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転生。
俺がよく見ていたネット小説サイトではそういったジャンルのものは五万とあった。
主人公の前世での善行の見返りとしての転生と神様の手違いの謝礼としての転生との2つに分類することができるだろうか。
その場合俺は前者に該当するだろう。神様と直接会って転生させてあげると言われたわけではないからわからないが。
これは偶然なのか。それとも人為的なものなのか。
そんなことは俺にとってどうでもいい。17年という短い人生に終止符が打たれたと思ったら、また次の人生を歩めるというのだ。
しかも自分が手塩にかけたゲームのキャラクターとなって。
また、小説の典型的な例としてはここは地球ではなく、その上異なる世界で剣と魔法の危険な世界かもしれない。
科学では証明できない超常現象、魔法があれば、もしかすれば地球に帰り、みんなに会うことができるかもしれない。
そのためならば俺はどんなことでもする。
どんなに冷徹にでもなってみせる。
俺は当面の目標を地球に戻ることと決意し、まずは魔法の有無を確認することにした。
目標のためには魔法が不可欠だ。もし無いならばそれで諦めがつく。無いのにあると信じ続けて無駄な時間を過ごさずに済む。その時間をこの世界で有意義に生きるにはどうしたらいいのかを考えるのに当てることができる。
この体が本当に《グランド》であるならばこの体に備わっている能力もそうなのだろう。
数年間にわたってほぼ毎日使ってきたキャラクターの能力は完璧に把握できている。何ができて何ができないのか、そしてこの世界に来て能力がどうなっているのかを知る必要がある。
緑の絨毯の中に姿見と相対したまま感慨にふけっていたため意識が戻った時にはほぼ真上にあった太陽も大分傾いて来ている。
竜人と特性として夜目はきくが、早めに終わらせて周囲の確認に移ったほうがいいだろう。
さて、地面に突き立てていた姿見を黒い渦、もとい【アイテムボックス】を開いてしまう。これは魔法ではなく、システムの一つであるので魔法の有無についてはなんとも言えない。
では始めていこう。
【フリーダム】においてはキャラクターにレベルがあるわけではない。職業にレベルが存在し、そのレベルが合計240以内であれば幾つでも職業を持つことができる。
例えばレベル1ある職業を240個まで持つことができる。しかし、考えればわかるようにそうすれば単なる器用貧乏になるだけでレベルの高い魔物に勝てるわけではない。そして職業もそんなにない。基本の職業が20数個あるだけだ。その職業を組み合わせることで上位の職業を得ることができ、上位の職業は基本の職業では手に入れ得ない力も手に入れることができる。
そのため、【フリーダム】においては職業構成が全てを握るということである。
【フリーダム】のサービスは始まってまだ数年しか経っていなかったためカンストプレイヤーというものはかなり少なかった。その上経験値の必要量の多い竜人で240までレベルがあるものはほとんどいない。というか俺しかいなかったのではなかろうか。実際俺は竜人でカンストのプレイヤーを自分以外に見たことがない。
そりゃあ勉強時間を極端まで削り、睡眠時間が3時間程度になるまでずっとやっていればそうもなるだろう・・・もしかして俺トラックに轢かれてなくてもそのうち死んでたんじゃないか?・・・まあいっか。
俺は基本職業を8つとっている。
その中で魔法を使えるものは半数の4つだ。
上級魔法使い【火】
上級魔法使い【水】
上級魔法使い【風】
上級魔法使い【土】
これはいずれも上限レベルのLv.20までとってある。他にも3つの属性が存在するのだがそれはまたの機会に説明するとしよう。
それぞれの属性には第一から第五位階までの魔法があり、第五位階が最も強力な魔法となっている。
通常は詠唱(と言っても魔法名を口に出すだけなのだが)することが魔法の発動するトリガーとなっているのだが、俺の職業がその必要性を無くしている。
上級刻印使い。
この職業は魔法使いの上位職、賢者のさらに上位に位置する職業だ。
物体に幾何学模様の魔法陣を刻み込むことによって魔力を送るだけ(発動したいと考えるだけ)で即座に発動するのだ。
俺はそこで考えたのだ。
あれ、物体って自分の体でもいんじゃね?
そこで実際に試して見たところ成功してしまったのだ。ネットで調べてもそんなことをした奴は誰もいないということがわかった。他のみんなは武器や防具に刻印することで使用していたみたいだ。
しかし、それでは武器や防具が破壊、または取られてしまった時に為す術がなくなってしまうだろう。だから俺の使い方が最も合理的なのだ。
これは俺以外誰も知らない方法。
他のプレイヤーに教えてあげるほど俺は善人ではない。しかし、このまま戦えば全身白い魔法陣の刻まれた竜人が魔法を使うたびに体が発光するというなんとも怪しいことになり、直ぐにタネがバレてしまうので全身を鎧で覆うことにした。
もちろん多少の光は漏れるが、それは許容範囲ということで深く考えないことにした。
その戦法によって俺はゲームの中でもかなり上位に食い込んでいたのだ。
とまあ長話はこれくらいにして。
俺は横に生えている木に向かって右手を向け、第一位階の火魔法《火球》を打ち込もうとするがある疑問にぶつかる。
「アレ? 魔力ッテドウ込メルンダ?」
そう思って《火球》の魔法陣の刻まれている箇所に力を込めたりしてみるが、何にも起きない。
頭の上にクエスチョンマークをたくさん浮かべながら5分ほど悩んで、まずは魔力というものを感じ取ってみようと考える。
目を閉じて息を吐き、自分の体に神経を集中させる。
すると胸のあたりに何かずっしりと暖かいものがあるのに気づく。
これが魔力なのだとあたりをつけた俺は、次はそれが魔法陣に移動するのを想像してみる。
すると想像と同じ様に魔力が魔法陣へと流れる。
その現象に思わず感動してしまい、ドンドン魔力を注ぎ込んでいくと、瞼越しに見える光がかなり明るいことに気づき、目を開けて見て驚く。
右手の先に直径4mほどの、まるで小さな太陽の様な火の玉があったのだ。
大きくなりすぎたために地面に接触し、付近の草が燃え、さらに隣の草へと燃え広がり始めていた。
それに気づいた俺はこれはやばい、早く消火しないとと焦ってしまったがために一瞬だけ《火球》への集中を途切れさせてしまった。
それと同時に俺と《火球》との魔力的な繋がりも途切れてしまい、《火球》は俺はもう自由だ!と言わんばかりに凄いスピードで遠くに見える森へと飛んで行ってしまった。
一瞬のことだけに俺は呆然自失してしまい、対策に遅れてしまった。
ヤバイと思った時にはもうすでに遅く、森の木へとぶつかった《火球》は盛大に弾け、爆発と共に周囲の木々を火で包み込んだ。
森が盛大に燃えているのを見て背中に嫌な汗をかき、水魔法で消そうかとも考えたが、
「マ、マアコウイウコトモアルヨナ、ウン。事故ダカラショウガナイヨネ。」
俺は今もなお燃え広がっている森を背に翼を広げて空へと飛び上がった。
俺はこの時知りもしなかった。まさかこの火災のせいで大きな事件に首を突っ込むことになってしまうことを。