そしてそこに立っていたのはなんと3、4歳の男の子であった。
身長は1mあるかないかぐらい。
髪は金髪、顔は整っており瞳は碧色。
典型的な西欧人の美形だった。
将来は大層おモテになるだろう。
おっと、いかんいかん俺は何を小さな子供に嫉妬しているんだ。今はもう竜人なんだしそんなの関係ない、うん、関係ないんだ。
そんな現実逃避をやめて敵意を緩め、その子供を観察する。
どうやら俺の事を見て怯えているようだ。
地に足をつけてどうにか立ってはいるが、目は涙目になっているし、足もガタガタと震えている。彼なりの強がりなのだとすぐわかる。確かに2m大の大きなトカゲと人型の土の塊がいるのだ。誰だって怖がるだろう。
危害を加えるつもりがない事を伝えようとするが、ふと思う。
言葉って通じんのかな?
俺は日本人だから勿論日本語を話す。だが、相手はこの世界で生まれ育った子供だ。言葉が同じはずがない。
どうしようか困っていると少年がこちらへ向かって一歩踏み出した。
「お、おまえなんかこわくないぞ!」
俺は二つの意味で驚いた。
一つは日本語を話したことだ。こんなことがあり得るのか。それとも何か、よくある翻訳機能というやつか。確かにゲーム内でも翻訳機能はあったが、こちらの世界でも適応されているということか。
もう一つは・・・この子がめちゃくちゃ可愛いことだ!
別にそういう趣味はないが、今すぐにでも抱きしめて撫でくりまわしたい。今もつぶらな瞳に涙を溜めて上目遣いで此方を睨んでいる。ふっくらとして少し赤らんでいる頬には空気を一杯に溜め込んでいる。
可愛いなあと眺めていると、子どもは両手を上げて走って来る。
「やあああぁぁぁ、あっ」
「アッ」
俺まであと3mほどというところで盛大にこける。俺も思わず声を出してしまった。
プルプルと震えながら起き上がり、両膝から血が出ているのを見て次は号泣し始めた。
この状況をどうしようかと悩んでいるとゴーレムたちも対処に困ったのかこちらへと顔を向けてくる。
いや、俺が教えて欲しいくらいだよとは思いながらもとりあえず待機の命令を出して子どもへと近づいていく。
なるべく怖くならないように翼をたたんで背中に隠し自分を小さく見せようとしてみたり、竜人の笑顔がどんなものかはわからないが、笑顔を浮かべてみたりする。
子どもはそんな様子の俺をみてさらに激しく泣き始めた。
大きな火を背後に鋭い牙を持つ竜人が口角を上げていたらそうもなるか。失敗したなあと思い、対処方法がわからないのでゴーレムとともに少し距離をとって落ち着くのを待つことにした。
それから15分ほどアイテムボックス内のアイテムの確認をしていたら、落ち着いたのか体育座りした状態からそのまま横に倒れて寝息を立て始めた。
俺は子どもに近寄ってアイテムボックスから毛布を取り出し被せてやる。
さすがに俺も今日一日は劇的な1日であったために疲れた。もちろん肉体的にではない、精神的にだ。
子どもから少し離れた場所に横になってゴーレム2体に周囲の警戒を命じて目を閉じる。
やはり疲れが溜まっていたのか目を閉じた直後にすぐ眠りにつくことができた。
◇
鳥がチュンチュン鳴く音が聞こえだし、子どもが起き上がる気配を感じると同時に俺も起き上がる。おそらく今は朝の6時頃だろう。
地面の上に寝て体の節々が痛くなるだろうなと予想していたがそうでもなかった。この体ならいくら野宿しても大丈夫そうだ。
子どもは目をゴシゴシと擦って20秒ほどボーッとしてから「おとうさん? おかあさん?」と言いながら周りに目を向け始めた。
両親が死んでしまったのが昨日の今日だからか、思わず声にだしてしまったのだろう。
そんなふうに哀れみの視線を向けていると、視線が合った。
どうしようと考えながらも、子どもの次の行動を楽しみにしている自分がいた。
すると子どもは立ち上がってまた両手を振り回しながら雄叫びをあげて突進してきた。
動き出そうとしたゴーレムに待機を命じて子どもが足元まで来たところで手で頭を抑える。
尚も負けないぞと言わんばかりに両手を振り回している子どもを観察していると、小さく、しかししっかりと聞こえる音でグウという音が鳴った。
魔物の鳴き声かと一瞬警戒感を露わにするが、俺の知覚範囲には影が見られない。
幻聴かなと思っていると、手の下で可愛くジタバタと動いていたものが静かになっていることに気づいた。
次はどうしたんだと手の下の頭を覗き込むと、子どもはこちらを見上げて目を合わせてから言った。
「おなかすいた」