史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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少し長くなっちゃいました。ではどうぞ!
予約投稿の日にちをミスして19時に投稿出来ませんでしたorz


第6話 隠者

 

 岬越寺さんによる演劇指導も連日続き、更に学校での演劇部による稽古の甲斐もあり美羽ちゃんの実力は学生ではかなりのモノになった。

 今日も梁山泊での演劇指導も終わり疲れを癒すために、先に風呂に行ってしまった。因みにここの風呂は露天風呂の温泉だ、何でもすこし前にアパチャイさんが掘り当てたらしい。

 食後の休憩も兼ねて居間でゴロゴロしていたところを岬越寺さんに呼び出され、そのまま着いて行き隣の和室にたどり着く、見ると美羽ちゃん以外の梁山泊の住人が集まっていた。

 

「さて、これで全員集まったわけだが……」

「えと、これって何の集まりなんでしょうか?」

 

 部屋の中を見渡して話し始めた岬越寺さん、タイミングを見計らい連れてこられた疑問をぶつける。

 

「うむ。実はな……ある空手の先生が劇に家族が見に行かないのは美羽が可哀想だからと、言い出してな」

「秋雨この野郎! 別にオレはどーでもいいって言ってんじゃねぇか!」

「で、現在長老はまたふらっと旅に出てしまって留守している」

「じじい、いつもたいみんぐ悪いよ」

「そんなわけで、おいちゃん達が一肌脱ごうということね」

 

 岬越寺さんの説明にアパチャイさんと剣星さんがそれぞれ付け足す。

 しかしやっぱり逆鬼さんは優しいな、照れ隠しで怒鳴っているが耳が真っ赤なので迫力がない。そのことを指摘すると高確率でゲンコツが飛んでくるので言わないが……。

 

「なるほど、事情はわかりました。良かったな兼一、美羽ちゃん喜ぶぞ?」

「そっそうだね!」

 

 ん? 何でそんなに焦ってるんだ?

 

「では明日、各々用意しておくように。では解散」

 

 そう岬越寺さんが締め、集まっていた人たちは各々自分の私室やらに散っていった。何故か一人台所に消えていったが摘み食いでもするつもりだろうか……。

 

 

 ☆

 

 

 翌日の日曜日

 準備があるためか早朝かなり早く学校に向かった美羽ちゃんを尻目に、オレ達もそれぞれ仕度を始める。オレと兼一はいつもの制服姿、岬越寺さんと逆鬼さんはスーツ、しぐれさんはカーディガンにタイトスカート、アパチャイさんはアの文字が目立つピチ目のTシャツに半ズボン、剣星さんはいつものカンフーの道着に手にはカメラという格好だ。

 正直、逆鬼さんのガタイだとレスラーにしか見えないのは内緒だ。それに更にオレとしぐれさんはそれぞれの武器を袋に入れて持って行く、まぁオレのは長さの違う木刀二本だが……。

 

 学校に着くと兼一はトイレに行くといって、足早に去っていく。ただ待っていても仕方が無いのでオレ達は席取りのために早めに入場することにした。

 早めに来ただけあってまだ人は少ない、これなら問題は無いだろう。

 案の定、一番前という特等席が空いていた。そこに陣取り開演を待つ、並び順は左から剣星さん、アパチャイさん、しぐれさん、オレ、空席、逆鬼さん、岬越寺さんの順だ。空席は言うまでもなく兼一の席である。

 

「兼一のやつおせーな、何処まで行ったんだよ」

「トイレに行くとは行ってましたけど、確かにちょっと遅いですね」

 

 逆鬼さんが帰りの遅い兼一を心配してぼやきだす。

 

「まぁ、始まる頃には戻るんじゃないですか?」

「それもそうか、にしてもお前ら師弟は……こんな時くらい刀は置いてこいよ」

「ちゃんと…袋に入れた…ろ」

「オレのは木刀ですけどね」

 

