史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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後半ちょっとご都合主義になっちゃいました、ご了承下さい。


第3話 修行開始

――梁山泊に入門して早一週間が経った。

 一週間も経つとそれなりに住人の人となりがわかってくる。

 

「おらっ! もっと腰据えろ!」

「はいっ!」

 

 今注意したのは、兼一の空手の師匠である逆鬼至緒(さかき しお)さんだ。この人は先日梁山泊に初めて来た時に兼一の蘇生をしていた一人でもある。見た目は完全に堅気の人ではないが、兼一によると教え方は丁寧で普段はとても優しいらしい、所謂ツンデレである。

 無類の酒好きでよく美羽ちゃんに控えるように言われているがその気配はない、よくアパチャイさんとおつまみを巡って争っている。

 ケンカ百段の異名を持ち、確かに見た目は恐くて近寄りがたい風貌だが、中身はとても気さくで感じの良い人だ。

 

 

 シュカッ!

 

「こ…ら、余所見する…な」

 

 今まさにオレに向かって手裏剣を投げてきたのは、オレの師匠でもある香坂(こうさか)しぐれさんだ。もちろん当てることはないのだが、自分の顔の横に手裏剣が通るのは心臓に悪い、どの道投げられても微動だに出来ないのだから気にするだけ無駄というが、正直顔の横に手裏剣の風圧は伝わるので冷や汗ものである。

 しぐれさんのことは、はっきり言って謎だ……。剣と兵器の申し子という(あざな)の通り、武器の達人ということしかわからない。梁山泊の皆さんによると、オレが弟子になる前に比べたらいくらか取っ付き易くなったそうだがよくわからない。

 

「しぐれどんは厳しいね、もっとリラックスするね」

 

 と言いながらしぐれさんの写真を撮っているのは、あらゆる中国拳法の達人馬剣星(ば けんせい)さんといいこの人も兼一の師匠だ。

 この人は常日頃からエロのために生きていると言っても過言ではない、見かけるたびにエロ本を読んでいるか、美羽ちゃんやしぐれさんの写真を撮っている。この間はオレが敵わないのを良いことに無理やり女装させられ写真を撮られた、何でもこれはこれで需要があるとのこと。

 昨日も露天風呂を覗きに行って、女性陣から反感を買っていた。しかし兼一が言うには比較的常識は有り、曰く世界一素晴らしい中国人とのこと。

 

「逆鬼、そろそろ私の番だ」

「なに!? もうそんな時間かよ……仕方ねぇ兼一、今日ここまでだ」

 

 逆鬼さんに話しかけたのは、梁山泊の頭脳とも言える岬越寺秋雨(こうえつじ あきさめ)さんだ。武術家のあいだでは、哲学する柔術家として名を知られている。

 また、武術の他に芸術、音楽、囲碁将棋等の盤上ゲームなどにも秀でており、その全てで一流の腕前である。その何でも超人ぶりには、兼一も絶対の信頼をおいており時に某猫型ロボットのように呼ぶこともある。

 この中では見た目は一番優しそうなのだが、修行時では鬼と化す。以前兼一の言っていたことがこの一週間でよくわかった。修行で使われる弟子育成マシーンも彼の作品であり、心折設計が売りの極悪使用である。

 ただ唯一の弱点にピーマンが食べられないというのがあり、梁山泊の食事でピーマンが出ると無駄に鮮麗された手つきで他の人の皿に移してしまう。今思うと、昔父さんが友人に出すとやたら偽装したピーマンジュースに拘っていたのはこの人に飲ませるためだと最近になってわかった。

 

「あぱぱ、逆鬼教えるの下手よ」

「うるせー! 元はと言やぁテメーが兼一をぶっ飛ばしちまうから、起こすのに時間食ったんだろーが!」

 

 逆鬼さんも言っている通り、前の時間兼一はこのアパチャイさんの手によって生死の境を彷徨った。その蘇生作業に手間取り空手の時間を減らすしかなかった。

 兼一を屠った実力から見てわかるが、この人も他に引けを取らない達人である。何でも裏ムエタイ界の死神と呼ばれているらしい、本名はアパチャイ・ホパチャイ。

 自他ともに手加減が出来ないと言っており、ヒヤヒヤしながらオレ達はこの人の教えを受けている。被害に会うのは殆ど兼一だが……。

 手加減の練習のために、よく岬越寺さん作の投げられ地蔵グレートを相手取り、日々こなごなにしている。

 

「翔馬、そんなに…修行たいくつ…か?」

 

 おっと、いつの間にかしぐれさんが目の前に来てしゃがんでいる。心なしか寂しげな表情の気がするが、オレが真面目に取り組んでないのが悪い。

 

「すいません、師匠。向こうが騒がしくて気を取られてました」

「…………」 

「師匠?」

「…………」

「……しぐれさん」

「ん、気をつけるよう…に」

 

 最近わかったことなんだが、どうもこの人はしぐれと呼ばないと返事をしてくれない。弟子入り初日には敬意を表して師匠呼びした時は30分間沈黙という苦行を味わった。勝手がわからずおろおろしていたのは記憶に新しい。

 

 今しているのは、所謂瞑想というやつなのだがどうも周りが煩くて集中出来ない。しぐれさん曰く、あえてこの環境でさせているらしいのだが……。

 現在縁側でやっているのだが、後ろの道場で兼一達の方についつい意識がいってしまう。

 

「うわー! 翔馬君どいてー!」

「ん? おわっ!?」

 

