陽気なガールは転生したのちボールを転がす   作:敏捷極振り

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若干ダイジェスト気味かも?




5話 VSオーストラリア戦

 

 

 

『いよいよこの日がやって参りました! 第一回FFIアジア地区予選!』

 

 二日後、とうとう試合当日を迎えた私たちは、超満員の観客に囲まれたフロンティアスタジアムにて、総理大臣の財前氏の演説もとい開会宣言を聞きながら、溢れ出る闘志と並々ならぬ緊張感を胸の内に秘めていた。

 世界各国のギャラリーが私たちに注目しているんだ。情けない試合を見せるわけにはいかないね。

 

「スターティングメンバーを発表する」

 

 開会式を終え、ベンチでウォーミングアップをしていた私たちに、久遠監督から初戦のスタメンが発表される。

 

 

 FW 吹雪、豪炎寺、基山

 

 MF 風丸、鬼道、結城

 

 DF 木暮、土方、壁山、綱海

 

 GK 円堂

 

 

 よっしスタメンキタコレ!

 横から不動の舌打ちが聞こえた気がしたが、聞こえなかったことにしておこう。それと緑川、アンタは落ち込み過ぎだ。いつでも出れるチャンスはあるんだからもっと気張っていきなよ。

 

「おし! みんな行くぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

 手短に円陣を組んで気合いを入れ直す。

 円堂の掛け声でみんなが声を張り上げ、それぞれフォーメーションの位置へと散らばって行く。

 

『FFIアジア地区開幕戦! 日本代表イナズマジャパン対オーストラリア代表ビッグウェイブス戦が今! 始まります!』

 

 長いホイッスルが鳴り響き、ついに試合が始まる。

 まずはイナズマジャパン側からボールがスタートする。豪炎寺が吹雪へとボールを出し、そして鬼道へとボールが渡る。豪炎寺と吹雪は前線へと駆け上がっていき、中盤のメンバーは鬼道を中心として上がっていく。

 

『イナズマジャパンの司令塔、天才ゲームメーカー鬼道はどのように試合を運んでいくのか!?』

 

 鬼道が軽快なドリブルで上がっていると、ビッグウェイブスの選手がプレスをかけにくる。その数、一人二人などではなく、四人で囲むように鬼道をマークし、まるで狭い空間に閉じ込めているかのようなディフェンスで鬼道の動きをいとも簡単に封じた。

 

「なんだ……これは!?」

 

 どうにかして抜け出そうと鬼道がもがくが、四人に囲まれては流石に動きが制限され、さらにプレッシャーも半端ないために徐々に押されつつある。

 

「くっ、陣形が崩れない! しかも、足が次々と伸びてくる!」

 

 ならばパスだ、と思ったのか前線に上がっている豪炎寺、後方でポジショニングをとっている綱海へと視線を移したが、先読みされ完全にパスコースを塞がれてしまう。そこで鬼道は思い出したかのように目を見開く。これが噂に聞いていた、相手の動きを完全に封じ込める戦術なのだと。

 

 

 ーーービッグウェイブスは海で心と体を鍛え抜いたチーム。特に守備が固く、相手の動きを完全に封じてしまう未知の戦術があるそうなんですーーー

 

 

 二日前、音無が言っていたビッグウェイブスの情報が鬼道の頭をよぎる。

 

『出たーー!! これがビッグウェイブスの"ボックスロックディフェンス"!! 一度嵌ると二度と抜け出せない必殺タクティクスだぁ!』

 

「くっ……!」

 

「もらった!」

 

 その時、ギリギリでボールをキープしていた所を相手にカットされる。

 

「くそっ……!」

 

 こぼれ球を取りに行こうと綱海と土方が走り出すが、互いにポジショニングの連携が取れておらず、二人は衝突してしまった。

 

「ちゃんと連携の練習をしていれば……!」

 

 走りながら恨めしそうに鬼道が久遠監督をチラリと見るが、時すでに遅く相手チームのFW、ジョーンズが円堂の目の前に迫っていた。

 

「メガロドン!!」

 

 放たれた強烈なシュートは、突如現れた大きなサメとともに力強く円堂が守るゴールへと突き進んでいく。

 

「正義の鉄拳G2!!」

 

 円堂が必殺技で必死に対抗するが、世界レベルのシュートの威力に圧倒され、少しは拮抗した様子を見せたがついに突き破られゴールを許してしまう。

 