 そう逆鬼さんに言われたが、武器を携帯しているのはいざという時のためである。

 街中でいきなり襲撃されるこちらの身にもなって欲しい。しぐれさん程の身体能力があればたとえ武器がなくとも何とかなるだろうが、オレは武器がなかったらその辺の不良にも勝てないだろう。腕力なんて兼一と比べてもかなり低いだろうし……。

 

 劇が始まるまで三人でそんな話をしていた。見ると岬越寺さんは隣の席の奥様と談笑、アパチャイさんは見知らぬそこらのおじさんと話し込んでいる。剣星さん? 言うまでもなくあちこち写真を撮り捲っている。時々ウヒョーとか奇声が聞こえるので十中八九、健全な写真を撮っているとは思えない……。

 

 ブー!

 

 気がつくと辺りは暗くなり、開演を知らせるブザーが会場内に鳴り響いた。

 おいおい兼一……、お前はせっかくの劇を見ないつもりか?

 

「オレちょっと近くのトイレで兼一探してきます」 

「おう、お前も早めに戻って来いよ」

 

 逆鬼さんに一言入れ、会場を後にする。

 

「さて、何処行ったんだよあいつ……、携帯も繋がらないし」

 

 こんな時に携帯の電源入れてないとか、何のための携帯電話なんだろうか……。

 

「仕方ない、トイレを片っ端から探すしかないな」

 

 そう言ってやれやれといった感じに歩き始める……。

 

 

 

「くっそあいつホント何処行った!」

 

 只今、十二件目のトイレを周ったところだ。もうかれこれ二十分くらいは探したんじゃないだろうか……。

 

「もしかして、もう会場に戻ってるとか? うわーだとしたら何やってんだオレ」

 

 これだけ探して見つからないとなると、その可能性の方が高い。何かの事件に巻き込まれたのかと一瞬思ったが、流石に学校外に出るとは思えないのでその可能性は頭から追いやる。

 

「はぁ……戻るか」

 

 一気に疲れが出て思わずため息が出てしまう。今から戻っても劇はもう中盤に差し掛かっているだろうし、ゆっくり戻ろうと思い歩き出す。

 会場に戻り座っていた席に戻るが隣を見ても兼一の姿はない。聞けばまだ一度も戻ってきていないという。ここまでくると意図的に演劇から逃亡したのだろう。

 

『どなたの案内で、危険を掻い潜りここまで来たのですか?』

『あなたへの愛に導かれてやってきたのですよ』

 

 兼一のことは仕方がない一旦忘れることにする、たぶん噂の谷本王子と美羽ちゃんの劇を見るのが辛いのだろう、学校内だとベストカップルなんて呼ばれているらしいし……。

 まぁ今は演劇に集中しよう。

 

『いけない乳母(うば)が……。では明日、使者を送ります!』

『はい! 心よりお待ちしております』

 

 物語も佳境に入ったのだろう、今のは美羽ちゃん演じるジュリエットの元へ谷本王子演じるロミオ秘密裏に訪れるシーン。乳母の登場により去ろうとするロミオにジュリエットが使者を送ると伝える。

 演技の質に加え美男美女が演じているだけあって会場内は固唾を呑んで見守っている。横にいるしぐれさんもうっとりとした表情で見つめている。

 

 

『あぁ……ロミオ様……今、おそばに……』

 

 そうこうしてる内に劇も最後シーンに入る。

 ジュリエットが悲しみに暮れて自身の胸に短剣を刺して自決してしまう。

 すると会場から盛大な拍手と演者を称える賛美の声がそこら中から聞こえてくる。辺りを見渡すと泣いているのかハンカチを顔に当てている人もちらほら見受ける。反応を見るに演劇は大成功といって良いだろう。

 

「使うかね?」

「バ、バーロォ! スポットライトが目にしみただけだぜ!」

 

 声に反応して左を向くと、腕を組んで上を向いている逆鬼さんとそれにハンカチを差し出している岬越寺さんがいた。

 どうやらここにも感動して泣いている人がいたようだ。必死に隠しているが鼻を(すす)っているのか小刻みに身体が動いている。

 

