「よし! 通れ! 次!」
ガラガラと音を立てて馬車を門の目の前まで移動させる。
「行商人なら許可証を見せろ」
なかなか高圧的に接してくるなあ。
おそらく都市に入る前に威圧することで未然に犯罪を防いでいるのだろう。馬車の周りに門兵が並んでこちらに睨みをきかせている。門兵だけで20人ほどはいるんじゃないだろうか。
「これです。どうぞ」
先ほどからこちらに声を掛けてくる隊長らしき厳つい顔の人物に紙切れを渡すと、急に威圧感が消えて笑顔を浮かべる。
「おお! これはアルマン殿! 行商からの帰りですか。お疲れ様です」
いえいえと答えてニコニコ笑っているアルマンはこの都市では顔がきくのか、それともただ単に2人が知り合いなだけなのか、よくわからんな。
「おや? この子供はどうしたので?」
御者の座るところにアルマンと並んで座っていたオーシャンが気にかかったようだ。
「彼は私がフィールドウルフの群れに襲われているところを助けてくれた恩人なんです。残念なことに戦争の煽りを受けて村が襲われたそうで・・・」
沈痛な面持ちでアルマンが答えた。
「なるほど、それは可哀相に・・・って今なんと仰いましたか!?」
「いえ彼の村が」
「それではなく! 前半部分です!」
「あっ、はい。彼がフィールドウルフの群れを倒してくれたのですよ」
隊長並びに門兵一同がポカーンとした表情でアルマンを見ている。アルマンはアルマンでしてやったりとでも言うような顔をしている。
「フィールドウルフの群れは討伐ランクで言うとDはありますよ! そんな子どもに1人でできるとは思いませんが」
ふむ、討伐ランクとは何だろうか。冒険者組合に関連する言葉なのか。
「俺だって2匹倒したんだぞ!」
子ども扱いされてオーシャンが顔を赤くして怒っている。そういうところが子どもだって言われるんだよ。
「2匹?」
「おっと、少々語弊がありましたね。群れの大部分を倒したのは彼です」
やっと俺のことに触れ始めたので幌馬車の中からオーシャンとアルマンの頭の上に身を乗り出す。
「うおっ! 何だこいつは!」
隊長のその言葉をきっかけに門兵達が槍を構えてこちらに向けてくる。
俺何もしてないのに・・・さすがにこれは初対面で急に刃物を向けてくるって失礼じゃないか?
各々が臨戦態勢に入り、今にも斬りつけてきそうな雰囲気となっている。まわりでも待ち時間を持て余していた商人や旅人などが野次馬として集まってきている。
「そこまでです。このリザードマンはこの子ども、オーシャンの従魔です」
「な、なに? その10歳超えたくらいの少年がリザードマンを使役しているのか!」
驚きの表情でみんながオーシャンに顔を向ける。
「10歳じゃない! 13歳だ!」
かくいう本人は違う点に反応しているが。
というかそんなもん誤差だろ、気にすんなよ。あと1、2年もすれば第二次性徴期がきて170くらいになるって。
俺はそんなことを思いながら怒れるオーシャンの頭を撫でる。まあ俺の手がデカすぎて頭を握りつぶすようになっているのだが。
「おい! 子どもから手を離せ! リザードマンめ! 」
「撫デタダケダ」
またもやオーシャンとアルマン以外の人々が驚いた表情を見せる。門の前が一瞬静寂で満ちる。そして、前よりも断然大きな騒ぎが周りを取り囲む。
そんなにも話すリザードマン(に見える竜人)がそんなにも珍しいのだろうか。Lv.180以上ともなると喋れる奴がほとんどだ。とはいっても定型文はしか話せなかった。
「おい、リザードマンが喋ったぞ!」「あれは本当にリザードマンか?」「こんなのを都市に入れても大丈夫なのか!?」などと周りでは騒いでいる。
これは収拾がつかないんじゃないかとオーシャンの頭を撫でながら呑気に考える。手の下から「やめろ! 首が折れる!」という声が聞こえるような気もするが気のせいだろう。
「静まりなさい、彼は大丈夫です。いいですね?」
アルマンが御者台から降りて一歩踏み出し、今までの笑顔が嘘のような、真剣な顔つきに変わっている。
「オーシャン君は許可証に類するものを持っていないのでこれでいいですね?」
隊長の手の中に銅貨を5枚置いてニッコリと笑う。おそらくあれが入場料なのだろう。
「は、はい。どうぞ」
アルマンよりも身長の高い屈強な男が一喝にたじろいでいる。中級商人という職業のスキルに貫禄なるものがあっただろうか。
門兵が馬車の周りから退いて道を開ける。とうとう都市に入ることができる。後ろから視線のレーザービームが飛んできている気がしないでもないが無視するに限る。
さあ、中はどんな風になってるんだ?
俺とオーシャンは若干興奮気味に辺りを見渡す。