『な、なんと!? 先制したのはビッグウェイブスだー!! イナズマジャパン、開始早々得点を許してしまったぁー!』

 

「こんなにあっさり点を取られるなんて」

 

「久遠監督の言う通りっスね……」

 

 木暮と壁山が呆けたように呟く。

 おおよそ世界のレベルを実感し、その強さを前にして為すすべがないといった様子だ。

 

「やっぱり、世界のレベルは高いな」

 

「けど、こんなに凄いやつらと戦えるなんて、燃えてきた!!」

 

 円堂のその一言に、沈み気味だったみんなに活気が戻ってくる。円堂の強さは、そんな世界レベルの障壁さえも物ともせず、立ち向かおうとする勇気と根性だ。

 

「この闘志に、どれだけ救われてきたことか」

 

「私たちも負けてらんないね」

 

「まずは1点だ! 取り返していくぞ!」

 

 円堂の言葉で気合いを入れ直し、再びイナズマジャパンのボールで試合は再開する。今度は豪炎寺が自分の足でそのままボールを運んでいく。しかし、それを待ち構えていたかのように、ビッグウェイブスはまたもやボックスロックディフェンスで豪炎寺を囲んだ。

 前後左右の動きが封じられ、さらにはパスも潰される。そうすれば選択肢はもう一つしかない。豪炎寺は上に飛んで包囲網を掻い潜ろうとしたが、それすらも読んでいたのか、相手の一人もほぼ同時に飛んで対抗し、豪炎寺からボールを奪っていく。

 

「土方! ジョーンズをマークだ!」

 

「任せな!」

 

 鬼道が先ほど強烈な必殺シュートを放った選手にマークをつけさせ、少しでも点を取られないように指示を出す。

 

「リーフ!」

 

 土方がマークしたジョーンズにはパスが通らないと瞬時に判断したのか、逆サイドから上がってきていたもう一人のFWにパスを出す。それを受け取ったリーフはそのまま絶妙なコースを狙ってシュートを放つ。

 

「はぁっ!!」

 

『おぉっと! 今度は逆サイドのFW、リーフにパスを出した! そしてビッグウェイブスの女性プレイヤー、リーフの渾身のシュートがゴールへと一直線に向かっていく!!』

 

 あれ、こいつ女の子だったっけ?

 確か原作では男だったよね。まぁ見た目はまんま女の子っぽかったけど。この世界では見た目通り女の子なんだね。てことは普通に美少女じゃん。

 

「くっ……!」

 

 円堂がなんとかボールに食らいつき、追加点は免れる。

 

『キーパー円堂! 横っ飛びでなんとかキャッチ! 見事にリーフのシュートを止めたぁ!!』

 

 さて、そろそろ私も仕事をしますか。

 今の所、ぶっちゃけた話私はまだボールに触ってすらいない。もちろん走ってはいるしちゃんと相手もマークはしているけど、たぶん役に立ってないし……なにより目立ってない!

 せっかくギャラリーがこんなにいるんだし、どうせなら注目を浴びたいよね。

 

 円堂が綱海にボールをパスし、そのまま綱海が上がっていくが、またもボックスロックディフェンスに捕まりそうになる。

 

「綱海!」

 

 フリーになった状態でパスを要求し、綱海は4人に捕まる前になんとかボールを私に繋げる。原作知識の応用だけど、実際に自分の目で見て確信した。ボックスロックディフェンスの対策は2つある。1つは今みたいに、捕まる前に即座にパスを出す。どんなに強力なディフェンスでも、そもそも捕まらなければどうということはない。けど、それだけだと無理がある。毎回高度なパスワークが要求されるから、今のイナズマジャパンの連携が噛み合ってない状態では無理だ。

 

「行くぞ! ボックスロックディフェンス!」

 

『今度はイナズマジャパン唯一の女性プレイヤー、結城がボックスロックディフェンスに捕まってしまったぁ!!』

 

 外から見るより、だいぶ狭く感じるな。

 四人に囲まれた状態で、ボールをキープし続ける。本来なら並外れた集中力とテクニックを要するけど、部屋の中で特訓した私たちには出来ないことではない。

 四人の足が一斉にボールを奪いにくるが、私はそれを軽快に躱しながらボールをキープする。現時点で優勢にあるのはビッグウェイブスだ。イナズマジャパン側からすれば、少しでも早く点を取りに行きたいところ。だからここで留まっている訳にはいかない。けど焦っちゃダメだ、ボックスロックディフェンスを突破するには、焦りは禁物だ。ここはひとまず我慢比べといこうじゃないか。