「…(ちょんちょん)」

「ん? なんです? しぐれさん」

 

 逆鬼さんに気を取られていると、今度は右からしぐれさんに肩を突かれる。

 

「トイレに行った…きり、アパチャイが戻ってこな…い」

 

 そういえばさっき出てったっけなぁ。

 

「だそうです、お二人とも」

「ふむ、彼は学校に通ったことがないからきっと物珍しいのだろう。逆鬼」

「チッわーったよ、世話のかかるやつだぜ全く……」

 

 岬越寺さんが逆鬼さんに声をかけると、渋々といった感じでアパチャイを探しに行く逆鬼さん。

 

「さて逆鬼がアパチャイを連れ来るまで、我々もここで待っていようか」

「そうですね」

 

 そう決めて時間を潰すことになった。劇も終わったからか会場にいたお客さんの殆どはもう帰り始めてしまっているため、会場内で残っているのは少数の出待ちとオレ達くらいだ。

 

「皆さん!」

 

 しばらくすると、ドレス姿の美羽ちゃんがこちらにやってきた。

 

「見事だったよ、美羽」

「うん、特訓の甲斐あったな!」

「ありがとうございますですわ! 皆さんが来てくれたので余計頑張れましたんですの」

「ドレス…いいな~」

 

 走ってきた美羽ちゃんに岬越寺さんとオレで賞賛の言葉をかける。しぐれさんは美羽ちゃんの周りをぐるぐるしながら着ているドレスを羨ましそうに弄っている。

 

「でも、ここまで上手く出来たのは相手役の谷本さんが演技を引っ張ってくれたお陰ですわ」

「ほう、彼は谷本というのかね」

 

 そう言うと、岬越寺さんは谷本君の方へ行ってしまう。

 

「み~うちゃん! 演劇おつかれ!」

「きゃっ!」 

「ふぎゃっ!?」

 

 突然後ろから現れた新島に驚いたのか、一瞬悲鳴を上げたと思うと次の瞬間あっという間に背負い投げをかけしまう美羽ちゃん。

 

「さ、さすがだね……イテテ」

「にっ新島さん!? も、申し訳ありませんですわ!」

 

 思わず投げてしまった新島に対し謝ると、気にするなというように手を振る。

 

「で、どうしたんだ?」

「おぉアンタか、二人に伝えたいことがあってね。実は……」

「えっ! 兼一さんがそんなことを!?」

「なるほどな、だから来なかったのか……」

「だから、今回は大目に見てやってくれ。じゃあオレ様はこれで……」

 

 そう言って、さっさと何処かへ行ってしまう新島。

 新島が言うには、兼一が来なかったのは南條キサラ率いるラグナレクのやつらがこの演劇をぶっ潰すためにこちらに向かっていたらしい。それを偶然聞いてしまった兼一は女性である南條は殴れないにも関わらず、やつらの前に立ち此処に来るのを食い止めたんだそうだ。

 

「これじゃ、兼一のやつを怒れないな」

「そうですわね……でも一言、言って欲しかったですわ」

 

 まぁ実際、言う暇もなかったんだろう。

 

「二人とも、そろそろ引き上げよう。美羽も早く着替えてきなさい」

「はいですわ」

「わかりました」

 

 岬越寺さんに言われて帰り支度を始める、美羽ちゃんも慌てて着替えに行く。

 ふと横を見ると、連れ戻されたアパチャイさんが逆鬼さんに説教されていた。何でもウチのバスケ部の試合に加わっていたらしい……。

 

「お待たせしましたですわ」

「では行こうか」

 

 着替え終わったのかいつもの制服になった美羽ちゃんも合流して帰るために校門へ向かう。

 

「あ、(わたくし)此処でしばらく兼一さんを待ってみますわ」

「あぱ、じゃあアパチャイも――」

「美羽、おいちゃん達は先に帰ってるね」

「はい、お気をつけてですわ」

 

 校門に着くと美羽ちゃんが突然そんなことを言い出し、アパチャイさんも残ると言い出すが剣星さんが気を利かしたのか言葉を遮り無理やり連れて行く。

 

