「オーシャン、大丈夫カ?」
「大丈夫・・・なわけないだろ! 休憩なしで何時間走り続けたと思ってるんだ! グランド、お前の体力は無尽蔵なのか!?」
俺とオーシャンとで体力に差があるのは当然のことだろう。レベルに差があるし、なにより種族が異なる。
ゲーム内では誰もが使えた鑑定スキルを使って彼を調べたところ、下級農民Lv.4と中級魔法使い【水】Lv.1という二つの職業に就いていることが判明した。
ゲーム内では、一番初めに基本職業の中から一つ選ぶ職業とその後に努力することによって身につく職業、いわば、先天的な職業と後天的な職業という分類がある。
先天的なものはレベルにが上がりやすいというアドバンテージがあるため、慣例としては先天的な職業をカンストさせて地盤を固めてから他の職業にもつくというものがある。
彼の場合、前者が後天的なもので、後者が後天的なものだろう。
実際彼の家は農家であったし、自分が火の魔法使いになれる素養があることを彼は知らない。そもそも職業というシステムがあることを彼は知っているのだろうか。これは聞いてみる必要がありそうだな。
またもやグッタリし始めた彼に返事を返す。
「ソレハ種族ガ関係スルダロウナ。トコロデ、職業ハ何ニ就イテイルンダ? レベルハ?」
彼は何をおかしなことを聞いてるんだとでも言うような表情をしながら質問に答える。
「そんなのグランドも知ってるでしょ? 農民だよ、元がつくけどね。あと『れべる』って何?」
「イヤ、何デモナイ。気ニスルナ」
やはり職業システムについては知らないらしい。これを知っていれば才能を伸ばすのも簡単だろうに・・・いや、俺ならこの情報を独占して商売に利用するだろうな。
オーシャンは不満そうに「何だよ、そんなこと言われたら余計気になるじゃん」と言って不満そうに足を揺らしている。
おい、ちょっ、やめろ! 顔に当たるだろ
そんなことを思って彼を睨むと、できもしない口笛を吹いて視線を合わせないようにしていた。
こいつは碌な大人にはならないだろう。
◇
その後、特に会話もなくオーシャンは肩の上で寝息を立て、俺は大自然の風景を楽しみながら歩いていると後ろの方から何かが近づいて来ていることに気がついた。
音から察するに、大型の動物2体とガラガラと転がっているもの、おそらく馬車だろう。それに小型の動物が10体ほどだとわかる。
予測としては二頭立ての馬車が小型の魔物に追われているという格好だと思う。
相当な距離を走って来たのか、馬の鼻息はかなり荒くなっている。そろそろダメになるだろう。
ここに達するまで約1分はかかると思う。それまでにどうするか決めなければ。
「オイ、起キロ! オーシャン!」
落ちないように抑えていた手で揺らしてオーシャンを無理矢理起こす。
「お、起きた! 起きたからもうやめろっておい!」
さっきまでは疲れでぐったりしていたが、今は揺らし過ぎたことが原因でぐったりしている。
だが、今はそんなことは気にしている場合ではないので、肩から少々乱暴に下ろす。
オーシャンうわっとびっくりしたような声を上げて尻餅をついている。
「後ロカラ何カ来ル。オソラク馬車ダ。何カニ追ワレテイル」
不満そうな顔をしていたオーシャンはそれを聞いてすぐに真面目な顔をした。やはり切り替えがはやい。まあそれだけだがな。
「・・・助ける。人死にはもう見たくない」
彼は数秒考えて神妙そうな顔をしてそう答える。
おそらく村でのことを思い出したのだろう。甘いなとも思ったが、一応は主従関係を結んでいるので従うことにする。
「ワカッタ、ココデ迎エウトウ」
それから30秒と経たないうちに丘の向こうから馬車が現れた。御者は中年の無精髭を生やした男だった。顔から汗を滴らせながら馬に必死に鞭を打ち、たまに何かを恐れるように後ろを振り返っている。
また、馬車は帆付きのものであり、いくつもの木箱が載っている。
さしずめ彼の正体は行商人だろう。村かどこかで商品を仕入れてその帰りというところだとみた。
そしてその行商人と思われる者が必死に逃げていたものも現れた。