 

『なんと結城! 四人に囲まれた状態のままボールを見事にキープしている!!』

 

「くっ、何をしてる。もっと激しく動け!」

 

 囲んでいる四人の内の一人が、次第に焦り始める。そりゃそうだ、国の代表として選抜された選りすぐりの選手四人が、相手国の選手たった一人を相手にボールを奪えないとあっては、それはもう焦るに決まっている。

 

「いいぞ結城!」

 

「すごい……!」

 

 円堂やベンチのメンバーが感嘆の声をあげているが、このくらいだったら鬼道にだって余裕で出来る。あの屋内での特訓を思い出せばの話だけど。

 

「くそっ、ボールはまだか!」

 

「取れるもんなら、取ってみれば?」

 

 そう挑発しつつ、私は体を右に傾けてフェイントをかける。ボールをなかなか奪えず焦っていた相手はまんまと私の動きに釣られ、そして隣同士で密集していた仲間の選手と肩をぶつけ体のバランスを崩した。私はその一瞬の隙を逃さず、ボールを態勢の崩した選手の股に通し、肩がぶつかった際に生まれた僅かな隙間に体を入れて間を掻い潜った。

 

「なんだと!?」

 

『なんと!! 結城が初めてにして、ビッグウェイブスのボックスロックディフェンスを打ち破ったぁーー!!』

 

「あの動きは……まさか!」

 

 鬼道は私の動きを見て既に気づいたようだ。

 流石天才ゲームメーカー、頭の回転が早いね。

 

「豪炎寺!」

 

 空高く打ち上げたパスに、豪炎寺が合わせるように飛び上がり、そのままダイレクトにシュートを放つ。

 

「爆熱ストーム!!」

 

「グレートバリアリーフ!」

 

 しかし豪炎寺の渾身のシュートは、相手キーパーの必殺技により生まれた大きな波によって完全に勢いを殺され、止められてしまった。

 

「ドンマイ、豪炎寺」

 

「あぁ、次こそは決めてみせる」

 

 とはいうものの、豪炎寺は今ひとつ浮かない表情をしていた。まるで今の必殺技では打ち破れないと見抜いているかのように。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 それからというもの、イナズマジャパンは鬼道を筆頭に、ボックスロックディフェンスを打ち破っていき、既に攻略しつつあった。が、ビッグウェイブスにはまだもう一つ砦がある。

 

「相手キーパーの技、豪炎寺の爆熱ストームを易々と止めるほどの威力だ。そう簡単には破れそうにないな」

 

 そう、相手キーパーの必殺技によって、イナズマジャパンのシュートはことごとく止められているのだ。

 既に前半は終了し、現時点でのスコアは1ー0。開始早々決められたシュート以外はなんとか守り切っているが、こちらのシュートも幾度となく止められてしまっている。

 どうしたものかと、みんなが作戦を考えていると、不意に久遠監督が綱海に近付く。

 

「綱海、お前はこの2日間私の命令を無視して外出していたな」

 

「げっ、バレてたのか……」

 

「今回の試合、お前の新しい必殺技が鍵になる」

 

「綱海の、新必殺技?」

 

「気づいてたのか……けど、まだ完成した訳じゃねーし、何かが足りてねー気がすんだ」

 

「その答えは、フィールドの中にある」

 

「フィールドの、中だって?」

 

 綱海がフロンティアスタジアムのフィールドを見渡すが、辺り一面に綺麗に揃えられた芝生があるだけだった。相変わらず言葉足らずというか、久遠監督は含みを残した言い方をするなぁ。まあそこが良いんだけど。

 

 

 

 

 




ビッグウェイブスのメンバーの
名前を間違えていたので訂正しました。

✖️ジョーズ→◎ジョーンズ

気づいたのですが彼の名前の
ジョー・ジョーンズ……ジョジョという
地味なミキシマックス

さらに、早くも矛盾が発生。
実況がビッグウェイブスには唯一リーフしか
女性はいないと言っていましたが、
次話で普通に登場しちゃったのでセリフを
修正しました。なんてこったい……。

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