 集中しようと再び目を閉じると、横から兼一の声がして振り返ると兼一が突っ込んできた。ガツンッ! という音とともに転げまわる二人。

 

「「~~~~ッ!?」」

 

 お互いに声にならない声を上げ、頭を抑えのた打ち回る……。

 

「いったいなぁ~、何すんだよ兼一!」

「テテ……ボクのせいじゃないよ、岬越寺師匠が投げるから……」

 

 どうやら本当に兼一は被害者のようだ、すると投げた本人がやってくる。

 

「いやーよく飛んだねぇ兼一君」

 

 反省ゼロである。まぁ避けられなかったオレと、そもそも投げられた兼一が悪いのか。

 

「のん気なこと言わないで下さい! 危ないじゃないですか!」

 

 兼一の抗議は続く、まぁそんなことより……。

 

「しぐれさーん、やっぱりここだと集中出来ませんって」

「じゃあ組み手や…る?」

「え゛!?」

「渡した小太刀も持ってきて…ね」

「ちょっ待ってしぐれさん!?」

 

 有無を言わせない雰囲気でそんなことを言い残し、しぐれさんは庭の方に行ってしまう。

 

「やるしかないのか……」

 

 半分ヤケグソ気味に諦めてオレも庭の方へ向かう。

 さっきしぐれさんが言っていた小太刀というのは、まぁ所謂脇差のことだ。梁山泊に来て最初にしたことは今までのスタイルを忘れることだった。

 確かに防御をするという選択肢を無意識のうちに外しているならば、まず意識させなくては話にならない。そのための小太刀だ。現段階で小太刀は防御のみに重点を置き、それ以外のことはしない。

 本来の使い方はわからないが、まぁしぐれさんにも何か考えがあるんだろう。

 そのため今のオレは左手を今まで通りの刀、右手を小太刀という二刀のスタイルを身につけようとしている。

 もちろん普段は真剣なぞ持ち歩いていない、アパチャイさんお手製の小太刀っぽい木刀と今まで使っていた木刀を使っている。

 

「はぁ……気が重いなぁ」

 

 そんなわけで重い足取りで庭へと向かうのだが何でこんなに気落ちしているかというと、しぐれさんの組み手は武器使いということもあって武器を使用するわけだが、そこはまぁ普通だろう……何の違和感もない。

 しかし、そこでしぐれさんはお互いに真剣でやるという暴挙に出たのだ。古流剣術とかそういうとこの人は組み手に真剣を使うかもしれないが、剣術道場の生まれとはいえ、現代のたかが高校生相手にそれはあんまりじゃないだろうか……。

 体験してみなければ伝わらない思うが、しぐれさんの剣が薄皮一枚で切りかかってくるのは恐怖以外の何者でもない。

 初日に何度も抗議したが覆ることはなかった。真剣は木刀に比べかなり重量があるので純粋に剣術のための筋肉が付くとのこと。

 

「おそ~い」

「すいません」

 

 すこし脹れているしぐれさんに素直に謝り、修行の続きを促す。

 

「じゃあ、構え…て」

「お願いします!」

 

 その言葉でお互いに構える。二刀となってオレの構えも少し変わった、以前の無行の構えに加えて右手に小太刀を逆手に持っている。これの方が取り回し易いのだ。状況によって順手にも持ち変えるのだが、これが中々難しい。慣れないうちは逆手で戦おうと思う。

 

「いく…よ」

「はい!」

 

 返事をするとともに、しぐれさんが突っ込んでくる。

 今はまだオレに合わせてくれているので太刀筋は見えるが、これから徐々にスピードを上げてくる。

 この組み手の課題はしぐれさんの太刀を三十回受けることだ。もちろん小太刀で……、刀の方で受けても良いがカウントしてくれない。

 

「ぐっ……」

「おそ…い」

 

 しぐれさんの攻撃により身体に痛みが走る。言い忘れていたが同じく攻撃を三十回身体に受けてもこの組み手は終了する。その場合、後できついお仕置きが待っているのだが……。

 もちろん身体に当てる際は峰打ちだ、もし刃の方だったら今頃オレは細切れである。

 

 そうこうするうちに組み手は進み、しぐれさんが声を上げた。

 

「しゅ~りょ~」

「つあっ! はぁはぁ……」

 

 終了の言葉を聞いた瞬間、全身の力を抜きそのまま地面に倒れこむ。疲れてしばらくは腕も上がらない。

 

「マル…三十、バツ…二十六。ん! 今日はごうか…く」

「あ……ありがとう、ございました~」

 

 息も絶え絶えに返事を返す、どうやらなんとか今日は合格出来たようだ。

 正直組み手中は受けることに必死で回数なんか数えてる余裕はない、どちらか三十回になった時点で今の様に結果が発表される。

 

「じゃあボクは、先に戻ってる…ね」

「はい」

 

 返事をすると、スタスタと歩いていくしぐれさん。まったく疲労の色が見えない、これが師匠と弟子の差だろうか。

 

「っていうか、バツ二十六って……毎度のことながら攻撃もらいすぎだなぁ」

 

 これがもし真剣勝負の場合、単純に二十六回死んでいるのだ。まぁそんな危ない機会は来るはずもないのだが。

 

 

 しばらくして身体も回復して来たので道場の方に戻り、夕食をご馳走になってからこの日は家に帰った。

 夕食時兼一が馬鹿なことを言い出して、アパチャイさんと剣星さんとオカズと取り合いをしていた。しぐれさんもオレのオカズを狙って来たが何とか説得して事なきを得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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