門からは町の中心へと向かう大通りがあった。幅は馬車が3台並んでもなお隙間ができてしまうほどだろう。そこを濁流のような人混みが行き交いしている。俺たちの乗っている馬車はさながら川を行く船のようだ。
左右に立ち並ぶ家々は二階建てのものが多く、偶に3階建てのものまである。それも石造りで強固に作られているからだろう。これなら魔物が来ても倒壊は心配する必要がないだろう。
また、大通りに面している家はほとんどが何らかの店として営業している。通りを進んでいく途中で見られる店の種類の中で多いのは武器屋、防具屋、鍛冶屋、宿屋だ。やはり冒険者を対象とするような店が多い。
進んでいく大通りの先に城があるのがわかる。まだそこまでは遠いが、俺の目ならばかなり良く見える。
都市を囲う壁と同じくらいの高さの城壁があり、装飾などはあまり見られない。
都市の長が住まう城ともなれば自分の経済力を誇示するために煌びやかな装飾を好むのかと思ったが、そうでもないらしい。
良く言えば質実剛健、悪く言えば無骨な雰囲気だ。
じっと城を見ていたが、大通りから外れて横道に入ったために家で見えなくなってしまった。もうちょっと見たかった気もするが、それはまたの機会にすればいいかと考える。
それから5分もしないうちにアルマンによって馬車が止められる。
「さあ、目的地に着きましたよ」
「目的地? ここが?」
「あなた達の持つ力なら冒険者として生計を立てられる、いえ、一流にもなれるはずです。頑張ってください。何かが入り用な時はウィンストン商会にお越しください、最大限の便宜を図ります」
ではまた会いましょうと言って俺たちを下ろした。
「また会おうな!」
オーシャンは手を振って別れを告げ、俺はお辞儀をする。色々と世話になったからこれくらいはしないとな。まあこれからもウィンウィンな関係を築いていきたいものだ。
俺が馬車から姿を現したことでまた周囲が騒然とし始めた。
ちゃっちゃと冒険者組合では従魔登録したほうがよさそうだな。
正面にあるのは今までとはまた一風変わった建物だ。三回建ての建物でかなりでかい。石造りであるために威圧感もすごい。雰囲気は城に近い感じがする。
入り口はウェスタンドアとなっており、いかにも荒くれ者なやつが出入りしている。大体が体格の大きい男だが、極少数女性も混じっている。こんな中にいるんだ、どうせ普通の女じゃないだろう。
みんな服、装備、武器のいずれかに冒険者組合の看板にある紋章をつけている。どうやらあれが冒険者の証のようだ。
「オーシャン、行クゾ」
「ちょっ、俺が主人なんだから俺が先に入るぞ! 待てよ!」
オーシャンは両手でドアを開けて駆け気味に中へと入っていった。
おいおい、絶対テンプレ起きるだろ。
そんな風にやれやれと思いながらも、もし起きたらどう対応しようかとちょっと楽しみにする。
◇
一応大盾と大剣をアイテムボックスにしまってなかに入る。敵意があると捉えられたら面倒だ。Lv.200のやつがいないとも限らないしな。
中では案の定と言えばいいか、オーシャンが男3人組に絡まれていた。
1人は坊主頭で、頬に傷、左腕だけに鎧を纏っている。背中に背負っている大斧が彼の獲物なのだろう。
残り2人は細くてガリガリのやつと太ったデブのやつだ。それぞれ弓と大剣を持ってる。
オーシャンを小突きながら浮かべている笑顔は百人が見て百人が悪人だと答えるような笑顔だ。
「坊主、ここは遊び場じゃねえぞ? どこか分かってんのか、ああん? おっ、新品の装備つけてんじゃあねえか。パパに頼み込んで買ってもらったのか?」
頬傷が腕を組んでオーシャンを見下げている。他の2人はそうだそうだと野次を飛ばしている。
組合内の酒場のようなところに座っている冒険者達は笑って眺めている。どこか懐かしいなあと感じているような顔をして眺めているものもいる。
たしかネット小説でもそういうのがあった気がする。通過儀礼として先輩が喝を入れるんだったな。
でも大抵がチート主人公にボコボコにされていた気がする。後輩を慮ってのことなんだからそんなことしてやるなよとは思ったが、小説だから仕方ないのか。
俺が入ってから何人か俺のことに気づいたが、大半がまだそっちの揉め事に目を向けている。そいつらに目を向けてみるとなかなか貫禄のあるおじさん連中だ。冒険者の中でも古参なんだろう。
「オイ、俺ノ主人ニ手ヲ出スナ」
案の定驚きの声が聞こえるが、それももう何度か繰り返しているためどうでもよくなった。
はやく登録を済ませるためにカウンターへとオーシャンの手を引っ張って行く。さすがの気の強いオーシャンでも冒険者の気に当てられたのか、黙って歩き出した。
話に途中で割り込まれたことに腹を立てたらしく3人組がカウンターと俺たちの間に割り込んでくる。
「おい、まだ話は終わっていねえぜ? 止まりな、トカゲ野郎。生意気にも人の言葉を喋って鎧まで着やがって」
俺のことを随分と挑発してくるな。なんだ? 戦いに持ち込みたいのか? こんな余裕を見せながら挑発してくるということはこいつで余裕に倒せるレベルなのだろう、この世界のリザードマンは。
鑑定スキルによると
頬傷Lv.23
中級大斧使いLv.10
下級剣使いLv.4
下級盾使いLv.1
下級大剣使いLv.8
ガリLv.16
下級弓使いLv.8
下級狩人Lv.8
デブLv.14
中級剣使いLv.4
下級盾使いLv.10
となっている。
ガリは合計レベルではデブに優っているが、デブは中級職業を持つためデブの方が強いだろう。
3人の中では頬傷が断トツで強いということがよくわかる。
ということはリザードマンはレベル15以下なのだろう。種族だけで相手を侮るのはただのバカだな。ゲームの中ではレベル170のスライムとかも普通にいたから、こいつらだったら瞬殺されるだろう。
「おい、お前首輪つけてねえなあ? っていうことは今の時点では従魔ではないということだ。つまり、ここで殺しても迷宮から抜け出てきた魔物ってことで処理される」
言い終わるとニヤッと笑って大斧を両手で構える。ガリとデブもそれぞれ獲物を構えて広がる。
周りの野次馬冒険者達は戦いが始まりそうな雰囲気を感じ取って距離を取り、野次を飛ばして煽ってくる。よく見ると賭けをしているものまでいる。
「ヤル気カ? 手加減ハシテヤランゾ?」
「抜かせ! こっちのセリフだああぁ!」
返事と同時に戦いが始まった。
やれやれ、力の差を見せつけてやるか。