史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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第5話 慌ただしい日常

――ここは梁山泊、現代の武術に馴染めない達人達が集まり日々己の技を磨いている。

 そんな中、ここの住人に一人の少年が先日加わった。少年の名前は不破翔馬、月影流という流派の只一人の正統後継者だ。

 

「これで最後っと」

「悪いな兼一、引越しの手伝いさせちゃって」

「良いよ良いよ。ボクにとっても翔馬君が内弟子になったのは喜ばしいことだしね」

 

 この少年は白浜兼一、オレより先に弟子入りしていたことから兄弟子に当たるのだが、別に今更対応を変えるつもりはお互いにない。

 

「そうか? まぁなんにせよ助かったよ。あとは荷解きか……面倒だな」

 

 これまでの会話でわかると思うが、現在絶賛引越しの作業中である。引越しといっても家具などの荷物は元からアパートの付属品だったのでなく、大きい荷物も大してないので二人だけでも何とかなった。

 正式に内弟子となり今日から梁山泊(ここ)にすむ訳だが、てっきり兼一と相部屋かな? とか考えていたがちゃんと個人で部屋を与えられた。相部屋は相部屋で楽しそうだが、やはり個人のスペースは必要だ。

 そんなわけで荷物を運び終わった離れの一室で荷解きを始める。まぁ面倒だが三十分くらいで終わるだろう。

 

 

 ☆

 

 

 内弟子になり早三日経った。

 このところ兼一達と登下校していると、ほぼ必ずと言って良いほど不良の人達に襲われる。何でも新白連合がどうも関わっているらしい。

 話を聞くと、最初はイジメ対策に空手部に入部した兼一だったが、そこでもイジメに近いことを受けていてまともに練習させてもらえなかったそうだ。

 そしてある時、一人の部員に弱いやつは部に入る資格はない、という様なことを言われそれに反発した兼一とひと悶着の末、勝負して負けた方が部活を辞めるという話になったらしい。

 美羽ちゃんとの練習を経て、勝負自体は反則ではあるが勝利してのだが兼一は反則をした自分の負けであると言って部活を去った。

 ところが、その時審判をしていた上級生……筑波っていったっけ? に目をつけられてしまいケンカを吹っかけられたそうだ。一度は負けたものの再戦して見事勝利を納め、一時は平和に過ごせると思ったが、筑波という男はここら一帯に存在している不良集団ラグナレクの一員だったらしい。

 筑波を倒した瞬間から芋づる式に次々と不良が襲い掛かってきたそうだ。

 そして、その中二人程ラグナレクを抜けてくれたと嬉しそうに話していた。武田一基(たけだ いっき)宇喜田孝造(うきた こうぞう)というらしい。まだ会った事はないが二人ともとても良い人とのこと。

 おっと話が逸れた、用は筑波を倒したことにより兼一のことがラグナレク内に広まり直属の上司の南條(なんじょう)キサラの目に留まり狙われてしまったそうだ。

 そしてさっきの二人がラグナレクを抜ける時、兼一と美羽ちゃんが手助けしたらしいのだがその際新島率いる集団も参入したらしい。その時、新白連合と名乗りラグナレクと一戦交えたらしい。そのことで新白連合がラグナレクの敵対チームと認識されてしまったようだ。

 

 長くなったが、兼一がその敵対チームの隊長だということになってしまい、今までよりも更に襲われることになったらしい。んでオレはその兼一とよく一緒にいるから襲われているのだそうだ、巻き添えもいいところである。

 そしてこの日も……

 

「ったく、本当いい迷惑だな」

「ボクもそう思うけど、もう諦めてるよ……」

「その南條だっけ? そいつ倒しちゃえば終わるんじゃね?」

「ボクは女性に手を挙げない主義なんでね、その選択は最初からないよ」

 

 五人の不良共を倒し終わり帰路についている。因みに兼一と二人だけだ、美羽ちゃんは練習のため先に帰ってしまった。

 というのも何と美羽ちゃんが演劇に出演することになったんだ。何でも先日直々にオファーが来たらしい、兼一は物凄く気落ちしていたが……。

 

 

 ☆

 

 

 梁山泊に戻り着替えてそれぞれ修行に移る。

 といっても今日はオレはお休み、なのでしぐれさんと夕食の手伝いをしている。

 

「へージュリエット役をやるのか」

「そうですの、人手が足りないとかでヒロインに抜擢されましたの」

「いいなー」

 

 現在、美羽ちゃんが作った料理をしぐれさんが盛り付け、それをオレが運んでいる。

 兼一は向こうで剣星さんと修行している最中だ。

 

「でも公演まで後一週間もありませんの、台詞を覚えきれるか心配ですわ……」

「お前は頭いいか…ら、大丈夫…だ。たぶん」

「そうだよ、自信持てって」

 

 実際美羽ちゃんなら記憶力もあるし何の問題もないだろう。

 

「お、今日はトンカツかね」

 

 匂いに釣られたのかお腹が減ったのか岬越寺さんとアパチャイさんがやってきた。

 

「あぱ……腹減ったよ」

「もう少しで出来ますから待っていて下さいまし」

 

 限界が近いのかアパチャイさんの声からは覇気がまったく感じられない。フラフラとした足取りで居間にある食事をする長テーブルの上に突っ伏す。

 

