史上最強の弟子の相棒   作:アフィーと

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第7話 お買い物

 

 あのバスの上の激闘から数日経ったある日……

 学校に行くも隠者こと谷本君はやはりというべきか姿を現さなかった。

 

「しっかし、よくあんなとこで戦って生きてたな……お前」

「今頃になって命懸けの戦いをしたことが怖くなってきたよ……」

 

 戦っている時は恐怖よりある種の興奮というか戦うことで色々なことが麻痺していたんだろう。今になって思い出したのか、途端に身体を震わせ始める兼一。

 

「ハハッまぁ良いじゃないか、人生何事も経験だよ兼一君」

「限度があります!」

 

 随分と気軽に言い放つ岬越寺さん、兼一も必死に言い返す。危険な目に会っているのは自分自身なので恐怖も一入だろう。

 

「あんな戦いは初めてです……。彼は、谷本君は本気でボクを殺そうとして――」

「武術家は己の命を本気で狙う者が出来てこそ、一人前じゃあああ!」

 

 スパーン! と小気味良い音とともに障子を開け放ち、突然そんなことを叫びながら長老が帰ってきた。

 

「今戻ったぞ!」

「あっおじい様!」

「おや長老、戻られましたか」

「うむ!」

 

 ちょっと前に旅に出ていた長老がやっと帰ってきた。どうせなら演劇の前に帰ってきて欲しかったが、師匠達総出で応援に行ったから特に問題もないかな。

 おみやげーと言いながら長老に三人ばかり詰め寄るが、ないとわかると手のひらを返したようにそれぞれ散って行く。

 

「おじい様、南の方はいかかでしたか?」

「ワハハハ! 中々手強かったわい!」

 

 手強かった? 一体何しに行ってたんだ? やはり武術家らしくこの人も戦ってたんだろうか……。

 

「フハハハ! そうかそうか、兼ちゃんにもついに命のやり取りをする好敵手(ライバル)が出来たのか!」

「は、はぁ……」

 

 長老の纏う雰囲気に兼一もたじたじだ。

 

「なぁ、旅から帰ってくるとあんなにテンション高いもんなの? 前の時は普通だったじゃん」

「だよね……、ちょっとついていけないよ」

「今回の旅は実りをあったんですわ

きっと」

 

 好敵手について語る長老を尻目に小声で話し合うオレ達。

 

「兼一よ! これでお前さんもようやく、武術家の仲間入りじゃな!」

「「ええっ!?」」

 

 長老の言葉に兼一と一緒に驚くオレ、皆さんそんなに恐ろしい人がそれぞれいらっしゃるんでしょうか……?

 

「逆鬼師匠、師匠にも命を狙ってくるような好敵手っています?」

「ん? そうだな……」

「しぐれさんにもいるんですか?」

「…………」

 

 オレ達はそれぞれ身近にいた師匠に質問をぶつける。すると二人は考え込むように目を瞑り……

 

「ひぃ…ふぅ…みぃ」

「二十五、二十六……」

 

 思い当たる節があるのか指を折って数え始める。

 

「おいちゃんもざっと五十人以上はいるね」

「私は少ないほうだが……まぁ何人かはいるな、互いを高め合う好敵手ならば遼一がそれにあたるな」

 

 周りで話を聞いていた剣星さんと岬越寺さんもそれぞれそんなことを言い出した。

 

「こんな世界いやぁあああ!」

「確かに嫌だが、岬越寺さんと父さんの関係だったら大歓迎だなオレは」

「ふっ、しかし兼一君。命を狙う相手となると……少し修行を厳しくしないといけないねぇ」

「え゛!?」

「次の休みに私がい~い所へ連れて行ってやろう」

 

 兼一は嫌がり激しい抵抗を見せるが、そこはやはり岬越寺さん有無を言わせないその手腕で無理やり決めてしまった。

 

 

 ☆

 

 

 そして次の休みの日、予定通り兼一は何処かに行ってしまう。何でも岬越寺さんの古い友人らしい、付き添いで美羽ちゃんとアパチャイさんが着いて行った。

 そんな中オレはというと……

 

「美羽ちゃんがいないから仕方ないとはいえ、何でオレ達が買い物何ですかね」

「文句言う…な」

 

 愚痴を零すオレをしぐれさんが窘める。

 今現在、オレとしぐれさんは夕食の買出しのために商店街をうろうろしていた。

 

「えーっと何買うんでしたっけ?」

「……ピーマン、たけの…こ、牛肉」 

「そうでしたそうでした。家にある物じゃ駄目なんでしょうかね?」

「知らん、馬のやつにき…け」

 

 そうなのだ、何故か剣星さんが張り切りだして料理を作ると言い出したのだ。美羽ちゃんがいないため今日の夕飯どうしようかと皆で考えていた時、「おいちゃんが作るね、実は中華はプロ級ね」と言い始め急遽決定した。そのため足りない食材を買いに来たというわけだ。

 

「すいません、たけのことピーマンください」

「あいよ! えらいねぇお嬢ちゃん、お姉さんと一緒にお使いかい?」

 

 目に入った八百屋に入り、欲しいものを伝える。

 八百屋の店主は威勢良くそれに応えてくれるが、続く言葉オレは固まる。

 

「姉妹に見え…る?」

 

 自分のこと指差しながらそんなことを言うしぐれさん、待ってくださいオレは男ということは無視ですか……。

 

「お嬢ちゃんはやめて下さい……。オレは男です」

「おっ? そうなのかい? そいつは悪かった。 いやーとてもそうは見えないねぇ」

「そんなことはどうでも良いですっ。 それより品物をお願いします」

 

 これ以上この話題を続けていたくないので、少し慌てて早口になりつつも店主を急かす。

 

「はいはい、じゃあ恋人さんかな? 悪かった……だからそんな目で見ないでくれ、ほれ品物」

 

 続け様にまたふざけたことを抜かし始めたので、少し威圧を視線に込め無言で見つめる。すると即座にこちらの纏う雰囲気に気づいたのか茶化すのを止め品物を渡してくれる。客商売だからその手の空気には敏感なのだろうか……だとしたら最初から茶化すのを止めて欲しい。

 

「ありがとうございます、ほら行きますよしぐれさん」

「恋人……」

 

 何かを考え込んでいるのか、言葉をかけても反応がない。

 

「しぐれさん?」

「っ!? な、なんでもな…い」

 

 近づいて下から顔を覗き込むと、いきなりで驚いたのか僅かに飛びのくしぐれさん。いつも冷静沈着なのに珍しいこともあるものだ。

 

「? そうですか? じゃあ次行きましょ」

 

 何か様子がおかしいがしぐれさんが大丈夫と言うならそうなのだろう、大して気にも留めずそのまま八百屋を後にする。

 

「これで全部ですかね?」

「う…ん」

 

 あの後、何事もなく肉屋で牛肉を買いそのまま帰路についていた。

 そのまま無事に梁山泊に戻れると思っていたが、二人で廃工場の近くを通った時だった。本来誰もいないはずの工場から怒号と女の子叫び声が聞こえてきた。

 

 まったくこの町は……。と心の中で愚痴り――

 

「しぐれさん! 先に戻ってて下さい、ちょっと行って来ます!」

 

 しぐれさんに荷物を預け、オレはそのままその叫び声がした方へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 




毎回話の中身よりもサブタイトルをつける時の方が考え込んでる気がします(笑)
最終的には何でも良いやという結論に至り、シンプルになってしまうのですが
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