまった。
「あら、しぐれさんお帰りなさいですわ」
「おう二人とも帰ったか!」
中に入ったしぐれさんが美羽ちゃんや逆鬼さんと話している中、オレとアパチャイさんはどうしていいのか分からずオロオロとその場で行ったり来たりを繰り返していた。
「アパ……翔馬どうしよう、アパチャイきっとまた怒られるよ」
「いやいや、そんなんで済めば良いんじゃないですか? というかこれ兼一生きてます?」
言われて不安になったのか、アパチャイさんはうつ伏せの兼一をひっくり返して取り合えず息をしているか確認する。
「……息、してないよ」
「……は?」
ははは、んなバカな……。冗談のつもりで言ったのにまさかそんなことになるはずがない。
第一、あの鬼のような、いや鬼の師匠達に日夜鍛えられているコイツが、例えアパチャイさんのであろうとパンチ一発受けただけで死ぬなんてことはないはずだ。
何をバカなと云った風にアパチャイさんから兼一を受け取り、その胸に耳をあてる。
「……マジで?」
「ケンイチ息してないよ~!」
兼一の心臓は止まっていた。
アパチャイさんの叫びを聞きつけて、家の中からぞろぞろと皆が出てきた。
「やぁやぁ翔馬君、しぐれとの修行はどうだったかね?」
「今はそんなこと言ってる場合じゃありませんよ! 兼一が、兼一が――」
「おいおい、我らがそんな簡単に死ぬような身体に鍛えていると思っているのかね? どれどれ……」
慌てるオレを手で制して、秋雨さんは指を二本立ててその手を兼一の首にあてる。その表情は薄く微笑みを浮かべていて、自分の考えを全く疑っていないといった感じである。
次の瞬間、ぴくりと全身を震わせた秋雨さんは先程までの朗らかな表情を一変、鬼気迫る表情で「一っ! 二っ! 三っ!」と心臓マッサージを始めた。
「カハァ!」
「ふぅ。ほら、大丈夫だったろう?」
一仕事終えたとばかりに額の汗を拭う秋雨さんを一計し、臨死体験を終えた兼一に駆け寄る。
「兼一!」
「兼一さん!」
目覚めてはいないが、そこには規則正しい寝息をたてる兼一の姿があった。
よかった。今回ばかりはかなり焦った。少し泣きそうになった。
「さぁ、兼一君の無事も確認出来たろう? 翔馬君は帰ったばかりで疲れただろうし早く中に入りたまえ」
「は、はぁ……」
何だろう……ここに来て一気に疲れが倍になった気がする。
とにかく兼一が無事で良かった。アレを無事と言うのはちょっと難しいかもしれないけど……。
アパチャイさんは蘇生が完了して一喜びした後、兼一を担いだ逆鬼さんに殴られて奥に連れて行かれていた。
「なんだかなぁ」
「あはは……まぁお気持ちは分かりますが、
「美羽ちゃんも結構アレなんだね、オレにとってはかなり衝撃的なことだったんだけど……」
「あ、アレとは何ですか!? アレとは! そんなこと言う翔馬さんにはお夕飯抜きですわ!」
「うぇ!? ちょっ待って、ごめん謝るから!」
「しりませんですわ~」
何故か少し上機嫌気味な美羽ちゃんに縋りながら何とか説得し、夕飯にありつけたのはまた別のお話。