「そうですわ、秋雨さんこの後私に演劇の指導をして下さいませんか?」

「いいよ、翔馬君も手伝いたまえ」

「えっ、オレもですか?」

「今日は修行が休みなのだろう? 丁度いい演技の稽古だ」

 

 あ、これはもう逃れられそうにないな。今日はゆっくり過ごしたかったのに……仕方がない。

 

「わかりました……やります」

「わぁ翔馬さんまで協力してくれるんですの」

「まぁせっかくだしね」

「ありがとうございますですわ」

「では夕食後に始めようか」

 

 

 ☆

 

 

 そして夕食も恙無く終わり、岬越寺さん主導の演劇指導が始まった。

 

「おぉーロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」

「ああ、どんな宝石よりもあなたの瞳は美しい」 

 

 初めてだけあってお互いに大根役者状態だ、オレは劇に出ないからそこまで問題ないけど……、美羽ちゃんは本当に一週間以内でモノに出来るのだろうか。

 

「違う違う、美羽。そこはもっと遠くにいる人間に話しかけるように……大きな声で囁くんだ」

「はいですわ!」

「翔馬君はしっかり美羽の目を見て、もっと愛おしい様子で語り掛けなさい」

「はい」

 

 練習が進むにつれて、要求することが段々高くなってくる。

 気がつけば始めは乗り気じゃなかったオレまでも徐々に演技にのめり込んでいった。

 

「よし、今日はここまで!」

「「ありがとうございました(ですわ)」」

 

 いつの間にか結構な時間になっていた。時間を忘れて練習していたのか……。

 

「二人ともお疲れ様」

 

 練習が終わったのを見計らって兼一が現れた。その手には何かを持っている。

 

「ハイこれ、のど乾いたでしょ?」

「サンキュ」

「ありがとうございますですわ」

 

 渡された飲み物でのどを潤していると……

 

「け~ん~い~ち君! ぎゃぁあああ!?」

 

 聞きなれた声と、それをかき消す様な叫び声が聞こえてきた。

 何事かと思って声のした方を覗き込むが誰もいない、確かに門の方から聞こえた気がするんだが……。

 

「なぁ、今何か聞こえなかったか?」

「翔馬君も? 悲鳴見たいの聞こえてきたよね」

 

 話し合っていると、何かジャラジャラした音を近づいてくる。

 

「ま、まさか幽霊とかではありませんわよね……?」

「悲鳴の前にお前の名前呼んでなかったか?」

「や、やめてよ~」

「シッ! 近づいてきますわよ」

 

 ギシギシ、ジャラジャラと足音と何か鎖が擦れるような音が近づいてくる。

 ん? 鎖って……

 

「…………」

「キリキリ歩…け」

 

 現れたのは、おびえた様子の新島と新島の身体に鎖鎌をぐるぐる巻きにしているしぐれさんだった。

 

「はっ、けっ兼一!」

 

 兼一を発見した新島は助けを請うように必死で訴える。

 

「なんだお前か新島、今度は何しに来た?」

「何でも良いから、とにかくこのねーちゃん追っ払ってくれ!」

 

 三人がかりでしぐれさんを説得し、しぶしぶながらも何とか鎖を解いてくれた。警戒しているのかまだオレに隠れてジト目で睨んでいるが……。

 

「ふぅ……助かったぜ。あれ、何でアンタがここにいるんだ?」

 

 こいつ、たった今助けてやったのに何て言い草だ。

 

「わけあってオレもここでお世話になってるんだよ。まぁ平たく言うと兼一の弟弟子(おとうとでし)だな、因みにお前を捕らえたこの人が師匠だぞ」

 

 後ろにいるしぐれさんを指しながら言うとしぐれさんはエッヘンと胸を張り、それと同時に新島は顔を顰める。

 

「そ、そうか……。わかったからあんまりそのねーちゃんをオレ様に近づけないでくれ」

「はいはい」

 

 新島との間に入りしぐれさんを少しずつ遠ざけるが、諦めきれないのか睨んでいる。

 

「で、結局何しに来たんだ?」

 

 痺れを切らした兼一が新島に続きを促す。

 

「おぉそうだった。頼まれていたことを伝えに来たんだ、あの演劇部の谷も――」

「えっ?」

「わぁー! 美羽さん何でもない! 新島あっちで話そう!」

 

 そう言うと新島を連れて慌てて別の部屋に行ってしまう兼一。

 

「おかしな兼一さんですわね、翔馬さんは何か知っていますの?」

「いや、別に何も……」

 

 本当はその時の兼一と新島の会話にオレも参加していたんだけど、兼一の名誉のためにあえてここで言うことはないだろう。

 

「さっ、明日も早いしオレは先に休みますか」

「あっそうですわね。お休みなさいですわ」

「お休み。しぐれさんお休みなさい」

「…(こくり)」

 

 二人に一言言って、休むために離れにある自室へ向かう。

 途中兼一の怒鳴り声が聞こえてきたが、いったいどんなことを聞かされたんだか……。気にしてもしょうがないのでこの日はこのまま寝ることにした。

 

 

 

 

 




やっと原作に絡ませられました。
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