 

 ☆

 

 

「剣星さん優しいですね」

「なんのなんの可愛い弟子のためを思ったらこれくらいなんともないね」

 

 美羽ちゃんと別れ、帰路に着くオレ達。途中で美羽ちゃんの好物の餡蜜を買ってその足で梁山泊へと向かう。

 それぞれ演劇の感想を言い合いながらぞろぞろと歩いていく、心なしか道行く人が目を逸らしながら道を空けて行くのが気になったが……。

 

「あ、兼一と美羽だよ!」

 

 歩道橋の近くに差し掛かったところで突然アパチャイさんがそんなこと言い出す。

 よく見ると確かに兼一と美羽ちゃんが仲良さげに二人で歩道橋を渡っていた。上手く合流出来たみたいだな。

 

「ずいぶん遠回りしてんな、おーい! けん――」

「まあまあ逆鬼、無粋なことはせずに我々は帰ろう」

 

 声をかけようとする逆鬼さんの口を手で塞ぎ帰るように促す岬越寺さん。

 

「上手くいったみたいですね」

「そうようね、兼ちゃんも中々やるね」

「じゃあオレ達も行きましょ剣星さん」

「もうちょっと待つね、きっと良い写真が……ん?」 

 

 剣星さんの様子がおかしくなったので兼一達の方へ目をやると……

 

「襲われて…る」

「なに!?」

 

 しぐれさんの言う通り、ここからじゃ見えにくいがフードを被った人に攻撃されている。

 瞬く間に一撃を入れられ、そのまま歩道橋の下に落ちる兼一……。

 

「兼一!」

 

 駆け寄ろうとするも此処からじゃ間に合うはずもなく、そのまま真っ逆さまに落ちていく。

 もう駄目かと思ったが運良く下に大型バスが通り、その上に倒れこむ兼一。フードのやつもそれを追ってバスに飛び乗る。

 

「あの野郎!」

「待つね、逆鬼どん!」

「あっ二人とも!」

 

 それを見た逆鬼さんと剣星さんが物凄いスピードでバスを追いかけていった。

 

「二人に任せて我々はとりあえず美羽のところに行くぞ」

 

 岬越寺さんの言葉に従い、急いで歩道橋を駆け上がる。

 

「美羽! 何があった?」

「秋雨さん! それが、いきなり兼一さんが悪漢に襲われて!」

 

 美羽ちゃんの元に着き、事情を聞くが少し取り乱している。それほどの相手なのか……。

 

「どうしましょう!? 今の兼一さんでは歯が立ちませんわ!」

「ハハハ。ただの子供のケンカじゃないか、お腹が空いたら帰ってくるさ。さぁ帰って餡蜜でも食べよう、わざわざ美味しいと評判の店で買ってきたんだよ」

「あれが子供のケンカに見えますですか!?」

 

 美羽ちゃんが慌てているところを岬越寺さんが落ち着かせるために冗談を交えて話す。

 確かに、あそこまで行くと最早ケンカの次元を超えているかもしれないが……。

 

「安心したまえ。おせっかいが二人程、ちゃんと後を追っているさ」

「そうなんですかですわ?」

「あぁ、逆鬼さんと剣星さんが行ったから心配ないと思うよ」

 

 美羽ちゃんがオレに聞いてきたので、ちゃんと説明する。

 

「なら大丈夫なのかしらですわ」

「そういうことさ、さぁ我々は先に帰ろう」

 

 その言葉に従い梁山泊に戻った。

 しばらくすると、ボロボロの兼一が戻ってきた。話を聞くとフードのやつはあの谷本君だったらしい、隠者(ハーミット)というラグナレクの第六の拳豪らしい。つまり幹部クラスだ。

 なんでも気に入らないから襲われたらしい、あと師匠の名前を尋ねられたとか……。

 結局引き分けたらしいのだが、この先きっとまた出会うような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




演劇の件は想像です、原作うろ覚えなので……。
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